超かぐや姫!0 ~before full moon~   作:ごーまん

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交錯

時は、遡ること数日。

 

ミニライブの夜、ヤチヨに決意表明をした後、俺は早速行動を起こしていた。

 

 

まず行ったのは、かぐやのライバーアカウントの特定。

 

幸い、これには時間がかからなかった。アカウントの名前が特にひねることなく、「かぐや」となっていたため、検索すればすぐに見つけられた。

 

 

次にやったこと、それは彼女にコンタクトをとることだ。

 

これが少々難航した。何分、普段からメールなど送る機会があまりない身。特に今回は仕事メールの側面も持ち合わせている案件ときた。

 

当然その文面を考えるのに時間がかかる。俺は、ああでもないこうでもないと、頭を悩ませていた。

 

は:やっぱりここは、オフィシャルな感じで礼儀正しくいっとくか?でも、俺に相手を聞かせられるような肩書きはないしな…。いっそ、ファンを騙ってフランクな感じで行くか…?

 

しばらくの間考えたが、最終的に面倒くさくなってきたため、結局オフィシャルとカジュアルの合いの子くらいの文面で手を打った。

 

 

悩んでおいてなんだが、正直文面の出来栄えは結果を左右しないと考えていた。

 

彼女は乗ってくる。

 

そんな確信が俺にはあった。

 

 

そして、事実、俺の予想通り彼女はこの話に乗ってきた。俺はツクヨミの場所と日時が書かれたメールを送って、その日を待った。

 

 

そして、今に至る。

 

い:で、なんでハジメさんがここにいるんですか?

 

は:あ~~~っと、それはですねえ…

 

彼女、いろはからすれば至極真っ当な質問が投げかけられる。

 

俺は目線を外して思案する。どこまで話していいものか。俺の素性のことは、隠す必要はないのだが、それに付随して、ヤチヨのことまで勘繰られるのはまずい。

 

慎重に言葉を選ぼうとしていたその時だった。

 

 

か:スト~~ップ!!チョットタンマ!!わたし全然話についていけてないんだけど~!?

 

そういってかぐやが割り込んできた。そうだった、完全に失念していた。そういえば、かぐやと俺は初対面なのだ。

 

は:えっと、自己紹介が遅れました。初めまして。俺の名前はハジメです。…あの、かぐやちゃんの……ファンデス。

 

いかん、なんか最後だけ片言になってしまった。

 

チラリと様子を窺うと、パァ〜っと顔を輝かせるかぐや。

 

い:うそつけ

 

それとは、対照的に鋭い指摘とともに冷ややかな視線を向けるいろは。完全にばれてる。やっぱり嘘なんてつくもんじゃないな。

 

か:初めまして!私、かぐや!!月から来たの!

 

い:ちょっ!!バカッ!!築地、築地ね!?

 

元気いっぱいに自己紹介をするかぐや。なんだか、とんでもないことを言っていたが、それを、必死に誤魔化すいろは。

 

 

それを聞いて、驚きを隠せない俺。

 

それは、月から来たと言うこと自体に対してではない。そのことを、本人の口から直接聞けることに驚いた。

 

 

今になって思い出す。いつかのいろはからのメール。七色に光る電柱だったか。

 

自分の中で立てたヤチヨについての仮説の空白、そのピースが埋まっていくのを感じる。

 

は:ハハッ、そういう設定?中々面白いんじゃない?

 

そういって一旦流しておく。変に掘り返すことでもない、そう考えた。

 

ほっと一息ついた様子のいろは。結構振り回されてそうだな、そこそこの付き合いがあるが、あんな様子は初めて見た。

 

か:それで?二人は知り合いなの?そんでもってハジメは私たちに協力してくれるんだよね!?実はフォロワーがぜ~んぜん増えなくて困ってたんだよね~。いっちょ、お願いします!

 

そういって手を合わせて懇願してきた。

 

俺は笑いながら、いろはとは、ただのネット友達だと語った。他愛のない話をかわしつつ、多少打ち解けてきたと感じた段階で、本題を切り出した。

 

 

さっきの会話の最中、頭の中で自分のこと、これからのことについてどこまで話すかなんとなく整理できた。

 

俺はゆっくりと口を開く。

 

は:まず、最初に言っておくことがある。俺はツクヨミの創設者だ。

 

それを聞いて、真っ先に反応したのは、かぐやではなくいろは。

 

い:嘘!ありえない。だってツクヨミを作ったのは、…ヤチヨでしょ。

 

あくまで冷静にそう返すいろは。まあ想定内だな。

 

俺は空中にウィンドウを展開して、少し考える。あんまり良い案がではない気がするが、これでいいか。

 

俺は、ウインドウを操作して、命令を実行した。

 

か:うわっ!!なにこれ!?

 

次の瞬間、そこには、いろはが二人いた。正確には、いろはのアバターが二人、だが。

 

俺がかぐやのアバターをいろはのものと同じに変更したのだ。

 

い:なっ!?これ、どうやって!?

 

か:いぇ~い、いろはとお揃い~♪

 

そういっていろはがいろはに抱きついている。百合……とはならんな。なんか対消滅しそうだ。

 

俺はかぐやの姿を戻す。

 

は:これで、納得してもらえるとありがたいんだが。

 

いろはの様子をうかがう。一応他人のアバターの強制変更なんて、当然権限なしには出来ない行為なのだが、ハッキングの可能性もなくはない。

 

とはいえ、これ以上の証明のしようもない。素直に引き下がって貰えるだろうか。

 

い:………分かった。そのことは一旦置いておく。創設者かどうかはともかく、ハジメさんがツクヨミの内部に通じている人だってことは信じます。

 

は:分かった。それで大丈夫だ。

 

納得はいっていないという様子だが、一旦は話を聞いてくれるらしい。

 

感情に身を委ね、頭ごなしに否定することはしない。彼女の高校生らしからぬ冷静な部分に助けられた。

 

は:そういうわけで、俺にはツクヨミの内部の人間とつながりがある。こういう人気商売は、ファーストインプレッションが重要だ。そこの部分を俺が内部の人間や、そこから派生した人気ライバーとのコネを用いて直に掛け合うことで、保証できると思う。

 

二人とも黙って聞いている。異論は無いようだ。…かぐやの方はよく分かっていないだけなような気がする。仕切りにほう…とか、なるほどぉとか言っていた。

 

は:プロデュースの件は、ついでに過ぎない。実際にやったことがあるのは事実だが、別にお前らの活動にまでとやかく言うつもりはない。困ったことがあれば聞くし、活動の方向性に迷えば助言もしよう。いいように使ってくれて構わない。……とこっちからは以上だが、なにか質問は?

 

パチパチと手を叩くかぐや。どうやら悪い印象は持っていないらしい。こっちのほうは大丈夫だが、問題はもう一人のほう。

 

何か考えているように俯いているいろは。ゆっくりとその口が開かれる。

 

い:……なんで、そんなにしてくれるの?正直出来すぎてる。何か裏があるとしか思えないよ。

 

そういって俺に疑念の目を向けてくる。これまた至極全うな意見だ。

 

まっすぐとむけられた視線に、俺も誠心誠意応えたいのはやまやまなのだが、

 

は:悪いが、詳しいことは話せない。こっちにも事情があるんだわ。ただ、いえるのは一つ。俺はどうしても、かぐやにヤチヨカップで優勝してもらわなければならない。

 

い:…本気で言ってるの?

 

は:ああ、もちろんガチだ。そのために、俺に出来ることならなんだってやる、その覚悟だ。

 

そう言い放つ俺の剣幕に、少し怯むいろは。が、すぐに持ち直すと、一瞬かぐやのほうを一目見て、再度俺に言った。

 

い:やっぱり、信用できない。そんなに必死なのに、話せないって一体どんな理由なの?

ね、かぐや?この話は危険すぎる、やめとこ?ね?

 

そういってかぐやを説得し始めるいろは。

 

やはり、厳しいか。しかし、これ以上俺になにを伝えられる?

 

いっそ、ヤチヨの名前を出すか?いや、それは危険すぎる。もしも、それで仮に世界線の変動なんてことが起きようものなら、それこそ取り返しが付かない。

 

が、今のままでは、交渉決裂。そうなれば、ヤチヨカップの優勝など夢のまた夢。

 

 

どうする…?時間がない……!

 

 

 

か:ね?いろは。

 

そんな状況を打ち破ったのは、意外な人物だった。

 

か:かぐやのこと、心配してくれてるの?

 

い:っ!当たり前じゃん!ね?だから辞めとこ?

ヤチヨカップの優勝は…無理かもしれないけど、でも、かぐやだったら、きっとこんな話受けなくても有名になれる。だから――――――

 

ゆっくりと首を振るかぐや。そうして今度は俺の方に向く。

 

 

真剣な眼差し。

 

思わず息を呑む。どこか懐かしい感覚。

 

この眼差しには覚えがあった。

 

 

 

か:あなたの話に乗れば、ヤチヨカップ、優勝できるんだよね?

 

真っすぐに俺に向けられた言葉。その言葉には芯が通っていた。こんな表情もできる子なのか。

 

は:約束する。何に変えても、俺がお前を勝たせてやる。

 

だから、俺も真っ直ぐにその言葉に応えた。

 

 

束の間の静寂。

 

 

それを破ったのは、かぐやだった。

 

ニコッと微笑む。初めて会ったときの様子に戻りながら、いろはに語りかける。

 

か:ごめんね~、いろは。かぐや、ど~してもヤチヨカップ優勝したいんだ!だからお願い!今回だけ、かぐやのわがままきいてくれないかな?

 

そういって手を合わせ首をかしげるかぐや。俯いたまま、いろはがぽつりとこぼす。

 

い:………別に、わがままなんて今回だけじゃないじゃん……。

 

か:あれぇ~、そだっけ?

 

あはは~と言った様子で頭に手をあてるかぐや。

 

その様子を見て、少しいろはの気がほぐれたようだ。

 

い:でもなんで?どうしてそんなにヤチヨカップ、優勝したいの?

 

そんな問いにかぐやは優しくこう返した。

 

か:だっていろは、ヤチヨとライブしたいっしょ?かぐやといろはとヤチヨ!三人でライブするって、めっちゃハッピーだと思わない?

 

その言葉を聞いていろはは目を見開く。どうやら思い当たる節があったらしい。

 

 

決まったようだ。

 

 

いろはの表情から迷いが消えたように見える。

 

い:分かった。私のこと、ちゃんとハッピーエンドに連れてってよね?

 

か:もちろん!!かぐやちゃんにおまかせ~~!!

 

そういってまた、きゃあきゃあと楽しげに喋り合っていた。

 

 

その様子を眺めながら、俺はほっと胸をなで下ろす。

 

 

同時に、かぐやの言葉が俺の脳裏によぎった。

 

――月から来たんだ!

 

月。

 

最早、言い逃れできないだろう。

 

 

日本最古の物語にして、作者不詳のお伽話。

 

彼女らの運命が、かの有名な「竹取物語」をなぞっているということを。

 

 

しかし、それは悲哀の結末を迎える。運命は変えられないというのであれば、きっと彼女らの未来もそうなるのだろう。

 

楽しく話す二人。とりわけかぐやの方を見ると、胸が痛んだ。

 

 

でも、違う。この話には続きがある。

 

 

俺は、月明かりに照らされたいつかの彼女の姿を思い浮かべる。

 

儚げな表情を浮かべていたあの子を笑顔にしたくて、ここまでやってきたのだ。

 

 

俺は、選ぶぞ………そのエンディングを。

 

 

 

例えそれが、ある人にとってのバッドエンドだったとしても。

 

 

きっとそれは、大切な人にとってのハッピーエンドになるはずだから。

 

 

は:俺が、ヤチヨをハッピーエンドまで連れて行くから……

 

 

小さく、そう決意を新たにした。

 

 

 




以下補足


怒涛の連続投稿、よろしくお願いいたします。

たまにはこんなんもやるかもなあ。

始めのころは少なかった超かぐや姫の二次創作も、いまやそれなりの数が投稿されてきていて、正直うかうかできないですよね。出したからには、最低限読まれたいところ。埋もれてしまうのは、本意ではないです。

やっぱり、インターネット上に投稿しておいて、評価とかどうでもいいっス自分みたいなサムいやつにはなりたくないんでね、できることはやっていくぞ。まずはあの赤いバーみたいなやつつけたいですね、憧れです。どうか清き一票をオネシャス。



ところで、ここの後書きの部分ってどのくらい読まれてるんですかね?

正直、自分は後書きとかあんま読まないんで、こんなん物好きしか読まんだろと高をくくって、すごい適当なことだらだら書いてるんですけど…


僕は、凄い呪術廻戦キッズなんですが、以前、トゥイッターを見ていると、「呪術廻戦の単行本は、話ごとの間のページに作者の言い訳が書いてて、読書体験が悪い」みたいな意見があったんですよね。

いや、あっこがいっちゃんおもろいだろ?

なんか誰が責めてるわけでもないのに、いやちゃうんすよ、みたいに語りだすのめっちゃおもろいけどなあ。と僕は思ったんですよね。


でも、それが世論なら、この後書きも意外と読まれてて、読んでる人も「うわ内容はまだしも、作者つまんな」ってなってるんですかね。残念だ。

まあ、俺はこの後書きを面白がってるんで止めないんですけどね。



というわけで今回の言い訳、これはいろはの湿度に尽きるなあ?


原作のこの段階だと全然こんなに加湿してなかっただろ?あんま良くないかもなあ?

まあでも、こんなんも嬉しいからやっちゃいますよね。普通に。

今回の話、書く前はつまんなそうかもなって思ってたんですが、この湿度のおかげで、大変楽しく書きあげました。あらした。


以下設定補足

前回出てきた主人公の見た目ですが、見た目は現実のものと変わらず、髪だけ白髪な感じです。ヤチヨに合わせに言った感じですね。

実は顔もお爺ちゃんみたいなのを使ってるってことにしようと思ったんですが、流石に絵面やばいので止めました。
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