超かぐや姫!0 ~before full moon~ 作:ごーまん
ジージージージージージージージージー
目を覚ます。
うだるような暑さ。
外では、セミが喧しく鳴き続けていた。
汗でシャツが体に張り付いていて気持ち悪い。
日差しは燦燦と照りつけており、
遮光カーテンの隙間から漏れ出した量でさえ、
俺を灼くのには充分であった。
ハジメ:「…これだから、夏は嫌いだ…」
そんな最悪の気分から始まった一日だった。
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シャツを着替えてリビングに移動する。
コップ一杯の水を飲み干した後、食パンを無心でかじっていた。
食事をすることがめんどくさいと感じている俺だが、
夏場だけは、唯一例外であった。
根っからの引きこもり体質。
夏場のエネルギー不足が、
軟弱な体にどれ程の深刻な被害を与えるのか。
それを誰よりも自覚しているがゆえに、
夏場だけは、
とりあえず何かを口に入れるということを心がけていた。
ハジメ:「しかし、食パンというのは、
どうしてこうも賞味期限が短いかね。」
買ってから毎日、食事皆勤しなければ、
すぐに期限切れになってしまう気がする。
冷凍するというのも手だが、
それでは手軽さが消えてしまう。
どうにかならないもんかね。
そんなことを考えながら、YouTubeを覗いていると、
ある動画が目に入る。
「要チェック!!今大バズり中の激熱ライバー」
そう書かれたタイトルの動画のサムネイルに、
でかでかとかぐやが映っていた。
あと、端のほうに狐の着ぐるみも映っている。
なんとなく動画を開いてみる。
内容は特に変わったものではない。
かぐやの活動内容が、
特にオリジナルソングに焦点を当てられながら、
簡潔に紹介されていた。
ハジメ:「調子、良さそうじゃん。」
これならば、俺も骨を折った甲斐があったというものだ。
柄にもなく奔走した在りし日のことを思い出す。
何分、メールなどすることもないような人間関係の希薄さである。
伝手はあっても、
その相手が気安い間柄であるわけもなく、
菓子折りを引っ提げて、
丁寧にお願いして回った。
完全に営業をかけているマネージャーの図だ。
そういう意味では、プロデューサーのような役回りだったといえるかもしれない。
驚いたことと言えば、
ツクヨミの情報屋系ライバー”忠犬オタ公”に、
かぐやのことを話に行った時、
オタ公「あ、もう認知してるっスよ。」
と言われたことだ。
流石、情報屋。
手が早い。
あとは、朝日…、いや”帝アキラ”に掛け合いに行った時か。
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アキラ:「オッケー、俺に任せときな。」
ハジメ:「へ?い、いいのか?
な、なんか見返りとかは……」
アキラ:「お前は、俺を何だと思ったんだよ…」
そう言って顔をしかめる朝日。
アキラ:「別にコラボしろ!とかじゃなくて、
話の流れで名前を出す機会があったら、
それとなく宣伝しとけ、ってだけだろ?
見返りをもらうほどのことじゃねぇよ。
それに……」
ハジメ:「?」
そういって再びかぐやの写真に目を落とす。
が、その焦点は、
かぐやというより、
むしろ背景にいる狐の着ぐるみに向けられているような気がした。
アキラ:「いや、こっちの話だ。
とにかく、余計な心配はしなくていいから。
俺に任せときな?」
ハジメ:「……そっか、ならいいんだ。
いや、ホント、ありがとう。」
俺は、素直に手を合わせる。
実際、見返りと言っても、俺に払えるものなんてあるのかどうか。
昼飯一回分で!
なんて言おうかとも思ったが、
よく考えたら、相手はツクヨミ一番のゲームストリーマーだった。
そんなの端金ですか……
アキラ:「でもまあ、ハジメがそんなこと言うなんて珍しいな。
……惚れたとか?」
ハジメ:「冗談。俺に限って、そんなことあるわけないだろ。」
アキラ:「それもそうか。
お前、結構一途な奴だもんな。」
そう言って、悪戯っぽい笑みを浮かべてくる。
コイツ、好きかって言いやがって…
ハジメ:「そういう意味じゃねえよ。
ったく…
訳あって、コイツに”ヤチヨカップ”で優勝して貰わなきゃいけなくなった。
それだけだよ。」
ヒューっと口笛を吹く朝日。
アキラ:「それ、俺の前でいうんだ。」
ハジメ:「そういうの、燃える性質じゃなかったか?」
アキラ:「ハハッ、そうだな。
でも、それならホントに名前出すだけで大丈夫?
かぐやちゃん。
可愛いけど、それだけで俺たちに勝てんの?」
ハジメ:「十分に競り合えると思ってるよ。」
そう言い切る俺を見て、
朝日は少し意外そうな顔をする。
アキラ:「へえ、随分と買ってるんだな、彼女のこと。」
ハジメ:「…………まあな。」
アキラ:「分かった、楽しみにしとくよ。」
ハジメ:「ああ、そうしてくれ。」
そう言って手を振って帰っていった。
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そんな感じで、根回しのほうは終了。
あとは、ツクヨミのシステムのほうにも、
ちょろっと細工をして、
かぐやのアカウントがツクヨミ内で露出しやすいようにしたりした。
そんなこんなで、俺は経過を待っていた。
わずか数週間しかたっていないが、
この動画を見るに、
成果は上々だといえそうだった。
思わず口元が緩んでいたところに声をかけられた。
ヤチヨ:「何見てるの?」
俺は、咄嗟にYouTubeのタブを閉じた。
思わぬ来客に心臓が鳴っていた。
なんとなく、
俺がかぐやの動画を見ていることがばれるのは、
良くない気がする。
なんとかごまかさないと……
ハジメ:「お、おはよう。ヤチヨ…
今日もいい朝、だね!」
ヤチヨ:「?おはよう…
で、にやけてたけど何見てたの?」
ハジメ:「え………っと、それは、ど、動物の動画だよ?
いやぁ、可愛いなァ、い、癒されるなァ…」
明らかに様子がおかしい俺に、ますます疑念を募らせるヤチヨ。
ヤチヨ:「何?私に言えないようなもの見てたんだ。」
ハジメ:「ち、違うよ~、
だから、動物!動物の動画だってば、な?」
ヤチヨ:「動物、動画……」
今度はブツブツと考え込んでしまった。
なんとかこれで納得してくれればよいのだが…
ヤチヨ:「動物……アニマル、動画………ビデオ、
いい………朝……
ハッ………!!!!!」
目を見開くヤチヨ。
な、なんだ今度はどうなった?
俺は、ただただ彼女の様子を見守る…
ゆっくりと彼女が顔を上げる。
ゴクッっと俺は生唾を飲み込んだ。
顔を上げたヤチヨは、
顔を赤らめ、
わざとらしく体をくねくねさせながら、
とんでもないことを言い放った。
ヤチヨ:「そんな、
ズゴ!!
その場で俺は大きくこけた。
………そんな、中学生みたいな………
ヤチヨは昔から、
たまに、とんでもなくしょうもないことを言うことがある。
はじめて彼女がネットミームを喋ったときのこと、
衝撃的過ぎて、
今でも鮮明に覚えている。
そんな俺の様子を見て、
ケラケラと笑うヤチヨの声が、
喧しい蝉の鳴き声を掻き消していた。
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ヤチヨ:「お出かけしましょう! 一緒に!!!」
昼下がり、いきなりそんなことを言いだした。
いや、いきなりではないな。
思えば、朝からそわそわしていたように見えた。
日が傾きかけて、
外に出やすくなってきたこのタイミングを見越していたのだろう。
これもまた、最近気になっていることだ。
ヤチヨが度々遊びに誘ってくるようになった。
思い返すと、大体例のミニライブくらいからのこと、
最初は、なんで?と思ったりもしたが、
考えてみれば当たり前のことだ。
あの日彼女は、
8000年ぶりの再会を果たしたのだ。
そりゃ、しばらくテンションも高くなるか。
ハジメ:「忙しくないのか?
なんか、前にこれから立て込む、
みたいな話をしてた気がするんだけど?」
ヤチヨ:「心配ご無用~♪
できる女は、忙しい時期でも、
きっちり息抜きの時間を確保出来るものなのです!」
ハジメ:「そうか、まあ無理してないならいいんだけど。」
彼女が遊びに誘ってくれるのは、素直に嬉しかった。
それに、息抜きの時間に、俺といることを選んでくれているのだ。
その気持ちに応えたいとも思っていた。
ハジメ:「それで?今日はどこに行く?
無難に水族館とかにしとくか?」
俺たちが現実世界で出かける場所は、
水族館が定番だった。
理由は水族館が、
聴覚や嗅覚などに語りかける要素が少なく、
純粋に視覚による体験に比重を置いているからだ。
電子的な存在であるヤチヨと、
肉体がある俺とで、
過ごした時間の感じ方において、
乖離が少ない、
そんな場所は貴重だった。
ヤチヨ:「んーと、今日はねー………」
が、どうやら今日は、
すでに行きたい場所が決まっているらしい。
そういって提示された場所は、
何の変哲もない場所だった。
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行き先が決まり、俺も準備を始める。
といっても、大した荷物ではないのだが。
ただ一つ、これだけは欠かせないというものがあった。
俺は、デスクの上においてある
”メガネ型デバイス”を手に取る。
全ての始まりであるこの機器。
あれからちょくちょく改良をしており、
音声の入出力機能も搭載したため、
今となってはこれ一つで、
ヤチヨとコミュニケーションが取れる。
ヤチヨ:「……………」
ハジメ:「…何だよ?俺の顔になんかついてる?」
ヤチヨ:「へ?いやッ、なんでもないよ!!
ハジメの眼鏡、やっぱり見慣れないな~って思っただけで!」
そういって、顔を背けてしまう。
え?なんかヘンなのかな?
慌てて鏡を見るが、よくわからない。
似合ってないのかな…、だとしたら悲しいなぁ…
ヤチヨ:「…………一瞬、眼鏡貸してくれない?」
ハジメ:「うえ!?やっぱし似合ってない?」
ヤチヨ:「へ?……
ち、違う違う!
そういう意味じゃないよ!
ただ、ちょっと……確認したいこと?があって……」
煮え切らないが、気にしてもしょうがない。
素直に眼鏡を机の前に置く。
この眼鏡のソフトウェアは、
電子機器から無線で更新できる。
なにやらヤチヨがソフトウェアの中身を確認しているようだ。
しばらくして眼鏡が光ったかと思うと、
すぐにヤチヨが
ヤチヨ:「ありがと!もう大丈夫」
そう言ってきた。
俺は、一瞬眼鏡を観察するが、何か分かるわけもなく、
すぐにそれを装着して、
ヤチヨに語りかける。
ハジメ:「なにかした?
一瞬眼鏡が光ったように見えたけど…」
ヤチヨ:「あ~~~…………
ヒ・ミ・ツ♪」
そう言って片目を閉じる。
なんじゃそりゃ
……………まあ可愛いからいいや。
そう言って外に出た。
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ハジメ:「やっぱり昼下がりとはいえ、
外は暑いな………」
うっすらと頬に掻いた汗を拭って、
ペットボトルの水を流し込む。
ヤチヨ:「私は全然平気だけどね~
ちょっと弱すぎるんじゃないの~」
ハジメ:「…羨ましいよ。」
一瞬、
ツッコミにくいこと言わないでくれよ、
なんて言おうかとも思ったがやめた。
きっと彼女もそんなつもりで言ったわけではないだろうから。
俺たちは、近くの国営公園にきていた。
てっきりもっと遠出をするものとばかり身構えていたが、
個人的には、近いほうがありがたい。
行き先についても水族館ではなかったが、
奇しくも、その方向性は同じであった。
視界に入る草木や花々。
歪な性質を持つ俺たちが訪れる場所としては、
この上ない場所だと感じていた。
この目に映る豊かな自然は、
きっと隣に立っている彼女と同じに見えている。
そう思いたい。
特に時間を気にすることなく歩いていたが、
何だかんだで時間がたっていた。
日が沈みかけている。
ハジメ:「それで、この後も、
どっか行きたいところがあるんだっけ?」
そういってヤチヨのほうを見る。
ヤチヨ:「うん、夜景……
ってほど大層な感じじゃあないんだけど
ここらへんだと、一番雰囲気のある場所。」
ハジメ:「そっか、楽しみだな。」
言っててなんだか悲しくなった。
そういう場所に縁がないため、
近場であっても、
そう言われて具体的な場所が思い当たらなかった。
ヤチヨ:「でも、その前に…」
そういって俺の進む先に回り込むヤチヨ。
思わず足を止める。
ヤチヨ:「ご飯、食べてないでしょ?」
それを聞いて、内心ギクッとした。
その様子を見て、ヤチヨが言葉を続ける。
ヤチヨ:「……やっぱり、私に気を使ってる?」
ハジメ:「そんなことない!んだけど…
いや、やっぱり使ってたかも
ごめん。」
そういって謝る俺。
それを見て笑うヤチヨ。
ヤチヨ:「なんでハジメが謝るの?
それに、そんなの今更でしょ?
家では、普通に食べてるのに……」
ハジメ:「……いや、そうだな。」
ヤチヨ:「そうだよ!ほら、いこ…?」
そういって手を差し出すヤチヨ。
俺も反射的にその手を取ろうとした。
が、少ししてその一連の動作の間抜けさにお互いに気づく。
顔を見合わせて小さく笑いあった。
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ヤチヨ:「わあ~~、いっぱいあるよ?
バーガーにラーメン、寿司にとんかつ……
って私が目を輝かせてもしょうがないか~…」
たはは…と笑うヤチヨ。
明るくふるまって見せているのだろう。
俺もいつまでもしんみりしている場合ではないのだが、
どうしてもそうなってしまうのには、理由があった。
視界にある店が映る。
その店だけは避けて通りたかったのだが………
ヤチヨ:「でもでも、どれもおいしそうだよね~~
このお店は、なになに?ぱ─────」
そういって一瞬フリーズするヤチヨ。
が、すぐにいつもの調子を取り戻す。
ヤチヨ:「…パンケーキのお店だ。
いやぁ、おいしそうだよね~
どんな味なんだろ、
いつか食べてみたいな~……」
そういう彼女の顔が見れなかった。
────気を使っている。
さっき言った俺の言葉を思い出す。
そんなのは、建前に過ぎなかった。
これは今回だけのことではない。
ヤチヨは、「パンケーキ」を見た時だけ、いつもこうして硬直する。
そんな彼女の姿を俺が見たくなかったのだ。
考えられる理由は一つ。
やはり、彼女はそれを口にしたことが、”ある”のだろう。
しかし、ヤチヨの話を信じると、彼女は8000年前からこの姿である。
自分でも、とんでもないことを口にしている自覚はあった。
が、彼女という超次元的な存在を前に、
俺の常識など何ら意味を持たないように思えた。
ヤチヨ、そしてかぐや─────
きっと彼女は………………
パァン
瞬間大きな音が鳴り響く。
驚いた様子でヤチヨが俺の方を振り返る。
俺の両頬には大きな赤い手形が付いていた。
ヤチヨ:「ど、どうしたのいきなり?」
ハジメ:「いやどこぞの腑抜けに、
一発、喝を入れとこうと思って…
悪いな、むしろ気を遣わせた。
もう大丈夫だ。」
そうだ、そんなことは考えても仕方がない。
俺は、俺にできることをするだけだ。
図らずも迷いの霧が晴れたような気がする。
心が晴れやかになったと思うと、
今度は無性に腹が減ってきた。
ハジメ:「うし、今日は気絶するまで食うぞ、
いこうぜ、ヤチヨ?」
そういって振り返ると、
なぜかヤチヨがその場で俯いて、
両手で顔を抑えながら立ち尽くしていた。
心なしか耳が赤い気がする。
耳を澄ますと、小声で
大丈夫…大丈夫…とこぼしているのが聞こえた。
因みにそのあと入ったとんかつ屋で、
柄にもなく大盛りを頼むと、
案の定胃袋がオーバーフローして、
しばらくグロッキーになっていたというのは、
また別の話である。
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ハジメ:「へえ、ここか…」
すっかりと日の沈んだ時間。
俺はヤチヨに連れられるまま、この場所に来ていた。
昼過ぎにいた公園が一望できる。
聞けば、天気が良いと富士山も見えるそうだ。
この時間では、暗くて判別できないが。
夏とはいえ、
この時間帯にもなると、
外は多少涼しいと感じられるかもしれない。
俺たちは、ベンチに並んで座って、
他愛のない会話を交わしていた。
ハジメ:「いいところだな。
綺麗だけど派手すぎないっていうか…
なんだか落ち着くよ。」
ヤチヨ:「良かった~。
ここ、ハジメと来たかったんだよね。
初めて来たときは、
なんだか悲しい気持ちだったからさ…
こんなにきれいな場所でしょ?
そのときの思い出のままには、したくなくて…」
ハジメ:「そっか…」
俺は静かに彼女の言葉を聞いていた。
自分たちの間を流れる静寂も、
この瞬間に限っては、
むしろ心地いいように感じた。
ヤチヨ:「ね?初めて会った時のこと、覚えてる?」
ふと、ヤチヨがそんなことを聞いていた。
ハジメ:「勿論、最初見たときは、
幽霊だか、宇宙人だかと勘違いして、
大変だった。
しかも、その後、すっげぇ怪しげな場所まで連れていかれたしな?」
ヤチヨ:「……でも、ついてきてくれたよね?」
ハジメ:「…好奇心は止められないからな。」
好奇心
発したその言葉に、自分でも逃げたなという自覚があった。
嘘ではない、
しかし、あの時の自分を支配していたのは、
もっと大きな別の感情であったと、はっきり覚えている。
ヤチヨ:「それから、今日までずぅーと一緒だもんね~
私が言うのもなんだけど、結構長い間一緒にいるよね?」
ハジメ:「全くだ。
まあ、俺は?ツクヨミを作った段階で、
お役目完了だと思ったんだがな。」
ヤチヨ:「その節は、大変お世話になりました…!」
そういって仰々しく頭を下げるヤチヨ。
可笑しくなってお互いに笑いあう。
ヤチヨ:「……この先も、こんな時間がずっと続くのかな…?」
ポツリとそんなことを呟くヤチヨ。
これは……どっちだ…
俺はヤチヨの表情を伺おうと、
彼女に視線を向けるが、
景色を見つめる彼女の顔は、
こちらから見ることができなかった。
俺は改めて彼女の言葉を反芻する。
どんな言葉を返すべきだろうか。
しばらく考えた後、
俺の口から出た言葉は、
自分でも意外なものだった。
ハジメ:「未来なんて……
この先の運命のことなんて、今は分かんないだろ。
まだ、決まってないんだから……」
瞬間、彼女が振り返る。
その目を大きく見開いていた。
美しい瞳に吸い込まれそうになる。
そして少し俯いた後、
ヤチヨは何か決心がついたかのように、
もう一度俺に向き直った。
あれ………
なんだこれ……
心臓がバクバクしててめっちゃ痛い。
さっきまでの食べ疲れはどこへやら、
俺は目の前のヤチヨの姿にくぎ付けになっていた。
ヤチヨ:「ねぇ、ハジメ……
耳かして?」
そういって、
心なしかこっちに近づいていてくるヤチヨ。
その口を俺の耳元に近づける。
声が、近い……!
言われた通り、
俺は正面に向き直る。
しかし、全ての神経を、
眼鏡のレンズの端に注いで、
必死に彼女の姿をとらえようとする。
これって……
脳みそがフルスロットルで回転している。
少ない知識から今の状況を判別する。
なんだかまるで…………
都合のいい考えは捨てろと、
いくら振り払っても、
その考えは消えなかった。
物語で見た”アレ”のシーンみたいじゃ……
その瞬間、俺の視界からヤチヨが消える。
あまりの出来事に、
しばらくの間その場で固まってしまう。
が、何とか気を取り直す。
どうやらメガネの不調のようだ。
思わず立ち上がって、
俺は慌ててメガネを確認する。
どうして今なのか。
この世に運命の神様とやらがいるならば、
いますぐ首根っこ捕まえて、
引きずりまわしてやりたい気分だった。
幸い、不備はすぐに解消され、
ヤチヨの姿も見えるようになった。
一時的なバグなのだろうか。
だが、そんなこと、
今はどうでも良かった。
俺はいち早くヤチヨのほうを向く。
すると、彼女は何食わぬ表情で、
さっきと同じように
景色を眺めていた。
俺の様子にに気づいて、ゆっくりとこちらを向く。
ヤチヨ:「どうか…した?」
そういってこっちを見上げるヤチヨ。
なにをした。
なんて聞けるはずもなかった。
俺は今、自分が舞い上がっていることを自覚していた。
さっきまでの出来事は、全部俺の勘違いだった、
なんてことも十分にあると思えた。
…それに、
聞いてしまって、
万が一そうでなかった場合、
俺は立ち直れる気がしなかったから。
俺は静かにその場に座りなおす。
パタパタと顔を手で仰ぐ。
ハジメ:「ああ……くそ……」
俺は小さく愚痴をこぼす。
…前言撤回だ。
日本の夏は、夜でも暑い。
顔の火照りは、しばらく消えてくれそうになかった。
以下補足
まずはありがとう。
赤いやつが付きました。これで箔が付いた、うれしいね。
とはいえ、自分親ばかなんで、
俺の話はもっといけるやろおもて、色々頭を悩ませていたんですね。
それで至ったのが、文章の読みやすさです。
改めて1話見たら、クソ読みにくくて読ませる気ないやろってなりました。
それでネットの文章を参考にしつつ、大規模な改修工事をしてました。
これで読みやすくなってるといいなあ。
まあ、この作業クソつまんないんでまだ全部は終わってはないんですが、
ぼちぼちやっとこうと思います。
さて、今回の話ですが、自分自信あります。
こんなんもうれしいな?
書いてるうちに意外とよくなったのでハッピーだッピ。
原作段階だと「私は、わたしの事が好き。」の1番が流れている部分の話ですね。
楽曲は脳内で大いに流してください。
まあ、大分雰囲気違うんですけど。
海はカットです。
最初は海の家で焼きそば売ろうかとも思ったんですが、
この主人公がそんなんしてたら凄いぞ、
と思ってやめました。
一応、立川の場所を軽く調べて書いたんで場所にモチーフはあります。
調べたらすぐわかることしか書いてないんで、
隠す気ないんですが、行ったことないんで、
「実際はそんなとこじゃね~よ」
ってなったときのための逃げとして明言しません。
そうなってもスルーしてください。許して。
ヤチヨの服装についても、
自分の中では、こんなんやろな~ってのがあるんですけど
ファッションセンスには自信がないので明言しません、
好きに楽しんでください。
個人的にはポニーテールなんかが涼しげでいいと思いますねぇ。
今、考えましたね?
好きにしろと言いましたがひとつだけ。
今ヤチヨにスカートを履かせたそこのあなた。
それだけは違うぞ、反省するように。(※あくまで個人の意見です)