超かぐや姫!0 ~before full moon~ 作:ごーまん
地の文が神視点です。
よろしくお願いいたします。
一試合目が開始する。
ルールはSENGOKEのBO3。
それぞれの陣営から、
勢いよくレーンに走り出した6人。
乙事照:「おっ、お~!
トライデント! トライデントっすね~!」
そう言って盛り上がっているのは、
解説の元プロゲーマー・乙事照琴。
トライデント、TriDEnt。
正式名称をTriple Division Engagementというそれは、
昔は、一部の人間だけが好んで使うマイナー戦術であったが、
現環境のKASSENにおいて、
最も王道的な戦術であった。
複数の敵にも一人で応戦する必要のあるデメリットはあるものの、
高い連携によって
MIDレーンのプレイヤーを
効果的に扱うことができれば、
相手の配置に依存することなく、
柔軟に戦術を展開できる。
その点から、
特に高レベル帯の試合で良く好まれる戦術になっていた。
乙事照:「黒鬼 それぞれ別のレーンに!」
国内では敵なしのKASSENの精鋭集団”Black onyX”。
当然とってくる戦術は、トライデント。
ハジメ:「ま、ここまでは想定通りだな…」
マップを見ながら、そうこぼすハジメ。
第一試合が始まる前のことを思い出す。
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いろは:「てかどうすんの? 作戦とか」
そういういろはの前に立っていたかぐやが、
振り向きながら、
真剣な顔で言い放つ。
かぐや:「ガーッといってシュタタタター!
そんでバァーン!」
ハジメ:「…まあ、アホはほっとくとして」
そんなハジメの言葉を聞いてメンチを切っているかぐや。
かぐやを放置して話を進めるハジメ。
ハジメ:「まず、相手の配置だが、
これは間違いない。
トライデントだ。」
その言葉に小さくうなずくいろは、
ここまでの認識は共通しているようだ。
ハジメ:「んで、問題はそれに対しての俺たちの配置なんだが……
結論から言うと、ない。」
いろは:「なっ…!?
じゃあダメじゃん!」
そう言って食って掛かるいろは。
ハジメは冷静に返す。
ハジメ:「そうは言っても、ないもんはない。
そもそも、相手の面子と俺たちでは、
どの組み合わせの1v1でも勝てない。
つまりトライデントをかぶせることは不可能。
その上、俺たちのどんな小細工も、
トライデントという配置の柔軟性の前に無力化される。
そんぐらい力の差は歴然なんだよ。」
全く、良くできた配置だ。
考えたやつの顔を見てみたいぜ…
なんてことを口にしそうになったが辞めた。
いろは:「でも、それじゃあ…」
そう言って俯くいろは。
対してかぐやは、その表情に一点の曇りもなく、
ハジメに問いかけた。
かぐや:「でも、何かあるんでしょ、勝算?」
ハジメ:「…たったの2回だ。
最初だけ分からん殺しで完封したら、
あとの人生では負けてもいい、というか勝ち逃げする。
俺はこれまでそうやって戦ってきた。」
そう言って二人のほうを向き直る。
ハジメ:「これからお前らに、この試合の必勝法を授ける。
心して聞け。」
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いろは’s View
いろは:(って言われたのはいいけど...)
私は、かぐやとTOPの櫓に向かいながら、
さっき告げられた必勝法について考えていた。
ハジメ:「まず、この試合、
いろはとかぐやは常にツーマンセルだ。
これは、いかなる状況においても変えない。」
いろは:「そんなことしたら、MIDの人に好き勝手やられるだけじゃ…。」
ハジメ:「それはしょうがない。
1v1で勝てない以上、
普通にやってもじわじわやられるだけ、
ある程度は割り切った配置にしないと、
ワンチャンもつかめないからな。
組み合わせに関しても、これしかない。
俺は人と組むのはやったことないし、
お前らは一緒にいた時間が長いからな。
うまくやってくれ。」
そんな彼のセリフに対して、
満面の笑みとともに親指を立てて応じるかぐや。
そこまでは、まだよかった。
問題はその後だ。
ハジメ:「お前らの役目は、矛だ。
二人で、日本最強の男”帝アキラ”に勝ってもらう。」
そんなことを言われた。
出来るはずがない、私には…
あの人をこのゲームで負かすことなど──────────
ダダダダ!!!
射撃。
私はすぐさま物陰に隠れ、
弾が飛んできた方向に武器を投擲する。
が、それは相手に難なく受け止められ、
挙げ句距離を詰められる。
ギンと鈍い金属音が響く。
鍔迫り合いの最中、
向かい合っている男、"帝アキラ"がこんなことを口にする。
アキラ:「お前、彩葉だろ?」
いろは:「チガウ オレ イロハ チガウ」
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ハジメ’s View
どうやらTOPレーンで、
いろは&かぐやと帝アキラが接敵したようだ。
しかも、聞けば、
何やら彩葉と、朝日には血縁関係があったらしい。
頑なに着ぐるみを脱がないと思っていたが、
そういうことだったのか…
世の中って意外と狭いものだ。
たしかに、思い返すと、
試合が始まってからもずっといろはの様子が変だった。
いつものような冷静さがないというか、
どこか周りが見えていない印象だった。
これで元に戻るとよいのだが…
ハジメ:「…さて、俺も俺の役割を果たすとしますか…」
そういってゆっくりと立ち上がった。
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乃依’s View
時間は、TOPで帝が最速で牛鬼を仕留めた頃。
俺のいるBOTでは、まだ動きが起きていなかった。
というよりも、
起こせていなかったというのが正確か。
乃依:(相手の姿が…見えない。)
俺は、牛鬼と櫓の両方が補足できる位置で身を潜めていた。
矢を射れば、
どちらのオブジェクトも確保できる状態ではあったが、
それをできないのには訳がある。
彼の職は弓兵。
遠距離からの高火力攻撃を得意とする一方で、
耐久が極めて低いというデメリットがある。
乃依:(TOPには既に敵が二人映ってる。
つまり、相手は2-0-1配置で確定。
BOTにはハジメがいるはずなんだけど...)
対するハジメの職は、散兵。
高い機動力と隠密能力を駆使して、
小規模な戦闘を行うことを得意としていた。
つまり、このマッチアップは俺にとって相性最悪。
仮に、俺が櫓に弓を射る瞬間を、
相手に抑えられていようものなら、
瞬時に俺の首が飛ぶだろう。
それ故に、迂闊に動けないでいたのだ。
乃依:「でもまあ、
それも時間の問題でしょ...」
MIDを侵攻していた雷から連絡が来る。
どうやら敵天守閣付近までたどり着いたそうだ。
俺は、矢筒を触って射る矢を変える。
これまでの間、
索敵用の矢を
クールタイムが上がるごとに放っていたのだ。
乃依:「ここまでしてもいないってことは、
そもそもここに居ない、
もし居たとしても、
今更俺を倒したところで、
もう雷を止められない...
っしょ?」
そう言って櫓に矢を放つ。
ゴ~~~~~~~ン!!!
低い音を響かせる鐘。
周囲を警戒するも、
相手が出てくる気配がない。
どうやらここにはいないようだ。
すぐさま、雷に連絡する。
乃依:「雷、ハジメはそっちにいるっぽい。
すぐに俺も行くから、
2v1で徹底的に潰そ?」
雷:「分かった。天守の前で落ち合おう。」
そう言って連絡を終え、相手の天守に走る。
乃依:「それは、ただ…
問題を先延ばしにしてるだけじゃん?」
そう言ってペロリと舌なめずりをした。
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場所は、かぐや陣営の天守閣付近。
TOPでは、かぐや&いろはが、
アキラ相手に奮闘するも、
いまだ櫓を占拠できていないという状況だった。
対して黒鬼陣営は、BOTの櫓を占拠した後、
乃依と雷がグループアップして、
大将落としの目前まで迫っていた。
最早、一回戦は黒鬼の勝ちで決まりかと思われたが…
乃依:「へえ、そんな堂々と出てくるんだ。」
ハジメ:「まあ、俺が生きてても、
城が落ちてりゃ訳ないからな。」
そういって姿を現したのは、いろは&かぐや陣営最後の一人、ハジメ。
乃依:「もしかして、時間稼ぎならできるとか思ってる?
無理だよ。
1v1でならまだしも、
2v1でのこの状況。
俺たちが物量で押し切って終わり。」
ハジメ:「……」
何も言わないハジメ。
圧倒的な優勢、
しかしこの状態になってなお、
彼の掌の上にいるのではないかという疑念を
乃依は拭えないでいた。
が、余計なことは考えるな、
と自身に言い聞かせる乃依。
そうやって俺が惑うことこそが、
彼の狙いかもしれない、
そう考えていた。
ズドーーーン……
勝負を決めるべく、
ハジメに攻撃しようとしたその時。
その背後に、巨大な将軍の姿をしたモブが現れる。
名を”将軍ミニオン”というそれは、
櫓が占領された時に召喚され、
出現した大将落としを守護する役割を果たすモノだった。
通常の”雑兵ミニオン”とは一線を画す強さで、
職によっては、このミニオンの存在故に、
天守を落とすのに時間がかかったりもする。
とはいえ、所詮、モブはモブ。
このゲームをやりこんだ乃依にとって、
それを仕留めることは容易かった。
いつもと同じように、その急所に矢を放った瞬間だった。
乃依:「!?」
驚く光景を目にする。
ギィインという鈍い音とともに彼の射った矢が、
将軍ミニオンの小手で弾かれたのだった。
こんなことは今まで起きたことがなかった。
乃依がその小手を注意深く観察すると、
何やら光るものが伸びていることに気づいた。
雷:「成程な…」
そう言って口を開く雷。
両者ともすぐにそのからくりに気づいたようだ。
光るもの、その正体は糸であり、
それが続く先はハジメの左手、
そこに握られている釣竿であった。
雷:「器用だな。
釣り糸の操作で将軍ミニオンを操っているのか…」
乃依:「そんな訳わかんない武器使ってるやついないから、
ちょっとびっくりしたよ。」
ハジメ:「まあ、こんぐらいはできないと、
どっかのパッチで修正されてんじゃないかと
ひやひやしたが…。
でもまあ、これで2v2だな。
のらりくらり、時間を稼がせてもらうぞ?」
そういって将軍ミニオンの陰に隠れるハジメ。
やはり、一筋縄ではいかないらしい、
二人は、武器を持つ力を強めた。
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いろは′s View
いろは:(私、なんでこんなことしてんだろ…)
戦いの最中、
ふとそんなことを考える。
だが、そう思ってしまうのも無理はない。
それほどまでに、
実力の差は圧倒的だった。
着ぐるみを脱いで全力の私とかぐや。
二人がかりでも
彼に手傷を負わせるどころか、
押さえ込むのもやっとだった。
かぐや:「どりゃ~~!」
アキラ:「動きが直線 解釈一致!」
かぐや:「ぐえ! 痛ぇんだけどマジ!」
そういってかぐやがダウンする。
私も負けじと彼に詰めよるが…
いろは:「んっ!」
アキラ:「フフッ」
その刃が相手に届くことはない。
やっぱり……勝てない。
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ハジメ′s View
ハジメ:(やっぱ、きついな…)
俺は“将軍ミニオン”を操り、
黒鬼の二人のいなしながら、
内心、そう考えていた。
流石はプロゲーマー、地力が違う。
普段と違う挙動のモブという不測の事態を前にしても、
たった数分の内にその特徴を捉えていた。
事実、先ほどからちょくちょく
“将軍ミニオン”に良い攻撃が入っており、
そのヘルスは、3割を下回っていた。
ハジメ:(これ以上の遅延は厳しいぞ…)
そんな弱気になっていた俺に待っていたのは、
吉報ではなく、
さらなる追い打ち…決定打だった。
ゴ~~~~~~ン!!!
TOPレーンの方角からそんな鐘の音が聞こえた。
まもなく、いろはから連絡が入る。
いろは:「……ごめん、負けた。」
ハジメ:「マジんが…」
そんな報告に一瞬気をとられた隙だった。
乃依:「よそ見はだ~め。」
ハジメ:「っ!!」
鋭い一撃が頬をかすめる。
危ない、
後一歩反応が遅ければ、やられていた。
そう安心したのも束の間、
背後で大きな音がした。
慌てて見ると、
そこには、轟音と共に崩れ去る“将軍ミニオン”の姿が。
先の矢は、
俺の命と、“将軍ミニオン“の命の両取りの一手だったというわけだ。
消失の際に発生した煙の向こうから、
ある人物が顔を覗かせる。
雷:「終わりだ…」
そう言って振るわれる法杖。
突如として現れた轟雷が、
俺の体を無残に引き裂いた。
オタ公:「ここで! いろP&かぐやチーム、
最後の一人がダウン!
トライデントのまま、両やぐら占拠でコールドです!
鮮やか!」
乙事照:「かぐやいろPチームも悪くな~い!」
そんな声を聞きながら、
俺の体は消えていった。
以下補足、はないです。
前半がぁ終わるぅ。