超かぐや姫!0 ~before full moon~   作:ごーまん

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引き続き、地の文は神視点です。
よろしくお願いいたします。







新世紀竹取KASSEN -急-

三試合目の前のインターバル。

二回戦での奇策の意図について、

アキラからかぐやへの通話があった後のことだった。

 

続く最終戦。

俺の中での勝率は、

3割ぐらいだった。

 

一応、まだ隠している奥の手もあるのだが、

これほどまでに

勝率が低くなっているのはなぜか。

 

それは、偏にいろはのパフォーマンスの問題だった。

 

確かに相手は一流選手、

いつもの相手とは勝手が違うことは理解できた。

が、俺にはそれが

いろはの不調の原因だとは思えなかった。

 

普段の彼女に見られる冷静さが

今日は一切感じられない。

彼女のプレーの持ち味は、

合理的な判断と、

それを可能にする精密な操作技術。

 

しかし、今日はそのどちらも、まるで発揮できていなかった。

 

周囲が見えておらず、

極端に自己に固執した行動。

 

相手を恐れているかのように見える程

躊躇いがちな操作。

 

そのどちらも、普段の彼女からは考えられないものだった。

 

 

彼女のパフォーマンスが戻らない以上勝ちの目は薄い。

とは言え俺に出来ることはない。

…かくなる上は。

 

俺は、あることを決意する。

 

 

ハジメ:「ヤチヨ、ちょっといいか?」

 

ヤチヨ:「?なに…?」

 

 

俺は彼女に近づいて、小さく耳打ちする。

分かった、と小さく頷くヤチヨ。

 

これでうまくいってくれると良いのだが…

 

そんな一抹の不安を抱えた中、

運命の最終戦が始まった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

現在、試合は中盤戦に差し掛かる時点。

 

お互いの陣営がそれぞれ櫓を取り合って、

かぐやいろP陣営側の天守付近で、

交戦が起きていた。

 

占拠した櫓は、

黒鬼陣営がTOP、

かぐやいろP陣営がBOTである。

 

なぜ、BOTの櫓を

かぐやいろP陣営は占拠できたのか。

それは、二回戦でのかぐやの奇策が

尾を引いている部分が大きかった。

 

第三回戦開始後、

BOTの櫓に向かう乃依は、

どうしても

先のかぐやのガンクが頭をよぎるため、

いつも以上に慎重に進まざるを得なかった。

 

しかし、対するかぐやいろP陣営のハジメは

ここに来て、釣竿を用いた高速移動で、

櫓にラッシュし、そのまま占拠。

完全に相手側の思考を読み切っていた。

 

が、相手は黒鬼。

ただで終わるような連中ではない。

 

櫓を攻撃中のハジメを、

有効射程ギリギリで捉えた乃依は、

すぐさま矢をつがえ、

縦の偏差を即座に計算した後、

矢を射った。

 

美しい放物線を描いたそれは、

ハジメの心臓部分に突き刺さり、

ダウンとなった。

 

結果的に、

ハジメの残機一つと

BOT櫓のトレード。

 

TOP側の櫓を確実に抑えられると踏んでいた

黒鬼陣営からすれば、

悪くない結果だった。

 

かぐやいろP陣営としても、

櫓を取らなければ

そもそも試合が始まらない以上、

手段を選んでいる暇はなかった。

 

最後の残機で、リスポーンするハジメ。

すぐに、MIDで交戦する二人のもとに向かう。

マップを見ると、

"帝アキラ"がフリーの状態。

 

定石ならば

それを抑えに行かなければ、

負けに直結する場面。

だが、彼がそうしないのには訳があった。

 

 

ハジメ:(アイツは、来ない。)

 

 

そのまま、釣竿で木々を伝いながら、

二人のもとに到着する。

一瞥して、すぐにその状況を把握した。

 

乃依と雷との2v2。

しかもかなりの劣勢に見える。

 

かぐやが自我を出しすぎているのは、

いつものことだが、

問題はいろはだ。

完全にティルトしている。

やはり、彼女のパフォーマンスを押し上げるのは、不可能なのか…

そう思えた。

 

だが、ハジメの目は死んでいなかった。

 

 

ハジメ:(ここで――――――)

 

 

そう念じながら天を仰ぐ。

その思いが通じたかのように、

空からとある人物が登場した。

 

 

ヤチヨ:「彩葉! かっこいいけど

     かぐやとヤッチョもついてるからさっ、

     頼って~」

 

 

そんな言葉をいろはに投げかけるヤチヨ。

タイミングばっちりだ、

思わずハジメの口から笑いが溢れる。

 

試合前のハジメの耳打ちは

このことについてだった。

…いろはを救うのに最も適した人間、

それは間違いなくヤチヨだ。

いろはの背中からも

ヤチヨの言葉が響いているのが分かった。

 

 

ヤチヨ:「それから――――」

 

 

ヤチヨは言葉を続ける。

それは、ハジメにとって意外な一言だった。

 

 

ヤチヨ:「ハジメのこともね。」

 

 

その言葉にハッとするいろは。

意を決したように振り返ると、

背後のハジメと目が合った。

 

 

いろは:「任せた!」

 

ハジメ:「…承った。」

 

 

一瞬、ヤチヨの言葉は素直に聞くのかよ、

なんて嫌味が彼の頭をよぎったが、

すぐに消えた。

 

やはり、頼られるというのは気分が良いものだな。

ジャンプ台に向かう二人と

入れ替わるように

乃依・雷の前に出る。

 

すかさず彼女らの背を目がけて

矢を放つ乃依。

が、それをハジメは釣り糸で絡め取って墜とす。

 

 

ハジメ:「お前らの相手は俺だろ。」

 

 

そう言って柄にもなく凄んでみるハジメ。

だが、黒鬼の二人がそれを意に返すことはない。

 

 

乃依:「…流石に冗談でしょ?

    一回戦のこと覚えてないの?

    あんときは、“将軍ミニオン”あり。

    それでも俺達の優勢だった。

    勝負になんないよ。」

 

 

彼の言うことは尤もだった。

が、ハジメもその言葉にに怯むことはない。

 

 

ハジメ:「まあ、普通に考えたらそうだな…

     けど―――」

 

 

そう言って右手に持っていた釣竿を投げ捨てるハジメ。

それは勢いよく近くの岩に突き刺さった。

 

 

ハジメ:「どうしても、退けない時がある…

     今がその時だ。」

 

 

左手に持っていた短刀を右手に持ち替え、

二人を見据える。

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

乃依′s View

 

 

かぐやといろはが見えなくなった後のこと。

 

俺とハジメの荒々しい問答とは裏腹に、

その戦闘は、

静かなものだった。

 

俺が矢を放ち、

ハジメが受ける。

ステルスを起動して俺を攻撃しようとするも、

雷のプレッシャーから攻めきれず、

再び俺が矢を放つ。

 

その繰り返しだった。

 

俺達に焦りはない。

なぜなら、この勝負、

普通ならすでに勝っているからだ。

 

じきにフリーの帝が、

相手の城を落とすだろう。

 

もしかしたら、かぐやといろはの二人が

攻めこむ帝の阻止に

間に合うかもしれない。

だが、そんなことは問題ではない。

 

彼と彼女らの実力差は、

ここまでの戦闘で分かりきっていた。

万に一つも帝が負けることはない。

 

つまり、俺達はここでちんたら

時間を稼いでいれば良いというわけだ。

 

 

乃依:(ま、“普通なら” なんだけどね~)

 

 

しかし、この試合がそんな結末を迎えないことを

俺は薄々気付いていた。

多分、雷も気がついているだろう。

 

帝アキラとは、“夢”を見せる存在。

 

エキシビションマッチの最終戦。

そんな場面で

ただただ普通に勝つ、なんて

そんな展開を彼が望むわけはない。

 

彼のそんなところ、

俺は嫌いじゃなかったが、

自分までそうありたいとは思えない。

 

エキシビションマッチであっても、

勝負は勝負。

負けるのは嫌だ。

 

確実に勝つ。

そのためにはどうするか。

決まっている、

 

 俺達が、天守を取る。

 

雷にアイコンタクトをとると、

彼がやれやれといった感じで

目を伏せた。

意図は伝わったらしい。

 

俺はさっきと変わらぬ所作で矢をつがえる。

が、つがえられたそれは、

さっきまで放っていたそれとは別物。

二回戦で不発だった

大規模を氷結させる魔法の矢だ。

 

これまでの攻防で、

何気なく周囲の木々を散らしていた。

ハジメがこの矢の正体に気付いたとて、

その衝撃を和らげる手段はない。

この一撃で確実に彼を葬る。

 

俺は、勝ちを確信して彼を見た。

 

 

ハジメ:「待ってたよ、それが来るのを…」

 

乃依:「!」

 

 

矢が放たれた瞬間、

そんなことを言い放つハジメ。

同時に彼はその短刀をこちらに投擲する。

 

 

乃依:(無駄だ、矢は既に放たれた。

    ここからあの大規模氷結を回避する方法など…

    ない。)

 

 

そう、考えていた。

 

だが、

矢が直撃する直前。

彼の左手にキラリと光る何かが見えた。

 

あれは、釣り針……?

まさか…!

 

俺の予想通り、彼はそれを俺の放った矢に投げつけた。

 

接着の瞬間、

それまで不可視だった糸が現れる。

高い木の幹を経由していたそれは、

どうやら極めて短い長さかつ弾性を持って

顕現したようで

大きくしなっていた。

すぐに釣り針は木の幹の位置まで

振り戻され、

俺の矢を天高く舞い上げた。

 

 

乃依:(この軌道は…

    まずい…)

 

 

天高く舞い上がった俺の矢は、

そのまま地面に突き刺さり、

ここら辺一帯を氷結させ、周囲に大ダメージを与えるだろう。

それは俺とて、例外ではない。

 

すぐに回避行動をとろうとするも、

投げつけられた短刀への対処のせいで、ワンテンポ遅れる。

 

その隙に距離を詰めてくるハジメ。

それは、これまでに見たことのない速度だった。

 

 

雷:(クールタイムの長いブリンクスキル!

   ここまで隠していたのか…!)

 

 

咄嗟の新スキルに雷のカバーが遅れる。

ハジメはそのまま徒手空拳で、

俺の自由を奪った。

 

 

ハジメ:「まずは、一人…」

 

 

そのまま、氷結の範囲内に投げられる。

落下しながら彼を見つめる俺。

あまりの出来事の速度感に、

少し呆気に取られていたが、

こうなって尚、勝敗は変わらないと確信していた。

 

 

乃依:「ま、タダじゃ終わんないけど…」

 

ハジメ:「!」

 

 

空中を進む最中、

俺はとあるもの目がけて矢を射る。

 

直後に、巨大氷結が炸裂する。

ダウンする。

俺は残機を使い果たした、

リスポーンはできない。

 

が、俺達は二人だ。

 

 

乃依:「後は頼んだよ。」

 

雷:「任せろ。」

 

 

そう言って距離を詰める雷。

ハジメは剣を構えて応戦しようとするが、

その手には何も握られていない。

 

死に際に放った乃依の矢。

それは、彼の短刀を射貫いており、

すぐには拾えない位置まで、

それを弾き飛ばしていた。

 

釣竿の弱みが出た瞬間である。

短刀さえおとしてしまえば、

ダメージを与える手段がない。

 

勝敗は決した。

やはり戦いは数がモノを言う。

2v1では、最初からハジメに勝ち目はなかったのだ。

これで、雷の勝ち…

 

 

 

のはずだった。

 

凄まじい雷鳴が鳴り響く、

かに思えた舞台は、

未だ静寂に包まれていた。

 

結論から言うと、

雷の詠唱は完了しなかった。

その途中で、彼の体が引き裂かれたからだ。

 

雷が振り返ると、

そこにはあり得ない光景があった。

 

悠然と立っているハジメ。

その右手には、

あるはずのない第三の武器、

隠すことなど不可能なほどの長身の刃が握られていた。

 

 

ハジメ:「……伊邪那美(イザナミ)。」

 

 

そういう彼の姿を雷のカメラ越しに見ていた。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

いろは’s View

 

時刻は、ジャンプ台からTOPの櫓に跳んだ後のこと。

 

三回戦に及ぶこの試合、

その最終局面ということもあって、

あたりは夕暮れに沈みかけていた。

壊れた鳥居が辺りに散らばったステージを進む。

 

正面に人影が見えた。

今日だけで何度も力の差を突き付けられた相手、

最大の敵にして、

実の兄”酒寄朝日”の姿がそこにはあった。

 

 

アキラ:「遅かったな。」

 

いろは:「なんでこっちに?

     ミドルから天守に行けば勝ちだったんじゃね?」

 

 

それは事実だった。

つまるところ

彼は、意図的にここで一騎打ちをすることを選んだということだ。

 

 

アキラ:「”Black onyX”はなぁ、

     みんなに夢 見せなきゃいけねえんだよ。」

 

 

束の間の静寂が訪れる。

地面を蹴るタイミングは、同時だった。

 

 

いろは:「ふっ…!」

 

かぐや:「はっ!!!」

 

 

相手の武器は棍棒。

機動力の差を生かし、手数で攻める私。

体勢を崩して、

かぐやの重い一撃を当てられるだけの隙を作ろうとする。

 

 

アキラ:「へへッ」

 

 

が、そんな攻撃を難なくいなす相手。 

棍棒の取り回しの悪さが不利とみるや否や、

私たちとの交戦手段を体術に切り替えてきた。

 

 

かぐや:「うぅ~んっ!」

 

 

蹴り飛ばされていたかぐやが、

起き上がり様に、

溜めのある広範囲スキルを放つ、

 

閃光とともに周囲が爆ぜた。

が、これも当たらない。

 

 

かぐや:「よけんな~!」

 

 

活路を見出すべく、

私は攻撃を重ねる。

ワイヤーを使ったより高機動の一撃。

 

完全に死角からの一撃であったはずのそれも

間一髪で受けられてしまった。

再びワイヤー機動で距離を取ろうとするも、

今度は逆に相手に体を掴まれて、

壁に投げつけられる。

 

 

いろは:「ぐっ…!」

 

 

地べたに這いつくばる私。

 

かぐやと戦う彼の様子を見て、

思わず見惚れてしまう。

ふと昔のことを思い出していた。

 

 

いろは:(上手だな~

     この人 これずっとやってんだもんな~

 

     …勝てんわ)

 

 

 

 敗北。

 

 

 

その二文字が頭をよぎる。

だが、今なら素直に諦められるように思えた。

 

 

かぐや:「うりゃ~~~

     うお!!」

 

 

そんなとき勢い余ったかぐやが、

相手を通り越して私のほうまで転がってきた。

 

 

かぐや:「ちくしょう~~~~ へへ

     だが勝つ!!」

 

 

そう言って笑いかけてくる。

その無垢な表情を見て、また思い出す。

今度はいつかの自分、そのときの原始的な感情のことを。 

 

 

いろは:「ふっ」

 

 

思わず笑みがこぼれる。

もう迷わない。

自分で、自分の限界に線を引かない。

 

私は意を決して立ち上がった。

最大の敵を前にして、威勢を張って言ってのける。

 

 

いろは:「もし うちらが勝ったら

     そっちもお願い聞いてくれんだよね?」

 

アキラ:「…フッ」

 

 

そんな言葉を聞いて彼は笑った。

 

私はかぐやと目を合わせる。

そうだ、私は一人じゃなかった。

 

 かぐやがいる。

 

…それに──────

 

私たちは勢いよく走りだす。

相手を中心に大きな円を描くように、

それぞれが別の方向に駆けた。

 

決め手(フィニッシュ)"のイメージはある。

これまで何度も見てきた、

かつての自分も苦しめられた”あの技”で決める。

 

 

いろは:「んんっ…!」

 

 

私は勢いよく飛び掛かる。

その手に持っているのは、

先程まで持っていた二刀一対の武器ではない。

 

 

アキラ:「武器の入れ替え ハッ!」

 

 

予想外の一撃に思わず仰け反る相手。

この隙を逃さない!

 

私は躊躇うことなくその大槌を投げつける。

一見すれば、リスクの多いその攻撃。

だが、確信していた。

 

 彼女ならわかっている、私がこうすること。

 

 

かぐや:「やっ えい!」

 

 

辛くも、投擲から逃れる相手。

大槌はそのまま空中に投げ出された。

が、すぐさまそれをつかみ取るかぐや。

すぐに私の双剣を投げ返す。

 

それを受け取った私は、その片方を相手目がけて投げつける。

 

なるべく自然に、

相手を狙った一撃のように見せた。

それは、躱され背後の壁に突き刺さる。

 

武器の片方を欠いた私に、

相手は容赦なく銃撃を浴びせてくる。

どうやら私と距離を取りつつ、

あくまでかぐやをマークするようだ。

 

 

かぐや:「でりゃ~~!!

     ぐあ、痛ッ!!」

 

 

片武器しか持たない私では、

満足にかぐやを援護することすらできない。

 

天守を取り切るうえでかぐやの突破力は不可欠。

加えて、これまでの三戦。

かぐやが主力(メイン)で、私が補助(サブ)

そんな戦い方しかしてこなかった。

 

当然、彼は、"決め手(フィニッシャー)"をかぐやだと決め込んでいた。

 

私の援護なしでは、

その力の差は歴然。

すぐにかぐやは地面に放り出され、

そこに、彼の銃口が突きつけられた。

 

 

アキラ:「ゲームセットだ…!」

 

 

そう言う相手、

決着がついたかに思われたその瞬間だった。

 

 

 キィィインンンン!!!

 

 

甲高い音とともに、

壁に突き刺した私の武器が発光する。

 

 

  かぐやなら…

 

 

勢いよく動き出したそれは、

相手の周りを高速で旋回した。

私の武器に取り付けられたワイヤー。

それがつながっている先は、かぐやの大槌。

 

糸が、彼の体を搦めとっていく。

 

 

アキラ:「ハンマーにワイヤー!?

     おとりはかぐやちゃん!」

 

 

 

  かぐやとなら……!

 

 

私はゆっくりと立ち上がる。

"決め手(フィニッシャー)"は、私だ─────

 

そのまま"兄"を目がけて走り出す。

 

 

かぐや:「彩葉!!」

 

 

いろは:「かぐやの考えることぐらい

     分かってるっつ~の!!!!」

 

 

そのまま彼の体を切り裂いた。

 

 

 

 

────────────────────────────────────────────

 

朝日’s View

 

 

 

 

 「鬼討ち~~~~~~!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

瞬間会場が沸く。

 

決して、手を抜いた訳ではない。

彼女…、いや彼女らの繰り出した

緻密な戦術と、

類まれなる連携が織り成した一撃だったと、

観客全員も感じているのだろう。

それ故に、この大歓声が生まれたのだ。

 

だが、正直今はそんなことどうでも良かった。

それ以上に大きな感情が自分の中を支配していた、

といった方が正しいかもしれない。

 

体が薄れゆくなか、

たった一つの言葉が漏れる。

 

 

 「…やりゃできんじゃん」

 

 

彩葉の眼を見る。

まだ、実感が湧いていないといった感じだ。

 

でも大丈夫。

 

遠くから聞こえる微かな足音。

それを聞いて、俺は目を閉じた。

 

"それ"がある限りはきっと大丈夫だから。

 

 

──────────────────────────────────────────

 

 

いろは’s View

 

 

 

まだ、ぼんやりとしていた。

歓客の声がどこか遠く聞こえる。

 

消えゆく兄の姿、

最後に何か言葉を発していたように見えたが、

何と言っているのかは分からなかった。

ただ、とても優しい顔をしていた。

 

 

かぐや:「ハア ハア ハア…

     いろは~~~~~!!!」

 

 

駆け寄ってきたかぐやの声で我に返る。

そのままかぐやが手を差し出してきた。

 

いつしかお決まりとなっていたやり取り。

最初は少し恥ずかしかったけど、

今はむしろ心地よかった。

 

 

かぐや:「2人は最強!」

 

いろは:「当然」

 

 

私は、ここにきてはじめて勝利の実感が湧いた。

 

そこからはウイニングラン。

かぐやと二人で、天守まで攻め入る。

 

どういうわけか、

黒鬼の残り面子は、

既に残機を使い果たしているようだ

短い連絡だけが彼から入ってきていた。

 

帝はまだ残機があるが、リスポーンしてからの再スタート。

いくら相手がプロといえど、

よっぽどのことがない限り、

追い抜かされることはないだろう。

 

綻ぶ気持ちを何とか引き締めてながら、敵天守を目指した。

 

 

かぐや:「いろはが危なくなったら、

     かぐやが助ける!」

 

 

道中そんなことを口にするかぐや。

それを聞いた私は、少し考える。

 

そんなこと、いつか私も面と向かって言える日が来るだろうか。

 

 

いろは:「かぐやがミスっても私は置いていく~」

 

 

今はまだこれしか出来ないけど、

いつか言える日が来たらいいな…

 

 

かぐや:「何でぇ!?」

 

 

そう言って振り返るかぐや。

その表情に思わず、笑みがこぼれた。

 

 

いろは:「プッ!

     アハハッ ハハハッ」

 

かぐや:「はっ やった~~~!!!」

 

 

夕暮れに溶けていく私たちの笑い声。

二人並んで、空を駆る。

こんな時間がいつまでも続けばいいなと、

そう思っていた。

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

黒鬼陣営リスポーン地点。

最後の残機を使って、ステージに降り立ったアキラは、

そのまま敵陣地、目がけて駆けていく。

 

が、遅い。

 

時を同じくして、

いろはとかぐやは、

まさに大将落としの目の前まで迫っていた。

 

 

かぐや:「こっからは見てて!

     かぐや大活躍!」

 

 

そう言って雑兵を蹴散らし、

大将落としに続く階段を駆け上がるかぐや。

 

 

乙事照:「これはさすがに

     かぐやが早いか~?」

 

 

恐ろしい速度で前進するアキラ。

かぐやいろP陣営が余裕かに思えた

大将落としレースは、

蓋を開けてみれば、意外にも僅差だった。

 

後一手、

黒鬼側に有効打が残っていれば、

勝敗は逆になっていたかもしれない。

 

そう、後一手──────────

 

 

かぐや:「うぇ~い か・ち・か・くぅ!!!

 

     ……あっ」

 

 

そういって大将落としに大きく振りかぶるかぐや。

勝負が決まったと思ったその瞬間。

彼女の足元が光った。

 

 

乙事照:「あぁ~ 雷の地雷トラップーーー!!!!!」

 

 

大きな爆発音とともに、

かぐやの大槌が爆ぜる。

 

 

いろは:「あ…ああ あほ!」

 

 

そう言ってかぐやのもとに駆けるいろは。

 

形勢逆転。

 

今度は黒鬼のターン。

アキラが大将落としに

棍棒を突き立てようとしたその瞬間だった。

 

 

アキラ:「…!!」

 

 

彼の首筋を一筋の剣閃が掠める。

慌てて距離をとるアキラ。

 

改めて大将落としを見ると、

そこにはある人物の人影があった。

 

 

アキラ:「…ハジメ……!」

 

 

思わず笑みがこぼれるアキラ。

 

対して何時になく真剣な面持ちで相対するハジメ。

なにかを思い出したかのように、

ゆっくりと口を開いた。

 

 

ハジメ:「そうか…朝日。

     この勝負、

     俺は()()()()()()。」

 

アキラ:「…ハッ!!!!」

 

 

両者が、

静かに闘志を燃やす。

 

 

決着まで、残りは1分を切っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




以下補足、やっぱしないぞ。

 
 終わりがぁ始まるぅ。
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