超かぐや姫!0 ~before full moon~ 作:ごーまん
よろしくお願いいたします。
ハジメ's View
全身の神経を研ぎ澄ます。
己の一挙手一投足が、敗北に直結しているという感覚。
俺は今、全身でそれを味わっていた。
負けたくない、じゃない…
かつて彼が言っていたのは、
こういうことだったのだろうか。
侮っていたわけではない、
しかし、こうなってみて改めて実感した。
彼は、常に勝敗の中にその身を置く者。
この重圧に日々耐えているのだ。
考えられないな、俺にはごめんだ。
そんなことを考える。
だが同時にこうも思った。
けど、今日だけは、
今この瞬間だけは、勝たなきゃいけない。
たかが、エキシビションマッチ。
最初はそう考えていた。
いや、今もその気持ちは変わっていない。
先の”鬼討ち”、
見ている観客たちに届けたかったもの、
届けなきゃいけなかったものは、きっともう届いた。
だからここからは俺の"エゴ"だ。
この舞台を、最高の形で締めくくらせる。
雲一つない最高の思い出として、彼女に届ける。
それが俺───かぐやを切り捨てる男にできる
唯一の手向けだ…。
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雷の地雷で爆ぜたかぐやの大槌、
その修復から
大将落としを飛ばすまでの時間。
ざっと30秒。
時間稼ぎ
そんな思考がハジメの頭をよぎったが、
すぐに捨てた。
受け身になって渡り合える相手ではない。
今ここで、コイツを…
ツクヨミ最強の男を、仕留める。
そう決心する。
思うや否や、
ハジメは、左手に持っていた釣竿を
朝日目がけて投げる。
と同時に、その武器の効果を発動した。
《廻転》
すぐに糸が射出され、朝日の体を搦め取ろうとする。
それは…もう見た。
そう言わんばかりに、高く跳躍してそれをかわす朝日。
だが、ハジメは攻撃の手を緩めない。
今度は右手に握っていた短い刀を、地面に突き刺す。
《国産み》
短刀の切っ先が突き刺された木製階段、
その性質を元に、
夥しい量の木の根が生成され、
空中に放り出された朝日目がけて襲い掛かった。
ハジメは自ら生み出した木の根に隠れて、
隠密スキルを使い姿を隠す。
だが、その一瞬のわずかな所作を
朝日は見逃さなかった。
アキラ:(右手に持っていた短刀を左手に持ち替えた、
…決まりだな。)
そう言って朝日は、
ハジメの描く"勝ちへのシナリオ"を確信する。
彼は、ここに来るまでに
乃依と雷に言われていたことを思い出した。
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雷:「ヤツの肩にかかっている
おそらくあれがタネだ。」
正体不明の長刀。
それによって斬りつけられ、
ダウンした張本人である雷がそう語った。
あれほどの長物、
彼の持つ小さな
不可能であるということは明白であったが、
その現象には覚えがあった。
アキラ:「ああ、ヤチヨちゃんのメンダコか…」
その既視感の正体は、
ヤチヨがライブシーンで度々見せる
胸のメンダコから番傘を取り出す場面だった。
魚籠とメンダコ。
使用者が使用者だ、
おそらく元は同じ組成なのだろう。
乃依:「でも、武器本数の制限のほうは?
そもそもなんで3本も持ってこれてんの?」
そう言って
周囲を取り囲む透明な壁を
げしげしと踏みつける乃依。
不服そうな様子が声から伝わってきた。
雷:「…これはあくまで憶測だが、
あの長刀は、あくまでスキルのような扱いで
実体はないのかもしれない。
斬りつけられた時の感覚が、
武器によるものというよりも、
メイジたちが使う魔法のようなものに近かった。」
アキラ:「…なるほどね。
それだけ分かれば、アイツが出来そうなことはだいぶ絞れるな…
ありがとう、これで負けねぇ。」
雷:「…俺たちの仇、頼んだぞ。」
そう言って乃依に視線を送る雷。
その視線を感じ取った乃依は、
一瞬顔をしかめるも、
諦めたようにそれに応じる。
乃依:「しょーもな…
ファイト~…」
そんな仲間たちの声を聞いて、
自然と虎車のハンドルを握る力が強くなった。
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アキラ:(今のではっきりした…
ハジメの”
朝日はそう確信する。
雷の話通り、
彼の長刀をスキルのようなものだと仮定すると、
それは、当然
おそらく武器を顕現させると、
その時間ごとに少しずつ
となれば、
この柄にもない、
大規模な木の根による攻撃も説明がつく。
それは、ハジメが朝日に対して
もう長刀を出すだけの
思わせるための
それさえ分かれば、朝日の残された問題は一つだけ。
姿を隠したハジメがいつ現れ、
いつ彼を攻撃するのかだけだ。
木の根の攻撃を受けながら、
その瞬間を待つ朝日。
圧倒的にハジメ側が有利な読み合いな筈、だった…
しかし────────
アキラ:「ここ、だろ?」
ハジメ:「…!」
瞬間、背後から姿を現したはずのハジメのほうに、
難なく向き直る朝日。
ハジメの顔には驚きの色が見える。
案の定、彼の右手は魚籠の前、
今まさに、そこから刀を引き抜くと言わんばかりに
虚空を握りしめていた。
アキラ:「らしくないな。
勝負を急いだか…?
でも…」
そう言って素早く一閃を繰り出す。
次の瞬間、
ハジメの右手が宙を舞った。
アキラ:「これで決着だ…!」
そう言って
今度はハジメ本体に刀を振り下ろす。
勝利を確信した朝日。
だが、そんな彼に返ってきたのは意外な言葉だった。
ハジメ:「ああ…
俺の”勝ち”だ…」
ドス…
鈍い音が響く。
何かが人の腹を貫いたような音。
まさか…
朝日は、ゆっくりと視線を下ろす。
するとそこには、
ありえない光景が広がっていた。
先の右手への斬撃、
それ故に、彼は抜けなかった筈だった。
だがなぜか
そこには、顕現している…否、できるはずのない一振り、
”
アキラ:「な、んで……」
ゆっくりとハジメが口を開く。
彼は、左手に持っていたもう一つの愛刀
”
こんなことを口にした。
ハジメ:「”
その一撃が決定打となった。
と同時に、フィールド全体に、大きな爆発音が鳴り響く。
すぐに実況席から大きな声が上がった。
「試合終了~~~~~!!!!!!!!!
勝者 かぐやいろPチーム~~~~!!!!!!」
その音は、いろはとかぐやが天守を落とした音だった。
ハジメ:「…かった……」
自らの勝利を告げるその声を聞いた途端、
彼は、そのままその場に倒れこんでしまった。
以下余韻。
諸々の言い訳は、次回のここでやると思います。
あらした。