超かぐや姫!0 ~before full moon~   作:ごーまん

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origin

早朝、いつもと変わらぬ部屋。

 

雑多に並べられた電子機器群の中をかき分けて、自分の居場所を作りだし、

無心でキーボードに指を走らせる。

こんな作曲作業ももう何度目だろうか。

しかし、苦痛に感じることなどはこれまで一度もなかった。

 

そんな日々も今日で終わりだと思うと、

なんだかぽっかりと胸に空いたような感覚に襲われる。

 

 

ハジメ:「全く、湿っぽいのは好きじゃないんだが…」

 

 

ポリポリと頭をかく。だが不思議といやな気分ではなかった。

 

作業の合間、部屋中の隅々にまで目を向ける。

些細な物の配置、それらについた傷でさえ、

見ていると当時の記憶が鮮明に蘇ってきた。

 

思い出が消えない。

 

だが、そんな気持ちはここだけで十分。

努めて俺は、この気持ちが外、ひいてはこの曲へと漏れ出ないように心がけた。

 

この先に、俺は要らない。

彼女の、八千代の祈りが実を結ぼうとしている。そんな彼女の背中を押してあげられるような、そんな曲にしたかった。

 

 

ハジメ:「っし…。できた。」

 

 

曲を作り上げる。

我ながら会心の出来だ。

と同時に、正真正銘これで終わり。

その実感が込み上げてきた。

 

楽しかった。

 

そういって目を細める。

これまでの8年間。文字通り夢のような日々だった。

けれど、夢とはいつか覚めるものだから。俺も現実に戻らなくちゃな。

 

パタリとノートpcを閉じる。

部屋を後にするべく、俺はその場に立ち上がった。

少し悩んだ結果、一通のメールを送信する。

やっぱり会えないな、また揺らいでしまいそうだ。

 

 

ハジメ:「…元気でな。」

 

 

そう言って俺は部屋をあとにした。

 

――――――――――――――――――――――

 

 

あの日もいつもと変わらぬ朝だった。

結末の瞬間はもっと劇的なものだと、なんとなくそう思っていたのだが…

小さな模索の積み重ねが、夢を現実にするのだろうか。

 

俺は彼女を呼ぶために部屋を出た。

 

origin.

 

 

ヤチヨ:「おはよ~ハジメ!

     ちょっと聞いてくれる?

     今朝のKASSENでの味方の野良がさ?もううるさいのなんのって…

     こっちは人生の大先輩やぞ――――」

 

ハジメ:「あ~っと、その話も大変生産性があってよろしいと思うんですけど…

     ちょっと来てもらってもいい?

     見せたいものがあるんだ」

 

 

そんな俺の言葉を聞いて、思わず口をつぐむヤチヨ。

ゆっくりと俺に問いかける。

 

 

ヤチヨ:「…もしかして、できたの?」

 

ハジメ:「ああ、完成した。多分だけどな…」

 

ヤチヨ:「それでも凄い!…ってそんなこと言われてもだよね。

     分かった、すぐ行く!今からでも平気?」

 

ハジメ:「ああ、そうしてくれると助かる。

     この状態で待たされるのは、流石に生殺しが過ぎるからな。」

 

 

そう言って部屋に戻り、頭にガジェットを装着する。

ここに来て心臓が早鐘を打ち始める。

目を開けばすぐにツクヨミに繫がるはず。

 

居るはずなんだ、彼女が。

俺は、プログラムを実行する。

 

 

 

 ザパァン

 

 

水の音。

顔を上げるとそこには見渡す限りの水平線が。

この世の元とは思えない幻想的な風景。

どうやらこの段階まではうまくいっているらしい。

 

俺はゆっくりと立ち上がる。

我ながらよく出来たテクスチャだなとぐるりと周囲を見渡そうとしたときだった。

 

神秘的な光景だった。

ゆっくりと姿を現す一人の女性。

明らかに人知を超えたその美貌は、このちんけな装置を通してでは

到底測りきることなど不可能だった。

 

 

ゆっくりと目を開ける彼女。

目が合った…と思ったら声を出して笑い始めた。

 

 

ハジメ:「な、なんだよ?

     何か変なところでもあったか?」

 

ヤチヨ:「だって、ハジメのその髪色、

     なんかお爺ちゃんみたい」

 

 

忘れてた、なんか現実の見た目そのままだと味気ないからとか言う理由で、白髪にしていたのだ。

だから決して、思春期特有の好きな子に影響されるやつではない。

 

 

ハジメ:「俺のことはいいだろ?

     それよりもどうだ、結構いいと思ってんだけど?」

 

 

俺の夢見ていた世界。

こんな自分だけの世界で、自由に生きられたらとそう願っていた。

 

 

ヤチヨ:「う~ん……

     悪くないんだけど……」

 

 

そう言って人差し指を立てて、何やら思案しているヤチヨ。

何か不満があるのだろうか。

そんな風に考えていると、

次の瞬間、俺の目の前に大きな鳥居が現れた。

見れば、そこには“月夜見”と書かれている。

 

 

ヤチヨ:「うん! これで良し!」

 

 

そう言って今度は俺のほうに駆けてくる。

そのまま、俺の両手をとった。

俺は初めて彼女に触れた。

 

 

ヤチヨ:「ここは、初めて私とハジメが触れた場所。

     そして、皆が初めてツクヨミに来たときに訪れる場所にする。

     こんなにきれいな場所だからさ、

     きっと皆好きになってくれると思うな~」

 

そうだった、この娘はいつだって居るんだ。

俺の世界だと思っていた場所に、こうやって変化を加えて、

でもそれが、不思議と心地いい。

 

 

ヤチヨ:「ありがとう、ハジメ。

     この場所を、ツクヨミを作ってくれて、

     私に居場所をくれて。」

 

 

そう言うヤチヨ。

十分だ、俺は満足した。

いつまでも、こんな日々が続けばいいと思っていた。

 

 

でも、そんな夢からもいい加減醒めなくちゃな…

 

 

ハジメ:「こちらこそ、今日までありがとう。

     ……これでお終いだ。」

 

 

俺は、静かにそう告げた。

 




以下補足

いや呟くことねえけど
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