超かぐや姫!0 ~before full moon~   作:ごーまん

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Ex-

ヤチヨ′s View

 

 

 

 

目が覚める。

いや、スリープ状態から起動したといったほうが正しいかもしれない。

 

AR眼鏡を通してしか見えない

私の電子の体は、

今はあまり使っていない。

その代わりにタブレット端末を介して、世界とつながっていた。

 

いつも遅くまで起きていることの多い彼は、

私が起動した後も眠っていることがよくあり、

そんな彼に声をかけることが、もう長いこと日課になっていた。

 

今日も相変わらず寝ているのだろうかと

部屋を覗いてみると、

そこに彼の姿はなかった。

 

別にそれ自体は珍しいことではなかった。

普段滅多に外に出ない彼ではあったが、

それでも、部屋を開けること自体はそう驚くことでもない。

 

 

ヤチヨ:「ありゃ…こういうときに限っていないんだよな~」

 

 

驚くようなことではないのだが、

残念ではあった。

 

今日は、いつもとは事情が違ったからだ。

私から彼に伝えたかったことがあった。

内容は勿論昨日のKASSENについて。

本当は昨日のうちに話しておきたかったのだが、

彼はヤチヨカップの優勝者発表の会場には来ていなかったうえ、

私も、発表後いろはとかぐやのもとに行った後

すぐにお眠の時間が来てしまったから

どうしようもなかった。

 

でも、どうしても伝えたい。

昨晩、怒涛の展開の連続で、大盛り上がりのまま幕を閉じたヤチヨカップ。

目を閉じれば、今でも、あの鳴りやまぬ歓声が鮮明に思い出せる。

あの興奮は一晩経った今でも

決して色褪せなかった。

 

 

 

 

ただ一つ気がかりな点もあった。

それは、私が彼の外出について何も聞いていないということ。

こういう場合、彼は私におおよその予定を伝えてから出掛けていたのだが…。

 

少しばかりの違和感を覚えたが、

それは何か行動を起こすまでには至らなかった。

何しろ今は時間が惜しい。

コラボライブへの用意をしなければならない。

八千年間待ち望んだ瞬間、例え運命によって

その行く末が決まっているとしても

決して手を抜くことはできない。

 

そして何より、私自身が二人とのライブを楽しみにしていた。

それで、

このライブを悔いなく終わることが出来れば、

きっと今抱いている私の気持ちにも素直になれる…

そんなふうに考えていた。

 

 

ヤチヨ:「……」

 

FUSHI:「ヤチヨ?

     どうかしたのか?顔赤いけど…」

 

ヤチヨ:「うぇ…!?

     な、なんでもない! なんでもないよ!!」

 

 

そう言ってブンブンと手を振って誤魔化す。

いかんいかん、気が緩んでいた。

目先のことからしっかりと取り組んでいこう。

まずは、コラボライブから。

そう意気込んだ矢先であった。

 

一件のメールを受信していることに気付いた。

なにやらファイルが添付されている…音声ファイル?

 

どうやらそれは今朝、ハジメから来ていたものだった。

 

その内容を読んだ彼女は、しばらくその場で立ち尽くした。

その後、彼が部屋に帰ってくることはなかった。

あのとき感じた僅かな違和感は、最悪の形で現実となった。

 

私は、今度こそ間違えてしまったのだろうか。

いや、あの時も正しい選択をしたわけではない。

 

ずっと気づいていたのに、

ただ何もせずにいた。

傷ついていると知っていながら、

ただ甘えていた。

 

今までずっと逃げていた、

そのつけが回ってきたのかもしれない。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 Ex-

 

 

ヤチヨ:「…え、それってどういう……」

 

ハジメ:「ああ、そのなんだ?

     べつにそんな重い意味じゃないぞ?」

 

 

場所はツクヨミ、厳密にはその開発初期段階。

初めて招かれて、訪れたその場所で

ふいに投げかけられた想定外の言葉に、

私は動揺した。

そんな私の様子を汲み取ったのか、

彼は明るい口調でそう告げた。

 

 

ハジメ:「えと、だからその…

     今日でツクヨミの開発は終わって、

     爺さんとの約束も果たしたって訳だろ?

 

     あとは、このノウハウを売って

     開発と運営をどっかの会社に委託すればいい

     だからお終いってだけだ。」

 

ヤチヨ:「…出て行くつもりなの?

     あのアパートから」

 

ハジメ:「まあ、そうなるな…」

 

 

そう言って肩を竦める彼。

彼の言っていることはもっともだ。

理解は出来る、

出来るのだが納得は出来なかった。

 

 

 私もついていくね。

 

 

そんな言葉は、喉に引っかかって出てこない。

 

 

…何でだろう。

 

どうして私は、ついていこうとしているのだろう。

どうしてこの言葉を素直に告げることが出来ないのだろう。

 

何か、告げないと…

 

必死に頭を回転させる。

なんとかひねり出した言葉は、卑怯なものだった。

 

 

ヤチヨ:「なんで…?」

 

 

…分かっているそんなこと。

彼の気持ち。

気付いていない筈がなかった。

私はずっと気付かないふりをしていた。

 

 

ハジメ:「俺が居る理由がないしな…

     ま~なんだ、

     他にもやりたいことが出来た…っていうか、

     気分転換、的な?」

 

 

そう言って頭をかく彼。

意図的に明るく振る舞っているのが、

よく分かる。

 

 

私はどうしたいのだろう。

ふと考える。

彩葉のこと、そしてかぐやのこと。

 

会いたい

 

その気持ちは確かにある。

それだけが、この長い月日の間、私を待たせたのだから。

 

でも、その後は?

二人と会った後、

もっと言えばかぐやが月へ帰ってしまった後。

私はどうしたらいいのだろうか。

 

初めて、幼い彩葉を見たときのことを思い出す。

私は、その時、それでも彩葉と一緒に居たいと言えるだろうか。

彩葉を変えた本当のかぐやは

月でなお、輪廻を巡っているというのに。

 

…分からない。

まだ、答えは出せない。

私が誰なのか、

かぐやなのか、それともヤチヨなのか。

今この瞬間も、言い切れないでいた。

 

 

だったら、このままここでお別れするべきなのだろう。

それが彼のためだから。

それに、きっとこれは今生の別れではない。

立場上今後も顔を合わせることがあるだろう。

 

これ以上、彼に甘える訳にはいかない。

 

そう覚悟を決めたはずだった。

笑ってお別れできると思っていた。

のに…

 

 

ヤチヨ:「…私さ、ライバーしたいんだよね。」

 

ハジメ:「…?ああ」

 

 

何を、言っているのだろう。

いや、分かっている。でも、それは違う。

 

 

ヤチヨ:「知ってる?

     ライバーって結構大変なんだよね~

     オリジナル曲とか?

     スケジュール管理とか?

     事務的なことって私全然で…

 

     だから、さ?」

 

ハジメ:「…」

 

 

俯く彼。

葛藤がうかがえる。

きっと分かっている、これから告げられること。

それを受け入れることが、彼にとってどういうことか。

 

私が、止めるべきなのだ。

 

でも、その言葉は止められなかった。

 

 

ヤチヨ:「…助けて?」

 

 

口に出した瞬間、

自分でも驚いた。

だってそれは、八千年前の私、

“かぐや”の言葉だったから。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 手紙

 

 

 

ヤチヨへ

 

こんな形で告げることになってしまって申し訳ないけど、

俺はもうあのアパートに帰ることはないです。

 

急な話で本当はあって話したかったんだが、やっぱり対面はキツいわ。

ちょうど今急いで対処しなけりゃいけない問題にも直面してて、こうせざるを得なかった。

そんなわけでコラボライブも…ちょっといけないかも?

 

せっかくあの日、渋々プロデューサーを引き受けたのに、

よりにもよってその集大成を見届けられないってのは中々悲しいが、まあしょうがない。

 

代わりと言っては何だが、最後に歌を作った。

結構気に入ってんだ、

ちょっと湿っぽすぎるかもしれないけど…

是非歌って欲しい。

ヤチヨの門出を祝うような、これまでの全てを注ぎ込んだ、そんな曲だから。

 

それじゃあ、長くなんのもあれだしこれくらいで。

 

元気でな、バイバイ。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ヤチヨ′s View

 

 

 

 

 曲。

 

添付されていた音声ファイルに目を向ける。

 

 「otogibanashi.mp3」

 

そう書かれたファイルを開いて中身を確認する。

流れてくるメロディ、その歌詞に触れ

ぽつりと呟く。

 

 

ヤチヨ:「…全部、わかってたんだな~」

 

 

思わず涙がこぼれた。

罪悪感。

彼がどんな気持ちでそばに居てくれたのか。

私がどれほど甘えていたのか。

この歌詞を見れば、それが痛いほど分かった。

 

 

ヤチヨ:「私がやるべきこと…」

 

 

聞き終えて、そんなことを考える。

彼が自身の気持ちを押し殺してまで

作ってくれた舞台。

私が泣いていて、台無しにするわけにはいかない。

 

笑って最高のライブにする。

それが私に出来ることだ。

 

 

ヤチヨ:「…でも、その後は?」

 

 

私の、今の気持ち。

やっと分かった。

私が誰なのか、どうしたいのか。

 

でも、今となってはもう果たせない。

やっぱり、望んだものは手に入らない。

そんな“運命”なのだろうか。

 

 

ヤチヨ:「…いや、違う。」

 

 

私はゆっくりと顔を上げる。

もう、過去の甘えていただけの私ではない。

 

 

ヤチヨ:「私が、ハッピーエンドに、する…。」

 

 

そうだ、ここで終わりじゃない。

この話には、まだ続きがある。

 

そこで彼の曲と目が合った。

「otogibanashi」

これは私のこれまでの物語、だった。

 

 

ヤチヨ:「今度は、私が彼に届けるから…」

 

 

そう言ってその曲名の頭に、

大きく付け加えた。

 

この曲は、

これまでの物語じゃない、

 

これは、この先の物語――――――

 “Ex-otogibanashi” なんだ。

 




以下補足

Ex-otogibanashiの歌詞について、
どのようにお考えでしょうか?

ある人は、「こんな歌詞、ヤチヨもう言うてもうてるやんw」と言い、
ある人は、「いや、この歌は、作品そのものを歌っている曲だから、誰が作ったとかではないよ。」と言う。


そんなんでいいんですか?
それってハッピーですか?

私はそう言いたい。


この手の曲の歌詞って、なんかめっちゃメタいですよね。
一番は劇中で使うから、まあまあみたいな感じでも、
二番から急に、ええ?これネタバレかよ?みたいなのって
お決まりな気がしますね。

かくいうEx-otogibanashiもその一つで、
それはもうすんごいメタい。

こういうの見たとき、やっぱり普通に引いちゃいますね、
いや、これは言い過ぎやろ…ヤチヨが作ったんちゃうんか?
みたいなね。

コラボライブでの二曲。
それぞれが一曲ずつ持ち込んだとすると、
ワールドイズマインは明らかに、いろかぐ側が持ち込んでますよね?
お姫様とかモロかぐやのことだし…

となると新曲のEx-otogibanashiはヤチヨ側から持ち込んだことになるのですが、
後の再会で彩葉に「忘れてもいいよ?」なんて言ってるヤチヨがこんな曲作るかなあ?

夜しか眠れませんでした。
でも、考えた末に答えに辿り着きました。
それは、彼女のそばにいた人が、彼女のことを慮って書いた歌詞という解釈ですね。

その時、俺に電流走る。
ただ、主人公が考えたのではなく、ヤチヨ側からもアプローチがあれば、
これ実質入刀だろ、と思ってこうしました。

前にこういう設定を、実際に本文中で明言するのは良くないかもと言った気がしますが、
今日だけは無礼講。
特別な戯れ言
Ex-yotabanashiでした。

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