超かぐや姫!0 ~before full moon~   作:ごーまん

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“座標”

 

いろは′s view

 

あのミニライブから早2日ほど経過したある夏の日。

 

例年通り、私は、綿密に練られた夏休みの予定に沿って、最高効率で成果を上げる充実した日々を送っている……筈だった。

 

か:ね~?いろは~~?あそぼ~~?

 

い:遊ばない!

 

そんなことを考えていると、その張本人が話しかけてきた。私の返答を聞いて、ウェエエ!??と声を上げ、くねくね駄々をこねている。全く、こんなに断っているのに、いい加減慣れないのだろうか?

 

い:邪魔しないって約束したでしょ?

それに、かぐやだって、やることあるんじゃない?

 

そういって、ちゃぶ台の上に開かれたノートpcに目をやる。

 

すると、かぐやがブーッと不満げな表情で語った。

 

か:やってるけどさぁ~~。だって、フォロワー、ぜーんぜん増えないんだもん。いろはの歌は最高だし、かぐやちゃんも超かわいいのに、な~んで増えないのぉ~~~?

 

おろろろろと、両手で頬を掴んで愚痴をこぼす。

 

い:楽観的に考えすぎ。大体今の時代、ライバーなんて、腐るほどいるんだから、無所属の新人が、いきなりバズるなんてことあるわけないじゃん。

 

い:新人で知名度を得てるのなんて、大抵所属グループからのプッシュがあるからとかで、大抵はよっぽど運が良くないと、見てすらもらえない。いくら中身が良いからって、見て貰えなきゃ意味ないんだから。

 

そう言い放つ。私も、過去に作った自分の曲を掘り起こして、それをかぐやが歌ったあのときは、もしかして…?なんて甘い幻想を抱いていたが、もうすっかり夢から覚めてしまっていた。やはり、そう甘い話ではない。

 

強く言いすぎてしまった気がしないでもなかったが、これでかぐやも懲りただろう。

 

そう思って彼女の方を見ると、予想外のにやけ面がそこにはあった。

 

か:いろは、今かぐやのことかわいいって言った~///

 

溶け出しそうな表情でそういうかぐや。慌てて自分の発言を振り返る。

 

「いくら中身が良いからって――」

 

頭を抱える。…言っていたかもしれない。別に本心だから、問題はないのだが、本人にいうとなると話は別だ。

 

い:と、とにかく!そんなにすぐ、うまくはいかないってこと!…まぁ、生憎?中身はかわいいらしいので?続けていれば、うまくいくこともあるんじゃないですかね?知らんけど…。

 

何言ってるんだろ?なんかよくわかんない感じになってしまった。心なしか顔が熱い。耳とか赤くなっていないだろうか。

 

ちらりとかぐやを見る。

 

グググと力を込めているかと思うと、次の瞬間。

 

か:いろは~~~~♡♡すき~~~♡♡♡

 

そういって飛びかかってきた。

 

い:うわ~っ、抱きついてくるな~!

 

か:え~~?いいじゃ~ん?

 

そういって離れようとしない、正直悪い気はしないのだが、未だに慣れない。なんだかドキドキする。ふわりと鼻腔をくすぐる、そのかぐわしい香りのせいだろうか?同じシャンプー使ってる筈なんだけど…

 

まあ別に、無理に引き剥がすほどのことでもない。しばらく放っておこうかと考えた矢先であった。私の脳裏に嫌な予感が浮かぶ。この状況、覚えがある。

 

そうそれは、彼女がこの家に住むことを許可したとき、そして、つい先日、彼女のプロデューサーをすると約束してしまったとき。

 

直感が告げる。

 

“アレ”が、来る…!、と。

 

か:ね…?やっぱりいろはも一緒に歌ってぇ…?

かくやといろはの超絶美少女アイドルユニットなら、大バス確定でしょ~?

 

やはり来た!かぐやのお願い!!

 

い:やらない!やらないよ!?ここだけは譲れないから!?

 

そういって断固拒否の姿勢を取る。

 

これまで何度も苦しめられてきたそれ。だが、今回こそは…抗う……。

 

そう決心するも、やはりあの言葉を聞いてしまっては、そんな決意も揺らぎかねない。なんとか!なんとか話をそらさねば!

 

抱きつかれた状態から、必死に話題転換の手がかりを探そうと頭を振って部屋中を見渡す。が、彼女の気を引けそうなものはない。

 

万事休すか……。

 

私は、恐る恐る彼女の方を向き直る。

 

上目遣いでこちらを見るかぐや。

 

今まさに言葉が発せられようとしているその唇から、目が離せなかった。諦めて目を閉じかけていたその時だった。

 

 

 ピコッ

 

 

ちゃぶ台の上のノートpcから音が鳴った。

 

これだ!

 

い:通知!かぐや!何か連絡が来たみたい!早く確認した方が良いんじゃない!?

 

そういってノートpcのほうに注意を促す。

 

一瞬不満げな表情を浮かべたかぐやだったが、すぐに、それを聞き入れて、私から離れた。

 

ほっと胸をなで下ろす。良かった。いくらかぐやのお願いに弱いとはいえ、やはり、顔を出してライバーとして活動することは、どうしても避けたかった。そもそも、二人の顔面偏差値が釣り合ってない。それってユニット的にどうなのだろうか?

 

が、そんな平穏も長くは続かなかった。

 

か:うおおおおおおおおお!!!!!

 

思わず身を震わせる。ノートpcを確認したかぐやから雄叫びが聞こえた。

 

 

 ドン

 

 

ここで壁ドン一丁。す、すみません、うちの子が!反射的に壁に謝る。

 

い:こら!大きな声出さない!今何時だと思ってんの!?

 

か:んぇ?あ、ごめんごめん。それよりも!見て!これ!

 

そういってpcの画面を見せてくるかぐや。

 

そこには1件メールが表示されていた。内容を確認しようとした目を向けるが、最後まで読むまでもなく、私は顔をしかめた。

 

送り主は匿名。内容はこうだ。

 

 

はじめまして。わたくし、先日あなたの配信を拝見したものです。いきなりですが、ファンになりました!かぐやちゃんのいい加減で破天荒な部分、一周回ってアリです。そんなあなたの魅力をもっと色んな人に知ってほしい!

 

そこで相談なのですが、私に、あなたの活動をお手伝いさせていただけませんか。多少その手の界隈の人とコネクションがあり、私自身もこういった活動についてノウハウがあります。それらを提供できればと考えております。

 

興味がありましたら、是非折り返しご連絡ください。是非、直接会ってお話ししたいです。良い返事を待ってます。

 

 

 

と書かれていた。

 

…胡散臭すぎる。こんなの、今時引っかかる人はいるのだろうか?

 

そんな私と対照的に、かぐやはきらきらと目を光らせていた。

 

か:ファン、ファンだってぇ!第一号!!??これってつまりファンレター?お仕事メール?なにそれ、かぐやちゃん有名人~!

 

そういってその場で踊り出していた。その様子を見て、少しムッとする。

 

い:…こんなのがファン一号でいいの?ていうか、いい加減で破天荒な部分が一周回ってアリ、ってこの人ホントにファンなのか?

 

なんだか、言葉に妙にとげがあるように感じる。

 

まぁ、なんでもいいか、

 

そう言って思考を取り止める。別にこの先会うこともない人だ。考えたってしょうがな……い。

 

そうして、勉強に戻ろうと、机に向き直りかけていたときだった。あることが頭をよぎり、慌ててかぐやのほうを向き直る。

 

案の定、彼女はノートpcに何かを打ち込んでいた。

 

い:ちょっと待った!!まさか、あんた!返事する気じゃないでしょうね!?

 

か:へ?もうしたよ~?

 

何度目かの感情の乱高下。再び、頭を抱える私。

 

い:あのね…、こんなにあからさまに怪しい話、真に受けていいわけないでしょ?

 

か:うええええ!?そ~なの~!?

 

い:そうなの!大体、私たちみたいな底辺ライバーにこんな話、来るわけないでしょ?

 

そういって、ネットリテラシーを説く私。しかし、意外にもかぐやは冷静だった。

 

か:でも、聞いてみないとわかんないじゃ~ん。それに、悪いことしようとしてるなら、それこそ、こんな底辺ライバー狙わないとおもうけどな〜。巻き上げるものがないもんね。ね?ちょっと会ってみるだけだからさ…?…だめ?

 

確かに、それも一理ある…、一理あるが。

 

い:危険すぎ。ちょっと会ってみるだけでも、取り返しのつかないことになるかもしれないんだよ。最近はツクヨミでも、物騒な事件がちょくちょく起きてるんだから。

 

か:それは~……いろはに守ってもらえばおっけ~!…でしょ~?

 

そういって私を見つめるかぐや。

 

い:な、なんで私も行くことになってんの?行かない!絶対に行きませんから!

 

か:そんな~~、それじゃあ、かぐやちゃん。怖い人に連れていかれちゃうかも…?それでかぐやちゃん、超絶美少女だから、捕まった先であ~んなことや、こ~んなこともされちゃって……いや~~ん。

 

い:ぐぬぬぬぬぬ…

 

そう言って自分の身を抱いてくねくねしているかぐや。分かってる、適当な事いって私を挑発していること。分かっているのに……

 

か:ね?だからいろはぁ…、私のこと、助けて…?

 

い:ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!!!!

 

分かっているのに………!!!

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――

 

 

 

か:ん~~と、このへんかなぁ?

 

い:………ハァ…。

 

結局付いてきてしまった。どうして断れないのか。放っておくと、いつか痛い目に遭いそうだ。

 

そんなことを考えながら、彼女の隣を歩く。

 

 

ここは、ツクヨミの一角。大通りから少しずれた、狭い路地に私たちはいた。

 

あの後、かぐやが送った返信に対して、相手側から再度折り返しの連絡がくるまで、そう長くはかからなかった。

 

その返信には、ツクヨミの座標が記載されており、後日その場所で会うことになったのだった。

 

だがまあ、随分と奥まった場所だ。会ったら連れ去られるかも…なんて想定は、半分冗談だったが、この場所の雰囲気を見ると、あながち冗談ともいえないと感じていた。

 

私は、身を引き締める。

 

なにかあったら、すぐにかぐやの手を引いて逃げる。チラリと自分の右手を確認する。右隣を歩くかぐやの左手にちょこっと触れた。

 

それが理由か、かぐやがこっちを向いた。目が合ったかと思うと、何やらキョトンとした様子で

 

か:手、つなぐ?

 

とかいってきた。肩の力が抜ける。全く、人の気も知らないで…

 

い:……つながない…!

 

か:えぇぇ~~!いいじゃ~ん!つなご~よ~!

 

そんな風に、やいやい言いながら進んでいると、広い空間に出た。建物に囲まれた円形の空間の中心に噴水がある、なんだかツクヨミっぽくない場所だった。

 

辺りを見渡していると、噴水の向こう側に何やら人影が見えた。男性のようだ。

 

私は、瞬時にかぐやの前に身を乗り出す。おそらく、あれが待ち合わせの人物だろう。幸いこちらに気付いていないようだ。

 

特に服装については変わったところはなかったが、唯一、その髪色については異色で際立って見えた。

 

真っ白な髪色。

 

人間がするとおしゃれと言うよりなんだか、お年寄りのそれに見える髪色。そんな髪をしている人を、私は、これまで二人しかみたことがなかった。いや、片方は、AIだから、正確には一人か。

 

ともかく、思っていたよりも話が出来そうな人に見える。だが、油断は禁物。もう少し観察して、情報を得てから――――――――

 

か:やっほ~~~~!コンチニハ~~!!!

 

がっくりとその場に崩れ落ちそうになる。

 

そんなふうに考えていた私の気も知らず、大きな声で呼びかける彼女。なんとなくそんな気はしていたけど……。

 

その声を聞いて、男が振り返る。手を振って合図している所を見るに、彼が約束の人物で間違いなさそうだ。ゆっくりと駆け寄ってくる。

 

近づいてくるにつれて、その姿が鮮明になる。

 

…なんだか、見たことがあるな…。

 

そんな疑念は次第に大きくなっていき、彼が止まった瞬間には、確信に変わっていた。

 

は:はじめまして……。ってあれ?なんだ、いろはも来てたのかよ。

 

い:なんで、ハジメさんがここにいるの!?

 

か:へ?二人とも、知り合い…?

 

そこにいたのは、私の数少ない、いや、唯一のネット友達。

 

「ハジメ」その人だった。

 




以下、補足


今日の言い訳のコーナー

「──かぐやちゃん、超絶美少女だから、捕まった先であ~んなことや、こ~んなこともされちゃって……いや~~ん。」

です。

いや、いうかなあ?って感じだ。ここの関しては、言い回しの解像度の部分ではなく、そもそもこういうことをいうかなあってところですね。

というのも、原作のほうだとそういう"性"が絡む描写って一切なかったように感じるんですよね。大衆に向け入れられやすいように意図的にカットされている部分なように感じました。実際、家追い出されそうになってた時も、「解剖されちゃうかも~」みたいな感じでしたしね。

それにのっとった場合、"かぐや"というキャラクターは、そもそもそういうことを言わないキャラクターとして設計されていることになり、今回のこのセリフは、完全なキャラクター崩壊ということになってしまうわけですな。

悩みました。が、結局こうなりました。理由は明確でそっちがえっちで嬉しいからですね。

そりゃそうだろ。こんなんもやってくれよ。

まあ、より視聴者を絞った「ray」のmvではYES枕とかも出てたんでいいでしょ、ディアン・ケト。


俺の中でのかぐやは、オタクにやさしくなさそうなギャルのイメージがあるので、そういう"色"も出してくると思いますね。あの世界のオタクもそういう部分にやられたに違いない。

そんな感じでかぐやのディティールには自信あるんですけど、いかんせん、いろはがむずいですね。

ここぞのときの敬語口調とか、使えたらめちゃくちゃエッジで出そうなんですけど、やっぱり俺自身が恋敵だと思ってるので、あんま寄り添えないですね。残念だ。
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