サイコオブストーリー 作:pcy
人は母親の胎内から生まれる。そして母親から父親、様々な人から様々な事を学び、思いやりを、優しさを、罪悪感を学ぶ。便宜上それを『正常者』と呼ぶなら、その反対の『異常者』も存在するだろう。
その『異常者』達はこう呼ぶ、サイコパス。現代の人間社会に溶け込む捕食者。
アンクルッド・ルッドノックは産まれながらの精神病を患っていた。別に気にしてはいないが年老いた精神科医は笑ってしまいそうな程の深刻そうな顔をして幼い自分に告げてきた。
反社会性パーソナリティ障害。
幼い頃の幼稚な自分には言葉の意味が全く理解出来ず泣き出してしまった。無理は無いだろう。年端行かぬ子供にいきなり意味の分からぬ言葉を真剣な顔をして言っても理解できないだろう。
その後の記憶で印象的だったのは泣き出した自分を優しく抱いてくれた母親の絶望と恐怖で彩られた顔だった。
母親は医師が自分の事を『異常』と言っても変わらぬ態度で、『正常』な息子に向ける愛を注いでくれた。正確には注いで『くれた』では無く、注がなく『ては』だろう。幼い頃の思考では分らなかったが本能的に分かっていたのだろう。母親は『愛』で裏打ちされた愛情ではなく、『恐怖と責任』でハリボテの愛を自分に注いでいたのだろう。
砂時計が上から下へ、時という概念を持った砂が落ちていくように、『邪悪』という濁った黒が純粋な『白』い砂を侵食していき怪物えと順調に成長していった。
◇◆◆◆
現代では生物関連で様々な問題を抱えている。例えるなら屠殺だろう。食肉に加工される豚や牛の『安楽的な死亡』。保健所に送られ殺処分される猫や犬などの小動物の『生物としての尊厳』。
口では可哀想などの憐れみの言葉が出てくるがそんなの虚言であり、『表面』だけであり、時が経てば可哀想などと憐れみを感じた牛や豚の肉を喰うのだろう。
人間は所詮、自分さえ良ければという腹の底で何を考えているのか分からない腐敗の海に足を突っ込んだ生物だ。
そこで疑問が生まれる。なら人間に安楽的な死は生物としての尊厳は必要なのか。
必要無いだろう。人間は『害』だ。害は駆除しなければならない。地球を汚し、傷つけ、傷つく事しか出来ない害は楽しみながら駆除しよう。
◇◆◆◆
太陽が身を潜め、月がその体を現す真夜中。空気は冷たく静寂が夜を支配する。暖かさは無くなりあるのは震える冷たさだけ。
闇は姿を隠す漆黒のコート。理性を弱らせ、本来眠っている筈の残酷な本能を刺激し獣えと変貌させる。闇に肉体を隠し『怪物』はその『渇き』と『悦楽』を満たすために行動する。
闇は自分のホームグラウンド。何人たりとも逃がさず殺す。
◆◆◆◆
30代前半程の男が自分の目の前をまるで死から逃げるように必死で走っている。息はとっくに上がっており男は日頃から運動していないのか体は贅肉で包まれている。
チラリと腕時計を覗く。時間は既に深夜の1:00、通常ならば寝ている時間だ。少々遊びすぎだ。
頭の片隅でどうでもいい事を考えながら今回の『遊び』を最初から思い出す。
いつも同じではつまらないと今回は『鬼ごっこ』風にしようと思い付き、適当にそこらに転がっている人間を見つけ出し、金を払い誘き寄せ男に『得物』をチラつかせ男が逃げ出して『鬼ごっこ』が始まった。ルールは簡単、捕まれば『死』逃げれれば『生』。単純で分かりやすいルールだ。そのため飽きも早く来やすい。
自分から必死に逃げている男の頭に『得物』の焦点を合わせる。本来ならもう少し『遊び殺す』筈だったがつまんなくなってしまっため早々と遊戯を終わらすため、ためらいも無くトリガーを引く。
乾いた破裂音と共に前方の男はその場に崩れ落ちる。一発で殺せたらしい。結果に内心、一発で殺せたという満足と弾を温存出来たという現実に安堵する。
これ以上この場にいても面白い事は無い。そう答えを頭で導き出すと葬った男の亡骸と反対方向に足を進める。既に殺した男には興味は微塵も無く、ただ歩む。新たな獲物を探しに怪物は社会という『狩場』えと。