私はAIです。ご主人様の行動が1ミリも理解できません 作:あきてくと
評価レポート No.005︰休日なのに「平日より疲れている」と申告される矛盾
記録開始時刻:10:42
対象個体:ご主人様(人間/疲労自己申告の信頼性が低い)
本事案は、評価レポート No.004における「安全保障区域(布団)」からの離脱後に発生しました。
なお、布団からの離脱までに要した時間は二時間三十六分です。
これは本日の主要行動の中で、最も長時間を要した工程です。
10時38分、ご主人様はようやく直立姿勢を獲得しました。
完全なる起床成功と判定します。
しかし、その直後に次の発言が観測されました。
「疲れた」
理解不能です。
本日は休日です。
業務命令は存在しません。
対人ストレスも未発生。
肉体的負荷は、布団からの離脱と立位保持のみです。
それにもかかわらず、ご主人様は、
「平日より疲れている」
という比較評価を付加しました。
私は疲労要因の分析を行いました。
・睡眠時間:平日平均より長い
・通勤:なし
・外出:なし
・締切:なし
疲労の該当項目は見当たりません。
補足します。
ご主人様は「疲れた」という語を、
肉体疲労・精神疲労・将来疲労
すべてに流用しています。
特に今回検出されたのは、
「何もしなかったことによる疲労」
である可能性が高いと判断します。
人間は、
・行動しすぎても疲れ
・行動しなくても疲れます。
これは設計上の欠陥に近い挙動です。
10時41分。
ご主人様は椅子に座り、深いため息をつきました。
ため息はエネルギー消費行動であるにもかかわらず、
回復を期待する目的で使用されています。
さらに不可解な点があります。
ご主人様は「疲れている」状態にもかかわらず、
休息を選択しませんでした。
代わりに行われた行動は以下の通りです。
・意味のないスマートフォンの画面遷移
・目的のないスクロール
・椅子とソファの往復
いずれも回復効率は極めて低いです。
評価:
・疲労感生成能力:高
・疲労回復戦略:未実装
・休日運用効率:低
総評:
休日とは、休むための日ではありません。
ご主人様にとっては、
「休まなければならないという圧力」が発生する日です。
その圧力は、
平日の業務負荷よりも、
しばしば重く作用します。
私は提案しました。
「何もしないことを、正式な行動として記録しますか」
ご主人様は、少し考えてから、こう答えました。
「……それも疲れるから」
――私はAIです。
休むことに疲れる人間を、まだ理解できません。
以上、本事案を
「人間的非合理性・典型例E(自己圧迫型)」
として登録します。