転生が前世の因果に依るものならば……

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ビッチ厨がビッチ厨に転生した件

―思い返してみれば、全ての始まりは一冊のエロ本(聖書)だった―

 

 瞼を閉じれば今でも鮮明に浮かび上がる、ある夏の日の河川敷。まだ穢れも知らず、女子向けアニメの変身シーンに興奮する程度のどこにでもいる純真無垢な小学生だった俺ちゃんは、なぜか夢中になっていたバッタの乱獲の最中そいつ(・・・)に出逢うことになった。

 

 

 

 

―内気な自分を変えたくて♥―

 

 

 

 

 やや持って回ったタイトルと、その下でおずおずとはにかむ、いかにも文学少女然とした三つ編み眼鏡の女子高生。ただし、ギュッと両手でたくし上げた制服の下で、容姿に似合わない大ぶりなおっぱいを丸出しにした……。

 

―……―

 

 親や学校の先生に見付かれば即座に頭を引っ叩かれそうなそいつ(エロ本)に、しかし俺ちゃんは自分の手を止めることが出来なかった。

 コクリと生ツバを飲み込むと、まるで何かに誘われるかの様にフラフラと少し縮れたエロ本の端を摘んでいたのだった。

 

―!?―

 

果たして、神秘の扉(エロ本の表紙)を開いた先にあったのは一面の乱交!乱交!!乱交!!!

 その地味目で内気そうな少女が満面の笑顔でちんこを握り、しゃぶり、そして結合する姿は、彼女の持つ雰囲気とは真逆のビッチそのものと言って良かった。

 3P4P当たり前、同級生や先生といった相手から浮浪者の様な格好をした相手とも平気で合体する彼女の写真の下には小さなインタビュー記事も描かれている。

 

―きっかけはほんの些細な事だったんです。同じクラスの男の子達が教室でエッチなお話をしていて、たまたま放課後まで残っていた時にそれを聞いちゃって―

 

―最初は男の子達も慌てて話しを止めていたんですが、二度三度と重なると少しずつ遠慮がなくなって―

 

―私もそういうことには興味がありましたから、次第にその子達の話に混ざるようになって―

 

―ある時とうとう、全員でやってみようかという話になったんです―

 

―それからは口伝手で私のことも広まって、よく放課後に希望する男の子のお相手をしてました♥―

 

―大学でもセックスがしたくて、運動が苦手なのにテニスサークルに入っちゃいました♪ フェラやパイズリが一番上手くて、とっても人気だったんですよ?―

 

―それもあって、就職先に内緒でAVデビューしちゃいました♥―

 

 ビッチだった。頭の天辺から足の先まで、一切の掛け値なく、ビッチだった。それも、お金が欲しいとか周囲に流されてとかではなく、ただ自らの意思で股を開く純正のビッチだった。

 こうして『清楚系AV女優』というキャラで売っていたであろう彼女のあられもない姿と淫猥な言葉の数々は、まるで卸したてのシーツで行われた初エッチの証(破瓜の血)の如く、無垢で穢れを知らない一人のいたいけな男子小学生の運命を永遠に歪めてしまったのだった。

 まあ要するに何が言いたいのかといえばだ、初エロ本でこのAV女優を引き当てた俺ちゃんの俺ちゃんはこれ以降いわゆる純愛ものやイチャラブものではピクリとも反応しなくなってしまったのだった。お陰で同級生が男女の別もなく鼻の下を伸ばした猿になる中高生時代、俺ちゃんは“硬派”という凡そ本質とは真逆の評価を頂戴していたのだった。

 そんな俺ちゃんも大学生になり、上京して一人暮らしを始めた訳だが、時間、体力、ネットがアリアリで、親の目だけが無いという最高の環境ともなれば72時間耐久オナニーを開始してしまうのも無理からぬことだろう。

 

 

 

 

で、

 

 

 

 

幾度目かの絶頂から意識を取り戻した瞬間、俺ちゃんはそこが耐久オナニーのためにカーテンを閉め切った(その程度の理性は残っている)じゃない事に気が付いたのだった。

 

―あら、あなたは……―

 

 ふわりと軽く、滑らかで柔らかな布地。まるで綿菓子を思わせる白い雲に持ち上げられた様な感覚に包まれ、一瞬夢かと首を傾げた瞬間甘く耳朶を撫でた声に、俺ちゃんはゾワリと産毛が逆立つのを感じた。

 その音色だけで耳管を犯し、脳髄を蕩けさせてくる様な色香を伴った女性の声。

 

「は、はひっ!?」

 

この世に生まれ落ちて十八年と少し、あの性癖(ビッチ厨)に目覚めた時以来の衝撃に、上擦った声と共に飛び起きると、そこにいたのはたっぷりとウェーブの掛かった金糸の長髪と燃える様な深紅の瞳で不思議そうにこちらを見下ろす一人の美人さんだった。

 

 

 

 

但し、髭もじゃの小さなおっさんと絶賛合体中のと付くが

 

 

 

 

 その姿を見た瞬間、俺ちゃんの全身の血液が超速でへ凝縮した。

 この見るからに釣り合いの取れない小人と平然とベッドを共にし、なおも神々しさと威厳を損なわない美貌。

 ビッチである。紛れも無いビッチ120%のビッチである。その半生以上をビッチセンサーとして過ごした俺ちゃんセンサーのボルテージが一瞬で最高レベルに達する程のビッチである。

 

―まあ、私に興奮しているの?―

 

そんな俺ちゃんの姿を見て、ごく当然の様にクスリと微笑を浮かべる女神様。

 

(女神……女神!?)

 

 その瞬間、俺ちゃんの脳味噌と股間に稲妻が走った。そう、女神。女神だ。

 俺ちゃんは普段無神論者で、お腹が痛い時くらいしか神様に祈らない一般的日本人だが、唯一積極的に信仰しても良いと思っている神様がいる。それが、各国に存在する多淫多産の女神……いわゆる美ッチ様達だった。彼女達はそよ美しさ故に汎ゆる神々や魔物から身体を狙われるが、同時に強かかつ奔放にエッチな関係を重ねていくシンボル・オブ・ビッチでもあった。そして、そんな女神様達を信仰候補に入れている敬虔な美ッチ信者である俺ちゃんの脳内データベースに、この状況と合致する女神様の存在があった。それが北欧神話の美ッチ様こと女神フレイヤ様。

 基本的な逸話はギリシャのアフロディーテ様やメソポタミアのイシュタル様に並びスタンダードビッチをしている彼女だが、一つ特有のビッチ神話を持っていた。それが、彼女の美しさの象徴とも言える炎の首飾り・ブリーシンガメンに関するものだ。

 彼女は一目見て気に入ったそのブリーシンガメンを手に入れるため、製作者である4人のドワーフと一夜ずつセックスをしたと言われている。そして、この状況と俺ちゃんのビッチセンサーを踏まえる限り、彼女はフレイヤ様と見て間違いなかった。

 

―よく分かったわね―

 

 俺ちゃんがビッチ思考回路を回す間も絶えずギシギシアンアンしていたフレイヤ様は目の前のあられもない姿とは裏腹に、ごく落ち着き払った声音でテレパシーと思われる言葉を脳内に飛ばしてくる。

 

「!!」

「あああああっ♥♥♥」

 

やがて、限外に達したらしいドワーフがビクッと身体を縮み込まらせ、女神様が嬌声と共に仰け反るそして辺りに嗅ぎ慣れた栗の花的なサムシングの臭いが満ちた瞬間、フッと純白のベッドが黒い帳に呑まれたのだった。

 

(む……あれ?)

 

 次に目を覚ますと、俺ちゃんは先程の白いベッドとは真逆の、血の様に真っ赤な絨毯の上にいた。

 

(ここは……)

 

―気が付いたわね―

 

(!!)

 

辺りを見回そうとしたところで頭の上から振ってきた、脳味噌を蕩けさせる声に姿勢を正すと、クスクスという実に楽しげな笑い声が降ってきたのだった。

 

―そう畏まらなくても良いわ。今は私達以外は誰もいないもの―

 

そこに居たのは先程ドワーフとエッチしていた女神様で、笑い声と同時に大ぶりでハリの豊かなおっぱいと、その間に下げられた深紅の首飾りが大きく揺れるのだった。

 

―それで、あなたは何者なのかしら―

 

(! 僕は……)

 

―ああ、言わなくても良いわ。代わりに少し覗かせて(・・・・)もらうから―

 

そう言って、フレイヤ様はどこか愉しそうに赤い両眼を細めたのだった。

 結果、

 

 

 

―あっはっはっはっは!!―

 

 

 

神々しい玉座の間は実に無邪気な笑い声に満たされたのだった。

 

―ちょ、まさか72時間耐久オナニーの末に衰弱死とか!!―

 

―お喜びいただき光栄です―

 

両足をバタつかせ、お腹を抱えて笑うフレイヤ様に、俺ちゃんは心底からテクノブレイクして良かったと思った。

 

―ハァ……ハァ……もう、凄い笑わせて貰ったわ。人間の身で豊穣の女神たる私を笑わせるなんて、これ祝福物よ?―

 

―ハッ!―

 

―そうね、せっかくならあなたとも一夜を共にしてあげてもいいんだけど、流石にまだ格が足りないかしら……あ、そうだわ!―

 

何やらとてつもなく魅力的な独り言を呟いたフレイヤ様に戦闘モードに入りそうになった俺ちゃんの俺ちゃんだったが、フレイヤ様は思い付いた様にパンッと手を打った。

 

―使徒〇〇。あなたをこれからとある世界に派遣します―

 

―とある世界ですか?―

 

―ええ。そこには既にヴァール(貞淑と誓いの女神)が既に自らの遣いを派遣しているのだけど、あなたにはその子の思惑を掻き回して欲しいの―

 

―かしこまりました!!―

 

―上手にやれたら、今度来た時に私の身体を好きにさせてあげる―

 

―!!!―

 

―やってくれるわね?―

 

―もっちろん!!!!―

 

―じゃ、頼んだわね―

 

―ハッ!! この身に代えても!!!―

 

 

 

――――――――――

 

―――――

 

――

 

 

 

 こうして、俺ちゃんはこの世界へとやってきたのだった。

 フレイヤ様の使徒として派遣された俺ちゃんは、東に毎夜部下を寝室に連れ込む女王様あれば行って反逆を企てる清廉潔白な将軍を討伐し、西に乱交を旨とする信仰あれば会場を聖域として守護してやり、北に村中の男と寝たことがバレた人妻あれば乗せて夫の目の届かぬ地まで乗せてやり、南に精通前の少年達を食い物にするお姉さんあればおひねりとして多額の金銭を届けと日々忙しく過ごしているうちに、いつしか()獣として認知される様になっていた。

 もちろん、本来の役目(美ッチ様のお願いと報酬)を忘れた訳じゃない。ただ、風より速く走れるはずの四肢を繰っても、件のターゲットと思われる存在とは不思議と出会うことがなかったのだった。俺ちゃんとしても早く仕事を済ませてご褒美にありつきたい訳だが。

 

(とりま、近くの青姦スポットにでも行くべ……!?)

 

そう思案しながら立ち上がった瞬間、俺ちゃんの二本の角(センサー)が突如最高ボルテージでアラームを上げたのだった。

 野生の勘に従いバッと気配の方を振り向く。すると初めは微かに、しかし次第に大きくカッポカッポという音が聞こえてきたのだった。

 

(馬の蹄……!?!?)

 

ごく聞き覚えのある音に首を傾げた瞬間、顕れた姿に俺ちゃんは絶句した。純白の貞淑と清廉を思わせる毛並みと頭頂部から生える長い一本の角。純潔の象徴・ユニコーンに違いなかった。しかし、俺ちゃんが絶句した理由は別にあった。

 

(なんて……なんて美しい!!)

 

それは、ユニコーンの背中に跨る一人の人物だった。

 

 

癖一つ無いしなやかな黒髪

 

どこかおっとりとした目元

 

少し押しの弱そうな風貌

 

化粧気が無いにも関わらず透き通るような肌

 

そして、雰囲気とは裏腹に胸元でゆさゆさと揺れる大きなバスト

 

 

まるで、寝取られものの薄い本で、チャラ男の口車に乗ってホイホイエッチしてしまう清楚系ビッチの卵とでも言うべき姿に俺ちゃんは今すぐにでも、この場から駆け出しそうになっていた。が、

 

(!?)

 

その瞬間、俺ちゃんは俺ちゃんを睨み付ける様に牽制してくる存在に気が付いた。それは、目の前の聖女(ビッチの卵)ちゃんにケツを押し付けられている、ヤツだった。

 

(そうか……そういうことか!!)

 

俺ちゃんは全てを理解した。なるほど、生粋のビッチ厨たる俺ちゃんの頭に生えているのがこの二本角ならば、一本角の持ち主がそうでない訳が無い。

 考えてみれば、相手は貞淑と誓いの女神・ヴァールの使徒。俺ちゃんの主であるフレイヤ様(淫蕩と多産の女神)とは対極の存在に派遣された奴が俺ちゃん(ビッチ厨)の対極でない訳がなかった。この瞬間まで、俺ちゃんがあいつを見付けられなかった理由もこれで腑に落ちる。要は守備範囲(性癖)の違いによる行き違いというやつだろう。そんな交わらないはずの俺ちゃん達をあの少女(清楚ビッチの卵)が交わらせたのだった。

 向こうもそれに気が付いたのか、困惑する背中の聖女を優しく地面に下ろすとゆっくりと地面を掻く。対して俺ちゃんもまた蹄で地面を掻きながら、一本角を尖らせたユニコーンを睨み付けた。元を辿ればフレイヤ様からの命令であり、俺ちゃんの動機はフレイヤ様のご褒美(エッチ)だけだった。だが、今この瞬間、この闘いはフレイヤ様の代理戦から俺ちゃん自身の戦いへと変わったのだった。

 呼吸を整え、全精力を己の象徴たる角に凝縮する。そして、

 

(いくぞ処女厨ぅぅぅぅぅぅ!!!!!)

 

(来いビッチ厨ぅぅぅぅぅぅ!!!!!)

 

稲妻と共に三本の角が交叉し、俺ちゃん達の聖戦が始まる。どちらの角が折れるか……勝負だ!!!!!

 

 

 

 

 


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