ソシャゲとかのストーリーで絡んでくる三人組っていいよね 作:笹食え
いまさらながらキャラのモチーフって読者の皆さんに伝わってるんだろうか?
そう思いながらのもう一話
やあやあ、パルドス君だ。現在、人生でも五指に入るレベルで落ち着かない時間を過ごしている。
理由は単純明快。俺がシェイカーを振っているからだ。
「……なんで?」
グラスに映る自分へ問いかけても答えは返ってこない。
今の自分には白いシャツに黒のベスト。袖は肘まで捲られ、慣れもしない革手袋まで嵌められている。
「似合ってる」
「慰め雑すぎんだろ」
背後から飛んできたコラクスの声に振り返る。本当ならこいつが
……なんというか。
「……今までの印象吹っ飛ぶなぁ」
「? ただの制服」
淡々と返すコラクス。
いやまあ制服なのは分かる。
黒を基調にした細身の給仕服。胸元には控えめなフリル、首元には小さなリボンタイ。そしてスカートで全体的にやや柔らかい意匠だ。そしてそれを無表情で着こなしている。
「見慣れなー……普段着ないけどなんかこう感想とか?」
「意外と動きやすい」
「そっかぁ」
本人が何も気にしてないなら別にいいんだけど。
「ぅ、ぅぅ……」
おっと気にしすぎてだめそうなのが一人。エントランス側で青い顔をしているペレコトだ。コンシェルジュ用の黒いジャケットに身を包み、受付台の前で直立している。
姿勢は綺麗。
立ち方も綺麗。
礼の角度も完璧。
ただし顔色が終わっている。
「おーい生きてるか」
「だ、大丈夫……ちゃんと、できる……」
「声が全然大丈夫じゃない」
「だってこういう場所ひさしぶりで……し、失敗したらどうしよう……」
言いつつも胸元を整える手つきは妙に洗練されている。育ちって怖いね。
コラクスとそんな話をしていたその時。
「皆さま、ご準備のほどはいかがですこと?」
凛と響く声。
広間入口へ視線を向ければ、そこには深紅のドレスを纏ったツェペシュ・ノーヴィル嬢が立っていた。
胸元から裾へ流れるように落ちる生地。灯りを受けて鈍く艶めく紅。派手すぎず、それでいて主催者としての格を示す絶妙な装いだ。うーん、金持ち。
その半歩後ろには、黒の侍女服に身を包んだ女性。落ち着いた目元に隙のない所作。たぶん彼女が侍女の人だろう。
そして。
「……」
さらにその隣。黒の正装に身を包んだオペレーターが浮かない顔をして立っていた。
「おー……」
「……何」
「いや、似合うなーって。局って青めの隊服のイメージだったから」
「着慣れないから緊張するよ……借り物だし」
「ふふ。お似合いですわよ、オペレーター様」
俺とノーヴィル嬢の言葉に対し、心底げんなりした顔が返ってくる。おそらくノーヴィル家から借りたのだろう。てか俺達の服装も基本そうだ。*1なんでサイズ違いまで完備してるんだろ。
「その反応込みで似合ってる」
「褒めてないよねそれ」
コラクスが褒めるもオペレーターの機嫌は良くならない。ノーヴィル嬢はそんなやり取りを小さく微笑ましげに眺め、それからペレコトへ視線を向けた。
「……少々お顔が青いようですが、大丈夫ですの?」
「っひゃ、はい!」
だいぶ声が裏返ったな。
まるで呪文のように言葉を紡ぎながらペレコトは勢いよく頭を下げる。うーん、完璧な角度。しかし上げた顔は今にも泣きそう。*2
「……お見事ですわね」
「へ?」
「所作がとても洗練されていますわ。幼い頃より場数を踏んでおられるのでしょうか?」
「えっ、あ、その……」
目のいい人である。しかしノーヴィル嬢が目を輝かせるのとは対照的にペレコトがみるみる縮こまる。
「……えと、まあ、いろいろと?」
歯切れの悪い返事だがノーヴィル嬢はそれ以上追及せず、柔らかく頷いた。
「頼もしい限りですわ」
その一言だけで、ペレコトの背筋がへにゃりと折れ曲がっていく。そんなに緊張してたんです……?
ノーヴィル嬢は満足げに広間を見渡した。
「皆さま、本日はどうかよろしくお願いいたしますわ」
その声音は穏やかでありながら、確かな緊張を孕んでいた。
そして、晩餐会はノーヴィル嬢の挨拶で幕を開けた。
結果から言えば、序盤は拍子抜けするほど順調だった。側から見ててもそんな怪しい人物などいないし、不審な点も無い。しかして社交というのはどうやら笑顔で牽制し合う競技らしい。グラスを傾けながら探りを入れ、言葉尻に針を仕込み、それでも表情だけは崩さない。
怖〜。なんとなくペレコトの対人スキルがああなった理由が分かった気がする。
「一杯いただけるかい?」
おっとお客様。そういや仕事中だったな忘れてたわ。*3
「何かご希望はございますか?」
「ん〜?そうだね……ならブロンクス*4で。ああ、卵は無しで」
「かしこまりました」
おお、レシピが思い描ける……!カクテルのレシピを頭に詰め込んだかいがあったというものだ。酒以外の材料とかキレそうだった。それに酒の種類も多いし。ブラッディメアリーとかあれ頼む人いるん……?
「お待たせ致しました、ブロンクスです」
「ありがとう。……ねぇバーテンダーくん」
バーテンダーくん?俺のことか?
「えーと、私のことでしょうか?」
「キミ以外誰がいるってのさ〜?キミ名前は?あ、ワタシはナイアだよ、よろしくね?」
「……ペーラです」
おっとついどこかで聞いたような偽名が。
「今の間は絶対偽名でしょ〜、アハハ。まあいいのさ名前なんて。それより、さ
キミ、
「…………」
「ハハ、図星だね?大丈夫大丈夫、誰かに言いふらしたりしないからさ」
「だとしたら何です?」
空環区、俺の出身地。もっとも、観測停止して久しい今じゃ、その名を覚えてる奴の方が珍しい。この人は、ナイアは何を─?
「いやさ、観測停止の理由の大体は異常のせいだ。でも空環区はある能力者が原因って噂があってさ」
「 へえ」あいつだ。
「で、昔その能力者の隣にいたキミを見たことがあってね。あー、この顔どっかで見たな〜って思い出してつい声かけちゃったってワケ。別にキミを疑ってはないし他意はないよ?本当だよ?」
「……そうですか」
「そーそー。……おっとそろそろワタシも行かなきゃ、楽しかったよ?」
そう言うと彼女は残っていたカクテルを飲み干し笑う。
「─じゃあね?
視線を逸らした、ほんの刹那。
次にカウンターへ目を戻した時には、そこにはグラスがあるのみで彼女の姿は無かった。
……最悪の気分だ。間違いなく頭のどこかが痛むがどこが、どう痛むのか全く分からない。
あれから三十分ほど。何も起こらずパーティも中盤。俺のメンタル以外に異変はない。ペレコトもなんとか招待客を捌き切ったみたいで会場内へ入ってくる。
「おー、お疲れさん」
「……し、死ぬかと思った……」
カウンターへ辿り着くなり、そのまま突っ伏すペレコト。瀕死だなこれは。
「まだ半分も経ってないけど」
「じゅ、十分長いよぉ……」
よくそれで場慣れした雰囲気出せてたね君。そう思っているとコラクスもカウンターへ戻って来て寄りかかる。
「適当に飲み物ちょうだい」
「へいよ。ペレコトは?」
「あー……おみずぅ」
その返答を聞き、俺は水とレモネードを用意する。コラクスは一口飲み首を傾げる。
「ん、お酒じゃないんだ?」
「俺達勤務中だろ……」
「んぐんぐ……」
会場を見渡せば、ノーヴィル嬢は変わらず中央で招待客たちの相手をしている。その隣にはカミラさん、少し後ろにはオペレーター。
警戒を崩してはいないが、ひとまず大きな問題はない……いやこういう時はどうせロクでもないことが起きると俺の経験が言っている。
「きゃあああっ!」
一瞬だけ、会場のざわめきが凍りついた。
な?言ったろ?*5
「はあ……」
コラクスも諦めて悲鳴の元を探す。悲鳴は二階回廊。
顔を上げた先、手すりの向こうで一人の女性客が蒼白な顔で階下を指差していた。
「ひ、人が……!」
その視線の先。赤い絨毯の上に、一人の男が倒れていた。
「うぅ……仕事……しよっか」
「「おー……」」
ペレコトにも、それに応える俺とコラクスにもすでに元気は無かった。
観測停止:観測圏内での観測が停止すること。停止した物は観測圏から物理的存在が排除され、民衆の認知からもだんだん薄れていく。対象は人や物から区まで。
ナイア:「家族」とともにパーティへ参加した。パルドスに対しては"面白そうな過去持ってるし輪廻巡ってる!ちょっとちょっかいかけたろ!"の精神で絡んだ。空環区に行ったことは一度もない。
パルドス:(輪廻)転生者。パーティ当日は悪夢を見なかったのでコンディションは良かった。ナイアのせいで悪くなった。あーあ。