ソシャゲとかのストーリーで絡んでくる三人組っていいよね 作:笹食え
行きたくない。
ペレコトの口から調律局とぶつかる可能性が高いと言われて五分後、俺は提示された回収ポイントへと憂鬱な気分で走っていた。
路地裏から廃ビルの中へ出る。確かこの中。……だいぶ日が沈んできたな。
今も頭の中を占めるのは調律局とぶつかったときの処罰だ。しかも異常らしき反応があったので考えていた「異常だと知らなかった、そんなものだと思わなかった」戦法*1が使えない。ほんと行きたくない。やだぁ
なら行かなければいいのではないか、報酬は後払いなのだしそれこそ「異常だと知らなかった、そんなものだと思わなかった」と依頼者に言って無かったことにしてもらえばいいのではと思うかもしれない。だがそんなわけにもいかない理由がある。それは─
「パルドスもやる気出す」
「嫌かもだけど……こ、今月の収入のためにもね……?」
─やはり金*2である。
別に黒函はそこまで貧乏という訳ではない。一回の依頼でそこそこの報酬をいただくし、個々で多少の貯金はある。だが収入は受ける依頼の数や内容に依存するため、安定しているとは言いがたい。それに黒函としての実績を上げることで依頼を受けるときの信用度が高まる。
「ここ一か月はなーんも依頼無かったかんなぁ……」
「いっぱい武器整備できた」
「整備するのは良いんだけど……片付け、ちゃんとしてね……?」
「……………………善処する」
すごい溜めたな。ほんで声小さっ。
俺のぼやきに反応したコラクスがペレコトにまるで母親からのような注意をされたのを見てそう苦笑する。
そろそろ回収ポイントかな? *3
「……! 二人……とも、ストップ」
正面に集団、先に
「そこの三人、止まってくれ。我々は異常反応調律局だ。きみたちは……ここで何をしているんだ」
先頭のリーダーらしきクール系の女性が問いかけてくる。帯刀して。怖。……全員で四人。いずれも紺地に黒や蛍光グリーンのラインが入った隊服と胸には調律局の局章。一人を除いてしっかり武装……非戦闘員ぽいのがいるな。ガイドか指揮か?
とはいえ実働部隊。戦えない、なんてことは無いだろう。
やばい、知らない人だからペレコトがガッチガッチだ、目も合わせられてない。それを挙動不審と見たのか向こうも若干怪しんだ目つきを送ってくるし。*5
「配達中」
コラクスがフォローに入る。が、
「そんな格好で? とても配達業者には見えないけどなぁ」
「そうっす!
奥のハンドガン持った糸目の男と警棒持った
「業者じゃなくて知人の頼みでね。受け取ったものを知人に渡すだけだから私服で配達しても平気なんだよ。武装……はこんなご時世なんだ、護身用だよ」
とっさにそう言い返す。苦しい。
「なら何を配達していたんだ?できれば見せてほしい」
ガイドらしき男が聞いてくる。……っ!?なんだこいつの"女たらし"感!?*6絶対ホストでもやってたろ。
「わからない。まだ受け取ってすらない」
コラクスの言う通りだ。こっちが知りたい。
だがそんな甘えた発言を咎めないわけがなく、
「わからない? ……すまないがここで異常の反応が確認された。念のため詳しく話を聞きたい。局までご同行願いたい」
リーダー格の女性が告げる。怪しすぎたか。……なら。
どうする?
ついて行ってもな。
……突っ切る、しかない。
アイコンタクトで俺達の出方は決まった。*7いつもと同じ、なるようになれ*8、だ。俺はスティレットを、ペレコトとコラクスはそれぞれ杖と籠手をつけて構える。
向こうも抵抗の意思を感じたのだろう。武器を構える。……ガイド君はバリアかな? なんか、こう、ねぇ? あーいう感じの……六角形とかが敷き詰められた半透明の……そう!*9障壁を自身の周りに展開した。
お互い睨み合う。
「……今」
「っ! ……総員確保!」
さすがは調律局の実働部隊だ。一瞬隙はできてもすぐに捕まえにきた。ガイド君はなんかの端末を操作、それ以外が俺達それぞれを追う。俺を追うのは……ちびっこいのか。……行けるかな? 階段を駆け上がりつつ適度に視線を
「大人しくしてもらうっすよ〜! ……あれ?なんか……あれぇっ!?」
ヨシ!*11
この調子なら武器は使わなくても行けるかな。
とっとと二人と合流してずらかるぞ〜!
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パルドスが背の低い局員に追われていると同時にペレコト、コラクスもそれぞれリーダー格の女性、糸目の局員に追われ、応戦しつつ逃げていた。しかし場所は廃ビル。いかに階層を行き来し、フロアを駆けてもいつかは逃げ道が無くなってしまうもので。
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「逃げる先を間違えたな。大人しくしろ」
「…………ピャッ」
「……容赦なく撃つね。それに……しつこい」
「仕事だからね。……とはいえそろそろ止まって欲しいかな。しつこいのもそっちが逃げているから追ってるんだし」
同じフロアにたどり着いた四人。リーダー格の女性を前、柱を背にしたペレコトの目の前には刀の切先が突きつけられ、少し離れた床には壁側のコラクスの脚部を狙ったと思しき弾痕。
誰がどう見ても黒函の二人が不利な状況。
─それでも。
『っぐ……応援を頼む!』
男性の、もっと言うならば糸目の局員の、苦しそうな声。それが
「なっ!?」
「バオジ……!? 何が……いや違う!」
糸目の局員が自分の声に、リーダー格の女性からすれば仲間の声に反応し、気を取られた。瞬間、ペレコトとコラクスは駆け出す。局員はすぐに二人を追い、リーダーは刀を、バオジと呼ばれた糸目の局員はハンドガンを構える。
だが隙は隙。
「……てやぁ! 」
「シッ!」
「ぐえっ……!」
「がっ……」
位置が入れ替わったペレコトとコラクスはそれぞれの武器である杖のゴム先をバオジの腹部に、籠手をつけた右アッパーをリーダーの顎に食らわせて流れるように逃げる。
「ゲホッ……!」
「ま……て……!」
さすがと言うべきか、それでも調律局の二人は立つ。リーダーに至ってはアッパーをされたのにふらつきながらも平然と黒函を追ってくる。
しかしどうしたことか。上手くみえない、目の照準があわない。
何故?直前にパルドスが上のフロアから降りて合流し、何かを握ったのを
否。
結局、彼らの視線がまともに動いたのは夜の暗がりに黒函が撤収した後だった。
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全力で路地裏を走る走る走る。
「も、ガハッ、もうだいじょ、ゲホッ、だから」
「わかった」
「よく、息上がらない、な」
「鍛えてる」
ペレコトの
ともかく調律局からは逃げ切った。最後に視線を散らせまくったが、少しは効いただろうか?
「……あ」
ペレコトが素っ頓狂な声をあげる。
「依頼の物品……」
あー……忘れとったな……
「と、思うでしょ?」
コラクスさん……? あんた、まさか……?
「しっかり追われてるときにぶっ壊した。破片もある」
「…………ペレコト、どうする? 全員で依頼人に土下座いれる?」
「……いや平気、だよ」
へ?
「今回の依頼は……『原則回収、どうしても困難な場合は破壊でも可』だから……」
……まじか。
「やっぱり聞いてなかった」
「次からは、聞いてね……?」
……はぁい。
パルドス:話を聞いていなかった。武器はスティレット。
ペレコト:挙動不審すぎた。武器は仕込み杖。
コラクス:MVP。強いて言えば壊すのに躊躇がなさすぎた。武器は日替わり。