ソシャゲとかのストーリーで絡んでくる三人組っていいよね 作:笹食え
「「「依頼ならすぐにでも」」」
そう格好つけたはいいものの、思ったより手こずってるパルドス君だよ。*1
いやまあ、ハモったところまでは100点満点だった。けど目の前の泥みたいな影たちの数が多すぎる。せいぜいが"10体くらいかな~"なんて思ったら、なんかぽこじゃか湧いて出てくるし、目が無いから誘導とか出来ないし。
コラクスは脚部武装でばったばったと倒せてるというのに……ペレコト?杖をやたらめったらにぶんぶんしても敵は倒せてないぞペレコト?
「邪魔を、するな!」
影どもの中心では、あー……、えー……、秘書*2が、髪を振り乱してものすごい金切り声を上げている。
「誰にも、私とブラムの邪魔を、させない……させてたまるか……!」
ああいうヒステリックに自分の都合だけを押し付けてくるのは嫌われるんだよなぁ……っと、そんなこと言ってる場合じゃないな、このままじゃ大元を止めるどころか押し流される。
「ど、どうする……?」
ペレコトも同じ結論に達したらしく、声を寄越して聞いてくる。
「どうにか影の供給をストップさせないと話にならないな」
あのデバイスぶっ壊せば影も消えるんだろうが……現状、近づかないし、あの様子の人間は何も聞かないし見ようとしないだろう。どうしたものか。
「ん……
コラクスが攻撃の手─というか脚─を止め、聞いてきた。
「い、いけるの?」
「楽勝。任せて」
不安げに聞くペレコトに対し余裕の表情。コラクスが楽勝とまで言うのだし、自信はあるのだろうが……そんな手段あいつにあったか?
「パルドスはそのまま影を抑えて」
「へいよ」
「ペレコトは合図の後、私の声をターゲットの耳元に」
「わ、わかった!」
耳元で叫ぶのか?でも有効そうには思えないし、コラクスもそれは分かってるだろう。……まあ、いいか。何をするかわからないがやれるだけやるの精神でいつもよりステップは大きく、早く。迫り来る筋肉痛から目を逸らしつつ湧き出る影をスティレットで押し込んだ。
─そして。
「今」
「縺ゅ縺ゅ縺ゅ縺縺ゅ縺ゑシ?シ?シ?シ?」
その声に手と脚が止まる。つい一時間も経っていないくらいに聞いた、あの
「──げ゛ほっ……とっておきはどう?」
金切り声を上げていた口が、ぴたりと止まった。
いや、止まったというより──固まった、が近い。目の焦点はどこにも合っていない。髪を振り乱していたはずの動きも、指先一本すら動かない。まるで身体だけ置き去りにされて、中身がどこかに行ってしまったみたいに。
何を聞いたのか、彼女自身分かっていない。ただ──聞いた瞬間に、脳の一番奥の方が「駄目だ」って叫んだんだろう。理由もなく、問答無用で。
……何はともあれ、周りを取り巻いていた影たちの輪郭が、ぐにゃりと歪む。供給源の集中が切れた証拠だ。今しかない。
「っ!パルドス!」
言われるまでもない。スティレットの切っ先を地面すれすれまで下げて薙ぐ。
コラクスの脚部武装がその隙間を割って前に出る。狙うのは影の壁じゃない、その向こう──呆然と立ち尽くすレニー本人。加減してるのかしてないのか分からない速度で距離を詰めて、押し倒す。
「大人しくしてもらう」
抵抗らしい抵抗もない。
ペレコトが遅れて杖を構え直しながら駆け寄ってくる。まだ顔が強張ってるあたり、多分あの声、思ったより堪えたんだな……。
「お、終わった……?」
「拘束は完了。あとはデバイスだけ」
「拘束ってか……馬乗りになってるだけだろそれ」
おうコラクスドヤ顔すんな、褒めてないから。
「で、ここからどうする?殺す?」
「こ、殺……」
大分急いだ結論を出すなコイツ……。とりあえずデバイスを回収して。
「そいつの処遇に関しては一応、雇い主にお伺い立てるべきだな……。それまでは逃げれないように両手足圧し折るくらいにしとけ」
「へ、圧し……」
「分かった」
ペレコトがなんかぶつぶつ呟いてるが知らん知らん。
そこに小走りに近づいてくる足音。振り返ると、まださっきの声の余韻が抜けきってなさそうな顔をした、位相データの指揮をしていたオペレーターだった。
「……状況、確認しても?」
声もまだ完全には戻ってない感じ。無理もないか、離れた場所にいたはずなのに顔面蒼白になるくらいだったし。
「おう、お疲れさん。はいこれ、こいつが持ってたデバイスな。」
「ああ、そっちもお疲れ様……聞きたいことはたくさんあるけど、まず一つ最初に確認させて」
聞きたいこと?あの声とかのことかね。んでもって確認とな?
「殺してないよね?」
うーん、勘がいいなコイツ。
「……へーきへーき。さすがにそこまではしてないさ」
「今の間は何……?本当だろうね……?」
疑わしげにこちらを見るオペレーターにコラクスが不満そうに声を掛けてくる。
「オペレーターは私達を何だと思ってる。ちゃんと思いとどまって四肢を捥ぐ程度で済ませるから」
俺は圧し折るって言ったんだが、なんかより苛烈になってないか?
「全然ダメじゃないか?!というか馬乗りなのはそのためなの?!」
わーわー言い合う
「これでひと段落かな?……いつまでも現世にしがみつくのは良くないだろうしなぁ」
「……っ!お父様!」
「ツェーちゃん。それにカミラも。短い間だったけどまた会えて嬉しかったよ」
彼らの会話は俺には聞こえないが、ペレコトは聴いているんだろうか。
「旦那様……」
「カミラにはまた迷惑をかけるね。ああ、ツェーちゃん、ほら泣かないで」
「まってぇ、ぉかっ、おかあさまにもぉ……!」
家族との会話、かぁ。……そろそろ
「……行こっか、パルドス」
「……りょーかい」
気づかれてたか。
「──で、なんで僕が奢る流れになってるわけ?」
あれから三日、今は反省会と打ち上げを兼ねた焼肉である。オペレーターの金で。
「決定事項だから。じゃあ肉多めで」
「誰が決定したのそれ!?」
コラクスが我関せずでメニューを指差してるのを見て、オペレーターがガクッと肩を落とす。とはいえ、端末で注文するコラクスを止めないあたり、根は律儀な奴なんだろう。
「ま、依頼の報酬ってことで一つ」
「依頼って……いつ僕が……あっ」
気づいたか。そう、俺達は"何某*3を抑えて"とオペレーターに言われた時、"依頼なら"と返し、オペレーターはそれに頷いた。口約束だが依頼は依頼だ。
「もはや詐欺だよ……」
げっそりした顔で言われると、さすがにちょっとだけ申し訳なさが顔を出すな。ちょっとだけ。
「あ、あの大丈夫、ですか……?顔色が……」
ペレコトが恐る恐る聞くと、オペレーターは片手で顔を覆って唸った。
「……まあ、あまり良くないかな。あの声のおかげで」
大分効いたらしく恨みがましい目でコラクスを見る。
「効いてるとかいうレベルじゃないよ……あの声、思い出すだけでまだゾワッとする。でもまあ、あれが最善手だったんだろう?なら──」
「劣化だけどね、あれ」
コラクスが涼しい顔で肉を頬張りながら言うと、オペレーターの箸が止まった。つーかコラクス食うの早えよ、なんでもう二皿空いてんだよ。
「劣化……?」
「本物はもっとヤバい」
「聞きたくなかった情報をありがとう」
乾いた笑いを浮かべつつ、それでも注文のボタンを押すあたり、オペレーターもなかなかたくましい。──あれ?でも俺達があの化け物に出くわしたのってオペレーターが外の様子を確認するよう言ったからで─……うん!自業自得だな。いやぁ、人の金で食う肉は美味い!*4
ふと視線をやると、ペレコトが黙々とスープを飲んでいる。表情はいつも通りだけど、心なしか肩の力が抜けてるような、そんな感じ。あの一件、本人にとっても結構な仕事だったんだろう。
「──それにしても」
オペレーターがふと手を止めて、こっちを見た。
「君たちって本当に便利屋?」
「便利屋だよ、依頼は大体なんでも受けるし」
「その『なんでも』の範囲がおかしいって言ってるんだけど。普通は戦闘とか探偵とかある程度特化してるでしょ」
「そう言われてもなぁ?」
「う、うん……
「それ以外無いし」
「「「それでいい」」」
「……そっか」
「次は─」
「まだ食べる気なのか!?ち、ちょっと二人とも止めてくれ?!」
諦めろオペレーター。最近
ペレコト:ノーヴィル家という家族の形に思うところがあったらしい。好きな肉はタン塩。
コラクス:ブーツ、ブレード、スティングの三形態に変形できる脚部武装をペレコトから給料半年分前借りして買った。好きな肉はハラミ。
パルドス:ナイア関連を考えると頭が痛くなるので全力で目を逸らすことにした。好きな肉はホルモン。