ソシャゲとかのストーリーで絡んでくる三人組っていいよね 作:笹食え
依頼のない休日、というのは存外暇を持て余す。
ここで問題、そんなときはどうすれば良いのか?
答えは部屋でうだうだするか外をぶらつくかだ。そして今拠点はペレコトの恋愛映画の上映会と化している。
後は分かるね?あの布教魔に巻き込まれないように逃げるんだよ!
馴染みの喫茶店のドアを開けカウンター席に着く。
「いらっしゃい……お前か。注文は?」
「お冷」
壮年のマスターの咎めるような視線を無視して机から適当に持ってきた本を開く。読むというより、暇つぶしのポーズに近い。この本は……多感な時期の少女が夜眠るまでのとりとめもない話……だったか、あまり何回も読んだ記憶はない。にしても、最近は読んでないから俺の机の上にないはずだが……紛れ込んだのか?あまり趣味じゃないし……まあ巡り合わせってことで。
三ページも進まないうちに、ベルの音が鳴った。
「──フッ。ここにいたか、
本を閉じるまでもない。
目がやたら輝いてアホ毛がぴょんぴょんしてる常連さんのご登場だ。俺の事を
「相変わらず楽しそうだね君」
「ふっ……恐れを顔に出さないとは、相変わらずやるな
「いやぁ、遠慮しとくよ。自分はまだまだ〜……みたいな?向いてないだろうし」
丁重にお断りさせていただこう。
「つれない奴だな貴様は。まあいい、マスター。いつものを」
「アイスココアホイップ?」
「あ、ああ。……おほん!時に
「あー……まあ、その仕事が忙しくて?」
実際、夕景区に時計を取りに行く依頼からほぼ途切れる事無く依頼があった。繁盛しているのは嬉しいが、俺達も三人だけだから出来ることにも限りがある。だから今日は休みな訳だしネ!
「そ、そうなのか……」
どことなく*1しょんぼりとする無辜の咎人《ペッカトーレ》。
「最近お前が居なくて寂しかったらしくてな」
「マ、マスター!?べ、別に居なかったからでは、い、いやそもそも我が寂しがるなどとそんなことは─」
何故か俺に対してパタパタとクラシカルゴシック調の服を揺らすペッカトーレ……あーっ!お客様!!困りますお客様!!困ります困ります!!袖のフリルが!フリルが俺の目に!あーっ!!なんなら金具も!!いったぁ!?
「はいアイスココアホイップね」
「う、うむ。いいか
「わかったわかった。ココア飲んで落ち着けよ」
うー、跡にならないといいけど。
「お前は何か注文しろよ」
ちぇ、さすがに止められたか、お冷だけでやり過ごそうと思ったんだけどな。二時間くらい。*2
「……さて、
吟じるて。別に依頼で面白かったことを話してるだけなんだがなぁ。
「まあ、いいけどさ。マスター、お冷お代わり」
「注文しろって」
ダメか。何頼もう?話しながら考えるか……。本をしまって彼女に向き合う。結局五ページも読めなかったな。
「んーとな、まずちょっと立ち入り禁止になってる古い倉庫にさ、頼まれた荷物を取りに行ったんだよ」
『子供のお気に入りの人形を取ってきて』とかだったか。全員、布製のぬいぐるみとか着せ替え出来るような人形を想像してたら女性型のシリコン製リアルドールで闇を感じた。二人が持ちたがらないから俺が抱えて依頼人のとこまで持ってった時は泣きそうになったよ。
「ほう、禁足地へ
「そんなとこ。あ、マスターオムライス一つ」
「手間のかかるモンをこいつ……」
目についたのがそれだったんだもん。単価高いから許して。
「それで?何があったのだ?」
「ああ、倉庫に入った途端、俺達の目の前には禍々しいオーラ纏った刀振り回すごろつきがいた」
「ま、禍々しいオーラを纏った刀……!そんなものがあったのか!」
よーし食いついた。
「そうそう。暗がりから襲われてさ」
「おぉ…!それで!?どうなったの!?」
「刀が凄くても使い手がズブの素人だったらしくてな、俺の仲間が刀で応戦して大立ち回り。切られるのが先か、荷物を見つけて切返すのが先か……。激戦だったが見事、三人で連携して荷物を見つけ、ごろつきも最後には鮮やかに討ち取ったぜ」
「うわぁ……!」
「ちなみにどこまでマジのやつ?」
マスターが耳打ちで聞いてくる。どこまでかと言われれば──
「まあ9割方マジ」
「怖い世の中だ」
ちなみに一割には大立ち回りの前にコラクスが即ごろつきの首を刎ねたことを隠してる。首無くても動くんだからどうしようか迷ったな。ペレコトが卒倒したし。*3
「とまあ、喜びそうな話はこんなとこかね。あとはまあ〜……そうだな、クラゲの化け物退治の話とかか?」
「聞かせて聞かせて!」
見るだけで正気を失うだの、常に呪詛を吐き散らしてるから耳栓がなきゃ死ぬところだっただの、実は脳をハッキングするクラゲだのと、実際は雷潮区の
ひとしきり語り終えたところで、ペッカトーレが少し黙った。
「……いいなぁ」
「──っな、なんでもない!忘れろ!」
……まあ、なんでもないんだろう。
「それはいいけどホイップ溶けてるぞ」
「……うわーっ!?」
マスターは手を止めて一瞬こっちを見たが、何も言わずフライパンを睨み直した。ライスが見えてるしそろそろ出来上がるんだろう。
「はい、オムライス」
「どうも。……いつも思ってたけどなんで喫茶店でデミグラスソースとチーズかかった豪勢なオムライスが出るの?サンドイッチとかはまだしもパフェ、バロット、カルパッチョ、挙げ句の果てにはスターゲイジーパイとかあるし」
「まあいいじゃねぇか別に」
そそくさとメニューをしまうマスター。まあいいで片付けていいのか?それもう喫茶店じゃないんじゃ……待て、今メニューの端っこに「スピ」って見えたぞ。なんだ「スピ」って、スピリタスじゃないだろうな。さすがに酒売るのはまずいって。あっオムライスおいしい……いや騙されんぞ。
アッハイ詮索シナイデスゴメンナサイニラマナイデ。
「ふう、ごちそうさまでした……うぅ、寒い……」
ココアのホイップ乗せを完飲したからかペッカトーレが凍えるような仕草をする。
……そうだな。
「一気飲みするからだろ。腹の空き具合は?」
「え?ち、ちょっと空いてる……?」
「マスター、この子にホットサンド」
「へいよ」
「へ?な、なんのつもりだ
「まあまあ」
異議を唱えるペッカトーレを大袈裟な動作と声で抑える。他に客が居なくてよかった。いつ行っても居ないけど大丈夫なのかこの店。
「まあまあではなく!」
「まあまあ」
「そうだぞ嬢ちゃん、奢られとけって」
マスターからの援護もあり、諦めたのか渋々といった様子で礼を言う。
「う……。いただきます」
こういう時に年下にカッコつけるのが大人なんですわ。お金はあるしね。……俺が頼んどいてなんだけどよく一気飲みしてホットサンド食べれるね君。
それはそれとして。
「……ちなみにマスター?俺の知ってるここのホットサンドってチーズとハムだったよな?なんで具材に高そうなバジルチキンとレタスが見えてる訳?」
「いやぁ、最近うちも値上げしてな。あぁ!ホットサンドも値段変わるから」
「明らかに具材のせいだろうが!わざと吊り上げやがって!」
『そう言えばそうだった!』みたいな顔すんなよ!お冷の恨みか貴様ァ!オムライスとホットサンド頼んだだろうが!
「くそう……!マスターのタヌキ親父めぇ……!」
「ふ、ふふふ」
そんな風に笑うペッカトーレを見て唐突に何度か繰り返し見た本の文を思い出す。たしか─
「私は、他のひとたちと違っている、ということが、いちばんの自慢なのです。だったか?」
会計はいつもの倍以上した。ガチで具材で値段釣り上げやがったぞ。
パルドス:好きなジャンルは紀行。
ペッカトーレ(キアーラ):好きなジャンルはファンタジーと恋愛。
マスター:好きなジャンルはサスペンス。