ソシャゲとかのストーリーで絡んでくる三人組っていいよね 作:笹食え
紅茶派なのでもう1話
特にこれといった仕事も無く、俺達はゆっくりしていた。俺は読書、ペレコトはゲーム、コラクスはいつもの武器整備だ。平和だな、というか前回が二日連続だっただけで本来はこれくらい暇があるんだよな〜。
『──区の商業施設では"影が立体的に確認される"という異常反応を検出し──』
なんとなくでつけていた小型テレビがニュースを伝える。目を向けると異常のニュース。影が立体的ねぇ……そんな感じの異常数ヶ月前にもあった気がするけど。
『到着した調律局の第4隊が対処、その後異常の鎮静化が確認されました。』
うわ、前見た調律局の人たちだ。なんかこう、前よりベテラン感があるような……?第4隊……これを覚えてもしょうがないな。
『次のニュースです。今朝、群樹区の紫陽花の低木帯で花弁が回転し、飛行する個体が発見されました。』
「手裏剣かよ」
それはそれで異常ではなかろうかとも思えるニュースに興味を無くしテレビの電源を切る。
「ん……どう、したの?」
ツッコミがペレコトに聞こえていたらしい。
「ああいや、回転飛行する紫陽花が見つかったらしくて」
「紫陽花が、飛行?それも回転して……?」
まあ、そうなるよね。しかも花弁が、だぞ。あの小さめな花が一つ一つ独立して飛んでくるのは集合体が苦手な人にはキツいだろう。
そんな会話をしていると、
「二人とも今日暇?」
いつの間にやら降りて来ていたコラクスが聞いてきた。足音しなかったんスけどこの人……。
「まあ暇っちゃあ」
「暇、だけど……」
「なら映画見に行こう」
あらずいぶん急なお誘いだこと。映画か……ずいぶん見てないな。
「映画?」
「何見んの?」
「これ」
ペレコトと俺がそれぞれ聞くと、コラクスはふふんと映画のチケットを見せてきた。用意周到だね君。
「"イリュージョン・フェイク・イミテーション"……うーん……パルドス、知ってる?」
「いや全然」
「二人とも知らない?なら良かった」
コラクスが満足げに言う。
「知ってたら面白さ無くなっちゃう」
「コラクスは知ってんのこれ?」
「知らない。チケット見て初めて聞いた」
おい待てや。このチケットの出所どこやねん。まさか強盗とかじゃないだろうな。
「……なら、どうやってチケット、買ったの?」
「?昨日ぼこぼこにしたチンピラが落としていった」
「それもうカツアゲじゃんか」
三枚も……なんてことだ。うちのコラクスちゃんがカツアゲするようになっちゃって!そんな子に育てた覚えはないわよ!*1あんまり強盗と変わらないじゃん……。
「でも知らないタイトルでなんか興味を惹かれた」
「すごいなお前……」
イミテーションにフェイクにイリュージョンってタイトルほぼ同じ意味の単語ばっかなのに?そんなに興味惹かれることある???
コラクスのハングリー精神*2に驚かせられていると。
「……で、でもこれ今日の日付はある、けどいつ上映かが書いてなくない……?」
ペレコトの言葉を聞きチケットを観察する。
入場時にチケットの一部をちぎるよくあるタイプのチケット。
だが確かに本来書いてあるべき上映時間、さらに金額と座席番号が書いていなかった。
| イリュージョン・フェイク・イミテーション | E シ ネ マ |
|---|---|
| 823/ 05/ 16 |
「……コラクス?」
「何?」
「これは……平気、なの?」
「……多分」
いや無理では?このチケット見せられて「ヨシ!行こう!」とはならんて。
異常か?チケット燃やす?燃やす?*3
「いくらなんでもこれは怪しくない……?危ないよ……?」
なんかペレコトが諭すモードに入ってるな。
さあ、ペレコト選手はコラクスの好奇心を止められるのか!?
「だから見に行く」
ダメだった……!むしろそれ目当てだった……!なんてことだ、猫か赤子並みの好奇心です!何物も恐れない!コラクスは恐れない!*4
「うー……パ、パルドスも何か言ってよぅ……」
ペレコトが助けを求めてくる。うぅむ、一回のカウンターで沈むとは軟弱者め!
「コラクス、このチケットがどんな物か見当がつくの?」
「ばっちり。聞けば行きたくなるはず」
ほんとかなぁ?
「安心したいから説明お願い」
「任せて」
ふんすふんすと意気込むコラクス。なんか好きなものを語る幼児のような……。さっきは赤子だったから成長してる……ってコト!?
「まずチケットにあるEシネマ。ここは五年前くらいに異常が発生して能力者が暴走、その後
待て、いきなりぶっこむな!
「じ、じゃあ今は閉館してるんじゃ……」
ペレコトが震えた声で呟く。潰れたんならそう言う事になるな。
「うん。そして"イリュージョン・フェイク・イミテーション"……長いからイリフェ。イリフェは十年前公開の映画」
「映画はさらに昔のやつなのか」
「えと、内容は怪盗が宝を盗む……らしいけど……まあ
ペレコトが映画を調べたようでそう言ってくる。
「でもチケットの日付は今日。年も書いてるから間違ってない。大体映画は公開から長くて二ヶ月の放映」
リマスターでもない限りは今日の放映は無いし、さらに映画館は五年前に閉館。
「どれも年代の合わない映画館、映画、チケット。考えられるのは異常か誰かの作為か……どう?面白そうでしょ」
面白そうって言うか……
「こ、怖いよ〜!」
そういうのが苦手なペレコトが涙目で言う。
「概ね俺も同感。誰かがわざとやってるなら不思議さよりかは意味のわからない怖さがある」
「つまり肝試しになる?」
「ならんでいい。リスクが高いんじゃないかって話」
小さいときから思ってたけどわざわざ肝試しして何になるんだ。肝を試してもどうにもならんだろうに。
「……ダメ?」
こいつっ……!普段絶対やらないような上目遣いと甘え声を……!
……慣れてないからかふにゃふにゃだけど。
「俺よりリーダーに聞くべき」
「ゔぅん!……りーだぁー……おねがい……?」
まだやんのかその声。てかチューニングしてるってことは能力無しで出してんの!?
「か、可愛く言っても、ダメ!」
ペレコトさんからストップかかりましたね。
さすがにリーダーとしてリスクケアをしたかったか。
「怖いもん!」
思いっきり私情だった。ちなみにこのペレコトというお嬢様は実家のお屋敷で暮らしてる時、夜の暗い部屋が怖くて蝋燭を立てた燭台を二本置いて寝ていたほどの怖がり。
なんならガスランタンも四つくらい置いていたらしい。
「むー……。」
これにはコラクスもこの不満げな顔。*5というか怖い点にそんな興味惹かれるか?
「なんか変」
「……急にどうした?」
「ペレコトの言うこと無視してでも行きたいと思うのが」
コラクスが自らの異変を訴える。確かにやりたいことが却下されたらいつも不貞腐れはしてもペレコトの言うことには従うが……。
「なんかこう……呼ばれてる?」
「チケット、から?」
「そう」
……会話したり側から見てる分には結構余裕ありそうだけどな。
「見る邪魔をするなら誰を倒してでも、って考えちゃう。これはおかしい」
「自己分析すごいな……ならそのチケットは見たくなるように誘導してるってことか?」
「多分そう」
思考誘導も込みとなるといよいよやばい物認定しなくてはいけないだろう。やっぱ燃やそうぜ!
「チケット破ってみる?」
「それで何か良くないことが起こったらまずいが……」*6
「でも、このまま放置もできない、し、うーん」
「えい」
「「え?」」
目線の先にはぱりぱりぱりと小気味良い音を立てて切り取り線で破られるチケット。……まじかよこいつ!?
「「「……………………」」」
「……何も」
「起きてない、よね?」
「いぇーい」
い、いぇーいちゃうぞこのアホゥ!!おま、これ、おまっ!本気で切り取って何か起きてたらどうすんだよ!!
「結果オーライ」
結果論……!はー何このくそ強心臓。むしろ怖いまであるぞ。
……!
「コラクス」
「は、はい……」
ひ、ひぇ〜……ガチギレされてる……。声は大きくないのに圧が……。
「そこに正座」
「はい……」
「……俺部屋いるね」
巻き込まれんうちに退散退散。コラクスがすがるような目で見てくるが知らん。自業自得じゃい。
「くっ……。」
「コラクス?どこ向いてるの?」
回転飛行する紫陽花:突然変異。異常ではない。
イリュージョ(略):十年前のB級……というかもはやC級映画。つまらない。
チケット:破られると誘導効果を失う。映画は何でも良かった。人が釣れる擬似餌なら何でも。