【完結】イルシアの口を掃除したいだけの人生だった   作:烏何故なくの

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イルシアの口を掃除したいだけの人生だった

 

 ニーナの釣ってきた魚を食べ終え、俺は舌を口腔内で暴れさせる。

 口の中がざらざらしていやがる。

 細長いものが歯の裏側にひっついているのだ。

 なんとなくだが、エグル・バッシュのせいなような気がする。

 

 

「ぺぷっ」

 

 玉兎は全然気にしていないようだ。

 強えな、あいつ……。

 夜の間はニーナを口の中にしまっておかなきゃいけないんだから、お前もうがいしていいんだぞ。自分でキレイな水を作れるんだし。

 

 玉兎が大きく口を開ける。

 その瞬間、猛烈な勢いで一羽の鳥が玉兎の口の中に吸い込まれていった。

 

 な、なんだ今の。

 素早さにして150は超えている勢いだったぞ。

 ダイナミックな自殺なのか? 

 玉兎はのんきに自分の体を耳で掻いてやがる。あんな速度で口の中に飛び込まれたわりに、痛みすら感じてないらしい。

 

 ふわぁと音を立て、玉兎が口を開ける。

 顔に髑髏のような模様をつけた小鳥型のモンスターが、中からよちよちと歩いて出てきた。

 な、なんだ……? どういう生態してんだ??

 

『ずいぶん無遠慮な視線なのサ。芳醇なドラゴンさん』

 

 ね、〖念話〗まで持ってやがる。

 一体どういうモンスターなんだ?

 

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

種族:イツマデウシツツキ

状態:通常

Lv :42/48

HP :123/123

MP :121/121

攻撃力:38

防御力:102

魔法力:89

素早さ:160

ランク:D+

 

特性スキル:

〖食再生:Lv1〗〖飛行:Lv8〗〖危機察知:Lv1〗〖念話:Lv4〗

 

耐性スキル:

〖飢餓耐性:Lv4〗〖腐肉耐性:Lv5〗〖毒耐性:Lv7〗〖呪い耐性:Lv2〗

 

通常スキル:

〖啄ばむ:Lv5〗〖ブラッシング:Lv5〗〖人化の術:Lv5〗〖レスト:Lv3〗

 

称号スキル:

〖掃除屋:Lv2〗〖寄生Lv上げ:Lv2〗

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【〖イツマデウシツツキ〗:D+ランクモンスター】

【モンスターの死体の中から生まれる腐肉食の鳥。】

【大型のモンスターの垢や血、寄生虫を喰らう。】

【自分より強いモンスターと共生関係を築くことができる珍しい種族。】

 

 自分より強いモンスターと、共生……?

 攻撃力がかなり低い。

 〖レスト〗ももってやがる。完全サポート特化って感じだな。

 〖念話〗に〖人化の術〗…… う、うらやましい。

 人里に行ったって歓迎されるんじゃねぇの?〖ブラッシング〗なんてスキルもってるし。

 

『玉兎くんとはビジネスパートナーなのサ。お互い念話も持ってるとその辺スムーズだよネ』

 

 ビジネスパートナーってことは、ようは玉兎の口を掃除してる代わりに食べカスをもらってるってわけか。

 あの~、イツマデさん、それって俺と契約するわけには……。

 呪い耐性も持ってるし、不浄らしい俺の口の中でも大丈夫なんじゃ……。

 

『うん? かまわないけど。だいぶそそる匂いをしているし』

 

 思わず自分の口を押さえた。

 口臭を面と向かって指摘されるの、だいぶ心にくる。

 さっきもさらっと芳醇とか言われたな。ナメクジ食べてる玉兎より臭いってことないだろ。

 

「だ、大丈夫ですにゃ! ドラゴンさんのはなんかこう……落ち着きます!」

 

 すまねぇニーナ、あんまり擁護にもなってない擁護をさせちまって……。

 これも俺の口が汚れてるが故だ。ここいらですっきり掃除しちまおう。

 

 俺は地面に顎をつけ、限界まで口を開いた。

 

『すばらしいね、イタダキマス!』

 

 イツマデは目を見開いて、俺の口に飛び込んだ。

 いまさらだけど悪食ってレベルじゃねえな。

 

 お、なんかちくちくする。

 だけど不快な感じじゃねぇ。なんだろう、指でくすぐられるのと、注射器で刺されるのの中間くらい?

 歯の裏までキレイにされてる感覚がある。

 な、なんか……気持ちいいかもな。

 〖呪い耐性〗あるから〖竜鱗粉〗も気にしないでいいし、ずっと俺の口内掃除してくれねぇかなイツマデ先生。

 

『こんなところかな? ゴチソウサマ』

 

 ぴょいっと俺の口からイツマデ先生が飛び出してきた。

 舌を使い、口の中をチェックする。

 うお、歯がとぅるっとぅるじゃねえか。

 歯の隙間に繊維が詰まってる感じもしねぇ。歯医者いらずだな。

 

『もしよかったら、そこのニンゲンの口腔も掃除させてよ』

 

 イツマデ先生はそう言って、ニーナを指さした。

 

 ニーナの口の中に入るにはイツマデ先生のサイズは大きすぎるんじゃね?

 

 そう思った時、イツマデ先生の体が膨張していく。

 あっという間に130cmくらいの、小柄な少女が現れた。

 頭部には鳥をモチーフにしたフードをかぶっている。

 指先には歯ブラシのように羽毛がついていた。

 

 〖人化の術〗と〖ブラッシング〗を併用するとそうなんのか。マジで歯医者いらねぇじゃん。

 

「さ、口を開けて」

「い、痛くないようにおねがいします……」

 

 ニーナは恐る恐る口を開く。

 

「さあ、いくヨ……」

「あっ、にゃ、にゃにゃにゃ……」

 

 ………。

 人間の姿を得たイツマデ先生を見て思ったけど。

 アイツ……なんか、悦んでねぇ?

 口元が快楽に歪んでるっていうか。

 

 考えてみれば、あいつニーナの食べカス食べるんだよな。

 そりゃ他人の生存戦略にどうこう言うべきじゃないのはわかってるけど………。

 イツマデ先生に掃除してもらうの、なんか嫌になってきたな。

 

 

 

 

 

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