【完結】イルシアの口を掃除したいだけの人生だった 作:烏何故なくの
アルバン大鉱山、地下洞窟の奥。
そこで俺は、竜狩りのヴォルクと相対していた。
「狩らせてもらうぞ、ウロボロスよ!」
ヴォルクは人間だ。
魔王の動向について知っていることがあるかもしれない。
どうにか殺さず無力化したい。
今回はイツマデ先生にも手伝ってもらうことになりそうだ。頼めるか?
『大丈夫なのサ。左の君の喉奥に隠れておくよ』
思念を飛ばせば、相方の口の奥から反応が帰ってくる。
イツマデ先生にはブレス攻撃が使えない相方の口腔に隠れてもらっていた。
【〖カラドリウシツツキ〗:C+ランクモンスター】
【神の化身とも言われる神聖な鳥。】
【回復魔法の達人で、カラドリウシツツキが訪れた村だけが大陸を襲った疫病から逃れたという逸話がある。】
【自分より強いモンスターと共生関係を築くことができる珍しい種族。】
C+ランクの、回復特化型モンスター。
〖ウロボロス〗の自己回復能力と合わせれば、ヴォルク相手でも強気に出られる。
俺は前へと駆けた。
「はぁああっ!」
ヴォルクが大剣を縦横無尽に振り回す。
衝撃波が三発、俺の正面と回避するだろう位置に放たれた。
俺は魔力の風を足に纏わせ、〖鎌鼬〗を放って〖衝撃波〗を相殺する。
狙うは接近戦だ。
俺は手に黒炎を纏わせ、ヴォルクの顔面を狙う。
大ぶりの〖ドラゴンパンチ〗を囮にして、ヴォルクの回避する位置を調整する。
ヴォルクは思った通り左斜め上に跳んでくれたが、回避しながら相方の頭部をカチ割らんと剣を振るった。
「グオオオオッッ!」
相方は剣の側面に頭部をぶつけ、剣の一撃を逸らす。
そして口を開けた。
「ク、ブレスか……!」
ヴォルクは腕で急所を庇う。
しかし相方はブレスを使えない。
ここで頑張ってもらうのはイツマデ先生だ。
『ヤ、こんにちは』
「は?」
邪竜の喉奥から顔を出した小鳥に、ヴォルクが呆気に取られる。
剣を構える暇もなく、イツマデ先生は高らかに歌い出した。
ヴォルクは頭を抑え、地面に転がる。
やっぱ強えな、イツマデ先生の不意打ち至近距離〖混迷の歌〗。
我が一派の歌姫となったイツマデ先生は、歌関連のスキルも充実している。
地面に倒れたヴォルクを俺が足で押さえ、ナイトメアが糸でぐるぐる巻きにする。
ナイトメアとの連携も、結構いい感じになってきたんじゃなかろうか。
イツマデ先生は相方の口から飛び立つと、ヴォルクの口元に顔を寄せる。
『うん、芳醇だ』
俺はそっと口を押さえた。
他人に宣告されるのを聞くのも楽しいもんじゃねえな……。
イツマデ先生が臭いと思う口とかあんのかな。
『あるよ。あの聖女サマの口はドブ臭くて仕方なかった』
お前そんなこと思ってたの??!
どうりでなんかリリクシーラと会話してる時無言だと思ったら。
リリクシーラの称号スキルには〖嘘吐き:LvMAX〗があった。イツマデ先生は感覚でそのことを理解しているのかもしれねえ。
っつーことは芳醇な口認定されたヴォルクは結構信用してもいいのかな。
単に裏表がないだけかもしれねぇが。