【完結】イルシアの口を掃除したいだけの人生だった 作:烏何故なくの
『主殿、さささ、よろしくお願いしますぞ!』
神の声に連れてこられたンガイの森で、俺たちはレベル上げをしていた。
素早くレベルを上げて強くならねぇと、神の声のやつに世界をめちゃくちゃにされちまう。
アロは〖ワルプルギス〗へ進化し、そしていまトレントさんも進化しようとしている。
『……ま、進化先は慎重に選ぶことだヨ。ボクみたいなハズレを引かないようにね』
どこか拗ねたように、イツマデ先生が言う。
そ、そんなに拗ねなくても……。
イツマデ先生の進化先、強いぞ?
【〖アンズー〗:A+ランクモンスター】
【全てを喰らう悪食な鳥。】
【その牙はあらゆる穢れを泥に変えて浄化することができる。】
【あまりの素早さに、その時の勇者から剣を盗んだという逸話がある。】
【自分より弱いモンスターと共生関係を築くことができる温厚な種族。】
アンズーはA+ランクの、素早さ特化型の魔物だ。
〖天命の牙〗という、噛んだものを泥に変えてしまうスキルは、格下相手なら即死させちまうし、アロの〖未練の縄〗とも相性がいい。
俺としては、イツマデ先生に今までの戦闘でなんども助けられたのだが。
『こんな体の大きさじゃ、イルシアくンの口に入れないでしょ!!』
アンズーは俺の頭ほどの大きさがある。口の中に入ってもらうには少々大きすぎる。
〖人化の術〗を使えばいいのではないかと思っているが、本人いわく「本当の姿じゃないと口腔でくつろげない」とのことだ。
「気持ち、分かるかも……竜神さまの臭い、安心するから」
アロはそう言って俺の口に顔を近づける。
……なんか褒められてるが、要は口が竜臭いって話だよな?
『はぁ~~~~~、どこかに優しくて口の大きな魔物、いないかナ』
ぜ、全部終わったら〖ディアボロス〗の姿になって一緒に日向ぼっこでもするか?
『ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』
イツマデ先生がかつてないほど荒ぶっておられる。
原因はトレントさんだ。
トレントさんは、進化して〖ワールドトレント〗になった。その大きさ、約50メートル。
当然口腔も大きい。イツマデ先生どころか、俺まで入れるレベルの大きさの口である。
『どうですかな! 主殿、アロ殿、イツマデ殿!』
『さいっこうだよトレントくン! ボクここに住む!!』
『家具を置いたってかまいませんぞ!』
進化したてで歯垢なんかどこにもないだろうに、イツマデ先生はトレントの口の中ではしゃぎまわっている。
盛り上がってるところ悪いんだけど、そろそろ〖木霊化〗してくんねえと敵を呼び寄せちまうぞ。
『わ、わかりましたぞ』
トレントさんの姿が縮んで、丸っこいペンギンのようなシルエットになっていく。
……。
いま、イツマデ先生が口から出たか?
『ここにいるヨ~~』
焦った俺の脳裏に念話が届く。
どうやらイツマデ先生は、玉兎の〖体内収集〗のようにトレントさんの中に収納されているらしい。
ま、マジで便利だ。
トレントさんと俺の〖ディメンション〗があれば、なんでも持ってかえれるぞ。