広げろ、陰の実力者の、解釈を!! 作:実験者
廃村の広場が、一瞬で戦場に変わった。
僕が右足を軽く踏み込んだ瞬間、地面が爆発した。紫黒の魔力が奔流となって大地を貫き、核融合のエネルギーが一点に集中。石畳が粉々に砕け散り、土と岩の破片が巨大な柱となって立ち上る。爆音が遅れて響き渡り、霧が一気に吹き飛んだ。
視界が土煙で埋まり、月光が乱反射して白く霞む。テンプラーの騎士たちがよろめき、槍の穂先が大きく揺れる。
ウィクトーリアの白金色の聖衣が土煙の中でぼんやりと浮かび上がり、まるで光の塊が揺れているように見えた。僕はすぐに動いた。両手を広げ、魔力を網のように張り巡らせる。捕らえた三人の商人と二人の魔族を、紫黒の障壁で一纏めにした。
球状の結界が彼らを完全に包み込み、地面からゆっくりと浮かび上がる。内部で商人たちが悲鳴を上げ、魔族が暴れようとするが、結界は微動だにしない。表面に細かな紫の稲妻が走り、内部の音を完全に遮断した。
「アルファ」
僕は短く呼んだ。声は静かだが、戦場の喧騒の中でしっかりと届く。アルファは即座に反応した。金髪が風に舞い、剣を鞘に戻して結界に手を添える。
彼女の蒼い瞳が冷静に光り、魔力を流し込んで結界をさらに強化した。彼女の指先から淡い光が広がり、結界の表面がより硬く、輝きを増す。
「任せて」
彼女はそう言って、結界ごと後方へ引きずるように移動を始めた。廃屋の影へ、解放された少女たちの方へ。アルファの背中が土煙に溶け込み、徐々に遠ざかっていく。
少女たちの小さな泣き声が、遠くからかすかに聞こえてくる。彼女たちはアルファの姿を見て、少しだけ安心したように肩の力を抜いていた。
視界がようやく開けた。ウィクトーリアが剣を構えていた。純白の刃から膨大な光の奔流が迸り、土煙を一瞬で切り裂く。白と金の魔力が爆ぜ、広場全体を照らし出す。まるで昼のように明るくなり、騎士たちの鎧が青白く輝いた。
彼女の目隠しが月光と自らの魔力で妖しく反射し、幼い顔立ちが神聖な威厳を帯びている。僕はゆっくりと息を吐き、ゼータに視線を向けた。
「ゼータ、まずは雑魚から狩る」
ゼータの金色の瞳が燃えるように光った。尻尾がピンと立ち、耳が前へ倒れる。チャクラムを両手に握り、唇の端が歪む。彼女の呼吸が少し速く、胸が上下している。
「了解。聖女は私が抑えるよ。ムカつくから、フルボッコできる機会があると嬉しい」
その言葉に、僕は一瞬言葉を失った。
「……」
ゼータ、感情的になり過ぎて負けそう。大丈夫?彼女の瞳の奥に、過去の痛みと憎しみが渦巻いているのが見えた。一族を失い、呪いで苦しみ、救われなかった少女の記憶が、今、ウィクトーリアの存在にぶつけられている。
普段の飽きっぽい態度とは違い、呼吸が乱れ、動きにわずかな隙が生まれそうだった。冷静さを失えば、致命的なミスになる。
僕は小さく息を吐き、静かに言った。
「応援する」
ゼータは僕を振り返り、わずかに微笑んだ。いつもの飽きっぽい表情ではなく、純粋な信頼と、どこか切ない光が宿っていた。耳が少しだけ立ち、尻尾の動きが落ち着く。
「私にとって、最強の力だよ」
その言葉に、僕の胸がわずかに熱くなった。
シャドウの仮面の下で、僕は小さく頷いた。次の瞬間、戦場が動き出した。テンプラーの騎士たちが一斉に槍を構え、突進してくる。鎧の金属音が響き、青白い魔力が槍先に集中する。二十人以上が、統率された動きで僕たちに向かってくる。
地面を蹴る音が重なり、土煙が再び舞い上がる。僕は直剣を構え、紫黒のプラズマを刃に沿わせた。核融合のエネルギーが剣先から火花のように零れ落ち、剣全体が震えるように輝く。
ゼータは影のように動いた。チャクラムを投擲し、一人の騎士の肩を貫く。血が噴き出し、騎士が崩れ落ちる。続けて跳躍し、もう一人の喉元にチャクラムを突き立てる。彼女の動きは速く、しかしどこか乱暴だ。
感情が乗っている。
普段の搦め手ではなく、正面から叩き潰すような戦い方。チャクラムが回転し、血飛沫を撒き散らしながら、次々と騎士を倒していく。
僕はそれを横目で見ながら、騎士の群れに飛び込んだ。剣を一閃。紫黒の軌跡が弧を描き、三人の騎士を同時に斬り裂く。
鎧が紙のように裂け、血と魔力が噴き出す。僕はさらに加速し、地面を蹴って跳躍。空中で体を捻り、剣を振り下ろす。爆発的な衝撃波が広がり、騎士たちが吹き飛ばされた。
地面に新たなクレーターができ、土煙が再び立ち上る。
ウィクトーリアは中央に立ち、剣を高く掲げた。
「神の名の下に……」
彼女の声が響き、白金の魔力が爆ぜる。光の奔流が僕たちに向かって放たれた。視界が白く染まり、熱と圧力が肌を焼く。
光が地面を抉り、石畳が溶けるように崩れ落ちる。僕は障壁を展開。紫黒の壁が光を弾き返すが、衝撃で体が後ろに押しやられる。足元が抉れ、土が舞う。ゼータはチャクラムを盾にし、光を切り裂いて突進する。
「消えろ……!
ゼータの叫びが、霧を切り裂いた。彼女はウィクトーリアに向かって一直線に飛びかかる。チャクラムが回転し、光の奔流を掻き分ける。
ウィクトーリアは剣を振り上げ、ゼータを迎え撃つ。二人の魔力が激突し、爆風が広場を揺らした。衝撃波が騎士たちを吹き飛ばし、廃屋の壁が崩れ落ちる。
僕はそれを援護するように動いた。騎士の残りを掃討しながら、ゼータの背中を守る。剣を振るうたび、血と鎧の破片が飛び散る。ウィクトーリアの光が僕を狙うが、僕はそれをかわし、逆に紫黒の斬撃を返す。
光と闇が交錯し、広場全体が魔力の嵐に包まれる。 戦場は混沌と化していた。土煙が再び立ち上り、月光が断続的に差し込む。
血の匂い、金属の焦げる臭い、少女たちの遠い泣き声。騎士たちの悲鳴と、ゼータの荒い息遣い。僕はゼータの背中を見つめながら、静かに呟いた。
「負けるな、ゼータ」
彼女は振り返らず、ただ笑った。チャクラムを振り回しながら、血に塗れた顔で。
「負けないよ。だって……主が応援してるんだもん」
その言葉が、僕の魔力をさらに加速させた。僕は剣を握り直し、紫黒の奔流を全身に纏う。
その時、一人の魔族が空に現れた。
「領域展開」
瞬間、世界が歪んだ。空気が引き裂かれるような音がし、空間そのものがねじ曲がる。
【伏魔御厨子】
領域が広がる。だがそれは、普通の領域展開とは違う。結界で空間を分断せずに、生得領域を具現化する「閉じない領域」。
現代の魔法使いも、過去から生きる古株の者たちも、満場一致で「ありえない」と断言する神業だ。
領域内に、無数の生物の頭骨で象られた寺のお堂が浮かび上がる。朱色の柱、黒い瓦、骨でできた不気味な装飾。
静寂の中で、お堂はゆっくりと回転を始める。頭骨の眼窩が、赤く輝き、まるで私たちを見下ろしているかのようだ。
必中術式効果が発動する。
領域内の魔力を帯びたモノには「捌」――対象の魔力量・強度に応じて最適の一太刀で卸す。呪力の無いモノには「解」――通常の斬撃が、領域消失まで絶え間なく浴びせられる。
すべてが、粉になるまで切り刻まれる。逃げ道を与えるという縛りによって、数百メートルまで伸びる領域の効果範囲。入りは自由だが、一度捉えられれば脱出は不可能に近い。
斬撃の威力は範囲の広さに反比例する――だからこそ、今の狭い範囲では、威力が極限まで高まっている。
魔法使いや騎士たちが悲鳴を上げる間もなく、肉体が細切れにされ、血と肉片が霧のように舞う。魔力ゼロの天与呪縛を持つ者でさえ、「解」を必中させられる。
ありえないはずの領域が、現実のものとしてそこに在る。地面が削られ、土が抉られ、すべてが更地と化す。
「邪魔」
僕は魔力の籠った剣で領域を破壊した。
残ったのは三人。
異端審問官テンプラー勢力は聖女を残して壊滅し、僕とゼータも大きく魔力を削られていた。
聖女のウィクトーリアが叫ぶ。
「首切り役人のリューグナーッ!!」
「ふむ、耐えたか」
ゼータが問いかけてくる。
「アイツは?」
「首切り役人のリューグナーだね。魔族だ。目的は僕達じゃなくて、ウィクトーリア達かな。聖教と魔族は対立しているし」
「どうする?」
「うーん、ウィクトーリアを守ろうか。一応、人類種の味方だからね。彼女を失うと表社会への影響が大きい」
「最悪。だけどやるしかないか」
「やるしかない」
僕は詠唱を開始する。
「天堕せよ」
森羅万象を鏖殺する憎悪の咆哮に触れたあらゆる存在は輝きを失い消滅する。
「終滅させろ」
能力は反魔力粒子成能力。
普通ならば再現不可能な異界法則を顕現させる光殺し。
森羅万象を鏖殺する憎悪の咆哮に触れたあらゆる光はその輝きを失い消滅してしまう。
魔力の影響下から引き剥がされるという急激な環境変化に有機も無機も耐えられず、植物や昆虫どころか鉱物までもが無残に死滅。
「アンチ・アトミック」
活動する魔法使いは言わずもがな、その根源を否定されれば無事でいられるはずはない。
この世界に生存する全ての生命は大なり小なり魔力の恩恵を受けているため、魔力の性質を直接反転させるこの能力は命を逆転させる死神の御業に他ならず、極論、この反魔力粒子はそこに“在る”限り敵わないという絶望的な相性差を実現させる。
陰の慟哭は星を滅ぼすものとして、あらゆる光を駆逐する。
「害虫駆除の時間だ」
ヒロインで見たいのは?
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シャドウガーデン(アルファ、ゼータなど
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現在の者達(アレクシア、ローズなど
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過去の者達(ベアトリクスやリリなど
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人外(エリザベートやアウロラなど