人の心(の光)とかないんか? 作:頑張っても駄無
DIEジェストでお送りします。
序
今際の際……未練がねェなンて言い切れねェが……それでもまァ、俺としちゃァよくやった方だろうぜ。
このクソッタレな宇宙世紀に転生して、最初は半狂乱だったな。これは夢だ、これは夢だってな。
だがまァ、結局は受け入れるしかなかったワケで。
〈GQuuuuuuX〉世界線ならまだマシだったかもだが、
*
俺は15歳、弟は11歳の時があの「一年戦争」だった。生き延びることはできたが、非道いモンだったぜ、あの頃ァ。
一年戦争の後、俺は地球連邦軍に入隊した。幸いにして、MSパイロットの才はあったらしくてな。なンでワザワザ軍になンぞ入ったかって言えば、俺だってにわかとは言え『ガンダム』のファンだったってワケだ。乗りたかったのさ、ガンダムに。弟と同じ夢だ。まァ、アレを見て憧れない男はいないぜ。
それだけだ。原作をでっかく改変してやろうって考えはまるでなかった。というか、資産家とかならともかく、ただの1パイロットに何ができる?
デラーズ・フリートの時は俺は全然別な処にいた。結局観艦式は核でふっとンじまったし、全部終わった時にゃシナプス艦長は処刑されてた。
その後、ティターンズが発足してからは中々大変だった。
俺ァ地球生まれ地球育ちのアースノイドだったとはいえ、ティターンズは大ッ嫌いだったもンで、ま、出世コースから外されたな。
とは言えティターンズ所属でなくとも指揮系統の都合でティターンズの弾除けとして呼ばれねェとも限らないってワケで、グリプス戦役の頃はカラバに所属してた。
そこで会ったのがアムロ・レイ……本物の
目と目が合った瞬間、すぐさまピキーンとなってキラキラ空間に意識が飛ばされたぜ。NT同士の精神感応現象だが、俺はその時になるまでNT能力なんか毛ほども感じたことはなかったってのに。
で、この精神感応、ハッキリ言おう。気に入らんな。
……いやマジで。
内心の自由がまるでねェ。お互いの考えてること、感じてること、背負ってる過去、全部が筒抜け。感じるか、感じるだろう?
つまるところ俺の原作知識の幾つかがアムロに流れ込んだワケだぜ。自分やこの世界が西暦時代の創作作品だと知ってしまったアムロ=サンはあわれ、しめやかにSANチェック!
あの状態のアムロはホントヤバかった……。ベルトーチカさんが居てくれて良かったぜ。あの繋がりがなけりゃァ、シロッコに精神を連れてかれたカミーユと同じ状態になってたぜ。
……アムロが立ち直るまでの数週間は俺が代わりにディジェに乗ったが、あんなピーキーなモンよくもまァアムロは乗りこなせたもンだぜ。エースは違うなエースは。アムロはNTだから強いのでなく、強いMSパイロットがたまたまニュータイプでもあっただけって説があったが、あの時ほどそれを実感したことはねェ。鬼に金棒と同じ文脈だなァ。
というか、アムロはよくもまァ数週間で復帰できたモンだぜ。……俺がそこまで宇宙世紀シリーズに詳しくなかったからかァ?
まァ創作であろうがなかろうがなんだろうが、俺自身が生きた今世23年前世19年分の内の何割かまとめて脳に叩きつけられれば処理落ちもするか。
ソレからはまァ、アムロとはそれなりに仲良くなれた。楽しかったぜ、メカニック談義するのは。俺はどっちかって言うとガンダムのSF的技術設定面が好きだったかンな。他の宇宙の技術とかを話すのはすげー面白かったぜ。技術オタクのアムロの食いつきの良さといったら、だ。
……アムロはパイロットやるよりも街の機械屋さんやってた方が楽しかったンじゃねェかな。赤いアホは土方やってた方が楽しそうだったしな。……アッチは〈THE ORIGIN〉だったか?
〈ZZ〉の頃には行方不明のクワトロ大尉を探しに行くのにアムロと一緒に
理想は新生ネオ・ジオンの前にあのアホを捕まえることだったが、結局見つからずに逆襲ルートだ。
……俺という異物がララァ・スンによってもたらされた可能性がある以上、アムロとシャアが死んだ時点でこの世界がリセットされる可能性があンだよなァ。
と思ったが、アレはララァより先に大佐がおっ死んだからこそか。この宇宙じゃァララァはすでに死んでる。そこまで考えるこたァないだろうなァ。……宇宙に上がっても何をしても、俺の問いかけにララァは応えちゃくれなかったから実際のところはわからねェ。いや、生者に声が届くンなら原作でもシャアを止めてくれたか?
第1次ネオ・ジオン抗争が終わり、エゥーゴもカラバも解体されると、俺もアムロと一緒にロンド・ベルに行った。最悪を想定する必要があったかンな。
アムロは〈逆襲のシャア〉の知識は知らねェ。そこまでは見てねェと聞いた。俺自身も話さなかった。どのみち俺という異物がいる時点で参考書程度にしか役に立たねェもんだ。そもそもカラバ時代のアムロの動きなンかは外伝系でしかまともに描写されてなかったはずだし、俺が行動を共にしていた時点で原作通りかなんてサッパリ判らねェ。
ンで、俺といえば閉心術を身につけた。NTの感応波を遮断し、思考を読まれなくする術だ。……ソレを言ったらしばらくのうちにアムロも身につけてた。化け物がよォ……!
だが開心術までは持ってねェで一安心。未来の知識は足枷になるからなァ。俺みたいになってアムロの強みを潰すわけにゃァいかねェよ。
俺は理解者を欲してたワケだ。前世の記憶などという呪いは、1人で背負い続けるにゃァ重荷でしかなかった。
ガンダムは戦争ものだ。圧倒的な英雄1人が悪の親玉を潰せば済む物語じゃねェ。敵も味方も一枚岩でなく、無数の陰謀が渦巻く。バカな俺は1人じゃ何もできねェから、手の届く範囲だけを守るしかなかった。何より、原作より悪くなる可能性も0じゃねェンだ。
俺は主人公になれねェ。そう思ってた。
実際は違う。俺は我が身可愛さに死ぬのを恐れてただけだ。既に1回通過したコトある癖に、1度も死んだコトがねェヤツらと同じように怯えてた。ンな権利ねェってのによォ……!
だから一年戦争の時は弟の側を離れなかった。そうすれば生存できるって、陸戦型ガンダムに助けてもらえるって知識があった。
連邦軍に入ったのだって、力のない市民でいるよりかはマシだって思いがあったからだ。……弟にいいところを見せたいって思いがなかったワケもねェし、ガンダムへの憧れだって本物だったと思うが。
ンで、カラバでもアムロの側を離れなかった。宇宙世紀最強のパイロットの側は何より安全だろうからなァ。
アムロは俺が臆病風に吹かれて行動しなかったことについちゃァ何も言わなかった。思うところがなかったワケじゃねェとは思うが、口にも出さなかったし、感応波で伝わることもなかった。
だが、第2次ネオ・ジオン抗争が始まると、もう逃げる場所なんかなかった。アクシズが落ちれば地球は終わりだ。
俺1人の我が身可愛さにジッとしてることなンてできやしねェ。
30も目前になって、ようやく尻に火がついた。
アムロをあのアホと心中させてたまるかってンだ!
地球圏がダメになるかどうかなンだ。やってみる価値ありますぜ!
な〜ンて、調子に乗って見せたが、結局はアムロと数年行動を共にして、かなり鍛えられたってだけの話だ。少なくともアムロに背中を任せてもらえるレベルにはパワーレベリングされたぜ。……「背中にも目をつけろってこういう……(白目)」ってなったのは数知れずだが……。
そのおかげで死の恐怖を遠ざけられただけに過ぎねェ。あとは地球存亡の危機に自棄を起こしたようなモンだわ。
だが、小惑星フィフス・ルナを食い止めることには間に合わなかった。
せめてあの時点でサイコ・フレームがあればなァ……。俺は設定としてのサイコ・フレームの作り方は知ってるが、現実としての製造手順までは知らねェからな。アイデアとしては伝えていたが、結局シャアが情報を流してくるまで完成には漕ぎ着けられなかった。
で、色々あって、結局は真っ二つに割れたアクシズの、その片方が地球に落ちようとしていた。正史通りにだ。
「やってみるさ。」
俺は今まで、知っていながら何人も何人も見殺しにしてきた。どうせ地獄行きなら、最後くらい善行の一つでもするべきだろうさ。
俺の機体にもアムロのガンダムと同じサイコ・フレームが組み込まれてる。だったら……やってできない事はないハズだろ?
ただ、最初のキッカケだけはアムロに頼むしかねェ。「やってみる価値ありますぜ」ってのは、
連邦兵も、ネオ・ジオン兵も大気の摩擦と断熱圧縮で燃え尽きて行く。……彼らの想いと犠牲ありきでしかない杜撰な計画。奇跡頼りの見殺し。
だが、ソレでも、アムロの機体に人の心の光が灯った。ソレはアクシズを包み込み、そして俺のMSにも。
「選手交代だ!」
アムロのνガンダムを蹴り飛ばし、半ば埋め込まれたシャア入りの脱出ポッドを引っこ抜いて押し付ける。……シャアを生かしといても厄ネタになるだけかも知らんが、だからこそ最も良く奴を知ってるアムロに沙汰を任せるしかねェ。
〈ジョー、何を⁉︎〉
接触回線からアムロの声が聞こえるが、知った事じゃねェ。アムロにゃァ感応波で俺の宇宙世紀知識、その全てを叩きつけた。情報過多でフリーズしてもらうぜ。
サイコミュ・ジャックでアムロのガンダムの操作を乗っ取り、全速力でアクシズから離脱してもらった。あらかじめバックドアを仕込んどいたンだ。数少ない自慢だぜ? アムロにバレないレベルのプログラミング技術はな。
νガンダムの推力じゃァ、地球の引力を振り切るにゃァ心もとねェが、なァに……ココにゃァ特大のサイコ・フィールドの力場がある。ちょっと押し出してやりゃソレでいい。
アレもガンダムなんだからさ、守ってくれるだろうよ、
〈ヘイ、アムロ! 長生きしろよ!〉
どうせフリーズして聞こえちゃいねェだろうが、まァ、ガンダムの音声アーカイブにゃ残るだろ。どの道、この作戦の前に遺書はしたためてある。最期に弟に会えないのは寂しいが、仕方ねェか。
*
と、マァ俺の走馬灯としちゃこんなモンか。
意識が朦朧として来やがったな。……緑の光は強さを増して……キラキラ輝いてやがる。思い出すなァ。弟と一緒にガンダムに助けられて……抱いた夢……。
「ハハッ、叶っちまったな、夢……」
にしてもすげェな、このキラキラ。これが人の心の光か。……心なしかあったけェきがすンなァ。俺自身のNTとしての知覚力がどんどん広がって行く感じだ。
ふと、光の奥に何か別なモノが見える。
「アァ……刻か……コレが──」
もう少しでその全てが見えるって思ったが、俺の2度目の生はそこで終いだった。
*
で、だ。コズミック悪霊か伝説巨神かホワイトドールかは知らねェが、言わせてもらおうか。
「人の心とかないンか?」
せっかくカッコつけたのに、まさか3度目があるとは思わねェじゃねェかよ。
実はNTのガワを被ったナニか。