人の心(の光)とかないんか?   作:頑張っても駄無

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 三人称オンリーだと文字数の割に中々展開が進まない……原作沿いだし、細かな説明を省いてトントン進めようかしら?
 サンディと周りの心理描写を優先して書いてるパートなので、まともな戦闘まで中々……。

 それなりに読んでくださる方もいるので、ぼちぼち進めていきます。



PHASE 02『哀しみの哀』

 

 ひとまずストライクと無事に合流したサンディは、しかし頭を抱える羽目になってしまった。キラのゼミ仲間たちがストライクのコクピットを覗き込んだ後だったのである。

 マリューは気絶したままではあるが、しかし軍事機密を目にした以上は適切な裁定を受けた上でなければスパイ容疑やら銃殺刑やらもありうる。

 

(だがなァ……)

 

 G兵器開発を主導した存在は第八艦隊のハルバートン提督であるということをサンディは知っている。彼はブルーコスモスに牛耳られた大西洋連合の中でも数少ない良識派であり、子ども達のことも不問で済ましてくれるだろう。

 この「だろう」というのが問題だ。サンディは今世においてハルバートン提督にあったことがない。そしてG兵器の開発は地球軍の最高機密だ。提督の名前を出して説得もできない。

 サンディとしては子ども達を戦艦になぞ乗せたくは無かった。

 

 ならば、マリューが目を覚ましていきなり銃を抜かなくともいいよう、己が代わりに嫌われ役を引き受けるべきか、とも考える。

 

 *

 

 結局サンディは機体から降りずに、しかし頭部をマリューに向け、彼女が銃を抜くことを牽制した。

 暴力より先に言葉を紡ぐ。それが人間性であり、それを欠いた世界が今のC.E.であるのだから。

 

「──事情はどうあれ、軍の最高機密を見てしまった貴方達はしかるべきところと連絡が取れ、処置が決定するまで、私と行動を共にしていただきます。」

 

 案の定、少年たちは一斉に不平の声を浴びせる。

 

「黙りなさい! 何も知らない子どもが!」

 

 マリューの怒気に皆黙り込む。そこへ、サンディは外部スピーカーでマリューに話しかけた。

 

『この子らの処遇に関して聞かせてもらいたい。しかるべきところとやらが定める処置に、この子らの命や尊厳が奪われるような内容は無いと言えるか?』

「それについては無いと言えるわ。」

 

 その迷いなき返答に、サンディは心の中で舌を巻く。久しく見ていないまともな軍人の姿に半ば感動すら覚えるのだった。

 

『言質は取らせてもらった。もし破れば、このブラック・ジョーはオーブに雇われる身として彼らを護る。異論はないな、レディ?』

 

 マリューは大きく頷いた。

 サンディは今度、機体を少年達の方へ向ける。その直前、メインシステムを戦闘モードから巡行モードに切り替え、武装にロックをかけることを忘れない。

 

『ルールはルールだ。もし君達に何かあったら、『ガンダム』の名に誓って俺が護る。今はおとなしくラミアス大尉に従うことだ。……すでにもう、どこのシェルターもほぼ満員だ。ちゃんとした軍人さんに保護されるというのも、選択肢としては悪くない。何か異論は?』

 

 誰も異論を挟まなかった。少年少女は渋々ながらも、マリューに従うことに同意したのだ。

 

 *

 

 さて、その後サンディはソウルを駆って何処かへ持ち去られた武器を探しに向かった。カガリは降ろし、ゼミ生達と行動を共にさせている。

 武装については一応紛失防止用の発信機があるので、近づきさえすればセンサーやレーダーに反応があるはずである。

 

(流石にアストレイのある秘匿エリアに持ってかれちまうとどうしようもねェが。ン?)

 

 ザフトの攻撃で破壊されたパーツの残骸、その中に見覚えのある形状を認めると、サンディはため息をつくしかなかった。

 

「クズどもが。……血祭りにあげてやろうか……!」

 

 ビームライフル損壊。使い物にならないレベルで。ビームサーベル、ビームジャベリンと思わしき白い破片も周囲に転がっている。唯一原型を留めているのは物理防御に特化させた盾だけだが、こちらも幾分かひしゃげている部分があった。

 ザフトが持ち出しきれないと判断して破壊したのであろう。

 

(ロンドと付くヤツは裏切り者しかいねェンか?)

 

 この場合、元々サンディの仲間ではないため、裏切りというのはオーブ国民に対してである。

 そも、オーブとしては連合と手を結ばずともMS開発が十分にできるだけの下地があった。他ならぬサンディ達黒顎の技術提供によって。しかしサンディはその研究開発からサハク家の手の者を締め出した。精神感応まで利用して徹底的に選別を行った。

 サハク家は昔からオーブの軍事を担ってきた五代氏族の1つではあるが、その次期当主であるロンド・ミナ・サハクとロンド・ギナ・サハクら双子の姉弟の目的がサンディは気に食わなかったのだ。平たく言えば世界征服である。無論、そこに崇高な理念があるのはそうだが、そのために国民の血税を使って国家元首に報連相もせずこれだ。

 結果、ヘリオポリスの作業員や民間人に少なくない犠牲者が出た。あるいは、彼女らにしてみれば大義のための致し方ない犠牲とでも嘯くのだろうか。

 

 なお、そもそもザフトへ連合のMS開発をリークしたのもまたサハク家である。その結果はご覧の始末だ。

 

(……とは言え、サハク姉弟に天誅を下すンは俺じゃねェ。スケジュール的にも間に合わんし、ロウと劾に任せるしか無かろうなァ。)

 

 黒顎の他メンバーと連絡がつき次第、ジャンク屋組合(ギルド)経由で2人に虎の子のメガ粒子砲でも融通しようかとサンディは決めた。

 

(宇宙港のシャトルに戻るかァ。)

 

 バッテリーはやや心許ないが、ザフトが再び攻勢をかけてくる可能性がある以上、急がないわけにも行かない。

 SBシステムを起動し、全速力で港へ向かう。

 

「もうお出ましかよォ!」

 

 だが、間に合わなかった。要塞攻略用の重装備に身を包んだジンがコロニーの中に入ってきたのであった。

 

 *

 

 キラは独り、ストライクのコクピットでもの想いに耽っていた。無論、マリューから言い渡されたモルゲンレーテ跡地でのパーツ回収はきちんとこなしてこそいたが、それでもどうしても引っかかってしまう。

 

 傭兵組織黒顎の長ブラック・ジョー。その正体は自身よりずっと小さな少女であった。

 黒い少女サンディの駆る機体は、一瞬にしてジンを、その中にある命もろとも叩き潰して見せた。

 

「これが、戦争……」

 

 それに巻き込まれたくなくてオーブへ移り住んだというのに、どうしてこうなってしまったのだろうか。

 

 だが、そうやって悩み続ける時間も長くは続かなかった。

 

 再び攻勢をかけてきたザフトのMS達は、大型ミサイルや長大なライフルで武装していた。

 

〈こちらジョー……聞こえるか?〉

「は、はい。聞こえています。」

〈きみは装備を持ってアークエンジェルに回収してもらえ。……連中の相手は俺がする。〉

「1人で戦うんですか?」

〈はは。きみのその優しさは素晴らしい美徳だ。だがな、戦場で迷うヤツは死ぬぞ。んでもって、迷ったまま撃ったヤツも、生き延びて血反吐を吐く羽目になる。迷ったなら撃つな、だ。異論はないな、少年(ボーイ)?〉

「わかりました。」

〈いい子だ。じゃ、そんないい子のためにもおじさん頑張っちゃうとするかね。〉

 

 モルゲンレーテで回収したソードストライカーパックを装備させたストライクをアークエンジェルへ向き直らせた直後、彼は視界の端で見た。白黒の機体がバーニアを噴かしながら空を舞い、ジンを次々に撃墜させていく様を。

 機体が1つ爆散する度に、命の灯火が1つ消えて行く。

 それが、どうしようもなく哀しくて、彼は泣きたくなった。

 

 *

 

 一方のサンディは民間人にお構いなしでミサイルを持ち出してきたザフトに怒りを燃やしていた。咥えていたペパーミントキャンディを噛み砕き、唸り声を漏らす。

 

(ビーム兵器はねェ。あるのは盾とハンマー……まァいい。どうせ、奪えば全部だァ──⁉︎)

 

 1つ、2つ、と口に出しながらジンを撃墜して行く。そして撃破した敵機からミサイルをランチャーもろとも強奪する。

 

「チィ、電子ロックかかってやがらァ!」

 

 しかし機関銃の方とは違い、奪っても簡単には扱えないロックが施されていた。となれば、彼女は言うが早いかミサイルを敵機に向かって投げつけた後、イーゲルシュテルンで撃って引火、空中で爆破させる。

 爆炎を煙幕の代わりにして接近し、重斬刀で斬り捨て、破砕球を不規則軌道でぶつけ、次々撃破して行く。

 

「ケッ……知恵熱出てきやがったぜ。」

 

 かつての全盛期の動きは頭ではイメージができるが、しかし肉体がついてこない。それを補うサイコミュは、使うほどに脳疲労を蓄積し、ひどい場合は頭脳のオーバーヒート、知恵熱を発症する。

 

(……この感じは……コロニーの崩壊は避けられねェなァ……となるとあのファムファタールとキラを近づけちまうコトになるがァ……いや、避難シャトルが壊れてねェ方に賭けるかァ?)

 

 コンソールのメーターを確認すれば、バッテリーは約3割。となれば、推進剤はまだ十分あるものの少々心許ない。

 

(慣れねェなァ、動力源の心配しながら戦うのはよォ……)

 

 宇宙世紀においてMSの補給と言うのは弾薬と推進剤が主であり、核融合炉の燃料補給というのはそこまで考えなかった。ミノフスキー・イヨネスコ小型熱核融合炉というのはものにもよるが、一度燃料を入れれば数年から十数年保つのだから。

 一応、ソウルに内蔵されているバッテリーはストライク達G兵器に搭載されているものと比べれば少しだけ性能が上である。もっとも、ストライクにはストライカーパック換装によるエネルギー補給手段があるため、継戦能力までもが上とは言えないのだが。

 

 ミサイルがコロニーの骨格たるシャフトを次々に破壊して行く。サンディがいくらかジンを撃破したところで、一度生じた綻びと宇宙空間との気圧差や各部の張力によって連鎖的に崩壊が始まり行く。

 

 ──キラ……キラ・ヤマト!

 

 ──アスラン?……アスラン・ザラ⁉︎

 

 頭の中を悲壮極まる声が奔った。

 

(あーァ、出会っちまったかよ……気付かなければ、まだ幸せだったかァ?)

 

 幼馴染2人を引き裂き、戦場で、敵同士としての再会。なんたる悲劇、神様というのは性格が悪くて仕方がないらしい。

 

(だが、利用させてもらうぞ、悪辣に。)

 

 敵はザフトのエースばかり。その内の1人が迷いの中で弱体化してくれるなら、そこを突かない道理もない。でなければ、たった1人で護りきれはしないのだ。

 

 少年2人の嘆きと叫びが脳裏を駆け回る。その言葉に付随する感情が、ダイレクトに流れ込んでくる。

 しようと思えば、サンディはそれらをシャットアウトしてしまえた。耳を塞ぎ、心を閉ざし、簡単に割り切ることができた。

 

 だが、しなかった。彼らの苦しみを受け流すことをせず、ただただ脳裏を揺さぶられるままになった。人の哀しみをあえて受け入れたのであれば、その分精神に負荷がかかる。彼女のその行動はほとんど自傷と言って差し支えのない行為だ。

 

(はは。俺も年だな……涙が出てきたぜ。)

 

 ヘルメットを脱ぎ捨て、中に溜まった涙を拭う。

 けじめのつもりだった。少年少女の守護者であれと願う機体を駆りながら、ザラ少年の弱みに漬け込もうとする己の行動への。

 

 *

 

 コロニーにあいた穴から空気が勢いよく漏れ出で、内部はさしずめ乱気流が如く。エレカやら樹木やら、建物の破片やらが舞う。

 そしてとうとう、各地のシェルターが救命シャトルとして射出され、ヘリオポリスは限界を迎えた。

 

 乱気流に流され、サンディは青い宇宙へ投げ出されて行くのを感じていた。

 

(…………。)

 

 目を閉じ、その暗闇の中へ己の感応波を広げて行く。

 

(ストライクはそこか…………イージスはかなり離れたな。で、アークエンジェルはあそこ。…………動かねェシャトルが1つ…………どの声がフレイ・アルスターだ? ま、助けに行きますか。)

 

 乱気流が止むや否や、推進剤節約のため、AMBACで姿勢を整え、目的の方向へブースターを噴かす。節約のため一瞬だけであり、後は慣性移動だ。SBを多用したため推進剤もバッテリーもかなり心許ない。

 

 レーダーに映る救難信号へ向かっていると、ところどころ煤けた白いコンテナが遠くの方に見えた。

 

(運がいいなァ。……いや、悪いのか?)

 

 サンディはひとまずそちらを優先して方向を転換する。

 そのコンテナはサンディのシャトルに積み込まれていたもの。中身は予備パーツと予備の武装だ。

 それが単体で宇宙を彷徨っているということは、彼女の個人シャトルはお釈迦になったということに他ならない。コンテナ自体にはルナチタニウムを使ったために非常に強強度であるが、シャトルはそうはいかなかったらしい。決して安い買い物ではなかったため、サンディはちょっと眉を下げた。

 

(怪我の功名か、不幸中の幸いと思わせてもらおうか。)

 

 コンテナの溝にソウルの指をかけて回収したその時、アークエンジェルから通信が入った。

 

〈RX-M78-SS、ブラック・ジョー、聞こえますか?〉

『その声はラミアス大尉だな。聞こえている。少し拾い物があってな、ソウルの武器を見つけたところだ。』

〈そうですか。では回収次第X105ストライクと合流、艦に戻ってください。〉

『了解した。』

 

 通信を切り、サンディはふむ、と口元に手をやる。

 もう1度感応波を広げると、避難シャトルと思わしき思念群のそばにキラの思念が近づいているのを認識した。

 

(……ふむ。アークエンジェルへ直帰でいいな、コイツァ。)

 

 そうしてアークエンジェルのハッチから格納庫へ入る直前、キラの拾ったシャトルの受け入れについて一悶着あったものの、最終的にはサンディが『俺の目の前でオーブ国民を危険に晒すと?』と凄むことで解決した。

 

 *

 

「きみ、コーディネイターだろ?」

(言いやがったァコイツ! 言いやがった! このノンデリヤローがァ! ノンデリが原因で滅んだティターンズについて教えてやろうかァ!)

 

 着艦後すぐ、キラの友人達は彼の無事に安堵しながら駆け寄ってくるというハートフルな光景に油断していたサンディは、ムウ・ラ・フラガ大尉の爆弾発言を止められなかった。

 

 此度の戦争は地球連合対プラントという図式が正しいのだが、多くの人にとってそれはナチュラル対コーディネイターという図式と等しい。

 実際には違うのだが、士官学校できちんとした教育を受けたであろう真面目なナタル・バジルール中尉でさえそう考えているのでさもありなん。

 

「……はい。」

(だよなァ、答えちまうよなァ⁉︎)

 

 軍人達が一斉にキラへと銃口を向ける。

 

『銃を下ろさせろ!』

 

 機体を降りていなかったサンディは外部スピーカーに怒鳴りつけつつ、頭部バルカンでムウをロックした。

 

『どういうつもりだ? 言ったはずだぞ、オーブに死の刃を向けるものは赦さん、とな。……どうやら、あの言葉は嘘だったらしいな、マリュー・ラミアス……!』

 

 ボイスチェンジャー越しでも伝わるほどの憤怒を滲ませ、彼女は言葉を紡ぐ。

 実際、彼女はそんな騙し討ちをする人ではないと理解しているが、ここでしっかり脅しておくことで、キラ含めたオーブ避難民の安全を確保しておく算段であった。

 そもそもオーブは中立国ゆえ、コーディネイターも少数ながら住んでいいる。差別がゼロというわけでもないのでキラはそれを隠してはいたが、彼の拾ったシャトルの中にもコーディネイターがいないとも言い切れないのだ。

 

「銃を下ろしなさい。彼はオーブの民間人よ、ザフトではないわ。」

 

 マリューは声をやや震わせ、しかし凛とした佇まいでそう告げた。

 兵士たちは一斉に銃を下げる。その行動に、キラに対しての申し訳なさを滲ませるものは少なかったが、さりとて上官命令ゆえ渋々という者はいない。

 

(ハルバートン派閥か? てこたァブルコス思想は薄いわな、そりゃ。……銃を向けたンももしもの為だろうよィ……それはそれとして銃口を向けられる恐怖は下手すりゃPTSDモンだかンな。すぐ銃を向けるンは……マリューさんもそうだしなァ。ブルコス云々よりこの世界の人間性がすでに暴力に偏ってンだな、こりゃァ。)

 

 サンディはOSをメンテナンスモードに移行し、武装にロックをかけた上でストライクの隣のハンガーに固定させた。

 どうやら固定器具には互換性があったらしい。鹵獲したザフトのMSを運用することも考えられているのか、それらと充電システムやらを共通とするソウルもまた問題なく固定できた。

 

 コクピットハッチを開け放ち、降下用ワイヤーで格納庫の床へと降りる。

 

「女の子……⁉︎」

 

 マリューが驚愕の言葉を漏らす中、サンディはヘルメットを脱ぎ、ボサついた髪を揺らした。

 

「さて、と。」

 

 ぐいっと伸びをすれば、体型のくっきり浮き出るパイロットスーツの豊かな双丘もまた引っ張られて持ち上がる。思わずそれを目で追ったトールとカズイはミリアリアに頭を引っ叩かれた。

 

「黒顎のブラック・ジョーことサンディ・スティリングだ。ゼミの子達はさっきぶりだなァ。」

 

 黒いトレンチコートを羽織りつつ、サンディはマリューの前へと足を進める。身長170cmのマリューとは16cmもの差があるため、サンディはやや見上げる形となってしまった。

 

「とにかく、しばらくこの(フネ)でご厄介になるぜィ、レディ?」

「その……随分、口調が変わるんですね。」

「そりゃァ、戦場では張り詰めねェとなァ……外見と声がこれなンで舐められるンだわ。が、流石に今回は顔出し無しでやれる状況じゃねェンでなァ……ずっと張り詰めっぱなしもできそうにねェンで素を出させてもらわァ。……マリューさんも敬語はいらねェぜィ?」

 

 顔立ちは童顔、とまではいかないが可愛い系と美人系の中間の少女であり、鋭い目つきと歯とが格好良さももたらしている。外見年齢はキラと同じく10代に見えるのに、その声色に含まれた「黒さ」が年齢に見合わぬ強者感を漂わせていた。

 それはマリューだけでなくムウもまた感じている。もし、今彼がサンディに飛びかかったところで、軽くあしらわれてしまうだろう、と。

 

(なるほど。この空気、猟犬ってのはこれのせいか。)

 

 態度には出さず、ムウはそう考える。が、瞬間、チラと振り返ったサンディと目が合った。

 

(……ザフトの猟犬は心が読める……比喩……だよな?)

 

 内心空恐ろしいものを感じながら、それでもやはり態度に出さずムウは近づいていった。

 そんな彼に振り返り、サンディは絶対零度の視線を向ける。

 

「あー、嫌われちまったか?」

「……ふん。俺には訊かねェのか。」

「聞いといた方がいいか? んじゃ、きみもコーディネイターだろ?」

「ハズレだ。」

 

 思いもよらない返事にムウは一瞬きょとんとする。顔にこそ出さなかったが、それはマリューも同じことだった。

 

「それじゃ、ナチュラルなわけ?」

「それもハズレだ。」

 

 それでは結局答えは何なのだ、とその場の地球軍兵士達が内心で思う。

 その思いをサンディは察知していた。

 

(浅ましい。世界を二分できるだなどと……)

 

 きっと、彼らにとってハーフコーディネイターは存在しないものなのだ。世界はナチュラルとコーディネイターが二分し、お互い憎み合って生きている。それが常識なのだとすっかり信じ込んでいる。

 

 愚かなことだ、とサンディは嗤う。おそらく連合の良識派であろうとこの程度か、と小さくない落胆をもって。

 





 コーディネイターが生まれなかったら、そしたら差別はなかったか?
 多分あるだろうなぁ。頭CEだし。コーディネイターがなければ結局は肌の色やら目の色やらで争うだけだろうなぁ。宇宙世紀と同じく地球住みと宇宙住みで二分してたかも?

 逆にナチュラルがいなくなってコーディだけになっても……多分争うだろうなぁ。所詮人間……愚かなもんだ。

 ところでサンディの元ネタはとあるお馬さんです。知ってたら何となく「嗚呼……」ってなるかもしれません。
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