欺瞞の秤   作:ちくわぶ@黒胡椒

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はじめまして、作者のちくわぶ@黒胡椒と申します。

書くに当たって原作のストーリー確認も行っておりますが、時間軸やキャラのセリフなど違和感もあるかと思いますが、流していただけるとありがたく思います。

小説自体が初投稿なので、お目汚しかとは思いますがご意見ご感想など頂けましたら嬉しいです。


第一話 プロローグ

 

4月9日。桜が終わりかけ、新緑が芽吹き始める季節だというのに、東京は朝から冷たい雨が降り続いていた。

 

東雲海咲(しののめみさき)は、そんな渋谷のスクランブル交差点の真ん中で、まるで世界に放り出されたかのように唐突に目を覚ました。

 

「え……?」

 

自身の体と意識が、ようやく接続されたかのような奇妙な感覚。

周囲の喧騒は耳に届いているのに、どこか遠い世界のように感じられた。

目の前には、立ち止まる自分を邪魔そうにしながら、行き交う人々が互いを避けるように足早に通り過ぎていく。

ふと感じる強烈な違和感。

今自分が見ているこの世界が、まるで精巧に作られた舞台装置のように感じる。

 

(ここ……どこだっけ?)

 

「……痛っ!?」

 

一瞬の空白。次の瞬間、頭痛とともに脳裏に情報が濁流のように押し寄せる。

渋谷、スクランブル交差点、4月9日。そして、これからこの先の未来で何が起こるか、という記録の記憶。

 

「あ……」

 

思考の海に溺れかけたその時、私の視界の端を、どこか見慣れた眼鏡を掛けた黒髪の少年が横切った。どこか憂いを帯びた横顔。

間違いない、原作の主人公「雨宮蓮(あまみや れん)」だ。

 

(嘘……なんで!?)

 

胸の奥が震える。

何故かはわからないが、私の脳が現状を理解をしている。まさか、自分が「ペルソナ5の世界」にいるとは。

突然の意味不明な展開に、興奮と混乱が入り混じる。

 

しかし、同時に冷静な思考が頭の中を駆け巡る。

(どうして……?事故に遭った覚えも、飛び降りた覚えも、手首切った覚えも、吊った覚えもないけど!?)

自分が死んで、異世界転生やら転移やらしてしまったのでは!?と思うも、そんな記憶は微塵もない。

 

ひとまず落ち着けと深呼吸。名残惜しそうに視線を彼へと戻すと、すでに彼は去ってしまっていた。

せっかくなら彼と関わりたい、という好奇心はあるが、私は知り合いでもないただのモブだ。

なんだったら状況すらよくわかってない。追いかけたところでまともに会話が出来るはずもない。

とにかく今は現状を把握しないと……。

 

その時だった。手の中のスマホが点滅し、困惑した表情で画面を見つめる。

――そこには赤と黒を基調とした、禍々しいアイコンが表示されていた。

 

「イセカイナビ……」

 

思わず呟いた瞬間、世界が一変した。

周囲の喧騒が、まるでスイッチが切られたかのように唐突に止まる。

行き交う人々は、みな動きを止め、マネキンのように硬直していた。

 

「なんで……っ?私触ってない……!」

 

理解が追いつかない。

目の前の光景は、あまりにも現実離れしていた。動かない人々。これは、まさか――。

 

(認知の世界……?)

 

本能が、渋谷駅の方向へと足を進める。ここから一刻も早く、出口を見つけて現実世界へと戻らなければならない。

だが、焦る気持ちとは裏腹に、足元がまるで泥の中に沈むかのように重く、なかなか前に進まない。

 

そして、なんとか地下への階段に足を踏み入れた瞬間、そこはまるで地獄の様相を呈していた。

歪んだ壁、改札の奥には不気味な赤色に染まった空間。そして、不気味な笑い声を響かせながら、不定形の異形の存在が、私を取り囲むように蠢いていた。

 

「こ、これ……シャドウ……っ!?」

 

原作知識が、この状況が何を意味するのかを明確に突きつける。

迫りくる死の予感に、全身の毛穴が開く。助けを呼ぼうにも、声は喉に張り付いて出てこない。

 

『……さあ、貴女の命を賭ける(BETする)か、命を放棄(サレンダー)するか。どちらを選ぶのかしら?』

 

脳内に、どこか妖艶で、しかし傲慢な印象の女性の声が響いた。

(賭ける……?何を?)

『貴女の命をチップに、この理不尽な運命に一矢報いるか。それとも、ここで無様に散るか。血が騒ぐでしょう?東雲海咲』

 

「誰よ……あなた……っ」

 

頭が激しく痛む。

だが目の前には牙を剥き、ゆっくりと迫りくるシャドウの群れ。逃げ場はない。

迫りくる死――その恐怖が、私の意識を飲み込もうとする。

だがその刹那、心の中に、これまで感じたことのない強い衝動が湧き上がった。

 

(ふざけないで!意味もわからず放り出されて……こんなところで、何もわからないままこんな奴らに殺されてたまるかっ!)

 

死への恐怖を凌駕する、怒りと、諦めないという反逆の意志。 私は、震える手で顔に手をやる。

そこには、いつの間にか張り付いていた、マスカレードマスク。まるで吸い付くように貼りついたそれを、私は一気に引き剥がした。

 

「あああああああああっ!」

 

激痛が、脳髄を貫く。顔から血が流れ落ち、目の前が真っ赤に染まる。しかし、その痛みが、意識を研ぎ澄ませた。

血塗れの仮面が砕け散ると同時に、私の身体が怪盗服を身に纏う。

そしてちらりと覗いた背後には、漆黒の燕尾服を身につけ、艶やかなシルクハットを被った女性を模した何かが顕現した。

私の分身、ペルソナ『マダム・マスターシュ』である。

その口元には不敵な笑みが浮かび、両の手には二丁の拳銃が剣呑な輝きを放っている。

 

『さあ、銃を取りなさい。貴女の運命の輪を貴女自身の手で回してみせて。反逆の銃弾を解き放つのよ』

『来て、「マスターシュ」――』

 

その名を告げると同時に、マスターシュは私の意思とは無関係に、銃口をシャドウたちに向けた。

 

『至高の魔弾』

 

たった一言。だが、その言葉と共に放たれたのは、空間そのものを抉り取るかのような、漆黒の弾丸だった。 轟音と共に、取り囲んでいたシャドウたちは、一瞬にして消滅する。あまりにも一方的な、圧倒的な力。

 

「え……っ?は……?」

 

呆然とする私をよそに、マスターシュは不敵に笑う。

『フフフ……素晴らしい。我は汝、汝は我。博徒としての貴女の運命、共に楽しみましょう――』

 

そう告げると、マスターシュの姿は海咲の意識の中へと消えていった。

 

次の瞬間、推定メメントスから一気に現実世界へと弾き出された私は、額から流れる汗を拭いながら、大きく息を吸い込んだ。

 

「はぁ……はぁ……一体なんだったの……」

 

先ほどまで感じていた熱はどこにもない。だが、心臓の奥底で脈打つ、確かな「力」の存在を感じた。

そして気付く。

 

「身体が軽い……?レベルが上がったの……?でもどうして現実世界で……」

 

わからないことばかりだ。

とにかく、今は落ち着きたい。()()()()()()()()()()()()()──。

 




作者のXで海咲のイラストとか置いてあったりしますので、キャライメージ掴むのにご覧頂けたらと思います。

X ID:@chikuwabu_1125
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