欺瞞の秤   作:ちくわぶ@黒胡椒

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◯◯編開始的な


第二十二話 花火大会当日のこと

──ああ、なんて暑いのだろう。今日は花火大会当日。

集合場所である渋谷の駅も例に漏れず、今年最後の大イベントである花火大会の熱気に包まれていた。

 

そんな中、逆ナンされている男衆三人を遠目に見やる。

おーおー、坂本くん鼻の下伸ばしちゃってまあ……。と思ったのもつかの間、喜多川くんが追い払った。

あの場面で素面であれ出来るのすごいねぇ。

……坂本くんが未練がましい様子を見せる中、タイミングよく合流した杏と真が責め立てているのをじーっと見ていると、改札のほうから志帆が歩いてくるのが見えた。

 

「あ、志帆。こっちこっち」

「海咲、ごめんね待たせて」

「全然、私も今来たばっかだよ。ほら、もうみんな居るから合流しよ。おーいお待たせー!」

「あ、海咲、志帆!やっほー!」

「助かった……」

『助かってはねえよ……』

 

ああ、やっぱりこういう日常っていいなあ。何度でも思うね、主人公たちの側で友人として仲良く出来て、志帆を助けることが出来て。

でも、これからどんどん物語は重く辛くなっていくから。せめて今だけでもこうやって平和な日常生活っていうものを送らせて欲しい。

そんなことを思っていると、モナが坂本くんが赤点確定ってことを真にバラしている。あー……結局ダメだったかぁ……。

 

「東雲さん、浴衣よく似合ってる」

「あ、ホント?ありがと!女子四人で一緒に買いに行ったんだー」

 

くるりと回っていると、志帆と杏の会話が耳に入る。

 

「……ねえ、ホントに海咲って雨宮くんと付き合ってないの?」

「やっぱ志帆もそう思う?」

 

などと聞こえてくる。

いや、雨宮くんの態度がとかって話なら、皆に対してそんな感じじゃない?それに未だに東雲さん呼びだしなあ。あんまり友好度的には上がってないと思うんだよね。(※素でそう思っている)

渋谷の駅を出発して、花火の見える方へ向かう道すがら、海咲はふと空を見上げた。今はまだ雨が降る感じはない。だが、私の謎知識さんは、この後の展開を非情なまでに正確に伝えてきている。

 

(……あー、やっぱ結局降るんだろうね。確か、結構な土砂降りが)

 

というのはわかってたので、事前に彼らにはもしかしたら雨降るかもってさと、天気予報で言ってたぐらいの体で伝えてある。

どうやら、雨宮くんと真、それと志帆は折りたたみ傘を持ってきているようだ。杏は……手ぶらだね。

 

そして、歩いていると最初の花火が打ち上がり、歓声が上がる。

直後、 一滴二滴と雨粒が降りてきて、空は突如としてその色を変えて、バケツを引っくり返したような豪雨が私達を襲った。

あれえええええええ?こんなに早いタイミングだっけ?もう少し花火見れたと思ったんだけど、甘かったかあ……。

 

逃げ惑う人々の中で、雨宮くん以外の男性陣は見事なまでにずぶ濡れのネズミと化していた。寄って集って雨宮くんの傘に入ろうとして、おしくらまんじゅう状態になっていてちょっとウケる。一方、私の忠告に備えていた志帆と真、そして私自身は、迅速に傘を広げて難を逃れていた。

 

「うわあああ! マジかよ! クソ、ずぶ濡れだぁ!」

「ひゃああ! せっかくの浴衣がぁ!」

「ほら、杏こっち」

「志帆ぉ!さすが親友!」

「もぉー、だから言ったのに……」

「言ってくれて助かったわ。降っては欲しくなかったけど……」

「しかし、最初の一発だけで雨が降るとは……ついてないな」

『せめて、もう少し見たかったぜ……』

 

みんなが思い思いに残念そうにする。私も正直残念だ。

いや、わかってたんだけど。雨降って中止になるのわかってたんだけど、こういうのって一緒に参加したかったじゃん!

でもこの先、あの時の花火大会散々だったねーなんて笑い話に出来る日がきっと来るから。思い出作りだよね。

そして、花火大会中止のアナウンスが流れる。

 

「……まさかこんなに降るなんて思ってなかった」

「……東雲、お前。予言者か何かか?」

 

坂本くんが、シャツを絞りながらこちらを見てくる。

 

「それこそまさかでしょ。天気予報で言ってただけよ」

 

天気に関してはこれで押し通せるから便利だよね。

みんなも特に突っ込んで来ないし。

一応雨宿りということで、一旦コンビニに逃げ込んで駄弁っている。

すると、聞き耳を立てていたわけじゃないんだけど、周囲に人が居るにも関わらず、坂本くんが次のターゲットだの、もっと評価されても良くねだのと言ってるのが聞こえてしまって、思わずマジかと思ってしまった。……そっかー……ダメかー……。

 

「せっかく、綺麗な浴衣着てきたのに勿体ないね……」

「ほんっとサイアク!気に入ってたのにぃ」

「さすがに、これで解散っていうのもちょっと物足りなくね?」

「竜司、我慢しなさい。そんなにびしょ濡れでお店入れないでしょ」

「そりゃまあ……そっか」

「俺もさすがに着替えたいところだ。また別の日に改めて集まるとしよう」

 

結局、小雨になってきたところを見計らって解散ということになり、皆で駅に向かう。

道すがら、浴衣が濡れてメイクも大変なことになってる人達を見ながら、大変だなぁ……と他人事ながら思う。

 

それにしても……改めて天気すらも予定通りというか、謎知識通りなんだよね。

……もはや不思議とすら思わなくなってきたけど。

 

考えてみるともう三ヶ月ぐらい経つんだねぇ。

チラっと志帆の方を見ると、傘を差して杏と談笑しながら歩いている。

こういうとこ、もう原作とは変わってしまってるのだけど、修正力とかそういうのは働かないみたいだ。

正直今までメメントスの件以外は気にしてなかったんだけど、最近参戦してないパレス内部とかって何か変化……っ……!?

 

「東雲さん……?」

「…………」

「東雲さん!」

「えっ?……あ、雨宮くん?どうしたの?」

「……いや、急に立ち止まってどうしたのかなって」

「立ち止まって……?あれ、うーん?……あはは、ごめん。何か考えてたんだけど忘れちゃった。行こ?」

「……ああ」

 

うーん?なんか違和感あるなぁ……。

なんか前にもこんな事あった気がするんだけど。

……考えても仕方ないか。

 

『シノノメにしちゃ珍しくボーッとしてたな』

「えー?割とボーッとするよ私」

 

そう、これでも家に帰ればベッドに寝転がってボーッとするし、たまに自炊しながら指を切りそうになるし、ルブランで食後のコーヒー飲んでるときは大抵ボーッとして、マスターに声をかけられて我に返るっていうのが、パターン化している。

なんてことを軽く伝えると。

 

「意外だな。君はいつも飄々としていて、冷静なイメージだったんだけど」

「いやー雨宮くん、そんな褒めないでよ。照れちゃうなー!」

『別に褒めてはねぇだろ。むしろ結構天然だろお前……』

「モナ、それどういう意味……?」

『いやだって、お前冷静ってより結構……やめろ!頬をひっふぁるは!』

「モナ、東雲さんは冷静だろう、何言ってるんだ」

『お前はお前で盲目すぎて、ワガハイちょっとこえーよ……』

 

そんなやり取りをしながら、皆の後を追う。

雨も大分上がってきて、そろそろ傘もいらなくなりそうだ。

その後は渋谷駅で皆と別れて、雨宮くんとモナと三人で四軒茶屋に帰る。

 

そろそろ、双葉ちゃん関連のイベントが始まる時期だ。

場合によっては私も今回は……。いや、自分から首を突っ込むのはやめておこう。

せめて、もう少し皆が強くなってから……って、実際みんな今どれぐらいレベル上がってるんだろう。

というか、この世界の皆にはレベルって概念あるんだろうか……?丁度いいと言えば丁度いいタイミングかもしれない、ちょっと聞いてみようかしら。

四軒茶屋で電車を降りて、改札を抜けてルブランの方へ向かう傍ら、雨宮くんに相談を持ちかけようかな……と思った矢先に唐突に思い出した。

 

(……このあとイベントあるじゃん!!)

 

そうだ、このあと確か冴さんが居て、マスターとのやり取りを見るシーンがあったはず。

一緒に付いていっちゃうと、私の存在が冴さんに認識されてしまう。せっかく明智くんをわざわざ避けているのに、冴さんに私の事を知られてしまうのは出来れば避けたい。

しょうがない、また後日聞こう。

 

「それじゃ二人とも、また明日ね!」

「ああ、おやすみ、東雲さん」

『おう、風邪引くなよ』

「二人もね。おやすみ」

 

もはや、恒例行事のように家まで送ってもらって、挨拶をして別れる。

リビングに移動し、テレビを付けるとちょうど良くというか、メジエド関連のニュースをやっていた。

 

「それと明智くんね……。こう、なんていうか全部知っちゃってる身としては、滑稽というか、空々しいと感じちゃうなぁ……」

 

何もかもが芝居がかって見える。

まあ、そのままその通りなんだけど、大衆の皆さんはこれにまんまと騙されちゃうんだよね……。

正直明智くんに関しては、やっぱり思うところもあるけど、最後まで生きていて欲しい。そして生きて罪を償ってもらいたいから。

 

彼との交流は雨宮くんがうまくやってくれるはず。

私が出来ることは……今はない……か。

サポートするだなんて息巻いて、大したこと出来てないのが心苦しいなぁ……。

ただ、ここまではあんまり私がサポートするほどのことも無かったというか、ね。

 

でも、これからは色々と支援活動に移れると思うんだよね。

彼らの戦力も充実してきて、多少敵が強くなっても対応可能なはず。

なら、一緒に戦って彼らのレベルを上げて、同じぐらいの強さになれば……って思うんだけど。

それも全て、怪盗団の皆にレベルが存在してるのかっていうのも重要になってくるよね。

彼らの普段の生活を見ている限り、私みたいに現実でもステータスが適用されてるってことはないみたいだし。

 

やっぱり、絶対聞いておかないとダメだね。

よーし!とりあえずお風呂入ってこよう!

浴衣のまま考え込んでるのもアホらしいので、脱衣所へ向かってスパーンと脱ぐ。

その日は、気持ち良く湯船に浸かって、日記帳に今日の出来事を記して眠りについた。

 

――後日、雨宮くんたちのペルソナって強くなってる?って聞いた所、攻略指南でもされてるのか?ってぐらいスキルも所持ペルソナも充実していてびっくりした。

もちろん、ストーリー進行具合に寄せた範囲ではあるけど、ちゃんと仲間とのコミュも育んでいて、めちゃくちゃ感心してしまった。

……うぐぐ、有能サポートとは一体……。




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