欺瞞の秤   作:ちくわぶ@黒胡椒

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今日も特殊タグ多様してます。多分今後はあんまないと思うので、許して。


第三十話 ネクロノミコン

さて……。このパレスに足を踏み入れた時は、双葉ちゃん自身の警戒がそこまでではなかったためか、私がここに入ってきた影響はなかった。

ところが、認知存在である若葉さんの偽物である怪物が、怪盗団も含めて私を完全に敵とみなしたことで、その影響がここにきて現れた。

完全に貫いたはずの片翼が、再生している。

さらに、原作ではなかった展開が私達の目の前で繰り広げられていた。

先程私が頭を撃ち抜いて消したはずの双葉ちゃんを蝕む認知存在達が再生して、背後から形を成して襲いかかってきたのだ。

 

……まあ、ここで狼狽えるような私じゃないんだけど。

むしろ、いくらでも来なさいよってぐらい、お誂え向きなんだよね。

至高の魔弾は全体攻撃。飛んで火にいる夏の虫ってやつだね!

 

「あいつらは私に任せて!チャージ!至高の魔弾!!」

 

放たれた漆黒の弾丸が、オーバーキル気味にシャドウを蹴散らす。

が、すぐに新しく出現して襲いかかってくる。

ごめん、この状況で不謹慎だけどこれさぁ……経験値の山だぁ……っ!!

 

メメントスと同じく、勝利の息吹で回復するし、至高の魔弾は私のHPからの消費だから残弾の心配もないし、複数ヒット扱いなせいで撃ち漏らしもない。

雨宮くん達には申し訳ないけど、PT外ということでおそらく私だけに経験値が注ぎ込まれてる。

あっ……!駄目だこれ……!ますます怪盗団とレベル差が開いちゃう……!!とはいえ、あっちのデカいの任せざるを得ないから、こっちで経験値稼ぎしてとか言えないし……。

 

……まあ、ここは開き直るしかない。私が原因で発生してるであろうこいつらは、私が処理するべきだ。

それに、彼らにとっては手強い相手かもしれない。ここは適材適所で行こう!心に棚を作れ!

 

 

── 一方、怪盗団。

 

『双葉ァ!誰がお前を育てたと思ってるゥ!悪い虫をゾロゾロ引き連れて寄って集って私を襲ってェ!お前は黙って私の言う事だけを聞けェ……!!』

 

「はっ!よく言うぜ!ゾロゾロ引き連れて襲ってきてんのはそっちのほうだろうが!」

「海咲、一人で大丈夫かしら……。ホントに虫の大群のように襲いかかってきてるけど…………うん、大丈夫そうね。全て蹴散らしてるわ」

「くっく……実力の程は知ってはいたが、こう改めて見せられると圧倒的だな、彼女は」

「ホント、心強いよ。私の親友は!」

『あいつ……めちゃくちゃスタイリッシュに銃撃つよな……』

「そうだろう。凄いんだ、東雲さんは」

「お前……いや、なんでもねえわ……」

 

目の前で空を飛び回るでっかい怪物が、わたし(双葉)を煽ってくる。

わたし達の背後からは、無尽蔵に黒いのが湧いて出てきて向かってきてるけど、海咲がその全てを殲滅している。……そう、殲滅って言葉がぴったりだ。

初めて戦う姿を見たわたしでもわかるぐらいに、圧倒的な力。あれだけの力を持っているのに、海咲はすごく優しい。

 

今思い出しても、海咲はただの一言もわたしのことを責めなかった。言葉の全てがわたしの心配、わたしの事を考えての発言だったってことがよく分かる。

こうして、わたしが前を向けたのも、海咲のおかげだ。怪盗団のみんなを信じようと思えたのも、海咲のおかげ……。

そんな海咲が、今一人で大群を相手に戦ってくれてる。……あいつは大丈夫だって信じられる!なら、わたしは……!

 

「お母さんを偽るただのバケモノがッ!もうわたしは惑わされたりしない!」

 

『母親に口答えするなんてェ……!そこの悪い虫の影響かァ!?許せないィ!潰してやるッ!!』

 

怪物が上空へと急上昇していく。それと同時に、海咲のほうに群がる奴らの数が増したのがわかる。

 

「海咲ッ!!」

「こっちは大丈夫!多勢に無勢って、一番私の得意な盤面なのよね!」

 

ちらっと、こっちに視線を向けて、マスクの奥の瞳でウインクまでしてみせた。

……ああ、カッコいいな……。海咲は大丈夫だ。あいつなら……きっと全てが終わっても、こともなげにおつかれー!なんて返してくれるんだろうな。

事実、全く敵を寄せ付けていない。タワーディフェンスなら、無限に全体攻撃し続けるチートキャラだぞあんなの……。

 

『くそっ!また上空から仕掛けてくるつもりだ!どうすりゃいいんだあんなの』

「あの状況じゃ、東雲の援護は流石に期待できねえ!なんとかならねえか!?」

「大丈夫だ、ここはわたしがなんとかする!任せろ!!」

「頼むぞ、双葉!」

「ここは私の心の世界だぞ!自分の心の歪みを把握するぐらい、造作もない!」

 

わたしは、ネクロノミコンを操作してアイツの攻撃に対して準備する。……よし!行ける!

その瞬間、怪物が急降下してくるけど……やらせるものか!!

 

『死ねぇぇぇぇぇぇ!!』

 

みんなを囲むようにバリアフィールドを瞬時に張る。……間に合った!

バケモノを弾き飛ばして、みんなを守ることに成功した。

 

『この……クソガキどもがァッ!!クソッ!クソッ!!クソォッ!!』

 

「今度はわたしたちのターンだ!……いくぞ!フィールドに最終兵器を召喚して攻撃表示でターンエンド!」

『でっけぇバリスタが出てきたぞ!?』

「それを使って撃ち落とせ!そんでもってボッコボコにしてやれ!」

『なるほど!やってやるぜ!蓮!ワガハイに任せろ!』

「頼んだ!モナ!!」

『準備が必要になる、少しの間頼んだぜ!』

「行ってモナ!こっちは任せて!私達も少しはいいところ見せておかないとね!」

 

モナと呼ばれた不思議な二頭身生物がバリスタに向かっていく。……うん、気にしないようにはしてたけど、アイツは一体なんだ……?

海咲とは別のベクトルで、意味がわからないな……。

 

みんなも、空の怪物相手に銃で攻撃しているが、決定打が取れてない。

モナ~!急いでくれー!

 

『う、ううッ……あれだけ必死にお前のことを育ててやったんだぞ!?母親をないがしろにするなァ……!この世でたった一人のお前の母親だぞォ!!』

 

「そんなわけがあるか。これ以上双葉の心を貶めるのはやめろ!この、紛い物がッ!!」

「その通り。俺も同じだ。……もう母はこの世に居ないし、記憶もない。だが、母の無償の愛というものはッ!この胸にしかと残っているッ!!自分が産んだ娘をないがしろにし、まるで甚振る為の人形のように扱おうとする貴様が、双葉の母親のわけがないだろうッ!!!出直せ紛い物め!!」

「(あのオイナリ……私と同じ……?お母さんが居ないのか……)」

 

『黙れ黙れ黙れ!双葉の幸せはここにこそある!現実など辛いだけ。ここでずっと過ごしてればいいィ!!誰にも……誰にも渡さないィ……!!』

 

「双葉なら大丈夫だ。お前など必要ない」

 

『な、なにィ……!?どんな根拠があってそんな妄言を吐くゥ……!?』

 

「ソイツの言うとおりだ!だって……わたしはもうひとりなんかじゃない……!海咲が居てくれる!コイツらだって……多分居てくれる!わたしの幸せは、わたしが自分で決める!!」

「いや、そこは言い切れよ!」

「そうよ双葉!海咲と同じように、私達にも頼ってちょうだい!」

 

『……子供が生きていくためには、私のような母親として絶対的な存在である存在が必要なのだ!わかるだろォ!!双葉ァ!!!』

 

「フッ、双葉の心を開いてみせた東雲さんに比べ、母親と称するお前は精神虐待以外の何をした?ただの偽物が分不相応に語るな!」

 

『わ、わわ……私がに、偽物だとォ!?言うに事欠いてクソガキがァ!!』

 

わかるよ。今ならわかる……。わたしの心は、どうしてこんなヤツを母親だと思ってしまっていたんだろうな……。優しかったお母さん。大好きだったお母さん。厳しいけど、それでも最後には笑顔を見せてくれたお母さん。わたしの大切な思い出を汚した、あの黒い服の大人たち。そして騙されて揃ってわたしを糾弾して追い詰めた親戚たち。

全部……全部紛い物だ……!わたしは……今までずっと……騙され続けてきた……っ!

 

「お母さんは大切だ。今でも、ずーっと、大好きだ!でもそれはお前じゃない!!それにな、全部他人に決めてもらう操り人形みたいな人生なんて、わたしは絶対にいやだ!」

 

『双葉双葉ふたばァ!!親に逆らう悪い子はァ……潰れてしまえッ!!』

 

あいつがもう一度急降下攻撃を繰り出してくる!そうはさせるもんか!

 

「お前の攻撃なんて、わたしが防いでやる!」

 

よしっ!タイミングばっちりだな!

モナ……も準備が出来たか!?

 

『角度、方向バッチリだぜ!アイツの気を引いて動きを止めてくれ!』

「任せろ!全員、一斉射撃だ!」

「よしっ!怯んだぞ!モナ、撃てーーっ!!」

『うりゃっ!!撃ち抜け!!』

 

ズドォォンッ!!

 

『ギャァァァァアアアアアアアア!!?』

 

「さあ……ホールドアップだ」

 

『よくも……よくもよくもよくもお前らァッ!!親に逆らう子供は……死ねえッ!!』

 

「うるさい!おまえはわたしの親じゃない!わたしの弱さが生んだバケモノだ!お母さんの皮を被った偽物が……これ以上喋るな!……みんな、ドンドンやっちまえっ!!」

「SHOW TIMEだ!」

 

おおおおお!?なんだアレなんだアレ!?怪盗団が縦横無尽に飛び回って、連続攻撃を決めている。すげー!これが認知の世界でのアイツらの身体能力の為せる技ってことか……!

……でも、あれだけの攻撃を与えても、バケモノはまだ健在だ。

 

『双葉ァ!やめろ双葉ァ!双葉双葉双葉ァッ!!周りが何を言おうと関係ない!お前は私のモノだァァ!!私に、親に逆らうことなんて絶対に許さないからなァ!!』

 

「随分と好き勝手言ってくれるじゃない。紛い物のお母様?」

「……海咲っ!まさか終わったのか……?」

「うん、後ろは全部片付けたよ。双葉ちゃん」

 

コツ……コツ……と、ゆっくりと歩いてくる海咲の姿が目に映る。

ただ歩いているだけなのに……まるでモデルのように、その姿はとてもサマになっている。且つなんというか……強者のオーラというかそういうのが立ち上っているようにも視える。

味方としてその姿を見ていてもわかるぐらいの、圧倒的な強者感。あのバケモノの視点でアイツを見てたら絶望的な何かを感じそうだ……。

 

「双葉ちゃんの心に巣食った化け物が、母親面して若葉さんの言葉のように語ってんじゃないわよ。埋め込まれた悪意によって生まれただけの紛い物ごときが!双葉ちゃんの母親を勝手に名乗るなッ!!」

 

『うるさい……!うるさい……黙れ……うるさい……黙れ黙れ黙れェ!!』

 

「さっきからギャーギャーわーわー聞き苦しい喚き声を並べ立てて、自己都合の塊のような言葉ばっかり吐いてさぁ!今までにどれだけ双葉ちゃんが醜悪な言葉を投げかけられてきたのか、嫌でも理解出来ちゃうでしょうが!!もう双葉ちゃんはお前なんかに縛られる存在じゃない!あの子の自由は私達が奪っていくから!!」

 

……海咲はいつだってそうだ。たった2日しか話してない。それなのに、いつだってアイツはわたしの事ばっかり考えていた。きっとそういうヤツなんだ。自分のことより他人を気にして、他人のために動ける人間。自分の殻に閉じ籠もって部屋から出ずに、惣治郎すら部屋に入れることを拒絶して。

そんなわたしを、アイツは最初から今までずっと……。そして今こうして、わたしの為に戦って怒ってくれている。

 

そしてきっと、全てが終わっても特に気にすることもなく、終わったよー双葉ちゃんなんて言ってくるんだ。そんな風に考えてしまうぐらい、わたしはアイツを信用してしまっている。信用させてくれた。だからわたしも覚悟を決めたんだ……っ!

 

『双葉ァ……!お前なんて……お前なんて産まなければァ……お前なんかを産んだせいでこんなァッ!!』

 

「わたしは……生きる!決めてくれ、海咲っ!」

『チャージを使うまでもないわ。私の怒りも極限まで高まっていてよ、海咲……!』

「珍しいじゃない、マスターシュ。でもね……気持ちは一緒。一気に消し飛ばすよ……!」

 

見ただけでもわかる、すごい威力の一発を放とうとしてる。

――怪盗団を見つけてたおかげで道が開かれた。海咲が来てくれたおかげでわたしの心が開かれた。怪盗団が応えてくれたおかげでわたしの視界が開かれた。

そして今、みんなのおかげでわたしの未来が開かれようとしている。

 

「……!?皆、離れろ!デカいのが来るぞ!!」

「下がれ!巻き込まれるなよ!」

「やっちまえ東雲!ぶっ飛ばせ!!」

「そうよ!やっちゃえ海咲!私達の怒りも全部乗っけて持ってって!!」

「任せたわよ海咲!」

『フタバ!ワガハイらを保護できるか!?』

「まかせろ!安全圏から観戦させてやるぞ!」

「くぅたぁばれぇーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

 

保護バリアを張った瞬間、いや会話からタイミングを見ていたのか、海咲が収束する一撃を放った。

おぉう……海咲もテンション上がるとあんな感じになるんだな……。意外な一面を見た気分だ。

 

『ギィャアアアアァァァァアアァアァアアア!!!??』

 

ついに、海咲が放った一撃がバケモノを貫いて、トドメを刺した。

……終わったんだ。わたしの心にずっと染み込んでクモの巣のように張り巡らされていた、あの時の心の痛みも……引きこもって、毎日死にたいと塞ぎ続ける日々も……。

ふ……と気が抜けたように、ペルソナが消えて地上に降りた。

うぅ……なんだ、力が抜けるみたいだ。……と、へたり込んだところで、抱きしめられた。……海咲だ。

 

「おつかれさま、双葉ちゃん。よく頑張ったね。皆を助けてくれてありがとう」

「へへ……お安い御用だ……」

 

わたしが海咲にもらったものは、こんなことぐらいじゃ返しきれない。それだけ、わたしにとっては、大きい出来事だったんだ。これぐらいのこと、お安い御用だ。本当に。

 

「双葉!すごかったわ!」

「ああ、すげえよお前!マジですっげえ!」

 

怪盗団のヤツらもわたしのほうへ向かってきて、口々に褒めてくれる。

そして、余裕が出てきたから気付いたが、なんかわたしも凄い格好してるな!?

 

「うぉお!?なんじゃこりゃあ!?ピチピチの全身スーツか!?」

「なんか双葉ちゃんの衣装は近未来感あるね。ペルソナもだけど」

「それに比べて海咲のは、ちょっとえっちだな!太もも生足はさすがに狙いすぎじゃないか?」

「っ!こらぁ!ちょっと気にしてるんだからそこは言わないでよ!それを言ったら、杏なんて谷間ガン見せだよ!?」

「なんか私に飛び火してきた!?」

「あはは……でもちょっとつかれ……た……!?」

 

その時、目の前にお母さんの幻影……?が現れた。また偽物……いや、ちがう。あれは……っ!

 

「お母さん……!?」

「えっ……」

 

『双葉。本当の私のこと、思い出してくれてありがとう』

 

「お母さん……ワガママ言ってごめんなさい。わたし……わたし……」

 

『こっちに来てはダメ。あなたの居場所は、ここじゃない。もうそこにあるでしょう?』

 

「でも……でも、せっかく会えたのに……」

 

お母さんだ。目の前に居るのは、本当にわたしの記憶の中に残っていた……本物のお母さんだ。

なら、伝えなきゃ……!わたしの気持ち、ちゃんとお母さんに伝えなきゃ……!!

 

「……あの、わたし……お母さんのこと、大好き……だから……!」

 

『私もよ、双葉。……ほら、行きなさい。あなたを待ってくれている人達が、いるでしょう?寂しい思いをさせてごめんなさい。でも……愛しているわ、双葉。大好きよ』

 

その言葉を最後に、お母さんの幻影は消えていった。ありがとうお母さん……。わたしも愛してる。ずっと……お母さんのこと忘れないから……。

……さようなら。大好きなお母さん。

わたしは、後ろを振り向いて怪盗団のみんなと向き合う。

 

「……メジエドだったな。あとは任せておけ」

「どこ、行くの?」

「もう帰る。ナビの使い方もわかったし」

「じゃあ、わたしも一緒に戻ろうかな。みんな、おつかれさま!またね!」

 

 

そう言って、海咲も付いてくる。「えぇ!?ちょっ……そんなあっさり!?」なんて声が後ろから聞こえてくるが疲れてるから、無視だ無視。帰ったら、海咲と色々話をしよう。恥ずかしいので言わないが、わたしは海咲のことをお姉ちゃんのように思ってる。

今回のこと、今までのこと、海咲になら恥ずかしがらずに話せると思うんだ。

それに、海咲もわたしの話を茶化さずにちゃんと聞いてくれるって信じてる。

今までとは全然違う、日常に彩りが出た気がする。きっと、これからのわたしは今まで失った時間を取り戻せる。そう信じられるようになったんだ。

 

「なあ、海咲。話したいこといっぱいあるんだ。聞いて欲しいこともいっぱいある。そんでもって、わたしもルブランに行きたい。ルブランで惣治郎のコーヒーが飲みたいんだ」

「あら、前向き!吹っ切れたみたいで嬉しいよ。約束だもんね、マスターのとこに顔を出そうって。どうする?一緒に行く?それとも私が居るところに突然乱入してくる?」

「乱入のほうが絶対おもしろいな!惣治郎をびっくりさせてやろう」

「マスター驚きすぎて泣いちゃうかもね。ハンカチ持ってってあげようね?」

「ふっふっふ……。精々泣かせてやろう」

 

そっか、今まで考える余裕なんてなかったけど。そうなんだ。こういう気持ちなんだ。

 

「海咲。前を向けるって、こんなに楽しいことなんだな……。わたしずっと抜け出せなかった。負の感情に飲み込まれて、自分という存在がどんどん沈んでいって浮き上がってこれないんだ。でも、やっとわたしは息が出来るようになった。生きて、前を向こうって思えたんだ」

「……うん」

「海咲のおかげだ!もちろん怪盗団にも助けてもらったが、あの時めちゃくちゃ強引だったけど、海咲が来てくれてわたしの心の隙間めがけて入り込んできてくれたおかげで、わたしは今こうして自分の足で歩けるようになった!ありがとう海咲、大好きだ!」

「なぁに、もう……っ。急にそんな事言われたら泣いちゃうでしょ……。私も大好きだよ。もう、双葉ちゃんのことはまるで妹みたいに思ってるからね!」

 

へ……へへへっ、ふへへへへ……。そっか、そっか!海咲もそう思ってくれてるのか!

ああ、神様ありがとう。

死にたい、自分なんか死ねばいい。お母さんが死んでからずっとそう思ってた。

でも、海咲をわたしの所に連れてきてくれて本当にありがとう。

 

きっと、明日からのわたしは、生まれ変われる。海咲がいて、怪盗団のみんながいてくれる。

さようなら、お母さん。ずっと忘れない。

これからは、お母さんとの思い出を心の奥で大事にしながら、それでも前を向いて生きていくから。

一色若葉の娘は、これからちゃんと自分の足で立って生きていけるから!だから見守っていて。

 

今までありがとう、お母さん……。




変だな……。まるで双葉がヒロインみたいだ。
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