『花火やろう。ルブランまで来てくれ』
もはや、慣れてしまった双葉の唐突な呼び出し。
今日は8/28、明日は海水浴に行く予定だ。
ルブランの前で花火をやるっていうイベントは確かにあったので、そういえば……なんて思った。
私は、スマホだけ持ってルブランへ向かう。すると、双葉と……エプロンを付けた雨宮くんが外に出て待っていた。
「海咲!待ってたぞ!」
「こんばんは。花火のお誘いありがと」
「花火大会、散々だったんだろ?そうじろうから聞いた」
「あはは、あの日は散々だったね。そっかぁ、それで花火に繋がったんだ」
「うむ!とりあえずそうじろう呼んでくる!」
店内に走っていく双葉。たった数日で随分と印象が変わった気がする。
しっかりと、特訓の成果が出ているのか、怪盗団の皆が打ち解けるのが上手かったのか。私が居なくてもしっかり、彼らと仲良くなれたという事実に、ほっとすると同時に。彼らへの感謝の気持ちも湧いてくる。
『危なっかしいと思って尾けてみたが、アイツはちゃんと一人で買い物できてたぜ。ここまで出来れば問題ないだろ。アケチの野郎の質問も、うまくかわしてたしな』
「……!?来たの!?」
失念していた。
ちょっとしたイベントの隙間に挟まる形で、ルブランにやってくる明智くんという出来事を完全に失念していた。
私が彼が敵だと伝えた直後に来たっていうタイミングに、ちょっと伝える時期を早まったかとも思ったけど、大丈夫だっただろうか。
そう思って尋ねると。
「知ったうえで話を聞いていると、色々見えてきた。探ってるな。あれは」
『ああ、怪盗団の正体に気付いたってわけじゃなさそうだが……。認知訶学のことや、フタバがワカバの娘ってことを気にしてたな』
「彼、あれでも警察と協力体制を取ってる探偵だから。気取られないように気を付けてね……」
「俺達も、あいつに対して警戒はしてる。ただ、あくまで怪盗団のファンとして、否定的なあいつをあまり好きじゃないっていうスタンスで行くことにした」
「それぐらいがいいと思う。なんかごめんね、余計な心労増やしちゃって……」
『いや、そんなことねえ。現実で何かされたらワガハイらは手も足も出ねえ可能性があるからな。その辺情報渡さねえようにとか考えられるだけ、助かるぜ』
そう言ってもらえると、こちらとしても少しホッとするんだけど……。
「そうじろう、早く早く!もう準備出来てるし海咲も呼んだ!」
「待て待て、まだタバコの火が……っと、こんばんは海咲ちゃん。わざわざ来てくれたのか?」
「すぐ近くですから。せっかくの夏の思い出ですし」
「そうだぞ。皆でやったほうがたのしいからな!」
はしゃぐ双葉と、体勢が低いせいで煙に巻かれて咳き込むモナ。
それを笑って見ながら、私は雨宮くんと並んで、静かに花火の火を見ていた。これが花火なんだ……花火大会で見た大きい花火とは違って、目の前で展開される炎色反応による綺麗な火花。
知識としては知っていても、私には実際に目にしたことがないものや、体験したことのない知らない事がいっぱいある。それらを知るたびに新しい感動が生まれている。怪盗団の皆をハッピーエンドに導くために生まれた私が、与えるんじゃなくて与えられてるという今がとても楽しくて、とても嬉しい。
彼らの仲間、友人として過ごせる日常に、心からの幸せを感じていた。
──翌日、ルブラン前。
「二人とも、双葉のこと頼んだぞ」
「はい、ちゃ~んと見守ってますから!」
「なるべく離れないようにするので、大丈夫ですよ」
「なるべくじゃねえ!見張っとけよ!……おい、双葉ほんとに大丈夫なんだろうな?」
「電車で日帰りできる距離だぞ!わたしを舐めすぎだそうじろう!」
「お、おう。……まあ腹くくるか……。お前らも気を付けていってこいよ」
そんな過保護なやり取りを経て、現地へ向かう。
双葉もなんとか人でごった返す電車という関門も乗り越えることが出来ていた。特訓の成果も少しはあったみたい。
原作ではすっ飛ばしてるところも、現実では全て目の前で行われる出来事なので新鮮極まりないというか、こういう感じになるんだね……といった印象を改めて受ける。
片道二時間近くの道程を経て、海に辿り着いた私達を待っていたのは、見渡す限りの人、人、人の海。海水浴場という名の、海岸に広がる人で出来た海のようなものだった。
うへぇ……こういうの見ると、暑い時に考えることってみんな同じなんだねぇと思う。
「うおおおおおっ! 海だあああああ!」
砂浜に降り立つなり、坂本くんが歓声を上げて駆け出す。その後ろでは、大きなパラソルを抱えた雨宮くんと、日焼けを気にする喜多川くんが続いていた。
ササッと着替えの終わった雨宮くん達、男子チームに場所取りをお願いして私達は着替えに向かう。
試着の時に
そして、こちらの女子チームは杏、志帆、真、双葉、そして私の五人。
それぞれの水着は、各々の個性が光っている。
一番乗り気だった杏は、正直一番際どいというか、肌面積の多い派手なビキニタイプ。しかも、ビキニショーツの縦面積の細いこと細いこと。しかも紐だよ!?……でもすごい似合うんだよねぇ……。さすが現役モデルというか、杏だからというか。髪の色も相まって、スタイルの良さが全面に出てる。っていうか足長いなぁ……。
志帆は、すごい志帆らしいというか。ビキニ型のスポーツタイプの水着。胸元の露出は低めなものの、元々バレーをやってたのもあって、いい感じに鍛えられたスポーツをやってた人の身体を全面に押し出すかのような感じで、とても健康的な印象を受ける。今からビーチバレーやりますって言われても納得してしまいそう。
真は、なにげに可愛い系で攻めてきた。水着の色も白のフリル付きセパレートで、見た目だけならとても清楚。普段の怪盗服とのギャップが素晴らしい。……正直、セレブが着るような黒一色のゴリゴリのブランド水着みたいのを着る真も見てみたかったけど、どっちかって言うと冴さんかな、それは。杏と並べると対比で可愛さが増してる。杏はどっちかって言うと綺麗系だからね。
そして双葉は、これが意外と……肌面積的には杏に負けず劣らずだ。タイプ的には真と同じ方向性の、フリル付きのセパレート。可愛らしさを全面に押し出した感じの杏チョイスのその水着は、双葉にとっても似合ってる。気持ち、盛った胸の膨らみは少しだけど彼女を大人に見せ……ている。ただ、やはり恥ずかしいのか、何故かやたらロングなタオルを持って何かをしようとしている。……顔に巻くんだっけアレ?
そして、私も例に漏れず杏チョイスの水着。ワンショルダーのビキニタイプだ。胸元は紐ではなくリングで固定されてるタイプで、モロに谷間が見えてしまう。いや、これ派手すぎだし見えすぎでしょ!と抗議はしたものの、いやアンタ絶対これにしな!少しはいい目、見させてやりなさいと押し切られて今に至る。
いい目って何よ……。っていうか、誰に……?
そんなこんなで、着替えも終わり皆が出ていく中、双葉も頭にタオルをグルグルに巻いて出ていくのを後ろで見守った。
大丈夫……?転ばない……?と思いながら、見ていたが無用の心配だった。
そして、真にタオルを外されるのを黙って受け入れる双葉。……うん、少なくとも怪盗団の皆には緊張感も無くなったみたい。
志帆とも、行きの電車で待ち合わせてた時少し話したけど、私と杏の親友と聞いて警戒心が薄れたのか、そこまで緊張した感じはなかったように思える。
成長したんだねぇ……ほろり。
後方腕組み見守りも終わったので、私もそっと出ていく。
なにやら、男子チームが固まってこちらを見ているが、どうしたんだろうか。
「おまたせー!」
「あ、ああ……東雲さん……その、すごく似合ってる」
「あ、ホント?ありがと!これ杏が選んでくれたんだけどね、さすがにちょっと露出多くて心配だったんだ」
「いや、本当に似合ってる。心の底から似合ってる。ありがとう!」
「……な、なんでありがとう……?」
雨宮くんにお礼を言われながら手を握られ、ちょっと赤くなりながら戸惑いつつ杏のほうを見ると、何故か満面の笑みでこちらにピースしている。
よくわからないが、彼女的には満足らしい。
「……っていうか、すっげーな海咲。何食ったらそんな身体になるんだ……?カレーか……?」
「いや、カレー食べてあんなになるなら、私毎日食べるって!」
「貴女って随分と着痩せするのね……。同じ女子として、その……尊敬するわ。海咲って、脱いだら凄いのね……」
「新島先輩、その言い方はちょっと誤解を招くというか……」
「そ、そうね、ごめんなさい」
なんかちょっと気まずくなってきたので、皆を促して男子チームに場所取りしてもらってた場所へ向かう。
その間、周りからの視線を感じてなんだか鬱陶しかったので、喜多川くんよろしく薄手のパーカーを羽織っておいた。
別に雨宮くん達に見られる分には構わないけど、有象無象に見られたいとは思わないからね。
とはいえ……寄ってくる馬鹿は居るものだ。
雨宮くん達が食事や飲み物を買いに行っている隙を突き、遊び人風の男たちが、獲物を見つけたような顔で近づいてきた。
「ねえ、お姉さん達。よかったらあっちのパラソルで一緒に飲まない?」
「君達みたいな美人、見たことないよ。連絡先、教えてくれないかな」
馴れ馴れしく肩に手を置こうとした男。その手が触れそうになったその瞬間、私は男の手首を捻り思いっきり砂に転がす。それを見下ろす私の目付きはゴミを見るような目付きだったと思う。まるで私の周囲だけ数度下がったかのような錯覚。その視線をモロに受けてる男はたまったものじゃないだろう。
私は一言「あら、ごめんなさい。いきなり触ってこようとするものだからつい」と返す。その瞳に絶対零度の冷ややかな光を宿して、そいつと、周りの男たちを視線で射抜いた。
ホント鬱陶しいなあ……。
「な、何すんだこの……っ……ひっ!?」
「私達、連れがいるので。消えてくれますよね?」
メメントスでシャドウを見るような、感情の無い目付きで見下ろすと、怯えたように後退る。
それでも、後ろの男たちが引き下がらず、懲りずに「まあまあそう言わないで」とか言いながら触ってこようとしたので、また転がした上で顔の横を思いっきり踏みつけて差し上げた。
当然思いっきり振り下ろされたそれは、ステータスが反映されたバグ威力でもって振るわれたもの。砂浜だと言うのにすごい音を立てて砂が舞い、男の顔に思いっきり降り注ぐ。
「ね?お互い平和にいきましょう?」
お前がそれ言うんかいとツッコまれそうではあるが、心に棚を置く。
男達も壊れた赤ベコみたいに首を縦に振りながら、去ってくれた。
「おい!何かあったのか!?」
「ものすごい音がしたが……どうした?」
男子チームが戻ってきたのは、全てが終わった時だった。
なので、私は誤魔化すことに。
「ううん、なんでもないよ。飲み物ありがとう」
「いやいや、無理あるって海咲」
「そうよ、今の騒ぎで私達の周りから人が離れてるわ。誤魔化しきれないでしょ」
……確かに、私達の場所を中心にドーナツ化現象が起きている。
失礼しちゃうなあ……。
「というわけで、リーダー。海咲の側にいてあげて。またナンパされても困るし。主に海咲が加害者になりかねないって意味で」
「杏っ!?」
「わかった、任せろ。東雲さんを決して加害者にはさせない」
「雨宮くんっ!?」
くそぅ……皆からの逆の意味での信頼が痛い……。
そりゃ、ちょっとやりすぎたかもとは思うけどさあ……。空気読まない愚か者達が悪くない……?
声かけた相手がどんな相手かなんて知ってるわけないからしょうがないっていうのは、わかるけど……。
その後は、双葉がカップ焼きそばを取り出してツッコまれたり、真が水着を気にして食事を抑えてることに対してモナがノンデリかましたり、この後ビーチバレーでもするか?っていう坂本くんの誘いに対して、バナナボートはちょっと人数的に中途半端だったから、人数居るし!と乗り気になった杏が丁度4人づつチーム組めるからやろう!って言いだして、ビーチバレーをやることになった。
おお……順序的に原作では無かった展開……!志帆もいるし……でも、バレー大丈夫かな?嫌なこと思い出したり……ってちょっと心配になったけど。
「私も、いつまでも引きずってるわけじゃないから。大丈夫だよ」
とのことで、志帆も参戦。荷物番どうしようか?となったけど、貴重品とカバンとかは全部ロッカーに預けて防犯対策。
坂本くんがモナに括り付けとこうぜとか言い出したけど、さすがに可哀想でしょ!ってことで無し。
ちなみに、この手のイベントの定番である日焼け止めを塗ってもらう的なアレは、すでに着替える時に女子は全員済ませているのだ。残念だったね!……誰に言ってるんだろ。
そんなわけで始まったビーチバレー。ネットの貸し出しまでやってるとか、ここの海水浴場凄いよね。
片方のチームは、雨宮くんに喜多川くん、それから双葉と私。もう片方は杏、志帆、坂本くんに真。
私は身体能力的にちょっと
なんか、四人も居るとそれはそれで狭くてやりづらい……!そもそもビーチバレーって基本2対2でやるものだもんねぇ……!
っていうか大砲がの弾が突き刺さるような真のスパイクもヤバかった。あれ?ちょっとステータス反映されてたりしない……?その球、中身空気だよ……?
双葉が途中でバテてしまって、ヘロヘロになってたけど、その表情はとても楽しそうだった。
なのでほぼほぼ4対3での対戦になったけど、中々伯仲した戦いになってすごい楽しかったなあ。思えば、大人数で体動かして遊ぶっていうのは、あまり無かったので新鮮だった。
直近だとやったことって言えば釣りだしね。しかも釣り堀。
原作だと、バナナボートで女子三人で遊んでるところ、男子チームがナンパしに行くってイベントがあったけど、こういう状況なので当然それは無かった。彼らがナンパしてるとこなんて見たくなかったから、良かったなー。
最初から最後まで、みんなで遊んで楽しんだ一日になり、皆も満足そうな表情。モナもネットに乗っかって、ボールをはたいて邪魔したりと楽しんでいた。こういうところでは、言っちゃ悪いけどないがしろにされがちなモナも一緒に楽しめたっていうのが、なんか良かったね。こころなしか満足そうでご機嫌なモナを見て、自然と笑みが溢れた。
その後は、せっかく海に来たんだし泳ごうってことで、皆で海に飛び込んだ。パーカーはもちろん脱いだよ。
双葉は泳げるか若干怪しいということで、皆で交代しながら泳ぎの練習。最後の方には少しだけど浮き輪無しで泳げるようになっていた。
なんだかんだ夕方ぐらいまで遊び倒した私達。そろそろ帰ろうかという空気になってきた。
「そろそろ帰らないとね」
「双葉も人混み平気そうだったし、課題はコンプリート……かな?」
いつの間にか、杏も双葉呼びになっている。そりゃ、こんだけ長い時間一緒に遊んでたら、杏ならそうなるよね。
むしろ一番初めに呼び捨てにしそうなのが杏だったし、もしかして色々遠慮してたのかな?双葉の部屋での発言に、ちょっと引け目感じてた……とか?
まあ、私は知る由もないし、双葉だってあの時の事は全然気にしてないだろうし。きっと、杏の中で消化出来たんだと思う。
「わたし、お母さんが死んだのは、ずっと……自分のせいだと思ってた。みんなが『わたしが殺したんだ』って言うから。みんながわたしを人殺しだと思って見てた。親戚も、周りの人間も」
「双葉……」
「この世界が嫌いになって……自分の殻に閉じこもって耳を塞いで。それで、ずっと願ってたんだ。お母さんが生き返ればいいのに……って。時々起きるたびに、全部夢だったんだって思い込んで、でも世界は何も変わってないんだ。お母さんは居なくて、わたしは人殺しのままで。だから、それを忘れたくて……目を逸らしたくて眠るんだ。その繰り返しだった……」
双葉の独白。確かに私達は双葉の心を救ったかもしれない。でも、過去に起こった出来事は無かったことには出来ない。
それでも、この子は……前を向こうとして、今私達に吐露している。自分の気持ちを。ところで……皆、気付いてるかな?……気付いてないよね?
「わたしね、お母さんが好きだった。将来はお母さんみたいになりたかった。遅くまで机に向かって研究して、朝早く起きて、毎日わたしのためにお弁当作ってくれた。ノートをこっそり見て怒られたりもしたけど」
「認知訶学……よね」
「認知する世界は欲望によって歪んでしまう。わたしの中でお母さんが歪んでしまっていたように。そうやって認知の世界が歪むと、現実で問題行動を取るようになって……認知世界の核を取り除くと、その世界は消える。そして問題行動も収まる」
「それ……まさにパレスそのものじゃん」
『異世界を……知ってたのか』
「当時は意味わかんなかった。実際自分がそうなって……足を踏み入れたことで理解できた。わたしは……お母さんのことばっかり考えて、気が付いたら認知の迷宮に囚われてたんだ。出られなくて、どうしようもなくなって」
「それで心を盗めってのは飛躍しすぎだろ……」
「心を盗む怪盗団……最初は信じてなかった。でも、偶然聞こえてきて、すぐ近くに居たんだ」
「そういえば、盗聴してたんだったな。しかし、何故盗聴を?」
「そうじろうがしっかり働いてるか、監視しないとな」
「悪趣味すぎんだろ……」
マスターの事が心配だったんだと思うけどね。双葉ちゃんを引き取ったことで、マスターにも親戚からの被害があった。そういうところを把握するために、盗聴してた部分もあるんじゃないのかな?
そして、彼らが全く気付いてないのはよく理解ったので、ちらっと志帆の方を見るとめちゃくちゃ気まずそうな感じで私を見つめている。
……うん、ごめん。気まずいよね。目の前で怪盗ってバラされてるんだもんね。すっごい言いたいけど、せめて双葉の話が終わるまでは……!
私は、口に手を当ててしーっとジェスチャーをする。志帆もひとつ頷いて黙って聞いてくれている。
「心を盗んだって話を聞いてて、飛び上がるほど嬉しかったんだ。怪盗ならわたしの心、治せるんじゃないかって」
「最初から言ってくれれば良かったのに……」
「怪しまれると思ったんだ。それに、悪い奴らかもしれないって……。でも、話を聞くたびに、改心したヤツらのニュースを見るたびに、怪盗団は悪い奴らしか狙ってないってわかった。だからとりあえず、色々と反応見て、試した」
「確かに……ずいぶん、振り回されたわね」
「理由はふたつあって、1つはメジエドの挑発に振り回される怪盗団が情けなくてムカついてた。それで解散なんかされたらわたしが困ったから……」
「確かに……な。双葉が居なかったら俺達は詰んでいたかもしれない。俺達の頼みの綱だったからな」
「もう1つは、盗聴してたら聞こえてきたこと。そうじろうが、わたしを虐待してるなんて嘘で責められてて困ってた……。お母さんの事を吐け……って脅されてて、我慢できなかった」
「ひでえよな……。捏造もいいとこだ」
「……っ」
そっか……真は知っちゃってるよね。お姉さんが、冴さんがそれを言ったんだってこと。
「だから、わたしはそうじろう助けなきゃって思った。わたしのせいでそんな事言われてるのが我慢できなかった」
「ええ……」
「そんな時、海咲から接触があって。そのおかげで怪盗団を受け入れることが出来た。でも……怪盗団、わたしのためにあんな危険を冒してくれてるとは思わなかった。何も知らなかったから。こんなに心配してくれてるって思わなかったんだ。疑うような真似してゴメン。悪かった」
「私達のこと、信用してもらえた?」
「もちろんだ。ここまでの付き合いでお前らが悪い奴じゃないってことはよく理解ってる。それに海咲の友達だ、信用してる。……だから頼みがある。わたしを怪盗団の仲間に入れてくれ」
「入れるも何も……もう仲間だろ。こっちは全然そのつもりだったんだけどな」
「正直に言うぞ。わたし、改心とか正義の味方とかそういう目的じゃなくて、お母さんのことが知りたい。お母さんが、殺された理由……それを知りたいんだ。怪盗団に入りたいのはそういう超個人的な理由だ。……ダメか?」
「ダメなわけない。双葉の力は俺達の助けになる。よろしく頼む」
「……ああ!任せとけ!」
うん……そろそろいいかな……?
「ねえ……皆。気付いてる……?」
「…………」
「「「あっ」」」
「やっぱり気付いてなかったね。……ごめんね志帆。こんなところで急なカミングアウトになっちゃって」
「ううん。私、なんとなくそうなんじゃないかって思ってた。タイミング的にも、今思えば都合よく鴨志田先生の件が起こったな……っていうのは思ってたから。海咲も怪盗団なの?」
「あー……私はちょっと違うんだけど、仲間っていう意味ではその通りだよ」
「そうなんだ?……改めて皆ありがとう、みんなのおかげで私だけじゃなくてバレー部の皆も救われたと思う。世間では怪盗団のこと悪く言う人もいるけど、私は忘れないよ。私を救い出してくれたあなた達のこと……。本当に、ありがとう」
「志帆……っ!」
杏がたまらず、志帆を抱きしめた。
皆がそれを温かい目で見守り、双葉もなんとなく察したんだろう。怪盗団に助けられた人が、自分以外にも居るんだなって実感したんだと思う。
どことなく嬉しそうな表情がそれを物語っていた。
その後は、夜になる前に帰宅して、皆でルブランで食事をして解散。
私達にとっての激動の夏はこれで終わった。
でも、怪盗団にとっても、私にとっても……本当の戦いはここから始まる。
私達は決して挫けたりしない。必ず、掴み取るんだ。本当の意味でのハッピーエンドを、この手に。
うっかり双葉の独白入れたら切りどころ見失って強制ロスカット。またストック切れて雑な感じが出てる印象。