えっちなお兄様「ねえ、イケないことしよっか♡」 作:HE至上主義者
その日もいつものように午後の授業を終え、足早に教室を出た私だったが……
「……まさか雨が降るなんて……」
校舎を出ようとした瞬間、降り出した雨に途方にくれていた。しかもこういう時に限っていつも鞄に入れている折り畳み傘を持ってきておらず、
「くっ、朝の天気予報ちゃんと見れば良かったわ……!」
昇降口の入り口で足止めを食らう私を尻目に次々と色とりどりの傘を差して下校していく生徒達の姿にそう後悔するが、後悔先に立たず。そうこうしている内に雨は止むどころかどんどん強くなり始めて、私はさらに途方に暮れた。こんな時、普通なら家族に連絡して迎えに来て貰うべきなのだろうが、再婚して以来仕事が増えたお父様は数日前に出張に行ってしまった為、迎えを頼んでも迎えに来るのは不可能だろうし、お母様はお母様で『今日は地元の友達と会う予定』があると言って家を留守にしているからお父様と同様に迎えに来ることは出来ないだろうし、それからお兄様に至っては……ここ最近私が意図的に避けているせいで今日家にいるのかどうか何をしているのかさえ分からない。
(……とは言え、このまま雨が止むまでここで待っているわけにはいかないし……はあ、しょうがない。雨に濡れるのは嫌だけど、近くのコンビニまで走って行って傘を買おう)
昇降口の屋根の下から大きな雨粒を落とす空を覗き上げ、私は渋々と覚悟を決めた。そして鞄を抱え直して、近くのコンビニまで走ろうと一歩足を踏み出した、その時。
「――ユリちゃん?」
頭上から聞き慣れた声が聞こえた。
「え?」
その声に頭上を見上げればそこには白い傘を差した、柔和な微笑みを浮かべるモデルやっていますと言われても違和感がないイケメン……否、お兄様が立っていた。
「ひゃあ!?お、お兄様!?」
「ああ、良かった。やっぱりユリちゃんだ。今、授業終わったところ?」
「え!?え?いや、授業はニ十分前に終わったところで……って、そうではなくてどうしてお兄様がここに!?」
「ん?どうしてって……だって、ユリちゃん今日夕方から雨が降るって天気予報で言っていたのに傘を持って行ってなかっただろう?だから傘がなくて帰れなくて困っているんじゃないかと思って迎えにきたんだけど……ふふ、迎えに来て正解だったね。ユリちゃん今走って帰ろうとしてたでしょ?」
「うぐっ!」
図星を突かれ、私は言葉を詰まらせる。しかもよりによってお兄様に雨の中を走って帰ろうとしたはしたない姿を見られていたなんて……!と恥ずかしさのあまり顔を伏せる私だったが、お兄様はそんな私の様子など気にすることなく、手に持っていたピンクの折りたたみ傘を私に差し出して言った。
「一緒に帰ろっか?ユリちゃん」