祓魔の徒、カードゲームで異世界を救った~銀髪美女になってるらしいが聖刻の力が使えるなら関係ありませーん、ってカードゲーム中は使えないのかよ!~   作:荒咲 木綿

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 そう……これは俺が、異世界に飛ばされて世界を救い、勇者となって帰ってくるまでの話だ――。


第1話 この世界にも魔族はいるらしいな

「テメェの手札は雑魚カードばかり! さっさと負けを認めたらどうだ!?」

 

「……それはどうかな?」

 

 

 俺の言葉はどういうワケか、自然な女性言葉になっている。

 考えることが減ってグッドだな。

 

 ……しかし、なんだって俺は異世界でカードゲームをプレイしているんだ?

 

 

   ☆

 

 

 目が覚めた時、俺は雲の中にいた。

 

 重力に引かれて落下している最中だった。

 ホワット!?

 

 

「なに!?」

 

 

 驚きの声が、俺の口から出た。

 しかしその声は、まるでレディーのような鈴の音のような高音。

 

 自由落下(フリーフォール)で空気抵抗を受ける身体は、一部分だけ大きく揺れる。

 

 胸があった。

 

 俺は焦って股間を確認する。

 ――なかった。

 

 俺は女の身体になっていた。

 

 まさか、と思って腕を見る。

 そこには男の時と変わらず、『飛翔(プレーン)』の聖刻が刻まれていた。

 

 

「ははは、これならなんとかなりそうだ」

 

 

 俺は『飛翔』のエフェクトを発動した。

 

 聖刻が輝き、身体が軽くなる。

 俺の思うままに空を飛べるようになる。

 

 まずは落下を早めて、雲を抜ける。

 

 

「はははははは!!!!!!」

 

 

 見えた。

 

 下は一面の緑。

 森だ。

 

 近場の街を探す。

 

 あまり大きすぎない街が良い。

 

 ――あった。

 

 近くに着陸に適したデカい広場のある、小さな町。

 

 俺は真っ直ぐに飛んでいく。

 

 なぜ、デカい街ではダメなのかって?

 俺は元の世界でよく言われてたのさ。

 

 

『先輩はもっとソフトに着地してください!!!』

 

 

 ってな。

 

 亜音速で風を切り、着地点を目指す。

 減速はしない。というかできない。

 なんでも器用にこなす俺でも、聖刻を使うのは至難の業だ。

 

 俺は、流星のように落ちた。

 

 

 

 案の定、俺の着地に地面が耐えられなかった。

 クレーターができ、土埃が舞う。

 

 驚いた様子で町のみなさまが飛び出してきた。

 

 ……な?

 

 大きい街じゃなくてよかっただろ?

 

 だが――俺を無視してどこかへ逃げようとする野郎が見えた。

 追いすがるのは、小さな子どもだ。

 

 そうそう、俺は高速で『飛翔』するから目と耳が良いんだ。

 

 

「お姉ちゃんを返せ!」

 

「バカが! これは契約に則った正式な処分なんだよ!」

 

 

 俺は野郎の前に『飛翔』する。

 

 またも土煙が舞ってみなさまがたが咳き込むが、許してくれ。

 子ども優先だ。

 

 摩擦の力を使って、10ヤードほど滑って俺は静止する。

 野郎と子どもの間に割って入る。

 

 

「どうした、少年」

 

 

 二人とも咳き込んでいた。

 ソーリー。

 

 俺は改めて問い直す。

 

 

「どうした、少年。何があった?」

 

「ケホッ、ケホ……。あのおじさんが、お姉ちゃんを攫ったんだ!」

 

 

 子どもは野郎を指さした。

 見れば、手に何か持っている。

 

 しかし……どう見ても“お姉ちゃん”ではない。

 サイズは縦に3.5インチ、横に2.5インチほどの、薄っぺらいカードだ。

 

 

「お姉ちゃんを返せ!」

 

「どういうことだ?」

 

 

 俺は野郎の方にも事情を聞いてやる。

 問答無用でブン殴ると、後で面倒だからだ。

 

 

「俺様ァ契約魔術に従って、カードを獲得しただけだぜェ?」

 

 

 薄汚い笑いだった。

 

 

「あんたもえらい別嬪じゃねェか。俺様とカードを賭けて契約戦……するかい?」

 

 

 どうやら俺は美女になっていたらしい。

 当然だな。

 

 しかしカードを賭けた契約戦……?

 一体何を言っているんだ?

 まるで意味がわからない。

 

 

「お願い、お姉ちゃんを助けて!」

 

 

 だけど、子どもに泣きつかれちゃ断れねえ。

 オーケー、任せな。

 

 

「いいだろう。ルールは?」

 

「もちろんコイツさァ! 契約魔術回路(コントラクト・ブリッジ)――架橋(オープン)!」

 

 

 次の瞬間、俺の魂が野郎と繋がれた気がした。

 

 周囲に光が溢れ、儀式的な場が構築される。

 この感覚には、覚えがあった。

 

 世界の書き換え。

 

 俺たち聖刻教会の使い手とは異なる力――魔族のやり口だ。

 

 

「気をつけて! アイツは魔族なんだ!」

 

「ほう……どうやらこの世界にも魔族はいるらしいな」

 

 

 安心しな。

 そういう魔族を懲らしめるのが、俺たち聖刻使いなのさ。

 

 

「ゲーム開始の合図はコレだァ! レッツ・インプレッション!」

「レッツ・インプレッション――待て、ゲームだと!?」

 

 

 俺の目の前には、三枚のカードが表示された。

 

 

「なんだこれは!?」

 

 

 違和感があった。

 俺の聖刻が起動しない。

 

 

「お姉さん、イノセントピースを知らないの?」

 

「何だ、それは!?」

 

「これはカードゲームだよ! 魔術によって作られた、イカサマ・暴力絶対禁止のカードゲームなんだ!」

 

 

 対面の野郎は、さっきまで殴れる距離にいたハズなのに、いつの間にか遠くに立っている。

 俺たちの彼我の距離が開いた――これも魔術ってヤツの力か。

 

 野郎が愉快そうに笑う。

 

 

「ヒャハハハ! アンタ処女かよ! 最高の拾い物だぜ!」

 

「死ね。下衆が」

 

 

 ――もっとひどいコトを言ったつもりだったが。まあいい。

 

 少年は近くにいる。

 頭を撫で、できるだけ不安がらせないよう訊く。

 

 

「カードゲーム――マジックならやったことがある。少年、私にルールを教えてほしい」

 

「うっ、うん! まずは、今引いたカードはコストが高くて使えないから三枚とも選択して」

 

 

 俺は魔術によって作られたウインドウ上のカードを三枚ともタップする。

 このタップは、横向きにするって意味じゃないぜ?

 

 そして、決定。

 自動的に三枚が引き直された。

 

 

「あっ……」

 

 

 少年が残念そうな顔をする。

 

 

「なるほど。初手三枚のマリガンか。しかし少年、ポーカーフェイスだ」

 

「ポーカー、フェイス……?」

 

「表情を隠すのはカードゲームの基本さ」

 

「あっ、ご、ごめんなさい!」

 

 

 俺はもう一度、優しく撫でた。

 

 

「気にするな。それから?」

 

 

 俺の前に、一つの光が灯る。

 ウインドウ上にもアイコンが出て、「1/1」と表示される。

 さらに、一枚のカードが追加された。ドロー処理だ。

 

 

「今回は僕たちの先攻だけど、できることはないから――」

 

 

 このカードゲーム、魔術によって半自動化されている。

 俺はカードや選択肢を触るだけで、後の処理はすべて勝手にやってくれる。

 

 だから、わかる。

 

 

「いや? 私たちには、まだできることがあるようだぞ?」

 

 

 俺の顔が表示されたウインドウが、黄色く縁どられて光っている。

 試しに触ると、「生成/キャンセル」の選択肢が出た。

 

 

「どうせ他にできることもないんだ。『生成』!」

 

 

 その瞬間、俺の前に灯っていた光が消える。

 表示は「 /1」に。

 

 そして俺の胸の中心から――黄色い光が溢れ出した。

 

 

「何だ!?」

 

「これは……まさか!」

 

 

 少年が驚く。

 対面の野郎も驚愕の表情だ。顎を外している。

 

 

「バカな……純なる心を持つ者しか行使できない『生成』だとォ!?」

 

 

 どうやら、誰でもできることではないらしい。

 毎日教会で祈っていたのが功を奏したか?

 

 現れたカードは――。

 

 

「なんだ、これは?」

 

 

 効果を持たない、コスト1のカードだった。

 

 

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『無垢なる双翼 テンピレオ』

コスト:1  色:黄

種別:ピース(イノセント)

パワー/ライフ:8/1

~~~~~~~~~~~~




答え合わせの場が必要だと思って……。
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