祓魔の徒、カードゲームで異世界を救った~銀髪美女になってるらしいが聖刻の力が使えるなら関係ありませーん、ってカードゲーム中は使えないのかよ!~ 作:荒咲 木綿
~~~~~~状況~~~~~~
・フロース
コスト上限:5
ライフ:2 手札:4(うち3枚は『テンピレオ』)
場:なし
―――――――――――――
場:『ダイレーク』10/1
『マーブレーク』7/1
『アルマース』6/1 ×2
ライフ:6 手札:3
コスト上限:5
・野郎
~~~~~~状況~~~~~~
■第11ターン(フロース)
今の手札は弱い。
コスト上限が6に上がったところで、使えるのは3枚の『テンピレオ』だけ。
相手のピースは4体。俺のライフは2点。
ピースを2体残したら、そいつらのアタックで俺は負ける。
だけど、『テンピレオ』3体で3体倒そうとすると、『ダイレーク』が残る。
そして『ダイレーク』には恐ろしいコスト軽減効果があって、「生成」した『アルマース』のコストを0にできちまう。次の相手ターンには最大6枚生成できる。6体の攻撃は防ぎきれない。
オーノー!
絶望的状況だぜ。
だけど……俺には唯一、打開の可能性が残されている。
さっき使ったあのカード。
アレをもう一枚引けさえすれば、活路はある。
デッキ枚数を確認する。残り28枚。
オーケー。
何枚入っているか知らないが、俺はあと2枚はあると信じるね!
そうすりゃ確率は2/28≒7%だ。
じゅうぶんあり得る数字だ。
引ける。
自分を信じろ。
デッキを信じろ。
俺は教会の人間だ。信じる力は奇跡を起こすって知ってるだろう?
ほら、掌に力が集まってきた感じがする。
「私のターン、ドローッッッ!!!!!!」
俺には、カードが光って見えたね。
だって――。
まさに望んでいたカードだったんだから。
フロース:手札 4 → 5
コスト上限 5 → 6
「私は『生まれし双翼』を発動!!!」
俺の場に、2体の『テンピレオ』が行動済み状態で生成される。
「そんなんじゃ壁にもなんねェよ!」
「続けて3体の『テンピレオ』を召喚! バトルして、『マーブレーク』と『アルマース』2体を撃破!『テンピレオ』は全員生き残る!」
「ハッ! けどアンタの手札はもう残り一枚。俺様にはまだ『ダイレーク』が残ってるぜ!」
残念だが、これで終わりだ。
俺はきっと、笑っていただろう。
それも、見る者すべてを魅了するようなとびっきりの笑顔でな。
「残りのコスト2点で『テンピレオ』を2枚生成し――私はこのカードを召喚する」
俺は最後の手札をタップする。
「バカな! コストは残ってねェ! 召喚なんてできるハズが――ハッ!?」
「あるのだよ。私の黄色デッキには。特殊なスティグマ効果を持つピースたちが!」
もう、何度も見せている。
手札に戻すカードを選択。「 /5」
俺は『テンピレオ』を1体ずつ選択していく。
「1/5」
「2/5」
「3/5」
「4/5」
「5/5」
選択終了。
「――《転生召喚》!!! 現れよ、『貴き光翼 エンルピイス』ッ!!!!!!」
魔術で形作られたバトルフィールドに、無数の羽根が舞い散った。
『テンピレオ』たちが一斉に手札に戻ったからか?
わからない。
しかし、光の
~~~~~~~~~~~~
『貴き光翼 エンルピイス』
コスト:7 色:黄
種別:ピース(アルター)
パワー/ライフ:24/1
効果:
《転生召喚:5》
【召喚時】手札の『無垢なる双翼 テンピレオ』を任意の枚数召喚する。
~~~~~~~~~~~~
「召喚時効果! 手札に戻した5枚+生成した2枚の計7枚――『テンピレオ』を召喚だ!」
俺の場に、手札上限8枚まで蓄えられたピースたちが勢揃いする。
「さあ、『エンルピイス』で『ダイレーク』を倒し、残りの全員で総攻撃だ!」
6点あった野郎のライフが、みるみるうちに削られていく。
野郎:ライフ 6 → 5
ライフ 5 → 4
ライフ 4 → 3
ライフ 3 → 2
ライフ 2 → 1
「これでとどめだッ!」
野郎:ライフ 1 →
ライフのカウントが消える。
瞬間、魔術的な繋がりが断たれ、バトルフィールドが崩壊する。
まるでビッグ・クランチのように世界が一点に収束して――俺たちはもとの場所に戻った。
「終わった……のか?」
契約魔術の力なのか、野郎の手からカードが浮かび上がり、俺のもとへ来た。
俺が触れようとした瞬間、少女が飛び出してくる。
アメイジング!
「お姉ちゃん!」
少年が、飛び出した少女に抱き着いた。
「ちょっと、恥ずかしいって……」
少女が俺の方に向き直り、頭を下げた。
「助けていただき、ありがとうございます!」
「気にするな。魔族を倒すのが、私の使命だ」
「では、あなたは勇者様……?」
どう答えるか迷った。
俺が勇者だって? 確かにティーンの頃に憧れてたが。
どうやら契約魔術によると俺の名前はフロースらしいし、俺の身体は銀髪美女になっているらしいし。俺は何者なんだ?
だから、こう答えた。
「実は……記憶喪失なんだ」
言った瞬間、何かが引っ掛かった。
何かを思い出しそうになったんだ。
だけど、それが何かまでは思い出せない。
「勇者様が嫌なら……聖女様?」
少年が口にする。
……聖女?
「そうだ、まだ名乗ってませんでしたね。私はエム。こっちは弟の――」
「エルだよ!」
少年――エル。
記憶喪失の聖女。
思い――出した。
「『――聖女は少年の導きで勇気を知る』」
「どうしたの?」
教会の禁書庫で読んだことがある。
異典と呼ばれた聖女の冒険譚。
だとしたら……。
オーマイガー。
「なんということだ……」
俺が、あの聖女になっちまったってのか!?
☆
もしも俺の推測が正しければ、この世界は魔王の脅威に晒されている。
そして――聖女がすべてを犠牲にして封印して物語は終わる。
ホワット!?
俺は帰れないのか!?
そいつは困る。
そう思った俺は、必死に思い出した。
なぜ、聖女がすべてを犠牲にしなければならなかったのか。
この先、この世界に何が起きるのか。
俺は聖女になったが――あの物語の聖女は『飛翔』の聖刻なんて持っていなかった。
だからきっと――メイビー、いや必ず。
結末は書き換えられるハズだ。
俺は最速最短で魔王を倒し、元の世界へ帰ってやる!!!
☆
俺が知っている聖女の物語を整理しよう。
魔王――魔術を司る暴君は、悪魔と契約した。
侵略戦争が始まり、隣国の兵器と悪魔が争い、市民が犠牲になる。
心を痛めた聖女が戦争を止めるため、隣国の王へ謁見する。
しかし、間に合わなかった。
悪魔が王を取り込んでしまった。戦争はただの囮だったのだ。
魔王は、悪魔を使ってすべての国を支配してしまった。
なぜ間に合わなかったのか。
それは、道中で人間と精霊たちの争いを止めるのに時間を使ったからだ。
結果、精霊たちは味方にできたが魔王が兵器を手に入れる。
オーケー。
思い出してきた。
巨大な戦争を終わらせるのに、聖女のすべてを犠牲にした魔術が必要だったんだ。
なら、戦争が起きる前に魔王を倒せばいい。
決まりだ。
一つ、気になるのは……契約魔術とやらがカードゲームになっていることだが……。
ま、そもそも本に魔術の内容は書いてなかったから関係ないだろ。
☆
俺は『飛翔』の力で隣国へ飛んだ。
王様を悪魔の支配から守るためだ。
風を切る。
視界には二つの巨大な城。
片方は魔王城、魔術の気配がプンプンする。
俺は残りの一つへ狙いを定めて、流星のように飛んでいった。
――だが。
空で、俺は奇襲を受ける。
俺とほぼ同じ速度で、悪魔が飛来した。
前ばかり見ていて気づかなかった。俺は交錯の瞬間に、叩き落とされる。
俺は聖印付きの武器を持っていなかった。
そうだ――鍛え上げた肉体はプロポーション抜群の美女の身体になって失われ、魔族に対抗するための武器もない。
もしかして、俺は魔王ともカードゲームをするしかないのか?
今、魔王と戦って勝てると思うか?
落下しながら、俺は考える。
――勇気が、赤のカードだった。
精霊もカードになるんじゃないか?
そして隣国の王――いや兵器もか?
魔王はカードを集めるために、悪魔を城に向かわせている?
――なら。
「そこの悪魔! カードを賭けて、私と勝負だ!」
メモ:デッキは44枚
理由:ゾロ目は美しいから