旅の始まり
「つまり…おまえたちは世界の外から漂流してきたのか?」
「おまえたちがそこから離れて次の世界へ行こうとした時、見たこともない神がおまえたちの前に現れたと?」
そう言うのはパイモン。白い髪に白い衣服を身に纏い、宇宙を彷彿とさせる羽で空を飛んでいるだけの、どこにでも居そうな妖精。
そんなパイモンは不思議そうな顔で、貴女の話に耳を傾けている。
貴女は、貴女の身に起こったことを、もう一度話すことにした。
パイモンにも分かりやすいように砂浜に絵を書きながら。あの神はどんな姿をしていたかな……
「「余所者、お前たちの旅はここまでだ」
私達がテイワットを離れようとしていた時、突如、正体不明の神がやってきてそう言った。
「この天理の調停者が、ここで人の子の驕りに終焉を」
彼女がそう言ってすぐ、私達は戦った。しかし、私達は負けてしまって──お兄ちゃんは、私の兄は赤黒のキューブに飲み込まれた。
私は必死にお兄ちゃんを取り戻そうとした……結局、私自身も飲み込まれてしまったけど。
こうして、私達は見知らぬ神の手で、離れ離れになった。」
「一年か、十年か。それから何年経ったのか、私にはもう、分からない」
「でも、いずれ必ず、突き止めて見せる」
決意を胸に、砂浜に描いた絵を手で払い、消した。
貴女と貴女の兄のみを残して。
「目覚めてからずっと一人で彷徨ってた。2ヶ月前、あなたと出会うまで」
貴女はそう言い、先程の絵に新たにパイモンの姿を描き添える。
「おう!あの時おまえがいなかったら、オイラはもう、とっくに溺れ死んでたからな……」
「だから、オイラも案内役頑張るぜっ!」
パイモンはその小さな体で、小さいなりに胸を張った。貴女は、その様子に思わず、クスッと笑ってしまった。
「うぅ……そろそろ出発の時間だ、行こう!」
笑われたことが恥ずかしかったのか、パイモンは宙返りをして駆け足程の速さで飛んで行った。貴女はその仕草に微笑み、急いでパイモンの後を追う。
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「うわ!?水スライムだ!」
貴女がパイモンに追いつくと、パイモンは怯えるような声を上げた。
「うぅ、水スライムのやつめ!」
「毎回毎回、オイラを驚かせようたってそうはいかないぞ!」
パイモンの視線を辿ると、水色の丸い謎生物──水スライムがいた。
貴女はそれを視認すると同時に、剣を抜く。
瞬間、貴女は水スライムに接近し、そのまま軽く横に剣を振った。
水スライムはその一振りにより楕円体を維持できなくなったのか、パンッという音を立てて弾けた。
「来るなら来い!今日という今日はけちょんけちょんのギッタンギッタンにしてやるぅ!」
パイモンは、どうやら貴女が水スライムをすでに倒していることに気づいていないらしい。現にパイモンは、目を閉じて空を殴るような動きをしている。貴女はパイモン、パイモン、と呼びかけた。
「……うん?あれ、水スライムはどこに行ったんだ!?」
「パイモン、水スライムならもういないよ。ほら」
貴女はそう言って、握っていた剣をゆっくり仕舞う。
「ふぅ、それなら良かった。オイラ、てっきりまた水をかけられるかと思ったぞ」
こうなってしまったのは五日前のことが原因だろう。
五日前、大きな水スライムと出くわしたときに水をかけられたからか、パイモンは水スライムを見ると、その場で固まり、じたばたするようになってしまった。
この辺りが海辺ということもあり、その時かけられた水が海水だったことも、パイモンが水スライムを怖がる理由の一つだろう。別にパイモンは宙に浮いているから普通の水スライムの攻撃は当たらない。そこまで怯える必要はないと貴女は再三伝えてきたはずだが……
「怖いものは怖いんだよ!しょうがないだろ……」
「高所恐怖症とか閉所恐怖症みたいなものだぞ……おまえも、そういう経験あったりしないのか?」
貴女はない、と答えた。即答だった。
「うぅ……こんなことしてないで、さっさと行くぞ!」
「おまえの兄妹を探すんだろ?こんな所でのんびりしてたら、見つかるものも見つからなくなっちゃうぞ」
「ちょっとパイモン、そんなに急がなくても。一人で行って、また水スライムに襲われたらどうす「うわぁ!?水スライムだ!」る、の……はぁ」
これまでに水スライムに襲われたのは今回を含めて七回。どうやら、パイモンは学習という言葉を知らないらしい。
貴女はため息をつきながらパイモンの元へ向かう。
……のんびりしてたら見つかるものものも、見つからなくなっちゃう、か。こればかりは、パイモンの言う通りかもしれない。貴女は、パイモンのことをほんの少しだけ尊敬し「うぉい!早く助けてくれ!」……
訂正、やっぱりパイモンはパイモンだった。
更新速度が遅い&遅いくせに質も悪いランキングがあれば上位に君臨するであろう人間。後野茉莉です。1話と2話を見てしまった方はもう手遅れですが、この話だけ見たあなたは幸運です。1話と2話は見ないでください(懇願)。一応、あとあと出てきたりもするかもしれませんが見ないでください。恥ずか死ぬので。