たとえ、現在のテイワットがどんなにひどくとも、この世界は貴女のためにある。
取り戻せ──血縁者を
誰かが言った。人生は長い道のりであると。今もなお生きる私達は、その長い道のりの途中にいるに過ぎないのだと。長い道のりには、当然、山もあれば谷もある。飄々とした風に吹かれ、盤石な岩の如き壁を乗り越え、雷に撃たれるような恋をし、自然豊かな草木に囲まれ、水のせせらぎに心を奪われ、真夏の太陽に照らされ、月の満ち欠けに風情を感じ、極寒の吹雪を一身に受けもする。それら全てが良いことであるとは限らない。でも、その道のりを歩むのが一人であるとも限らない。むしろ、一人であることの方が珍しい。そんなことをこの上り坂は教えてくれているんだよ──分かった?パイモン。
跳ね除けてみせる──どうしようもない運命を
貴女は長々と喋り終えた後、そう締めくくった。
誓おう──全ての人々を救うと
「うぅーー!!長い、長すぎるぞ!」
「そうかな?私はそれほど長いとは思わなかったんだけど」
「それはおまえの感想だろ!?オイラは長いって感じたんだぞ!」
たとえ、全てを忘れようとも
貴女はパイモンの言い分を不満げな顔で聞きながら歩を進める。あ、崖だ。この上り坂とももうお別れということらしい。
たとえ、世界に忘れられようとも
「なんでオイラが「暇だからなんか話をしてほしいぞ」て言ったらそんな長文が出てくるんだよ」
「こういうのは、もっと簡潔で分かりやすい、面白い話とかをするものだろ?まったく」
「おい、やれやれみたいな顔をするな!何ぃ!?オイラは人生というものをまるで理解できていないだと!?じゃあ、おまえは理解してるのかよ?」
「人生は苦難の連続?おまえあれだけ話して結論がそれかよ!?せめてもっと前向きなものにしろよな。だからその顔をやめろ!うぅ〜……」
俺は同じ選択を繰り返す
このままでは埒が明かない。貴女は仕方なく、午後のために取っておいた、スライムの液体とスイートフラワーで作ったアイスを取り出した。
きっと私は憶えている
「ん?なんだそれ。まさかそれでオイラを釣ろうたって……」
「おいしーぞ!甘くて、冷たくって。これ、なんていう料理なんだ?」
「へー、アイスライムっていうのか。モグモグ……」
心で、あるいは魂で
パイモンをスライムで釣る作戦が成功した貴女は、すかさず次の作戦に移る。
全てを救おう──
「モグモグ……?なんだ、そっちに何かあるのか?」
「なんか遠くに人の形を模したような像が見える……?あっ!」
「ふっふーん。あれはだな、七天神像って言うんだぞ」
希望を胸に
名付けるなら、パイモンに旅の案内人としての本分を思い出させよう作戦。パイモンはそうとも知らずに、自慢げに話している。実際、あのよく分からない像は私の知らないものだから、それを教えてくれるのは非常にありがたい。一石二鳥というやつだ。
絶望を胸に
「神を象った像は七神の象徴として、あんな感じで大陸に点在してるんだ。で、あれは七つの元素のうち風を司る神の像だな。とりあえず、近くに行って見てみようぜ!」
紡ごう──私達の後悔の未来を
パイモンはそう言い、アイスライムを咥えたまま一目散に飛んで行った。
……なんというか。ここまで単純だと、将来、騙されてとんでもない所に流されていきそうに見えてしまう。当分、パイモンは私の案内役をさせよう。貴女はそう決心した。
繋げよう──後悔のない過去の為に
私達が会ったことも、彼女が世界を救ったことも、全部なかったことになってしまうのだとしても。
パ イ モ ン は ち ょ ろ い
それでもいい。それでいい。それがいい。
少なくともこの瞬間は、私達だけのものだから。