第六形態カンスト一般モブ<マスター>はありし日の夢を見るか 作:【風車之愚者】
□■【獣戦鬼】ノーム・アル
マニゴルドの紹介でクエストを受けた。
オークションの警備だ。腕利きの<マスター>が集まったから、俺は数合わせだろう。
何事も起きなければ楽な仕事だ。
そう、たかを括っていたのだが。
「モンスターが逃げた! そっち行ったぞ!」
テイム前のモンスターが檻を破壊して逃亡。
会場に乗り込んで大暴れだ。
よりによって俺の持ち場に来やがった。
「クソ。貧乏くじ引いたか……?」
メイスと盾を構えて迎え撃つ。
敵は【ヘビィ・ナックル・ドラゴン】一匹。
拳を使った近接格闘戦が得意な、純竜級の地竜種……だったはずだ。ボスじゃんかよ。
盾を前方に掲げて迎え撃つ。
亜音速の敵に魔法を当てる技量はない。
接近される事を前提に戦闘を組み立てる。
オークション会場は屋内で、コンサートホールに近い内装だ。座席や階段など障害物が多い。
つまり最も有効な戦法であるスヴァジルファリに騎乗しての引き撃ちができない。
相棒に下級魔法の使用を指示した。
牽制の《ストーン・バレット》は空振り。
石弾で足止めできるとも思えないが、【拳竜】の上位種は巧みなステップで距離を詰める。
『Dora!』
足元の《マッドクラップ》を飛び越えた【ヘビィ・ナックル・ドラゴン】が拳を振り下ろした。
俺は構えた盾で攻撃を受け止める。
均衡は一瞬だった。上級職に毛が生えた程度のステータスで踏ん張る事はできず、吹き飛ばされた。
壁に叩きつけられる前、スヴァジルファリに背中からぶつかる。庇って間に入ってくれたらしい。
おかげで全身打撲は免れたが、重症だ。
視界端のHPバーは六割を下回っている。
その下で状態異常の表示が点滅していた。
盾ごと粉々に砕かれた【右腕骨折】に【肋骨骨折】で動作不全を起こしている。【出血】で体力は徐々に減少するし、【眩暈】で視界が定まらん。
「あと二回くらう前に死ねるな」
前に出たスヴァジルファリが
即座に定量を回復するのではなく、一定時間の継続回復……緩やかに増えるHPを見守り、薬効包帯で傷口を応急処置した。状態異常はこれでごまかす。
動けるまで回復を待って戦闘に復帰する。
敵の背後を取り、不意打ちを仕掛けた。
フレイルから伸びた鎖の先、棘付きの錘が竜鱗に命中して僅かにダメージを与える。
「増援が来るまで時間稼ぎを……?」
手持ちの【ジェム】を数えていると、【ヘビィ・ナックル・ドラゴン】が体の向きを変える。
おい待て。ティアンの方に行くな。
怪我人出したら報酬が減るだろうが。
「こっちだ脳筋!」
仕方なく大声で注意を引いた。
踏み込む。しなる尻尾を掻い潜る。
「……はっ」
回避した先に竜の拳が置かれていた。
誘導、先読みされてたってわけかよ。
まあいいや。味方の警備が駆けつけた。
参加者は無事に逃げられるだろう。
鳩尾にクリーンヒットを受けて視界が暗転する。
その後の記憶はない。
◇◆
嘘だ。格好つけたが、単なる気絶なので<マスター>の意識は何もない待機エリアに送られる。
で、目が覚めた後は色々とあって。
「随分と揺れるのね」
「安物の馬車だからな。嫌なら歩け」
「砂漠で徒歩とかムリ」
俺は子供のお守りをしている。
我が愛馬スヴァジルファリに牽かせた馬車の中、俺は少女と対面の座席に腰掛けた。
膝を揃えて姿勢良く座る行儀の良さに、明らかにオーダーメイドの高級服と、旅慣れていないのか落ち着かない様子、最後にティアン特有の整った顔立ち。
この護衛対象アレナを観察して分かる情報だ。
「マニゴルドの紹介とはいえ、一人で砂漠越えとか訳アリじゃないだろうな。面倒はごめんだぞ」
「私はただの議員の一人娘よ。それに一人じゃないわ。あなたが護衛についているから」
「金持ちのお嬢さんが、なんで何もない砂漠のど真ん中に足を運んで、しかもその護衛を俺ひとりに頼むのかって話だよ。どう考えても不自然だ」
「それは内緒って言ったでしょう? 報酬と別に前金しっかり払ったんだから、文句言わないの」
「そりゃ、ありがたいっちゃありがたいが」
気絶から目覚めた俺はマニゴルドに呼ばれ、アレナと彼女の護衛クエストを紹介された。
前金で装備を買い揃えていいと言われたので、つい引き受けてしまったが。どうもきな臭い。
何が起きてもいいよう、壊れた盾を新調して、レア武器の【
新品の
まあモンスターが出るまで護衛は暇だ。
内職させてもらうとしよう。
「何してるの?」
近寄るな。隣に座るな。手元を覗き込むな。
俺じゃなかったら勘違いするだろ。
「……【ジェム】を作ってる」
「見てていい?」
「面白いものでもないぞ」
メインジョブを【魔石職人】にして、習得している魔法を魔石に封入するだけの単純作業だ。
俺の場合は【灰石術師】の魔法がメインとなる。
【魔術師】の下級魔法も作るが、コスパがあまりよくない。素材は有料なのに性能が低いから。
魔法習得にもクエストやらスクロールやらが必要で手間なんだよな……そういうのって基本は魔術師ギルドのジョブクエスト報酬だし。
それでは、まず魔石を選びます。
魔法の属性と親和性の高い素材を用いると成功率が上昇します。今回は赤みがかった石を使う。
ジョブスキルを使用します。
彫刻刀のような道具で魔石を加工して、魔法を込める下準備を整えます。なおDEX依存で稀に失敗する。
……無事、魔石が割れて壊れる事はなかった。
サブジョブの魔法を選択します。
魔法の効果・威力は最大MPを参照する。
プラス、この時に込めるMP量で増減する。
計算式は普通に魔法を唱える時と変わらない。魔法拡張スキルは適用外だが、代わりに魔石職人系統のスキルでいくらか倍率補正をかけられる。
はい完成。
「まずまずだな」
「何の魔法? 《クリムゾン・スフィア》?」
「できるわけねえだろ【灰石術師】だっつーの」
「知ってる。火属性は合ってるでしょ」
「火種を起こす魔法だよ。お前《鑑定眼》持ちか?」
やけに自信満々なので聞いてみる。
名前のない下級魔法だから、完成品の【ジェム】にも魔法の名前は付いてこない。
それなのに属性の判別ができるのは、魔石の段階で性質を読み取ったからだろう。
「まあね。アイアム【大商人】あーんど【豪商】」
「エセ英語?」
「<マスター>はこういう言葉を使うんでしょ」
たぶん勉強材料に偏りがあるだろ。
「まだ若いのにジョブに就いてるんだな」
「変かしら。この国は子供が働くのだって普通のことよ。私の父だってそれで財を成したんだもの」
「へえ、さぞ金持ちなんだろうな」
「つい最近お家がなくなったけどね」
「……」
これはどう返すのが正解だ。
「あ、気を遣わないでね。今は私が稼いでいるから問題ないの。議長様が配慮してくださるし……議員に推薦してくださるってお話もいただいているの」
「…………」
……複雑な家系なのか?
「父はもう歳だから引退の頃合いなのよ」
「なるほど」
「だから、私は商人で次期議員でもあるの。顔を繋いでおくと良い事があるかもしれないわよ?」
「そりゃいい。全財産を貸してくれ。返済は俺の気が向いた時、精神的に」
「金の無心だって限度があるわよ!?」
「チッ」
「いま舌打ちした! 舌打ちしたわね!」
アレナは立ち上がるが怖くない。
残念だが暴力的な女には慣れているんだ。
ついでに巨乳ロングヘアと、際どいホットパンツにも慣れている。俺が気押されると思うなよ。
『Brrrr』
会話の最中に馬車は止まり、相棒が嘶いた。
「目的地に着いたみたいだな」
「そう。案内は任せるわ」
アレナに続いて外に降りる。
見渡す限りの砂漠で何を案内しろと、そう思わなくもないが、今回のクエスト内容だから仕方ない。
奇遇にも俺はこの土地を
かつて、ここにはひとつの都市があった。
今は廃墟すら残っていない。
俺の元ホームタウンにして、<UBM>に襲われて【地神】が潰した、地図から消えた街。
■■■■跡地。そう呼ばれるエリアだった。
(U・ω・U)<■■■■には街の名前が入りますが
(U・ω・U)<短編なので、あえて固有名詞を設定しません
暴力的な女
(U・ω・U)<火
際どいホットパンツ
(U・ω・U)<風
巨乳ロングヘア
(U・ω・U)<水