第六形態カンスト一般モブ<マスター>はありし日の夢を見るか 作:【風車之愚者】
□■カルディナ砂漠・■■■■跡地
<遺跡>に眠っていたソレは、王国のカルチェラタンと同様、先々期文明末期に生産された煌玉兵だ。
しかし、そのコンセプトは少々異なる。
カルチェラタンの【
こちらの【
いわば後ろ向きで悲観的な最終手段であり、あってはならない予備プランである。
基本的な仕組みは変わらず。
一団を統率する【黄銅之建国】は、時代を経て目覚めた後、周囲の環境を測定して結論を出した。
“この土地の文明は崩壊した”
“ならば、新たに築かねばならぬ”
“人類の生存圏を。比類無き安全圏を”
偽りの黄金を冠する煌玉兵は、もはや存在しない人類のため、虚栄の都市を建築する。彼らにとっての『非人間範疇生物』を排除しながら。
“――――?”
先遣隊の信号が途絶したタイミングで【黄銅之建国】の思考回路に
一定範囲に侵入した配下の全滅。集団で純竜級モンスターを狩猟できる【黄銅】が、だ。想定される敵性対象の脅威度を一段階引き上げる。
追加の部隊を送るが、またも信号途絶。
“何が起きている”
やむなく【黄銅之建国】は都市建築作業の優先順位を下げ、配下の反応が消えた地点を目指す。
そこには壁があった。
建築家によるものではない、城壁とは呼べない、石垣未満の単なる壁だ。
センサーの計測結果は、壁が円周上に形成されていること、一地点のみ穴が開いている事を伝える。
“障害物は排除する”
奇しくも【黄銅】は土木作業が得手である。
石の壁ごとき、【掘削】で十分と演算した。
スコップを壁に突き立てた【掘削】は、飛来した石弾と爆発の連鎖でまとめて炎上する。
“――――”
なるほど、と人間なら感じただろうか。
再演算した【黄銅之建国】は石壁の瑕疵、唯一の出入り口に配下を進めさせる。
道幅が狭いため一機ずつになるが、敵性対象のいる内側に進む事ができるだろうと。
魔法の集中砲火と【ジェム】の地雷原で阻まれる。
“――――”
配下に指示して坑道を掘り進める。
地下は迎撃魔法と【ジェム】の罠。
ゆえに煌玉兵は足踏みを余儀なくされていた。
たった一人の<マスター>によって。
◇◆◇
□■【獣戦鬼】ノーム・アル
防御陣地の構築に成功した。
石壁と周囲の地面は【ジェム】と自動迎撃魔法を仕込み、突破しようとした敵を攻撃する。
わざと開けた通路に群がる相手を地雷原で減らし、それでも抜けてきたやつは、直接トドメを刺す。
「右、左、前、止まって防御、硬直三秒、攻撃、また右、右、左……」
煌玉兵の種類と行動パターンは覚えた。
後は詰まないように、位置取りを考える。
この数相手に、考えずに勝てるほど俺は強くない。思考を止めるな、戦いながら頭を回し続けろ。
「もう【ジェム】最後よ!」
「話しかけんな気が散る!」
アレナが上級魔法の【ジェム】を大量に持っていて助かった。おかげで俺のところまで抜ける煌玉兵がほぼゼロに近い。で、何が最後だって?
適宜【ジェム】は地属性魔法を使って壁と地雷原に補充していたが。いよいよ在庫切れか。
「だが、これで、ラストぉ!」
煌玉兵に【紅蓮鎖獄の審問官】をぶち込む。
汚ねえスクラップにしてやったぜ。
後は外のデカブツだけ……!
壁が崩れる。
瓦礫を乗り越えて【黄銅之建国】が現れた。
【ジェム】無しで迎撃するのは無理だ。それはいい。力不足は納得している。問題は、
「デカ過ぎんだろ……!?」
遠くから見るのとはわけが違う。
他の煌玉兵はあくまで人間大だった。
しかし【黄銅之建国】は十メートル超、【マーシャルⅡ】 と比べて倍以上のサイズだ。
こちらの攻撃は足までしか届かないし、そもそも雑魚にあった弱点のコアが見当たらない。
どうやって倒す? 考えろ俺。
攻撃パターンは初見。【ジェム】なし。
必殺スキルだって既に使用済みだ。
大軍を足止めするため、防壁が必要だった。
だから使わざるを得なかった。
「殴り合うしかないってのか……」
即死はしない、と思う。
必殺スキルの《
俺のステータスを加算する効果もあるから【黄銅之建国】とだって戦えるはずだ。
……最低、死ぬ気で相打ちに持っていく。
「アレナ。シェルター作るから、終わるまで隠れとけ。出てくるなよ」
「ちょっと!」
騒ぐ前に彼女を押し込む。
お前が死んだら街を復興できないだろ。
「やるぞ相棒」
『Brrrr』
頭上の巨大な手に対抗して武器を振る。
大きな、積み重なる石が、巨腕を止める。
「砂を石に変える魔法」
必殺スキルの効果中に限り、スヴァジルファリの魔法は性能が上昇する。
狭い範囲だが強固な石壁を生み出したり。
あるいは素人が考えた、名前もついていないような魔法を実用レベルまで引き上げたり。
そしてスヴァジルファリは石を纏う事で、その質量に比例して全ステータスを加算する。
通常は限度がある。その辺の石ころでは足りず、必要な分は魔法で創り出す事になるから。
だが、こと砂漠においては。
「――
――俺は通常の何倍も強化できる。
加算したMPを糧に追加強化を図る。
あの時に使えていれば、少しは違う結果になっていただろうか。いや無理だな。【地神】相手だと。
石の鎧を重ねてデカブツに並ぶ。
サブジョブに置いた【彫刻家】の汎用スキル《造形》で石材の加工速度と精度は増している。
さらに【鎧職人】のスキル《鎧品質向上》は文字通り、製作する鎧の性能を高める効果がある。
肝心の前提スキル《鎧製作》は生産系ジョブをメインにしないと使えないので、本来ならサブジョブで《鎧品質向上》を使用しても意味がない。
こんな使い方をするのは俺ぐらいだろう。
「重ねた分コストが嵩むんでな。さっさと倒れろ」
目線が並んだ【黄銅之建国】と組み合う。
関節部分を狙って、やつの片腕を強引に捻る。
そのまま千切り捨てたら大ダメージだ。
膂力は互角。片手なら押し勝てる。
そんな淡い期待は、【黄銅之建国】が指先から放った光でかき消される。
光線を浴びた箇所の鎧が溶け落ちる。
石鎧を溶かしたやつは、粘土状になった石を塗り重ね、失った腕を再構築してみせた。
「考える事は同じかよクソ」
素材を加工・建造するスキルだろう。
機体の再生とか聞いてねえぞ。
それなら、こっちは逆にこうしてやる。
「石を砂に変える魔法!」
追加パーツを砂に変えてやる。素材は砂を元にした石なんだ、ややこしいが、また砂にできる。
……ただ。
魔力消費が二倍になり、形勢が逆転した。
こちらはコストが尽きるまでの時間制限があり、対して【黄銅之建国】はガス欠の様子がない。
モンスターのコアと別の動力源を組み込んでいるのだろうか。だとしたらどう対処すりゃいい?
「火力が足りない」
欲しいのはデカブツを一撃で屠る攻撃力。
中途半端なビルドの俺は攻撃スキルに欠ける。
強化した地属性魔法も、素材を加工する【黄銅之建国】の装甲を貫くには工夫が必要だ。
上級魔法の【ジェム】を切らした今、できる事と言ったら小技の連打ぐらいで……違う、手はある。
「ノーム!」
俺と同調して地上のアレナが声を張り上げる。
シェルターから出るなって言ったのに。だがちょうどいいタイミングだ。
戦闘の余波で飛ばされそうになりながら、彼女は棒状の包みを掲げた。
「これ! 使って!」
「それクエスト報酬じゃなかったか」
「あなたが死んだら私も殺されるから。欲しがってたなら、当然使えるんでしょ。いいから!」
だからって放り投げるなよ。
サイズ比の都合から指でつまみ、外殻の内側へ。
手にしたそれは、俺が欲しかった武器。
名刀百選が一振り、【
「ちなみに俺、剣は使えないぞ」
「は? 冗談やめてよ!?」
冗談じゃない。剣の扱いは素人だ。
そのまま振ったらすっぽ抜けるかもな。
「もう一仕事頼んだ。相棒」
合図で石鎧が形を変える。
外殻染みた全身鎧から、天貫く
俺は【火蔵】を抜刀して構える。
天地の鍛治師が鍛えたこの名刀は『炎と熱を吸収して刃の斬れ味を高める』という性能を有している。
「火種を起こす魔法」
俺は塔に【ジェム】を投げ入れ、火を灯す。
「空気を吹き込む魔法」
火の粉は、吹き込んだ風により勢いを増す。
「液体を操作する魔法」
石の端材と【オリハルコン】を『炉』に入れる。
高熱で溶けた金属の流れを制御する。
「鉱石を圧縮する魔法」
ドロドロの金属に【火蔵】を差し込む。
ありったけの魔力を注いで圧縮強化する。
完成したのは刀身が埋もれたハンマーだ。
熱と炎を閉じ込めた無骨なそれを担ぐ。
「妨害せずに待ってるとは行儀が良いな?」
デカブツは『炉』を前に動きを止めていた。
あれだけ暴れておいて、なぜとは思うが。
まさか
まあいい、これで終いだ。
もし仮に【火蔵】を俺が使うとしたら。
眠れない夜に少しだけ考えた事があった。
俺の結論はこうだ。
「【火蔵】――《
腰だめから振り抜いた
【黄銅之建国】
(U・ω・U)<建築特化
(U・ω・U)<戦闘能力は二の次
(U・ω・U)<非人間範疇生物を動力源にする事と、敵性対象の排除に加えて
(U・ω・U)<最も大事な拠点作成の任務が与えられており
(U・ω・U)<建築の邪魔になる石の塊とかでもない限り、建造物への対処優先度は低いです