第六形態カンスト一般モブ<マスター>はありし日の夢を見るか   作:【風車之愚者】

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約束の果たし方③

 □■【獣戦鬼】ノーム・アル

 

 クエストから数日後。

 ドラグノマドの露店にデブが現れた。

 

「ようマニゴルド。いらっしゃい」

 

 デブは俺の装備と、店の商品を見て鼻を鳴らす。

 

「随分と羽振りがよさそうだな」

 

「金を貯める理由が無くなったもんでね」

 

 あの後、俺は無事に護衛を達成した。

 街に帰ってからやる事は山積みだったが。

 

 手付かずの<遺跡>の調査依頼だろ、回収したスクラップの鑑定と活用方法の検討だろ、依頼を仲介したマニゴルドへのクエストクリア報告に、アレナを彼女の家まで送って……思い出すだけで疲れる。

 

 まあ前から欲しかった名刀と、ついでにおまけを入手できたので、俺としては万々歳だ。

 

 更に<四大精霊(エレメンツ)>はスポンサーを獲得した。

 とある有名な商会の伝手で、レアなアイテムがお安く仕入れられる。商売が捗るってもんよ。

 

「ならもう買う必要はないな」

 

「おいデブてめえ」

 

 今まで憐れみで買い物してたのか。

 

「それとカリュートから伝言だ。『完成したから取りに来い』だそうだが」

 

「サンキュー。使い走りさせて悪いな。あんた<超級>なのに」

 

「……身内(【地神】)が迷惑をかけたからな」

 

「え? なんて?」

 

「何でもない。機会があれば、また仕事を頼む」

 

 マニゴルドはそれだけ言い残して立ち去った。

 あいつ、本当に今日は何も買わなかったな。

 クエストの金払いはいいから別にいいけど。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 □■数日前・オークション会場

 

 モンスター逃亡未遂事件の負傷者は医務室に運び込まれて、たまたま居合わせた【神刀医】イリョウ夢路の采配により、全員が完治した。

 唯一気絶したノームはベッドに寝かされている。

 

 ベッドの側でマニゴルドはアレナと話していた。

 

「つまり、こいつに依頼を出したいと」

 

「ええ。会場でモンスターから助けてもらったの。信頼できそうだと思ったわ」

 

 貼り付けた仮面の笑顔だ。

 マニゴルドは、眼前の少女が全てを打ち明けていないと察する。アレナも隠すつもりはないようだった。

 窮地を救った、なら理解できる。

 しかし会場でモンスターと戦った。それだけで彼一人を抜擢するのは些か不自然だ。

 

「依頼は構わないが、肝心の内容を聞いていない。難易度次第ではおすすめできんぞ」

 

「それは彼が実力者ではないから?」

 

「そうだ。決して弱くはないが、<超級>や凖<超級>といった猛者と比べると数段階落ちる」

 

 依頼の遂行力でおおよその実力は把握できる。

 マニゴルドの見た彼は第六形態カンスト止まり。

 純竜級複数を相手取るのは厳しいという評価だ。

 

「無論、状況次第で下剋上は起こり得るが」

 

「問題ないと思うわ。頼みたいのは護衛だから」

 

 アレナの説明を聞いて、マニゴルドは頷く。

 

「……なるほどな。それなら、あの場所に慣れているこいつ以外に適任はいない。目を覚ましたら、俺から話を通そう」

 

「ありがとう「だが、ひとつ気になる事がある」……何かしら。マニゴルドさん」

 

「■■■■跡地の件は知っている。議会が手を回しているが、難民の問題はどの都市でも騒がれているからな。安価な労働力として扱われるのはまだ良い方だ。着の身着のまま売り飛ばされることはこの国では珍しい光景じゃない」

 

「……そうね。ただ、私の商会も難民を数人雇い入れたけれど。みんな真面目で勤勉よ。元々は普通に暮らしていた人達なんだから。ただ『不幸な出来事』で普通の生活から転落したに過ぎない」

 

「俺が気になるのはまさにそこだよ。アレナ・アーレンス商会長。貴女は■■■■を治めていたアーレンス市長の娘だが、幼少期から他国に留学していて、あの街で過ごす時間など殆ど無かったはずだ。……なぜ、そこまで彼らとあの土地を気にかける?」

 

「難民問題に心を痛めたらいけない?」

 

「封建制度の名残りがある王国ならともかく、カルディナの市長は市民から選ばれた代表としての意味合いが強い。親が市長で議員だったからと言って、貴女があの場所に固執する理由が分からない」

 

「あなたに説明しなくてはいけない理由が分からない、と返したらご納得いただけるかしら」

 

「納得はする。ただし今後の付き合い方を考えさせてもらおう。貴女の商会の品は質が良いと評判だが、生憎、物の良し悪しに頓着する性質ではないからな」

 

「降参よ。卑怯な人」

 

 アレナは深いため息を吐いた。

 恥じらいながら口ごもる。

 

「その……前に助けてもらったのよ」

 

「……何?」

 

「父の街で。この人(ノーム)に」

 

「ほう。それで?」

 

 マニゴルドは続きを促した。

 

「その時にね。『いつか恩を返す』って言ったから。商人が空手形を切るわけにはいかないし。でも中々時間が作れなくて。そんな時に事件について知って……クランの人もいなくなって、一人でいるって聞いたから……その……力になりたくて……」

 

「すまんもういい。無粋だった」

 

 マニゴルドは「一〇〇万(これだけ)あれば足りるか?」と金を取り出して、アレナは激怒した。

 乙女の秘密は金に変えられないのである。

 

Episode End




(U・ω・U)<これで一区切りです
(U・ω・U)<とりあえず書きたい事は書いた
(U・ω・U)<後はキャラクター設定を投げるかも

マニゴルド
(U・ω・U)<「あの場所に何かあるのか?」と勘繰ってノンデリかました
(U・ω・U)<【地神】の件をわりと気にしています
(U・ω・U)<お金しか出せないけど理由なくノームが受け取るとは思わないので
(U・ω・U)<仕事を手配したり買い物してた
(U・ω・U)<アレナにも恨まれてるかもと思ってる(別に恨まれてない)
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