今回のお話は短い3話を1話に纏めたものですので、若干話と話の間がチグハグになってるかもです。
すみません……
ほむらちゃんの結界から帰る最中、杏子ちゃんは何度も私に訪ねて来る。
「奴の言ってる意味が分からない」とか「アマタは何か知ってるのか」と……
それには、私は全てNOで答える。杏子ちゃんに嘘を吐くのは心が痛むが、約束は約束である。
でも、何処か私が嘘を吐いていると杏子ちゃんは感じていたのだろう、その晩は、教会に帰っても会話一つ無く寝床に着いた。
ほむらちゃんとの約束を破り、杏子ちゃんに全てを話したら、良い方向に進むのだろうか?その晩に、私は自問自答しながら眠りに着いた……
そして、翌日の夕方に美樹さやかの人生は、破滅の歌を奏で始めた。
ブルジョワと上条が楽しく会話してるシーンを見るや否や、彼女の行動は狂気と化し始めたのだ。
手当たり次第に、使い魔を見つけ、暴虐。己のソウルジェムの心配等一切せずに暴れる事に、もう手段等選んでいる暇は無いと判断したので、私とほむらちゃんは念話で連絡を取り最悪のプランを立てた。
それは……美樹さやかが私達を信じるか信じないかである。
信じて受け入れれば、彼女のソウルジェムをグリーフシードで回復させて、影より出来る限りの保護をする。
信じず受け入れない場合は……
美樹さやかを……
殺して、まどかちゃんにバレない様に処理する……
それが、私とほむらちゃんの決断。
私の役割は、何もせずに正確な位置を伝え、見届ける事……
そして、作戦での障害である杏子ちゃんを、二人に近付けない事……
杏子ちゃんは何処か自分に似ている美樹さやかに、自分と同じ失敗をして欲しくない故に、彼女の為に動こうとする。
だが、それがほむらちゃんの作戦には障害にしかならないし、悪い方向にしか進ませない。
だから……
「何のつもりだ……アマタ?」
「御免ね。美樹さやかを本当に救いたいのだったら、ほむらちゃんに任せてくれる?」
私は心を鬼にしてでも、彼女の前に立ちはだからなければならない。
「無理だな。アタシはまだアイツを信用してない。だから、そこを退(ど)け」
「それは無理だよ、杏子ちゃん。だって、ここで私が退いたら、美樹さやかは魔女になり、まどかちゃんが悲しむ羽目になるからね」
「どういう事だよ?」
「魔女の正体って何か分かる?」
「そんなん、使い魔が成長したもんだろ?」
やっぱり知らないんだね……まぁ、知ってたら昨日の晩のキュウべえの台詞を聞いた瞬間に、ほむらちゃんの結界を飛び出して、美樹さやかを探し出すに違いないしね。
「見当違いな回答だね。魔女の正体は私達魔法少女なんだよ。ソウルジェムが完全に濁り切った時に、グリーフシードを産み出して魔女になる。それが、私達の運命なんだよ」
「う、嘘だろ……アイツに何か嘘を吹き込まれたんだろ!?そうなんだよな!!」
「本当だよ。私は一度、魔法少女が魔女になる場に立ち会った事が有るの……昨日、キュウべえが言っていた大変なこととは、こういう事なの」
「じゃあ、何で昨日言わなかったんだよ!!」
「出来る限り、こんな情報は他の魔法少女に言いたくないの。発狂する子も居るからね……でも、もう手段は選んでいられないの。美樹さやかが破滅すると、まどかちゃんも同様に破滅する可能性が有るから、安心してハッピーエンドは迎えられない。だから、私はここで杏子ちゃんを止めないといけないの」
マスケット銃を召喚して杏子ちゃんへと向ける。
「悪いが、御前が騙されてるとしか私は思えねぇな!!自分の目で見ないと信用出来ない性質でよぉ!!」
対する杏子ちゃんは槍を召喚し、私へと向ける。どうやら、言葉で解決するのは難しい様だね……
しっかし、どうするかなぁ~、私程度の魔法少女じゃあ、杏子ちゃんレベルの魔法少女を止めるどころか、傷すら与えれない気がするしなぁ……
『ほむほむ~、杏子ちゃんと戦闘になりそうなんだけど、どうしたら良い?』
当然、念話をしながらも、気を抜く事は一切しない。
ていうか、杏子ちゃんレベルの魔法少女だったら、念話してる事自体が命取りなんだけどね……
『出来る限り時間を稼いで貰えるかしら?無理だと判断したら佐倉杏子を放置して良いわ』
『無茶言うねぇ~……私のレベルじゃあ傷すらつけれないよ?まぁ、適当にやったら撤退するから。そっちはどう?』
『今、美樹さやかが使い魔と戦闘している、マンションに向かっているわ。あと2分くらいで接触出来る』
じゃあ、2分程度持たせれば丁度良いかな?
現在位置からマンションまで、どんなに肉体面が強化された魔法少女が頑張っても3分くらいは掛かるからね。
その間には事を片付けてくれるでしょう。
「悪いけど、ちょっとだけ時間稼ぎさせて貰うよ」
「なぁ、最初に会った時にアマタ言ったよな……アタシに敵意を向ける事は一切ないって……寧ろ、好意を抱いてるって……」
「うん、敵意は無いし、杏子ちゃんの事は大好きだよ。でも、未来を良い方向に持って行く為には、杏子ちゃんでも武器を構えるしかないんだよ……」
「それを敵意っつうんだよ!!アタシはさやかを救いたいし、アマタとも戦いたくない!!最終警告だ、そこを退け!!」
「ごめんね、杏子ちゃん……私も自分の思いを貫き通すよ……」
きっと伝わらない謝罪をして、私は銃口のトリガーを引いた。
2分間持つか分からないけど、未来の為にも私が汚れ役を引き受けよう。
杏子ちゃんに教会で言った言葉。自分の思いを貫き通せ、例えそれが今相手に理解されなくとも、ずっと先に落ち付いて考えてみると、結果的にはそれが正解だったと気付く日が来るかもしれない。
まさしく、今私はその言葉通りの立場なのだろう……
私の拳銃より奏でられた撃鉄の音を皮切りに、一瞬にして杏子ちゃんが詰め寄って来る。
拳銃の弾丸は掠るどころか、空を切り虚しくも地面やコンクリート壁に減り込むだけである。
「おっせぇよ!!」
槍の棒部分が複数の棍棒へと別れ、それらを鎖で結ぶ多節棍へと変化する。
多節棍の特徴は、扱う者以外には予測不可能な軌道での攻撃である。
恐らく、ほむらちゃんの時を止める能力レベルの魔法が使えないと、近距離での回避は不可能であろう。
当然、私にそれを避ける術は無い。
例え、魂之眼球で死角外に潜り込んだ軌道を読めても、体が当然反応しきれない。
魔女や使い魔とは速度がはっきり言って違う……
唯一出来るのは、肉体へのダメージを減らす為に、受け身を取る程度である。
地面すれすれより浮上した棍の先端部分は、私の脇腹を狙って抉り込むように突き刺さる。
「うぐっ!?」
一応受け身を取ったつもりだが、想像以上の威力なのか、多節棍の性質かは知らないが、骨が悲鳴を上げ即座に痛みを遮断しなければならない事態に陥る。
この痛みが遮断できるゾンビみたいな体に、本当に感謝だよ……
多分、骨が何本か折れたね♪今回ばかしは手加減は一切無いなぁ~♪
「まだまだぁ~!!」
地面を強く蹴り、杏子ちゃんへと一気に接近する。
手に持った拳銃は投げ捨て、新しく散弾銃(ショットガン)を召喚。
散弾銃は拳銃以上に接近戦に特化した銃とも言える。
その力は50メートル以内で発揮され、銃口よりショットシェルが発射されると、ショットシェルが圧と振動で破れ、中に封入された小さなゴム弾が放射状にばら撒かれる。
幾ら動きが早いと云えど、近距離でならば回避する事は非常に難しいと判断しての選択。当然、銃火器は殺傷能力が高いので、中の弾丸はゴムを選択している。
自分は傷付いても良いけど、杏子ちゃんが大怪我をするのは頂けないからね♪
距離5メートル程度まで接近し、散弾銃の銃口を向け、トリガーを引こうとしようとした時には……
既に銃口の先には、杏子ちゃんの姿は無く……
私の目の前が真っ暗になった……
チクタク チクタク ボーン
眼球が時計によじ登る
時計が一時を打ったとき
眼球は時計からずり落ちた
チクタク チクタク ボーン
~マザーグースのHickory, dickory, dockより一部改竄~
1人の蒼色の魔法少女が魔女退治
そこに3匹のネコさんが通りがかりました
“なにをなさってるの 御嬢さん”
“正義の味方をしてるのさ”
“わたしもお手伝いをしましょうか”
“ご遠慮しますネコさん 頭をかじり切られてはいやですから”
“そんなことはありません 是非手伝わせてちょうだいな”
“そうかもしれませんけれどネコさん 近寄らないでくださいな”
どうして、彼女はネコを拒むのだろうか?
食べられるからだろうか?
~マザーグースのSix little mice sat down to spinより一部改竄~
「どうして分からないの?ただでさえ余裕が無いのだから、魔女だけを狙いなさい」
「五月蠅い、大きな御世話よ……」
さやかの体は既に限界を超えており、肉体が悲鳴を上げて立つのが精一杯である。
肩で息をしながらも、ほむらには絶対に弱ってる所を見せまいと覇気を見せて反論をする。
「もうソウルジェムも限界の筈よ。今直ぐ浄化しないと……使いなさい」
そんな彼女を見て、既にさやかのソウルジェムが限界を迎えている事を悟ったほむらは、そう言ってさやかの足元にグリーフシードを投げる。
だが、さやかはその行為を何かしらの陰謀としか取れず、グリーフシードを後ろへと蹴り飛ばす。
「今度は何を企んでるのさ?」
「好い加減にして……もう人を疑ってる場合じゃないでしょ?そんなに助けられるのが嫌なの?」
「アンタ達とは違う魔法少女になる。アタシはそう決めたんだ。誰かを見捨てるのも利用するのも、そんな事をする奴等とつるむのも嫌だ。見返りなんて要らない。私だけは絶対に自分の為に魔法を使ったりしない」
「貴方、死ぬわよ?」
「アタシが死ぬとしたら、それは魔女を殺せなくなった時だけだよ。それって、つまり用済みって事じゃん?なら良いんだよ……」
地面に膝を着き崩れ落ちるさやか。かなり世界を恨み辛み、呪いを産み出した始めた結果。
それが、自虐……世界だけでなく、自身までをも呪い始める。
「魔女に勝てないアタシなんて、この世界には要らないよ」
最後には眼に涙を浮かべて答える。
「ねぇ、どうして?貴方を助けたいだけなの。どうして信じてくれないの?」
「どうしてかなぁ?ただ、なんとなく分かっちゃうんだよね。アンタが嘘吐きだって事。アンタ、何もかも諦めた眼をしている。何時も空っぽの言葉を喋っている。今だってそう、アタシの為とか言いながら、本当は全然別の事を考えてるんでしょ?誤魔化しきれるもんじゃないよ……」
その言葉と先の行為に、ほむらは心の奥より憎悪が湧き始める。
彼女は何時もそうである、幾ら手を伸ばした所でも、決して自分へと手を返そうともせず、刃だけを向けて来る。
「そうやって、貴方は益々まどかを苦しめるのよ……」
「まどかは関係ないでしょ?」
「いいえ、何もかもあの子の為よ」
完全に救う価値も無いと判断したほむらは、ソウルジェムを握り変身する。
「貴方ってするどいわ?えぇ、図星よ。私は貴方を助けたい訳じゃない、貴方が破滅して行く姿をまどかに見せたくないだけ。ここで、私を拒むのなら、どうせ貴方は死ぬしかない。これ以上まどかを悲しませるくらいなら」
アパートの長い廊下に明らかに異質な音が響き始めるが、怒りで外部の音が入ってすらいないほむらは気にもせず……
「いっそ私がこの手で……」
さやかに手を伸ばす……
「今直ぐ殺してあげるわ、美樹さやか」
思いもよらぬ発言にさやかの顔が真っ青になるが、世界とは非常に面白く出来ている。
まるで、ほむらの思い通りには行かせないと、神様が示唆しているのだろうか、ここという場で邪魔が入る。
ほむらの体に多節棍が巻き付き、その後杏子の方へと引き寄せられ取り押さえられる。
「おぉい!!さっさと逃げろ!!」
今将にさやかを殺そうとしていたほむらを取り押さえると、杏子は地面にまだ膝を着いてるさやかに逃げろと強く命令する。いや、命令ではなく思いやりによる忠告ともとれる。
その後、何を考えているのか分からないが、幽鬼の様な表情でゆっくりと立ち上がり、ふらふらな足で何処かへと歩き始める。
「本気か手前は!!アイツを助けるんじゃなかったのかよ!?」
さやかが無事に逃げた事を確認すると、ほむらにキツイ口調で尋ねる。
「随分早い登場ね……アマタはどうしたの?」
だけど、質問には一切答えず逆に質問を返す。
「眠って貰ってる。随分と変な知識を植え付けてくれたなっ!!魔女の正体とか全部聞いたぞ!!」
「そう、真実を聞いた上で、貴方は美樹さやかを逃がしたの?」
「そんなん信じられるか!!」
どうして、彼女も信じてくれないのだろうか?
「そう……離してくれないかしら?」
そう歯軋りし、冷たく言い放つ。
「ほぉ~、触れてたらあの妙な力は使えないのか?」
杏子の言う通り、ほむらは他人に接触されていると時間を止める事が出来ない。
正確には、時間を止めても接触しているモノの時間は動いているので、正確には意味が無いが正解である。
なので、手に着けたラウンドシールドから閃光手榴弾を取り出して、歯で安全ピンを抜く。
閃光手榴弾と云えど、見た目は手榴弾そっくりなので、自爆する気かと驚き、ほむらから飛び退く。
狙い通り、杏子が距離を取ったので、魔法を発動して時間を止めて、空中に閃光手榴弾だけを残してその場から離脱し、急いで美樹さやかを探しに行く。
本来なら、アマタによって常時位置が把握されているが、杏子によってアマタが気絶させられているので、念話が通じず、手当たり次第探す羽目になる。
また、目の前からほむらが消え、閃光手榴弾のフラッシュのオマケまで頂いた杏子は、舌打ちをし、彼女も同様にさやかを探しに行く。
全てが終わってしまう前に……
「さやかちゃん……何処……」
心配して美樹さやかのアパートに行く物の、彼女の母親から昨日から帰って来ていないと返され、現在必死に探しているのだ。
ちなみに、その肝心な探し人が今将に殺されかけた事なんて、まどかは露も知らず。
さやかが何処に居るかは分からないので、ひたすら彼女が行きそうな場所を探す。
学校、一緒に良く行く喫茶店……そして、次の目的地は公園。
その公園に行く道中に、さやかではないが彼女の見知った顔の少女が倒れていた……
「えっと、アマタちゃん?どうしたの、アマタちゃん!?」
倒れたまま動く気配の無いアマタを頭から抱き起して、必死に呼びかける。
「ねぇ、アマタちゃん!!アマタちゃん!!」
彼女が目覚めるまで、何度も呼びかけて、体を揺する。
暫し揺すると、少しずつ意識を取り戻し始めたのか、呻き声を上げ始める。
そして、一定以上の意識を取り戻したのか、眼を一気に見開く。
行き成りの覚醒に驚き、アマタから飛び退く。当然、まどかが抱き起してる訳で、そのまどかの支えが無くなったので、アマタの頭が地面へとフリーフォールを開始して、地面にて強打する。
「いっつぅ~……気絶しちゃったかぁ……あれ、まどかちゃんヤッホ~♪」
「だ、大丈夫!?」
「うん、大丈夫大丈夫。骨が折れたくらいだから」
「骨ぇっ!?」
ちなみに、ここで会話の齟齬が発生している。
アマタが言っているのは、杏子の一撃によって骨が折れたという意味であり、それをまどかは、自身がアマタの頭を落とし、後頭部を強打させた事で、頭蓋骨の一部が折れたと取っている。
「ちょっち、杏子ちゃんとやり合ってね。まぁ、もう回復したから大丈夫大丈夫。で、まどかちゃんはどうしたの?」
「どうして?どうして、そんな事になったの?」
先日の跨道橋での杏子とアマタの関係から見ても、仲も良く、相手の骨を折る程の戦闘を繰り広げるとは思えないので、恐る恐る尋ねる。
「まぁ、ちょっちね。で、まどかちゃんは、こんな夜遅くにどうしたの?」
「うん、さやかちゃんを探してて……でも、どうしても見つからないの」
「そっかぁ……じゃあ、悪いけど、私はそろそろ行くね。杏子ちゃん見つけないと拙いしね」
「そ……う……ですか……」
実は、気絶した際に、召喚していた全ての魂之眼球が消滅したので、美樹さやかに憑けていた魂之眼球も当然なくなり、現在位置が不明となっている。
また、まどかに現在起きている事の全てを話す訳にも行かず、ボロが出ない内に急いで別れようとする。 だけど……そんな事も御構い無く、希望の数だけ絶望も生まれる……
そう、何もかも終わってしまっているとも知らずに、少女は微かな希望を抱いて居たのだ……
まだ、美樹さやかは生きていると……
ソウルジェムが砕けると
明かりは塵にまみれて消える
破片が飛び散ると
心と体は綺麗な形を失う
リュートが毀れると
美しい音色は戻らない
友情が言葉で言われると
中身は直ぐに忘れ去られる
音楽や光の輝きが
ランプやリュートなしではありえぬように
心が響かないと
魂の木霊は歌とならない
せいぜい廃墟を吹き渡る風のような
悲しい挽歌となるだけか
教会の死者を弔う鐘のような
絶望の音になるだけ
心と心が結ばれると
強い者から愛が消える
弱い者は一人残され
失ったものに耐えねばならぬ
おお愛よ!!
おまえはこの世のはかないことを嘆くが
なぜ弱いものを選んで
その人の心をもてあそぶのだ?
嵐が烏を揺り飛ばすように
熱情が人を揺さぶる
分別も役には立たない
冬空のくすんだ太陽のように
愛する者に寄り添って立つ
あらゆるものが崩れ落ち
人は裸で放り出される
ビルを吹き飛ばす暴風が来るというのに
~パーシー・シェリーのWhen the Lamp is Shatteredより一部改竄~
見滝原市一帯に魂之眼球をばら撒き操作すると、思った以上に早く美樹さやかの居場所を把握する。
電車の中でホストか不良か何か知らんが、あまり関わりたくない人間を2人も相手にして何か言っている。
相手の方は何か困惑するような表情なので、一方的に美樹さやかが絡んでるようにしか取れない。
そして、最後には美樹さやかはサーベルで彼等の首を切り落とした……
切り落とすと壊れた様に笑い、次の駅で降り、ホームのベンチに座る。
暫くして、そこに人影が見える。ほむらちゃんかと思いきや、現れたのは……杏子ちゃんだった……
あぁ、と云う事は、ほむらちゃんの説得も駄目だったのだろうか?
きっと、杏子ちゃんを私が止められなくて……
私って駄目だなぁ……ほむらちゃんを助けてあげる手伝ってあげるって、何度も偉そうな事を言って、結局一番大切な所では役に立てないし……
願いや希望の数だけ絶望を生むなんて……本当に夢も希望も有ったもんじゃないわね……
そうやって、絶望していると、私のソウルジェムがゆっくりと穢れ始める。
これが、呪いを生むと云う事なのだろう。自分が成功しないと、世界の全てを恨み、呪ってやらんと云わんばかりに、湧き上がる負の感情。
今迄真っ白だった、ソウルジェムにゆっくりと真っ黒な濁りが浸食して、あっという間にどんよりした黒色に染めあげてしまう。
また一方では、一言二言少女達は会話を交わし、美樹さやかの人生は終わりを告げる。
そう、美樹さやかの魔女化である。
辺り一帯に膨大なエネルギーを放出し、ソウルジェムが砕けて魔法少女の行く着く先、負の化身と成り果てる。
その姿を目の前にして、初めて杏子ちゃんは自分の愚かさに気付き、急いで美樹さやかの死体を抱きかかえて結界から外界へと疾走する。
やっとの事で、杏子ちゃんが美樹さやかの死体を結界から持ち出すが、運悪くまどかちゃんに発見されてしまう。
肝心なフォローを入れるほむらちゃんの姿もそこには無い。彼女は、今も現状を把握できずに何処かを彷徨っているのだろうか?もしくは、杏子ちゃんにやられちゃったとか?
「何もかもが悪い方向に進んで、終わっちゃったね……全部……」
そう呟いて、私はゆっくりと見滝原市から逃げ出して、自分の元居た町へと帰ろうと歩き始める。
きっと、ほむらちゃんに会ったら「役立たず」と責められそうな気がして……何もかもから逃げ出したのだ……
美樹さやかが呆けた顔をして、移動していたのも、自分が体験すると本当に良く理解できる。百聞は一見に如かずとは云うが、私風に言うと体験は百見に如かずってね……
人間とは、絶望すればやっぱり……何も考えられなくなっちゃうよね……
「ねぇ、アマタ……何処に行くの?まだ、終わって無いでしょ?」
「ほむらちゃん?」
何もかもから逃げ出そうとした私の前には、一番会いたくなく、こんな姿を見られたくないほむらちゃんの姿が有った。
「頼って」、「信じて」、「助けてあげる」、「名前を呼んで」、「友達」……沢山の偉そうな言葉を彼女には掛けて、彼女を背中から支えていたつもりだった……
「御免ね、ほむらちゃん……私には、ほむらちゃんの背中を支えるには役不足だったみたいだね……杏子ちゃんの足止めも出来なかったし、結局、美樹さやかも魔女化しちゃうし、まどかちゃんに美樹さやかの死体を見せる事態にもなったし……」
「どうして、どうして、貴方は逃げようとするの!!」
「どうしてだろうね……きっと、私が弱いからかな?だって、ほむらちゃんの体験した世界では、私は弱かったから、何もかもから逃げて現実を直視できなくて魔女になったんでしょ?まどかちゃんを恨んだり、多くの魔法少女を殺したり……」
それに今、ほむらちゃんが私の事を名前を呼んでくれなかっただけで、物凄く心が折れそうなんだもの……
眼から涙を流し、今も世界を恨み呪い続ける……
「アマタは弱くなんかない!!それに、アマタが私の背中を支えてくれてるから、またこんな事態に直面しても私は挫けずに居られるの!!アマタがそんな事を言ったら、ここに居る私はどうしたら良いのよ!!」
だけど、それはほむらちゃんを悲しませるだけ……呪いとや絶望、悲しみとは周囲に居る人にも伝染するのだ……
前にも言ったけど、やがて私の顔からも笑顔が消えるだろうと……案の定、現にこうして笑顔が消え、泣いている……世界を恨み、呪っている……
鹿目まどかに興味を持って町に来なければ良かった、ほむらちゃんや杏子ちゃんに出会わなければ良かった、友達にならなければ良かった、魔法少女にならなければ良かった……自分の人生の歩みを何もかも全否定してしまう。
美樹さやかのメンタルが異常なくらい弱いって前に思ってたけど、人間のメンタルなんてこうも簡単に崩壊してしまうのだ。
ガラスのハートとは実に的を得た表現だよね……
「だから、逃げないで!!今度は私がアマタの背中を支えるから!!」
「どうして?そんなにムキになるの?私が居ないと自分の目的が達成出来ないから?」
口から出てくる言葉は、将に美樹さやかが杏子ちゃんに言った言葉と同レベル。いや、比べ物にならない位、私の言葉の方が酷い……
自分から手伝ってあげると言って、ほむらちゃんを最後の最後で突き放す様な事をして……
まだそれくらいなら、最初から最後まで敵対心をむき出しの美樹さやかの方が、私より何倍も優しい……
あぁ、私って最低だ……どうして、こんな酷い言葉を言っちゃうんだろう……
このまま負の感情を抱き続ければ、私のソウルジェムが穢れ切ってしまって、美樹さやか同様に魔女になってしまうから、心配して言ってくれてるのに……
嫌われちゃったかな……私も美樹さやかと同類に思われちゃったかな……それとも、私に全て話した事を後悔されちゃったかな?
わなわな震えるほむらちゃんを見て、どんな罵声を浴びさせられるのかと思っていたが……
「違う!!アマタは私の少ない友達だからよ!!だから、まどかだけじゃなくて、アマタとも一緒に未来を見たいの!!だから、絶対に逃げないで!!」
そう言って、私を抱き寄せ、首からぶら下げたソウルジェムに、彼女はグリーフシードを押し当てる。
すると、穢れと一緒に、今迄あそこまでネガティブに考えていたのが不思議なくらいに、恨みや呪い等も一緒に消えてしまう。
そんな優しさに、自分の愚かさと馬鹿さ加減に涙が出始める。
「そっかぁ……ごめんね、ほむらちゃん……迷惑掛けて……本当にごめんねぇ……」
目から毀れ落ちる涙を服の裾で拭い、嗚咽を洩らしながら謝る。
「友達だから当然でしょ。アマタも言ったじゃない……好きなだけ甘えて頼れって……」
「本当に、私って馬鹿だよね……偉そうにほむらちゃんに自分が言って、結局はほむらちゃんに言われちゃうなんてぇ」
「本当ね。大馬鹿ね」
可笑しそうに返す言葉、『馬鹿』って言えば『大馬鹿』と何か一文字増えて返って来る。
木霊でしょうか?いいえ、それが友達同士のコミュニケーションです。
「ほむらちゃん酷いよぉ……でも、これからどうする……美樹さやかが魔女化したけど―――」
「大丈夫、分かってるわ」
私以上に現状を理解しているほむらちゃんに、言葉を途中で切られる。
「佐倉杏子は美樹さやかの死体を結界から持ち出したのでしょ?なら、彼女の行く場所は大体分かっているわ。行くわよ、アマタ。次、諦めたら承知しないわよ?」
ほむらちゃんが差し出した手を……
「うん!!」
私はギュッと握った……
薔薇(きょうこ)は赤い
菫(さやか)は青い
桃色(まどか)は優しい
君も優しい
だから、私は枯れずに済んだのだ
~マザーグースのThe rose is redより一部改竄~