「うん、聞きたい答えが聞けたよ♪ さっきまで、少しからかって御免ね♪ じゃあ、単刀直入に言うね……」
「う、うん……」
行き成り真面目な顔と口調に戻した私に、先程以上に強張る上条恭介。
取って食う訳じゃないんだから、もっと気楽に聞いてくれにゃいかなぁ?
まぁ、代わりと言っちゃなんだけど、美樹さやかの命が世界の不条理に食われる可能性は有るけどね♪
「美樹さやかは……今、命を失う危機に面してるの……」
「何を言ってるんだ?」
顔には動揺、体が私から向かって後ろに動き、動揺で唾を飲み喉が揺れる。
「本当の事よ……ねぇ、貴方の腕って、医者からもう動かないって言われてたらしいね? それが、こうして普通に動くなんて不思議だよねぇ♪」
えっ? 何で、私がそんな事を知ってるのかって?
そりゃあ、勿論♪ ほむらちゃんから、美樹さやかの契約内容を聞いてるからだよ♪
「さやかが僕の腕に関係? そう云えば、病室で『奇跡も、魔法も、有るんだよ!!』って僕に……その翌日に……腕が動くようになった気が……」
「そうそう、奇跡も魔法も有るんだよ? 上条恭介君♪」
一斉に魂之眼球を召喚し、上条恭介を視認可能対象にする。青空広がる屋上は一斉に充血した眼球で埋め尽くされ、異様な空間へと仕立て上げられる。
その浮世離れした光景に腰を抜かし、足に力が入らなくなり地面にへたり込む
何故、上条恭介に魂之眼球を見せるのかと云うと、百聞は一見に如かずだから。
それに、次に見る事になるのは、彼の幼馴染で好きな女性の異形な姿。その時に今みたいにへたり込まれても困るので、予行練習って意味でね♪
「これが魔法だよ♪」
「き、君は何者なんだい?」
「私の名前は星屑アマタ。魔法少女よ……」
「魔法少女?」
漫画やアニメ、小説等の空想上の二次元の世界でしか存在しないとされている魔法少女。
「そう。私達は人と云う存在からはみ出した存在。魔女と呼ばれる存在を殺す為だけの存在なの……あっ、そうそう……魔女ってのは、魔法少女が負の感情溜めて世界に絶望したなれの果てだよ」
「人と云う存在からはみ出したって、どう云う事だ?」
「そうだね? 簡単に言うと、私達は死人(ゾンビ)みたいな物だよ。魂が体に無い為、体がどんなに傷付いても痛みを感じないし、直ぐに治癒される。魔女を狩ると云う目的を実行するだけの存在。そして、日々、自身が魔女になると云う事に恐れるの。彼女……そう、美樹さやかもだよ?美樹さやかも同じ魔法少女だよ♪」
「さやかが同じ? どうして、さやかが……魔法少女になんか……」
自分の好きな人が、そんな存在にどうしてなったのかが理解出来ず、震える声で私に問い掛ける。
まぁ、ぶっちゃけた話だけど、誰もキュウべえから、魔法少女になるとこんな体になるなんて聞いてないからねぇ~。
話を聞いてたら、大半の少女達は願いを諦めて、魔法少女にはならなかったのじゃないかな?
「実はね、私達は魔法少女になる時に一つだけ、どんな御願いでも叶えて貰えるの♪」
「まさか……さやかの願いって……」
病院での彼女の言葉、自分の腕が治った事、そして美樹さやかが魔法少女になった理由が全て繋がったらしく、彼は物凄く悲しそうな顔をした……
きっと、自分が彼女を……魔法少女にしてしまったのだと……
「そう、もう二度と動かない貴方の腕を治して、もう一度ヴァイオリンを弾けるようにしてくれってね。美樹さやかは貴方の事が好きだった。だけど、運命って残酷ね。そんな事を露知らず貴方は志筑仁美と楽しそうに一緒に帰ってるんだもん?」
「違う!! あれは、大切な話が有るって言われて……」
「まぁ、そんなのは美樹さやかには分かんないわよ……思春期の少女の恋心って難しいのよぉ? しかも、前日に志筑仁美に上条恭介の取り合いで宣戦布告されたらしいし」
「志筑さんが、さやかに?」
「そうそう。だけど、美樹さやかは『私は死人だから、恭介に好きって言って貰う資格は無い。抱きしめてなんて言えない』って言って、まどかちゃんに抱きついて晩に泣いてたんだよ?」
あれ、この台詞の時系列って何処だっけ?
ほむらちゃんから貰った情報が多過ぎて、時系列がこんがらがって来たよ……
まぁ、どうせ上条恭介には分からないから、ここはアマタちゃんが、話を盛りに盛ってしっかりと美化しておこう♪
だって、私は恋のキューピットだもん☆
「そんでまぁ、最後には、自分の恋が成就しない世界を呪い。穢れを生みながら無茶な戦闘してしまった結果……魔女になったとさ……悲しい悲しい一人の少女の人生でしたとさ」
この後は、魔法少女や魔女の知識に関して色々と説明する。魔女になったらどうなるかとか、ソウルジェムがうんたらとか、マスコット的ポジションの厄介な奴とか……
長くなるので、悪いけど色々と割愛するわね……
そして、紙芝居屋さんが話が終わった時にするように、手を叩いて話が終わった事を強調する。
ちなみに、この手を叩くと云う行為の意図は、物語りを聞きいってた子供達を音でびっくりさせて、物語りの世界から現実の世界に気を戻す為らしいね♪
「さぁ、ここでクエスチョン? 貴方は魔女になった美樹さやかを助けたいかい? 私の様に、こんな怖い力を行使する化け物を愛せるかい? ここには誰も居ない。今なら、私の話は達の悪い冗談だと思い、‘人間’である志筑仁美と仲良く過ごす日々に戻れるよ? 安心しなさい、この事は誰も知らない。貴方が普段通りの日常に戻っても、誰も責めたりなんかしないよ?」
最後の最後で上条恭介の本心をもう一度確かめるために、悪魔の囁きをする。
ちなみに、これで美樹さやかの事を助けないと言ったら、上条恭介の眼球を抉りぬくつもりで、既にスカートのポケットの中のスプーンの柄をしっかりと握っている。
「助けたいに決まってるだろ!! さやかが居ない日常なんて、普段通りの日常なんかじゃない!!」
あらまぁ~、格好良い事言うねぇ~♪
もし、これが本心ではなく同情による演技だったら、プロの男優物だと思っちゃいそうだよ♪
「グ~ッド♪ 宜しい♪ じゃあ、学校が終わったら助けに行こう♪」
「今からじゃ駄目なのかい?」
「あぁ~……まぁ、他にも助けに参加する面子が居るからねぇ~♪ それに、私の呼び出しが原因で、貴方のクラスが凄い事になってるよ?」
魂之眼球より送られて来る、上条恭介の教室の状況……
異様に騒いでいる中沢君。きっと、「上条とは、当麻ですか? 恭介ですか? はい、インなんとかさん!!」とか非常事態に構わず言ってそう。
それで、大慌てでまどかちゃんに何か言ってるブルジョワ。きっと「お~っほっほ、明日からおフランスに小旅行ザマス。上条君も連れてくザマス」とか言ってるのかなぁ?
最後に、机に座っているキュウべえに何度もデコピンをするほむほむ。恐らく、「何を隠してるの? 話しなさい」とか念話で言ってるのではなかろうか……
「ちゃっちゃと戻って、静かにして来て。告白されたとかでも言って、呼び出された理由は適当に誤魔化していいから。あと、分かってると思うけど、この事は他言無用ね? つっても、別に貴方が言った所で、こんなふざけた話を誰も信じないと思うけどね……実際に、目で魔法や魔女を見ない限り……」
「分かった。それに、これ以上、さやかに迷惑はかけたくないから、元より言うつもりはないけどね」
なんか、この子は本当に良い子だねぇ……ていうか、何で上条恭介は美樹さやかなんかの事が好きなんだろう?
美樹さやかには、私には分からない何か魅力的な物が有るのだろうか?
確かに、親しい人間には物凄い優しい雰囲気は有るからね……まどかちゃんとか、上条恭介に関してはね……
ただ、ほむらちゃんや私に対しては、かなり敵対心持ってるけどね。
「しっかし、貴方は案外すんなり魔法の存在とか信じたね?」
人によっては魔法を見せても、そんな非科学的な事がある訳がないと、手品の類と思い込まれる事が有るからね。
「そりゃあ、あんな物を見せられたらね。それに、君の話が本当なら、僕の腕が治ったのも含めて全てにおいて合点(がてん)が行くし……」
あぁ、言われてみれば、流石に眼球で覆い尽くすのは手品じゃ無理だね……
「そっか。じゃあ、また後で上条恭介」
「分かったよ、星屑さん」
あっ、そうそう。最後に私から重大発表♪
それは♪
さっきの紙芝居屋の手を叩く行為の意図だけど♪
あれ、嘘だから♪ もしかして、信じちゃった人とか居るかな?
それじゃあ、次話に続く!!
きっかけがないので 本心を言えない
本心が言えないので 告白が出来ない
告白が出来ないので 少女の恋は実らない
少女の恋が実らないので 世界を呪う
世界を呪ったので 少女が滅びた
すべては恋心のせい
~マザーグースの For want of a nail より一部引用~