「おめでとう、おめでとうぱんぱかぱ~ん♪ 良く私を見つけれたね♪」
結界の中に入って来た私達を見て、落書きの魔女は嬉しそうに声を上げる。
「えぇ、大分苦労したけどね。これで満足かしら?」
そんな嬉しそうな彼女とは反面、こちらは大変な思いをしてあちらこちら探し回った為か、ほむらちゃんの返す言葉はやや冷たい。
「うん。もう満足だよ♪ 最後にこの一筆を入れたらね♪」
そう言って、彼女はキャンバスに描かれている美樹さやかの絵を見せる。
後は眼球に瞳を描き込めば完成となる完成一歩手前の絵。その真っ白な眼球に彼女は筆を当て瞳を描き込み満足そうに頷く。
そして……キャンバスに手を入れ、描かれた美樹さやかを引き摺りだす!?
って、えええええええええええええええええええええええ!?
キャンパスには平面で描かれていた美樹さやかだが、引き摺り出された彼女はちゃんと立体で在り、あの死体安置所に置かれてたオリジナルと全く同じ物が、テレビから出て来る貞子ちゃんと同じ感じで、にゅるっとキャンバスから出て来る。
落書きの魔女はその出来にもう一度満足げに頷き……
「遊んでくれてありがとう♪」
最後にそう言って、眩しく体を発光させ姿を虹色のソウルジェムへと変えた……
無音、静けさ、床に転がっている落書きの魔女の元になった魔法少女のソウルジェム。
ほむらちゃんは歩を進め、床に転がっているソウルジェムをそっと拾い上げる。
「終わったのか? それで、このさやかは何なんだ……」
「私にも分からないわ……でも、これが落書きの魔女が言っていた、見つけた時の景品だとは思うわ」
美樹さやかの死体をプレゼントされても……
今、注文したらもう一つプレゼント的な流れでも、これは……いや、美樹さやかは見た目は可愛いとは思うわ……
自宅に持って帰れば、着せ替え人形に使えるわね? 等身大リアルフィギュアみたいな?
「それで、これは何に使えばいいのかしら? 落書きの魔女? いえ、今は絵意(えごころ)キレイと呼んだ方が良いかしら?」
美術館に飾られてる可愛い女の子が描かれた一枚の絵に向かってほむらちゃんは突如と尋ねる。
すると、先程美樹さやかBが絵から出て来たように、絵に描かれている女の子が微笑み、絵から飛び出して来た……って、もう何でも有りね……この子は……
髪の色は黒色で、ミディアムの長さにシャギーカットを入れた、ちょっと活発そうな可愛い小学生くらいの女の子である。身長は120センチ有るかないかの非常に小柄な体格である。
「キレイで御願いね♪ 今、魔法少女の御友達の抜け殻が警察の手に渡って大変な事になってるのでしょ? 病院外でのやりとりは飛ばした使い魔から聞かせて貰ったよ。暁美さんの能力の欠点も♪」
「ふふ、そう云う事ね……助かったわ」
察しの良いほむらちゃんは既にこの美樹さやかBの存在意義に気付いたらしく、拾い上げて腕に付けてるラウンドシールドに頭から収納し始める。
ちなみに、私含む他三名には何の事か伝わらず、取り敢えず美術観賞をしている。
「絵に描けば食べ物でも実現化出来る能力か……一生食うのには困らないな!!」
いや、杏子ちゃんに限っては、目を輝かせて絵に描かれてる果物盛り合わせを見ており、花より団子のようだ。
でも、確かにこの能力は非常に実用的だと思う。魔女に高い身体能力を活かして肉弾戦や銃撃戦のみを繰り広げるマミさんや、昨日の杏子ちゃんや、美樹さやかとは違い、私やほむらちゃんの様に能力を活かして魔法少女や魔女に優位に立ち向かうタイプである。
故に、独自の戦闘スタイルを確立し、戦闘以外でも様々な方面に能力を活かす事が出来る。
そうこう考えていると、突如と美術鑑賞会も終焉を迎える。魔女の消滅により結界が崩壊したからだ。
私達魔法少女では、結界の展開はレア能力の一つだからね……
まぁ、そのレア能力がバーゲンセールの安売り状態なのがほむらちゃん……
時間逆行能力、時間停止能力、結界展開能力、物質圧縮収納能力、後は私の魂之眼球をデフォルトで見れるので高ランク魔力と、チートと言われても文句の言えないレベルである。
そして、そんなほむらちゃんでも討伐出来ないワルプルギスの夜は「そんなんもうチーターや!! ベーターのチーターでビーターや!!」なんて声が聞こえてきそうな相手ね……
「じゃあ、私は今から美樹さやかの本体を回収して来るわ。上条恭介は、さやかのソウルジェムを持って来てくれる?」
あぁ、成程。死体と人形を置き替えて来るのね。それで、美樹さやかに事情を話して再度置き替えをして、美樹さやか復活って流れなのね。
「分かりました。どこに持ってくれば良いのですか?」
「そうね……流石にここじゃ拙いわね……」
万が一、美樹さやかが他人に見られたら騒ぎになるからね。幾ら人通りの少ない時間帯といえど、念には念を押して。
「んじゃ、アタシの教会にしようぜ?」
「それなら、案内役に上条恭介に、上条恭介のみ視認可能にした私の烏を付けとくね」
「御迷惑お掛けします」
どうせ召喚したのなら最後の最後までしっかり使わないと魔力が勿体無いからね。召喚するのに一番魔力を使う訳だし。
病院の内部に捜査の時使ってた使い魔の1匹が、上条恭介の肩に止まる。
上条恭介も、このリリカルマジカルな世界になれたのか、眼球を口に咥えた烏が肩に止まった所で別段に驚く事も無く、逆に烏を興味深く観察しつつ自宅へと走り始める。
巨大なブルーシーツに包まれた何かを持ったまま……
結局のこと私達の前で開かれる事無かったパンドラの包みの中身は、絶望か希望か?
まぁ、私の推測では美樹さやかに類似した等身大人形じゃないかなぁと……
あの場所で取り出さなかったのは、私達が居るからか、見た目に自身が無かったかのどちらかと思う。
「アマタ……」
「どうしたの杏子ちゃん?」
私と杏子ちゃんとキレイちゃん以外誰も居なくなり、静かな夜。というか、キレイちゃんと何を話せば良いのか正直分からないからが一番の原因だったりもする。
そんな静寂を打ち破るように、杏子ちゃんは私の名前を小さく呼ぶ。
「腹減った……」
「あははは、そう云えば私達ってファミレスに向かう途中だったね……じゃあ、3人で弁当でも買いに行こっか?」
「この時間だとお弁当半額だね♪」
運の良い事にそんなやり取りで会話が盛り上がってしまい、私達は最寄りのスーパーに襲撃し、半額弁当及び惣菜を6人で食べる分の25食程購入し教会へと沢山の荷物を抱えて向かう事にした。
何故6人かと言うと、美樹さやかの分と上条恭介の分も入ってるからである。特に美樹さやかは数日食べてないから6食はきっと食べると思うから、多めに購入。
ちょっとした優しさだね♪ 決して、リア充太ってしまえなんて思ってないよ?
3人で話しながら教会に戻ると、そこには先に到着した上条恭介とほむらちゃんと……
上条恭介と何を話してるのか、小っ恥ずかしそうな顔をした青色の少女が居た……ちっ、ちゃんと服は着ているのね……
恐らく、ほむらちゃんが美樹さやかBの衣服を剥ぎ取って着せかえたのね……
「さやかぁああ!!」
そして、そんな何時もと変わらない青色の少女を見て、杏子ちゃんは走り出し思いっきり抱きつく。
「杏子、ごめんね……アンタにも迷惑かけたね……ありがとう……」
杏子ちゃんの抱きつきに体をよろけさせるが、しっかりと足に力を入れ、体制を取り戻し、自分の胸の中で泣きじゃくる杏子ちゃんの頭を撫でながら、美樹さやかは私の方を向いて少し恥ずかしそうに礼を述べる。
「また、私の事をアンタって言うの?」
「ねぇ、もう一度名前を教えてくれる?」
自分の名前を呼ばずアンタ呼ばわりした美樹さやかに怒り半分に尋ね返すと、彼女の返答は少し変わったものだった。
以前教えた名前を忘れてしまったのか知らないが、再度私の名前を尋ねて来る。
「何さぁ? 物覚えでも悪いの? 私の名前は星屑アマタよ。もう忘れないでよ」
「分かってるわよ。知ってると思うけど、アタシの名前は美樹さやか。さやかって呼んで、アマタ」
そう言って、美樹さやかは杏子ちゃんの頭を撫でるのを止めて、私に握手を求めて手を差し出す。
「な、何さ!?」
「前に名前教えて貰った時は険悪なムードだったし、アマタには悪い事しちゃったし、それに……助けて貰ったから……あぁ、もうっ!?」
行き成り叫び頭を抱え込み始める美樹さやか。遂に若年性更年期障害にでもなったのか?
「さやかは素直じゃないなぁ。素直に友達になってくれって言えば良いのに」
そんな彼女を見て、上条恭介は笑いながら美樹さやかが挙動不審になってる理由を言う。
あぁ、そう云う事ね。
「う、うるさい……友達になってあげても良いわよ!!」
俗に言うこれがツンデレの告白だね。
「べ、別にアンタに友達になって貰っても嬉しくなんかないんだからね!!」と、私もツンデレ語で返すべきだろうか?
「じゃあ、結構」
「ちょっ!?」
「冗談よ。宜しくね、さやかちゃん」
私は彼女の差し出した手をしっかりと粉砕するつもりで握った♪
「痛い痛い痛いっ!?」
「ふっふっふ、さやかちゃんの所為でほむらちゃんに折檻されたから、その分の痛み分けと云う事で♪」
まぁ、折檻された原因の大半は私の発言に問題が有るのだが、その事は当然黙って置く。
「ちょっと、ほむら!? どういう事よ!!」
「アマタにパイルドライバー、ドラゴンスクリュー、シャイニングウィザードとかをかましただけよ」
「アンタって、そんなキャラだったっの!?」
無表情の少女が発するにはそぐわない、プロレス用語が出て来た為、ビックリ顔のさやかちゃん。
「えぇ、ファーストフード店でまどかに貴方が言ってた通り、サイコな電波さんよ? さやか……」
そして、そんなさやかちゃんに、二コリと笑い返すほむらちゃん……何か、昔の事を行き成り掘り出して来てくるなんて少し怖いよ……
「えっと……何で知ってるのかはさておき……怒ってる?」
「言ってる意味が分からないわ? さて、先ずはさやかには現状を知って貰う事にするわ」
「何か拙い事になってるのは把握できてるわよ」
「うん、9割方杏子ちゃんの所為でね♪」
「ア、アタシの所為!? い、いやまぁ、そう言われればそうなんだが……」
「杏子? どういう事?」
「いや、あのな!?」
ふむ、どう答えれば良いのか分からず答えあぐねている杏子ちゃんの為に助言をする事にしようかな♪
「杏子ちゃんが、ネクロフェリアで屍姦する為さやかちゃんの死体を一生大事に残しておこうとして、人目の付かないホテルに連れ込んだの」
「きょ、杏子ぉ!?」/「何適当な事言ってんだ!?」
私の助言に驚き、すぐさま自分に抱きついてる杏子ちゃんと距離を取る美樹さやかと、大声で叫び私に槍を向けて来る杏子ちゃん。
「でも、間違ったことは言ってないと思うよ♪ さやかちゃんの死体が腐敗しないよう鮮度を保たせる為に、人の目の付かないホテルの上層部に運んで、夜通し魔法を掛けてあげてたんだから?」
「そ、そうなの?」
「あ、あぁ……さやかが魔女から戻るって信じてたからな……」
省略した部分をちゃんと付け加えて説明すると、二人はまた恥ずかしそうな顔をする。正直、さやかちゃんと上条恭介のカップリングよりも、杏子ちゃんとさやかちゃんのカップリングの方が華も有って良いと思うんだけどなぁ?
上条恭介はキュウべえが御似合いよ♪
「でも、作戦実行日にホテルに放置し忘れ、ホテルのフットマンに発見され、さやかちゃん密室殺人事件が発生したのを言うのは野暮なのかな?」
「ど、どういう事!?」
「お、落ち着いてさやか!?」
野暮とか言いつつもついつい言ってしまうのが私と言う存在。
行き成りのカミングアウトに驚き、先程の杏子ちゃんネクロフェリア発言よりも驚きを露わにするさやかちゃん♪
にゃぁ、弄り甲斐が有って可愛いなぁ♪
「どうもこうも無いわ。うっかりやってしまっただけよ。今回はその事について話さないといけないから、さやかをこの場に連れて来たの」
「うっかりで大事件にするな!!」
「まぁまぁ、落ち着いて。良くあることだから」
「こんな事が度々有ってらたまったもんじゃないわよ!! って言うか、どちら様?」
教会に集合してキレイちゃんが漸く発言した事でその存在に初めて気付いたさやかちゃんは、一端クールダウンして尋ねる。
「私も貴方と同じ魔法少女から魔女にジョブチェンジした仲間だよ♪」
ジョブチェンジって……そんな魔女化することゲームの転生感覚で言ったらダメでしょ……
一歩間違えたら、この世から消滅するんだから……
「さやかの死体偽造を手伝ってくれた、絵意キレイよ」
「もう、突っ込み所が多すぎて驚くのにも疲れたわ……ほむら、死体偽造ってどういう事なの?」
「さっきも言ったけど、さやかの死体が発見されて、警察沙汰になり、貴方の死体が司法解剖する為に病院に運び込まれたの。正直、司法解剖後の葬式にでも復活させれば良いのではとか思ってたのだけど、偶然別件で病院に行く事になり、更にひょんな事からキレイの魔法でさやかの死体が偽造できて確保出来たから、病院のとトレードしてきて―――」
「うん、ヤッパリ突っ込んで良い? 体にメスとかを沢山入れられてる司法解剖後の死体が復活する訳無いでしょ!?」
「「だよねぇ~」」/「矢張り無理が有ったわね」/「だよな」
「あ、アンタ等ぁ……」/「み、皆さん……」
「まぁ、私の魔法で死体偽造して、作戦立てれるんだし、結果オーライって事で♪」
上条恭介の偽さやかちゃんじゃ無理有るしね♪
あっ、そうそう、上条恭介のナビにつけてた烏から情報で、ヤッパリあのブルーシートの中身は美樹さやかに似せた謎のマネキンだったよ。
正直、マネキンに青いカツラと制服着せただけじゃ無理があるでしょ? て云うか、マネキンはさて置き、どこから見滝原中学校の女子制服手に入れたの?
私と一緒で学校から盗……拝借したの? いや、上条恭介的にはブルジョワに、「ぐへへ、君の着ている制服とスカートをおくれ」って御願いでもして手に入れた方がしっくり来るわね♪
「一歩間違えれば恐ろしい事になってたのね……確かに、魔女になっちゃったアタシが一番悪いんだけど……」
「いや、一番悪いのは上条恭介でしょ?」
「ぼ、僕ですか!?」
まさかの私の矛先変更に慌てふためる上条恭介。
「でも、まぁ……そうなのかな……さやかを苦しめてたのは僕なんだし……ごめん……」
が、コイツは一体何なのか、決める所ではキッチリ決めて来る。
直ぐ様落ち着きを戻し、さやかちゃん及び私達に謝罪を入れる。
こう云うシチュエーションになると、「本当にワビ入れるつもり有るなら、土下座しろ」って言ってみたいけど、流石に今やるのは無粋と判断したので「気にしないで」とニコヤカに笑って返す。
うん、本当私ってこっちに来てから成長したよねぇ♪
「恭介……」
「好い加減話を進めたいのだけど、良いかしら……」
空気も読まずイチャイチャし始めた二名に殺意を覚えてスプーンを取りだしそうになっている私の気持ちを察してか、ほむらちゃんが溜息をつきながら二人に話を進めたい事を伝える。
「あっ、ごめんごめん。それで、アタシは何をすれば良いの?」
「もう一度、さやかを病院に戻すから、さやかは丁度良い頃合いを見計らって眼を覚まして頂戴。死後1日以内に息を吹き返す事なら稀に有る事よ。それで、恐らく警察の事情聴取が有るから、『下校中に誰かにつけられてる気がして、それで急に意識がなくなって……眼が覚めたここに居て』とか言って適当に架空の犯罪者を作って誤魔化して頂戴」
「何なら実際に私が明日にでも何人か女の子を攫って、ホテルに連れ込んで連続誘拐魔になろっか? 勿論、女の子は味見……きちんと、綺麗なまま御家に返してあげるつもりだよ♪」
「アマタ、味見って何をする気なの……」
「さやか、アマタの趣味だから気にするな」
「アマタって……まさか……レズ?」
「うん、そうだね♪ 百合って言った方が良いのかな? 初恋の人はマミさんなの♪」
私の満面の笑みに一歩後ずさるさやかちゃんと上条恭介。
矢張り、この性癖はまだ日本では拙い物があるみたいね……ヨーロッパみたいに日本も認めてくれないかしら?
「そう云えば、前にマミさんがどうとか言ってたわね。アマタとマミさんってどういう関係なの?」
あぁ、そう云えばさやかちゃんにそんな事言ったっけ? 杏子ちゃんの教会で会った時に。
正直、あの時は敵として見てたから、結構端折った挙句キツク言ったような?
「う~ん、ちょっと長くなるけどこの際だから話しちゃおっか。それはね、私が魔法少女になって日も浅い時の話なの♪」
そう、あれはキュウべぇと契約してまだ日が浅い頃の話……