魔法少女あまた☆マギカ   作:星屑アマタ

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三十話眼 最低最悪の再開

 見滝原市と別の市を結ぶ鉄橋と海が見える、電波塔やオフィスビル、工業地帯等が多い住宅街から少し離れた場所。

 そこは、霧が立ち込めており桃色の象や、見た事も無い獣たちがパレードをなしていた。

 

 

「ワルプルギスは私に任せて、皆は使い魔等の相手を御願い」

 

 黒色の少女の御願い。

 

「分かってるわよ。でも、使い魔を全部片付けたら救援に向かうからね」

 

 青色の少女の返答。

 

「わっはっはっは、取り敢えず大暴れだね♪ グリーフシードのストックも少しだけどあるから、魔法は出し惜しみせずに行くからね♪」

 

 白色の少女の暴走。つうか、私のこと♪

 今の私のグリーフシードのストックは2個。1個は猟犬の魔女の物で既にソウルジェムの回復に使っている御手つき済みだから、正確には1.5個分くらい。ちなみに、もう1個のは委員長の魔女のグリーフシードね♪

 

「ヴイブイやるよぉ~!!」

 

 虹色の少女の意気込み。

 

「ヘマすんじゃねぇぞ」

 

 赤色の少女の気遣い。

 

 

暴風が奏でる祭囃子

 

 

建物の崩壊音は太鼓の乱打

 

 

少女達の絶望の祝詞

 

 

さぁ、祭を始めよう

 

 

絶望の祭を

 

 

 カーテンコールと私達の眼前に現れたのは、巨大な巨大な歯車の魔女と……

 弾が既に発射され中身が無くなった巨大なランチャー、そのランチャーから発射されたと思われる魔女を標的に定めている無数のロケットミサイルだった……

 

「んなっ!?」/「「「ちょっ!?」」」

 

 恐らくというか、十中八九ほむらちゃんが時間を止めてぶっ放した物だが、本当に魔法少女とは何なのかと聞きたい。

 取り敢えず、私達の傍から既に姿を消して戦闘に入っているほむらちゃんがどれだけハッスルしてるのかを確認すべく、見滝原市一帯に魂之眼球をばら撒いて確認にあたる。

 

 そして、私は恐ろしい物を眼にした……

 

 見滝原市の色んな所にこれでもかってくらいにリモコン爆弾が設置されてて、ほむらちゃんの指一つで全て吹き飛ばせると云う事に……

 電波塔、マンション、鉄橋、道端に置かれてる車と様々な物に怪しげな箱が付けられてて、赤色のランプが点滅し「オレに触れると危ないぜ」と自己主張をしてくれている。

 

 案の定、ワルプルギスの夜が出現した付近の電波塔等の高層建築物に設置されたその恐ろしい物が次々と爆破され始め、、ワルプルギスの夜に向かって電波塔を倒壊させ圧殺をしようとする。

 私の様に遠視が出来ず何が起きてるのかすら理解出来てない他の三人を余所に、なりふり構わないほむらちゃんの行動は更に進化をし始める。魂之眼球の視界にほむらちゃんを捉えた為、私の脳内のスクリーンの一つに、化石燃料を積み込んでると思われるタンクローリーの上に乗ってそれを走行させているほむらちゃんの姿が映し出される。

 そして、海を挟んで見滝原市と隣の市を結ぶ鉄橋のアーチ部分に車を乗り上げさせ、さらに速度を加速させそのまま一気に上りきり、タンクローリーをワルプルギスの夜へと激突させ、着火。ほむらちゃん自身は、激突寸前でタンクローリーより飛び降り、下の海へとその身を投げ出す。

 巨大な爆音と爆煙に包まれたワルプルギスの夜を振り向く事も無く、ほむらちゃんは次の魔法を行使。

 水面に着水する寸前でほむらちゃんを持ち上げるように戦艦が浮上してき、戦艦に積み込まれている近代兵器が次々と発射されワルプルギスの夜を押し飛ばし、遥か遠くの工業地帯へと落下させ……

 

 未曾有のカタストロフィーが発生した……

 

 爆発と云う甘いレベルでは無い……火災旋風も可愛く見えてしまう恐ろしい龍が……

 何百メートルあるかも測定出来ないほどの巨大な炎の龍が天へと昇ったのだ……

 今更ながらだが、本当に自分はここに居て良いのだろうかと云う場違いさに苦笑いしてしまった……他の皆も『主人がオオアリクイに殺されて1年が過ぎました。』と云うスパムメールを見たかのような唖然とした顔になっている。

 

「ねぇ……私達って本当にここに居て良いのかな? 絶対にあの戦いに参加できる気がしないんだけど……」

 

「まぁ、だから使い魔担当なんだろ。ほむら曰く、使い魔ですら魔女レベルらしいからな。気ぃ抜くなよ」

 

 手にタイ焼きの入った紙袋、そして口にはタイ焼きを加えてる人間の台詞じゃないと思うよ、杏子ちゃん。

 

「怪我したら言いなさいよ。アタシが回復してあげるから」

 

 つまり、舐めて唾液で消毒ゲフンゲフン♪

 最終決戦くらいは下ネタ禁止で行かないとね。まぁ、治癒程度ならさやかちゃん程では無いが、癒しの力を同様に持ってる私でも出来るけどね♪

 

「しかし、魔法少女復活の初戦闘がこんな大物相手とは……」

 

 少しビビり気味のキレイちゃん。確かに、規格外の超弩級の魔女だからその気持ちは良く分かるよ。

 だからこそ、御姉さんである私が守ってあげないとね♪

 

「大丈夫大丈夫。私や杏子ちゃんが守ってあげるから♪」

 

「ほぉ~、アマタは偉い余裕だな。じゃあ、アタシが居なくても大丈夫だよな」

 

「えぇ~!! 私達パートナーじゃん!!」

 

 私がキレイちゃんに対して御姉さん風を吹かせていると、杏子ちゃんが揄って来る。

 恐らく血戦前で上がり気味のキレイちゃんを落ち着かせる為の台詞だと思う。

 なので、私も少しオーバーリアクション気味に返し杏子ちゃんに抱きつく。

 

「冗談だよ。頼りにしてるぜ、アマタ」

 

「任して頂戴♪」

 

『楽しく雑談してる所悪いけど、使い魔が召喚されたわ。皆、御願いね。でも、決して無理はしないで……』

 

 色々と騒いでて気付かなかったけど、ほむらちゃんの念話を受けて灰色の空を見上げる。

 そこには、あれ程の爆撃を受けて猶、空には無傷でたゆたう歯車の女王の姿。

 超弩級の名は伊達じゃないね……て云うか、アレで無傷って本当にワルプルギスの夜を倒せるの?

 まぁ、ワルプルギス本体はほむらちゃんに任せるとして、私達は私達の役割を果たすだけだね♪

 

 ほむらちゃんの報告と共に、見滝原市上空に人型をした黒い女性の影の様な何かが出現。

 それらは、狙いをほむらちゃんにではなく私達へと向けて一斉に武器を構えて、私達目掛けて落下を開始。

 

「おいっ、来るぞ!! アマタ、使い魔の情報頼む」

 

「敵影確認全部で8体。人型なのはほむらちゃんのデータ通り。ただ、姿形と武器に若干の誤差有り。槍はツインとロングの髪型、剣はツインで小柄とポニテとボブカットの髪型、斧はショートにヘッドドレスっぽい物付けてる奴、弓はデブのフリフリな服を着た痛いの、銃は……えっ……」

 

 全ての使い魔達の容姿を述べていると、有り得ない物が……いや、有ってはいけない物を私の魂之眼球が捉える。

 その存在自体が私の心を強く揺さぶり、戦う前から心臓の鼓動が速くなり胸が苦しくなる……

 

「どうしたのアマタ?」

 

「なんで、なんで居るの……」

 

 落下して来る使い魔達の最後の1体の姿は、私の大好きな大好きな人の姿にそっくりであった……

 

『私はまた一人ぼっち……ねぇ、アマタちゃんも美樹さんも、こっちにおいでよ? 私達と一つになりましょ』

 

 本来ならもう会う事すら出来ない大好きな人そっくりな黒い影。

 真っ黒な影。赤い三日月の口。黒主体の何かは、地面に着地すると同時に私にとって懐かしい声で私とさやかちゃんに話しかけて来る。

 涙が出るほど懐かしい声、愛おしくて止まなくて、一生涯ずっと傍で聞いていたかった声で……

 

「どうして……どうして、マミさんが居るのよ!!」

 

 現実を理解出来ないのはさやかちゃんも同様で、さやかちゃんも目の前の現実が理解出来ず叫ぶ。

 マミさんを知ってる人間なら誰だってこんな事は理解できない。あんなに優しいマミさんが死ぬ事を誘惑し、銃口を私達に向けて来るなんて事は……

 

「分かんない……でも、マミさんは死んだんだよね?」

 

「私とまどかの前で確かに魔女に殺されたわ」

 

「つまり、こうして私達の前に居るって事は、ワルプルギスの魔女が作った偽物か幻影? それか、有っては欲しくないけどマミさんの怨念のどっちかだね……」

 

 そう、私達の前に立ち塞がったのはマミさんの輪郭と声を持つ黒い何か。

 

「どっちにしろ、戦わないといけないって事ね」

 

 さやかちゃんは手にサーベルを召喚し、強くその柄を握り構える。

 杏子ちゃんもキレイちゃんも手には各々の武器を召喚し、私達を取り囲む黒い何かの次の行動に対して身構える。

 

「そうね……ねぇ、皆。このマミさんは私に任せてくれない? 本物か偽物か知らないけど、今度は私がマミさんを助けてあげる番だから」

 

 私が過去に命を救われてる事を知ってるさやかちゃんは、にっこりと笑って私の背中を軽く叩く。

 

「じゃあ、マミさんは任せるわよアマタ」

 

「ヘマすんじゃねぇぞ、アマタ。さやか、キレイ、アタシ達で他の奴等を抑えるぞ」

 

「仕方ないわね。アマタには借りも有るし、これでチャラにして貰うわよ」/「一人2体と3分の1体かぁ~。って、魔女は流石にクッキーやチョコみたいに割る事は出来ないねぇ~♪」

 

 そう言って、皆は一斉にマミさんの姿をした何か以外の黒い影に向かって攻撃を開始。

 黒い影達も各々の武器を振り回し、魔法少女と魔女の使い魔達との大立ち回りが始まる。

 

 唯一その中で動いてないのは、私とマミさんの姿をした何か。

 

「皆、ありがとう」

 

 この騒音では皆には聞こえないと思うが、小さく御礼を言って、私はスカートを摘まみ地面にマスケット銃を召喚し、魂之眼球をこの場に集めて戦闘態勢に入る。

 

「さぁ、マミさん。御待たせしました♪」

 

『良いのよ。ねぇ、アマタちゃんもおいでよ……喫茶店でも言ってくれたじゃない。私と一緒に居たいのでしょ? 妹として甘えたいのでしょ? 良いわよ。ワルプルギスの夜の中でずっと一緒に居て、可愛がってあげるから』

 

「いやぁ~、それは魅力的な御誘いだけど……貴方が本当のマミさんか分からないからね♪ 御断りします♪」

 

 口では強気だが、マミさんらしき物の口振りから私とマミさんの関係や出来事をしっかり把握している黒い影が、本物のマミさんの様に感じれて内心では対峙するだけでも弱気になりつつある。

 あと、ワルプルギスの夜の中ってどう云う意味だろう? あの中に、使い魔を格納する部屋でもあるのかな? でも、さっきはさっきで、私達と一緒になろうと言ってたし……

 まぁ、取り敢えずペラペラと情報を喋ってくれるみたいだし、色々と聞きだしつつ立ち回る事にしよっか。それで、色々と分かったらほむらちゃんに情報を念話で提供。こうすれば、もしも今回駄目でも次の時にほむらちゃんが作戦が立てれる。

 

『私はアマタちゃんが知ってる巴マミよ。ただ、生きてはいないけどね』

 

「あははは、その割には足が生えてますよ。昔、御母さんに聞いたけど幽霊は足が生えてないんだよ」

 

『本当にアマタちゃんは面白い子ね』

 

「マミさん以外にも良く言われるよ♪」

 

 ちょっとした会話。目の前のマミさんが黒色ではなく、暖色である黄色一杯の暖かい彼女だったらどれだけ良かっただろうか。

 本当はマミさんは生きていて、紅茶とケーキを一緒に食べながら会話が出来たらどれだけ良かっただろうか?

 例え目の前のマミさんが本物の亡霊だとしても、こうして戦場で対峙する訳では無かったらどれだけ良かったであろうか?

 

『ふふふ、言う事を聞かない悪い後輩には御痛が必要よね』

 

「痛いのは私は嫌いかな♪」

 

 ニッコリとマミさんに私は笑い掛け、私達は鉄槌を降ろした。

 

 互いのマスケット銃より発射される音速の弾丸。私の魂之眼球でマミさんの銃口の角度などは把握済みで、私はその直線状に並ばなければ良いだけである。

 即座に動きマミさんの攻撃を躱して、次のマスケット銃を引き抜きトリガーを引く。

 対するマミさんは驚異的な反射能力で、私が銃弾を発射してから自身に到達する寸前で動き攻撃を躱している。

 それがワルプルギスの夜の使い魔としての能力か、マミさん自身としての能力かは知らないが、私とは比べ物にならならいと云う事だけは理解した。

 

 マスケット銃を投げ捨てて新しい物を引き抜き、トリガーを引くと云うだけの戦いだが、今迄の使い魔とは違い相手も同じ武器を使って来る。

 銃弾の速度と、魔女が飛びかかって来る速度には歴然とした差が存在しているのに、その威力は同等。

 今更ながら、ほむらちゃんが時間を止めれるにも関わらず近接武器などではなく、近代兵器を愛用していたのかが良く分かる。

 

「使い魔召喚!!」

 

 数発しか撃ち合っていないがジリ貧と感じた為、使い魔を召喚し錯乱及び援護をして貰う事にする。

 グリーフシードのストックは有るし、出し惜しみしていると間違いなくハチの巣と云う末路が待っているであろう。

 召喚した眼球を咥えた烏の数は12羽。それらは一斉に眼球を捨てて、鋭い嘴と爪でマミさんに襲いかかろうとするが……

 

『一斉射撃(ウナサルバ)!!』

 

 マミさんの号令と共に灰色の空間を侵食し現れる無数のマスケット銃。

 それらは一斉に銃口を烏に向けて火打石を強く叩く。マミさんの十八番のマスケット銃による一斉砲撃魔法。

 

 ティロフィナーレが最後の一撃を決める大破壊力の決め技であるならば、ウナサルバは一斉射撃による広範囲駆除の雑魚一掃の露払いをする魔法。

 以前の喫茶店での話でマミさんから教えて貰った魔法。私も使おうと努力したが、話しか聞いておらず実物を見てないので技をイメージする事が出来ず、使う事を諦めた魔法の一つである。

 ティロフィナーレの方は目で実際に見ているので完全にコピーし自分の物にする事は出来ている。

 だが、今こうして実物を見た為、技のイメージは完全な物となる。

 

「一斉射撃(ウナサルバ)!!」

 

 私も後ろにマミさんと同様に無数のマスケット銃を召喚し、その銃口を一斉にマミさんの背後のマスケット銃へと向けて火打石を叩く。

 一斉に何百ものの火薬が爆発する音が風切り音にも負けず劣らずの大きさで轟き、吹き荒れる暴風にも負けず弾丸が直線軌道を描いてマミさんの発射した弾丸と正面衝突をする。

 そしてマミさんの弾丸の対象となっていた烏は一気に上空へと舞い上がり敵味方問わずの弾丸の嵐から離脱する。

 

『初めて会った時と見比べるくらいに成長したわねアマタちゃん。一瞬で私の魔法を模倣するなんて』

 

「ずっとマミさんの背中を追い掛けてたからね。でも、今日私はマミさんを追い抜きます」

 

 また新たにマスケット銃を召喚し、再度急降下しマミさんを急襲せんとする烏との同時攻撃のタイミングを合わせる為に構える。

 

『でもね、アマタちゃん。幾ら武器が真似出来ても、アマタちゃんには真似が出来ない魔法も私には有るのよ』

 

 マミさんの影の口が大きな三日月そっくりに開く。

 刹那背中に悪寒が走り、咄嗟に地面のアスファルトを強く蹴りその場から飛び退く。

 先程まで私が居た地面から勢い良く漆黒のリボンが触手の様に溢れ出て、ウネウネとした気持ち悪い動きをして、獲物を逃した事を判断するとまた地面へと姿を消す。

 恐らく、捕縛系の魔法。でも、どう言う事?

 マミさんの御願いは『瀕死の怪我を治してくれ』だった筈……それがどうして捕縛系の魔法に繋がるの?

 

「あれ、マミさん。こんな魔法持ってたっけ? 捕縛魔法なんてマミさんらしくない魔法だね?」

 

『アマタちゃんは少し勘違いしてるわね。私とキュウべぇの契約はただ単に瀕死の傷を治しただけじゃないのよ。『命を繋ぐ』と云う契約』

 

 生への執着。現世へ自分の命を縛り付ける為の契約。その願いの結果、マミさんに発言した魔法が捕縛の魔法。

 私の全てを見渡す魂之眼球、ほむらちゃんの時間停止能力、杏子ちゃんの幻惑のトイズ、キレイちゃんの実体化能力と同じその魔法少女独自の能力。

 ただ、さやかちゃんはまだ不明だけどね……でも、さやかちゃんの場合は他人の為の完全な癒しの願いの契約だから、素直に強力な治癒能力って考えで良いのかな?

 杏子ちゃんと戦闘した時も、私なら簡単にノックアウトになってたかもしれない攻撃に何度も立ち上がってたし……

 

「つまり、マミさんは死んだ事に未練タラタラって事で良いのかな? なら、私が成仏させてあげますよ」

 

『誰だって死にたくは無いと思うわ。私だって皆と笑って過ごしていたかったもの』

 

「それは私もです。マミさんとずっと一緒にあの喫茶店で御話をして居たかったです。キュウべぇからあの日マミさんの死を聞かされるまで、ずっと何時会えるかと楽しみに待ってました。孤独に耐え忍んで」

 

 マスケット銃では拉致が明かない為、マスケット銃の代わりに拳銃を召喚。一気にマミさんの元に駆け寄り、同時に上空の烏を急降下させて時間差攻撃を図る。

 マミさんは、マスケット銃を新たに足元に召喚し、素早く引き抜いて右手の銃口は私に、左手の銃口は烏の中の最も自分に近い物へと定める。

 烏の1羽くらいくれてあげよう。11羽も居れば十分に時間差攻撃や錯乱は成り立つ。だから、先ずは自分の身を守らないと。

 

『そうね。一人は寂しいわよね。私だって、孤独に魔女と闘って来たわ……だから、その気持ちは分かるわ……同時に、一緒に居てくれる人が出来たと云う気持ちもね』

 

 2つのマスケット銃のトリガーが同時に引かれる。私は咄嗟に身を右に翻し回避。だが、烏は顔面を打ち抜かれ粉砕される。

 烏の断末魔は僅か一瞬の高い悲鳴。私は心の中で見殺しにした事を謝り、そのままマミさんに突き進む。

 完全に接近し、拳の届く距離まで近づくと同時に、マミさんの手を狙って素早く拳銃を握って無い手で払いを入れ、新しく地面から抜いた武器を握ってる手から武器を落とそうと画策。

 マミさんも私の策は読めているのであろう、もう片手に握っている発射して弾丸の入って無いマスケット銃を銃口が手元に来るようにペン回しの要領で握り変え、私の払いに一閃し返す。

 当然弾丸が入っていないと云えど、マスケット銃は鈍器としての威力も折り紙つき。その素早い返しに、私は痛覚をシャットダウンすると云う方法しか思い浮かばず、甘んじて受ける。

 骨が折れる嫌な音。勿論、こちらだけ貰ってばかりではない。3羽の烏達が私の後ろより弾丸の如く真一文に飛来しマミさんの右手、左太股、右肩にその嘴を突き立てて肉……正確には影を抉り深手を負わせる。

 

『ぐぅ……』

 

 マミさんの口から洩れるのは苦しみ。

 攻撃は効いてるみたい。このまま一気に負かり通す!!

 

「ティロフィナーレ!!」

 

 骨が折れた手を再生させてそこに新しく召喚した大きめのマスケット銃を同化させる。そして、その大きな銃口をマミさんへ向けて素早く発射。

 この近距離の大砲撃、しかも相手は怯んでいる状態。外す事は絶対に無いと思っていたが、第三者である他の使い魔こと魔法少女の怨念が私とマミさんの間に無理矢理割り込み、盾を召喚して砲撃よりマミさんを守る。

 

『ごめん、アマタ!! 一体、取り逃がした!!』

 

 攻撃を盾で防いだ騎士が私の砲撃が済むや否や、剣を横薙ぎし、私の腕と同化したマスケット銃を破砕。

 幸い破壊されたと言っても先端部分だけなので、同化している腕には影響は無い。

 追撃が怖いので、数歩バックステップし、大体の適当な狙いで拳銃を数発撃って威嚇する。

 

『大丈夫、気にしないでさやかちゃん。マミさんの怨念との戦闘にも慣れて来たし、二人相手してももう大丈夫だよ』

 

 盾を持つ使い魔を押さえていたさやかちゃんが、取り逃がした事について念話を入れる。

 勿論、私がマミさんと一対一を所望した所為で、他の皆は複数体の使い魔と戦闘する羽目になっているので責める気は毛頭無い。

 

『マミさんの怨念って、もしかして本物なの!?』

 

『多分、本物のマミさんだと思う。私とマミさんだけしか知らない事も知ってるし。だからこそ、私達が倒して解放してあげないといけないの。ワルプルギスの夜も含めて』

 

 紫の光に包まれて、何度もワルプルギスの夜に向かって跳び、ロケットランチャーや手榴弾等で攻撃を仕掛けるほむらちゃんと、それを嘲笑うようにぬらりくらり回避するワルプルギスの夜を見る。

 どう見ても、ほむらちゃんは優勢とは言えない。だからこそ、私達は早く目の前の使い魔こと怨念達を楽にしてやる必要がある。

 

 だけど、私にはその力が無く、先の道が見えない。

 だからこそ、私を暗闇の道を引っ張って導いてくれる存在が欲しい。

 キュウべぇが委員長の魔女の時に言ってた新しい使い魔の創造と召喚。

 魔法少女の思い出等の結晶体。私の場合は眼球に関係する何かだと云うのは確かである。

 なんで烏かは分からないけど、口に咥えてる眼球はキュウべぇがあの時指摘した通り、私の思いに関係するのと紛れもない事実である。

 

『じゃあ、こいつらも元はアタシ等と同じ魔法少女っていうのかよ!!』

 

 槍を振い、弓と槍と斧を持つ3体の使い魔相手に孤軍奮闘し、既にその中の斧の使い魔の喉元に槍を突き刺し絶命をさせた杏子ちゃんが驚きを露わにする。

 この念話は、ほむらちゃん以外の魔法少女達全員が共有している。理由としては、一瞬でも気を抜いたらアウトな本体と戦っているほむらちゃんの気を紛らわせない為。

 もしも、ほむらちゃんに伝えたい事が有る時は、また別の念話チャンネルを使う事になっている。

 

『飽く迄憶測だよ。だけど、魔法少女の怨念を使い魔にするワルプルギスの夜の正体って一体何なんだろう……マミさんも一つになろうとか訳の分からない事を言うし……』

 

『あははは~、どっちにしろ、強敵なのは確かなんだよねぇ~』

 

 筆を振い、剣と槍を持つ2体の使い魔相手に接戦を繰り広げているキレイちゃんは緊張感の無い声で念話を返す。

 そう云えば、気になるキレイちゃんの戦闘方法は、スケッチブックに既に描いた物や新しく空に魔法で描いたブロックや武器を実体化させ投擲すると云う物である。

 

『まぁ、それでもほむらの為にも私達が頑張らないとね』

 

 剣を振い、剣を持つ使い魔1体を圧倒的な力で押し切っているさやかちゃん。

 私の方に1体向かった為防戦一方だったさやかちゃんも、一気に攻戦に転換。

 一気に使い魔を撃退せんと、空に浮遊する使い魔に対して次々と剣を地面に召喚し、投擲投擲投擲!!

 

『そんなの分かってるけど……死んでもこうして戦う運命なんて悲しすぎるだろ!!』

 

 杏子ちゃんのもっともな台詞。それに私達は黙るしかなかった。

 例のアイツが会話に乱入して来るまでは……

 

『話とかは大体聞かせて貰ったよ』

 

 全ての根源であるキュウべぇ、いや孵卵器(インキュベーター)が……

 

『何のつもりかな? キュウべぇ……私にプチ殺される前に言いなさい。ちなみに、プチはプチトマトとかのプチじゃなくてプチっと潰すのプチよ』

 

『ワルプルギスの夜の正体が僕には分かった気がするよ。まぁ、それが分かったとしても君達がワルプルギスの夜に対して有利になるとは思えないから教えてあげる事にするね』

 

『それってどういう事だよ?』

 

『そのままさ。僕は鹿目まどかが僕と契約する事を望んでいる。特にこのワルプルギスの夜の襲来は将に絶好の機会。だけど、君達が優勢に事を運ぶと契約は成立するとは思えないからね。でも、ワルプルギスの夜の正体でどうこう変わると思えないと判断したから教えてあげるだけだよ』

 

 キュウべぇの言葉を要約すると、ワルプルギスの夜の正体は攻略に対して左程大きな事では無いらしい。

 だから、教えても問題無いと判断したからの行動だ。

 こいつにとって、私達の生死や見滝原市には一片の価値も無い。まどかちゃんの契約こそに価値が有るのだ。

 私達とは比べ物にならないエネルギーを生み出す事を可能とするまどかちゃんとの契約に成功するので有ったら、私達の損失等微々たる物。

 

『御託は良いから教えなさい。目の前のマミさんが何者か気になってやれないから』

 

『うん。この黒い影はさっきからアマタが言ってたように、死んだ魔法少女達で間違いないよ。僕達が回収し損ねたエネルギーが、転生する為にガフの部屋へと導かれた死者の魂に再び力を与えて暴走させているんだと思う』

 

『リョフかガフか知らないけど、もう少し私達が分かるように噛み砕いて言ってくれないかな? 一片たりとも理解できないわ』

 

『僕達は魔法少女が魔女化する際の希望が絶望に反転するエネルギーを回収している。でも、魔法少女が死ぬ時に絶望し発生させるエネルギーはどうなってるのかって話だよ? 回収し損ねたエネルギーが行き場を無くして暴走し、死んだ魔法少女達に再び力を与えているんだ』

 

 結局、犯人はアンタかよ!!

 

『それで、ワルプルギスの夜の正体は何なの? マミさんと剣士が物凄い勢いで襲って来てるからさっさと言いなさい!!』

 

 私達の念話なんて当然怨念達には関係ないので、こちらの都合知らず剣やマスケット銃をぶっ放し休まず襲いかかって来る。

 他の皆の方も同じようで、攻撃を捌きつつキュウべぇの言葉に耳を傾ける。

 

『ワルプルギスの夜の正体は、その暴走した魔法少女達の怨念の集合体だよ。感情を持たない僕達には理解できる範疇の外の存在だよ』

 

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