息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。
※P4だけだと思った?なんとここからP3成分入り込みます。
話の都合上かなーりご都合主義満載でありますが、あそこのシーンはね…
※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。
ちょっと短いんだけど、ここでしか切れなかったんで仕方ないね。
011.赤いサロン1
10月4日日曜日
「母さんはここで、お前のペルソナで死んだんだ!」
天田乾が槍を構える。彼の目の前には、荒垣真次郎が緑色の光を放つ満月を背にただ佇んでいた。
「ああ、そうだな。」
荒垣は、ただ一言肯定だけすると、目を閉じる。
「俺を殺して気が済むなら、それでも構わない。」
天田は、下を向き、涙を流す。
「どうして、どうして抵抗しないんですか?」
「俺の意志では無かったとしても、起こったことはもう変えられねえ。お前には、俺を殺す権利がある。俺は、そう思っている。」
荒垣は言いつつ、奥のフェンスの扉を開け入ってくる人物を睨んだ。
「だって、だからって……。」
「じゃあ、2人とも死んでもらえますかね?」
天田はハッとして振り返る。
そこには、ストレガの首魁であるタカヤが、銃を2人に向けて構えて立っていた。
「あなた方には正直困っているんですよ、我々の計画を邪魔されてばかりですからね?」
「はい、そこまでー。っつか、10月なのに上半身裸とか超キモイんだけどぉ?」
緊迫した場面だったはずなのに、妙に間延びした女性の声が会話に割り込んだ。
◇◇◇
7月19日土曜日
そのダンスホールは赤いベルベットと金の細工で豪奢に飾られ、輝くクリスタルのシャンデリアで明るく照らされていた。
ダンスホールでは、老若男女問わず男女が音楽に合わせて社交ダンスを優雅に踊っている。
踊る顔をよく見れば、経済や政治の中枢を担う人々や、テレビや映画でよく見かける顔もちらほらある。
ホール奥に設えられたソファには赤いドレスを纏った美女が一人。
彼らが踊る様を、美しい彫刻が施されたキセルの煙をくゆらせながら優雅に眺めていた。
「あの、貴崎様、」
青いサテンにレースをあしらったロングワンピースを着た女性が、精一杯笑いかけながら美女に近づき声をかける。
「木村様、何でございましょう?」
貴崎、と呼ばれた美女はニィ、と笑い返した。
「今度うちの子もここに連れてきたいので、招待状をいただけませんか?」
貴崎は木村と呼ばれた女性を見下ろし、少し考えてからその顔に笑みを浮かべる。
「いいわ。招待状に書くお名前を、教えて頂戴?」
「木村佳美、です。」
「きむらよしみ、……分かりました。木村様もおなじみですから、すぐに用意させるわね。帰りに声を掛けてね?」
「ありがとうございます、貴崎様。」
木村は心底嬉しそうに笑顔を見せた。
「木村様の娘さんに会えるのを、楽しみにしていますわ。」
美女は、女性を見下ろしながら、笑みを湛えていた。
◇◇◇
9月10日水曜日
初めに気づいたのは、その鮮烈なまでの赤、だった。
日本橋にある某百貨店五階で検品作業をしていた花村陽介は、視線を赤い何かへと向ける。
その女性は、赤の膝丈のワンピースに金色の細ベルトを腰で締め、白いパンプスを履いていた。
白いサマーニットを肩から掛け、長いウェーブした黒髪は美しい光沢を放っている。
ここの客層は確かに上流の方々も来られるが、彼女はもう一段階上の階級、といった風格を纏っていた。
「ふーん、……仕事しよ。」
花村は自分に充てられた仕事へと戻る。
チェック作業に没頭していたため、その女性が眉を顰め花村に視線を向けたことに気づかなかった。
「いやあ、終わった終わった。後は三ツ矢さんにリストを確認してもらえば、って、えぇ……?」
あれから一時間ほど時間が経っているはずなのに、赤いワンピースの女はまだ売り場にいた。
三ツ矢と、あれこれ話をしている。三ツ矢が困ったような顔をしているのが見え、花村は少し肩をすくめると二人の元へと行った。
「あの、お客様。」
その言葉に、女は振り返った。
「はい、何でございましょう?」
女性の声が、まるで鈴が転がる音のように気持ちよく響く。
「何かお探しですか?」
笑顔とともに花村が問えば、女性は少しの間考え、口を開いた。
「私は、あるクラブを経営しています。今度新しいメニューを出そうと思っておりまして、それに見合う食器を探しに参りました。」
(ああ、その質問は三ツ矢さんが一番苦手にしている奴だ。)
花村は笑みを浮かべながら思った。
「食器、ですか。それなら確かにこのフロアで間違いないですね。」
花村は、三ツ矢に持っていたリストを渡しながら知識をフル動員する。「どのようなメニューをお考えですか?」
「店で、パスタを出そうと考えておりますの。今のところ、イメージはペスカトーレが一番近い、と思います。」
「ペスカトーレ、というとトマトソース魚介系、ですね。因みに、パスタは大皿で提供しますか?それとも、一人前ですか?」
「一人前を多人数で分けることになるかと思います。」
女性の答えに、花村はある食器を思い出した。
「もし、食器に和洋のこだわりがないのであれば、和食器でおすすめできる物がございます。すぐお持ちしますので、しばらくお待ち下さい。」
花村は和食器のエリアに行くと、1枚の皿を持って戻ってくる。
「黒、の和皿ですか?」
女性が、花村が持ってきた皿を眺めた。
品の良い光沢を放った、黒とこげ茶色のコントラストが美しい七寸皿である。
「黒と焦げ茶は、赤を際立たせてくれます。今回のメニューが赤系の食材なのであれば、食材の背景として黒皿はかなりお勧めです。また、この皿は縁があるので、多少ソースが緩くても溢れることはありませんよ。」
女性は和皿と花村を交互に見て、一つ頷いた。
「分かりました。とりあえずお勧めいただいたこの皿で試してみます。」
女性の答えに、花村はホッとした顔で三ツ矢へ視線をやる。三ツ矢もまたホッとした様子でリストに確認サインをすると、花村へ返した。
「今日、お持ち帰りになりますか?」
三ツ矢が女性に声をかける。花村は女性に一つ会釈をし、その場を後にした。
「あ、花村君。注文していた品が届いているのでペンカウンターまで来てもらえませんか?」
文房具売り場から中田が早足で来て、花村に声をかける。
「ありがとうございます!検品リストを提出したらすぐ行きますね。」
花村はバックヤードの所定のファイルにリストを挟み込むと、文房具売り場の高級ペンカウンターに向かった。先にカウンターの中に居た中田は、ウィンドウの奥から青い箱を出し、花村の前に出す。
「ご注文の、ダライッティローラーペン、カラーは青。今花村君が使っているペンの色違い、でよかったわね?」
「はい、……綺麗な青ですね?」
花村が笑顔で中田に聞けば、中田はにっこり微笑んだ。
「ええ、この色合いなら、贈られるほうもきっと喜ぶわ。ラッピングは青の包装紙でいいかしら?」
「はい。で、おいくらですか?」
花村の問いに、中田は器用に箱を包装紙で包みながら答える。
「消費税込み五千円で。」
「えっ、ネットで値段見た時は六千円を下回る値段をつけていたショップはなかったのに?」
「社員販売値引きと、花村君への誕生日プレゼントを忘れてたから、その分。」
中田は包装紙で包んだ箱にリボンまで綺麗にかけると、にっこり微笑んだ。
手品のようなその手際の良さと美しさに、花村は声も出ずただ頷く。
「新人の頃から数年の間、夏と冬の贈答シーズンのときに死ぬほどやらされてね。冬は特にクリスマスも重なるからリボン掛けまでやらないといけなくて。気づいたら、体にこの動きが染み付いてたわ。」
「凄いです、俺なんかこんなこと出来ませんよ。」
財布から五千円札を1枚出しながら、綺麗にラッピングされリボンで飾られた箱を見た。
「ありがとう。その贈り物、喜んでもらえるといいわね?」
中田は札を受け取ると、ラッピングした箱を花村に手渡す。
「はい、なんだか、何から何までありがとうございました。」
「このくらいお安いご用、よ。また何かあったら言ってね?」
「あの、今対応していただいた彼の名は?」
赤いワンピースの女性が、三ツ矢にクレジットカードを提示しながら尋ねる。
「え、彼は、……花村君、ですけども。」
三ツ矢は、クレジットカードの与信情報を確認しながら答えた。
『彼の、フルネームを知りたいのだけど?』
囁くように女性が問えば、三ツ矢は目を瞬かせる。
「……花村、陽介。」
「はなむら、ようすけ。初対面で私の『魅了』が効かないなんて。…面白そうな子ね。」
女性は、動きを止めた三ツ矢へ再度囁く。
『今、私が花村くんの名前を聞いたことは忘れてね?』
三ツ矢は、目を急に覚ましたように目を開き、キャッシャーの画面へと視線をやった。
「あ、申し訳ありません。お待たせしました。」
三ツ矢は女性にクレジットカードを返却する。
クレジットカードには、『HIIRO KISAKI』と記名されていた。
◇◇◇
巌戸台にある、ホテルオークラ神戸。
格式のあるホテルであるが、食事のレベルに定評があり旅行者のみならず地元住人も多く訪れている。
一階ラウンジのソファで人待ち顔だった天田乾は、待ち合わせをしていた人物を見つけて手を振った。
「荒垣さん、こっちです。」
その声に、ダークグレーの三つ揃えのスーツ姿の荒垣真次郎が歩いてくる。
その手には、シルバーのアタッシュケースが握られていた。
「わりぃ、待たせたな。」
「いえ、僕もいま来たところなので。」
月光館学園高等部の制服を着た天田はニコッと笑いソファから立つ。
「しかし、本当にアイツは連絡先を固定しねえ割に呼び出すときはこっちの都合お構いなしだからな。少しはこっちのことも考えろっての。」
会議中だったのにすっぽかしてきちまった、とぼやきながら荒垣はネクタイを緩めた。
「まあ、仕方ないですよ。今や『あの人』が僕らの生命線とも言える存在になってますから。」
苦笑いしながら天田も肩をすくめる。
話をしている二人の元に、男性が一人歩み寄り会釈した。
「桐条ホールディングス第二総務部の荒垣様と、月光館学園高等部の天田様ですね?」
二人は、初めて見る年齢不詳の青年を見る。
「初めまして、僕は南原と申します。」
南原は笑みを浮かべた。
「主様がお待ちです。ご案内いたします。」
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
P3側の非日常ぶりとP4の日常の温度差よ……。
インターミッションで種は巻かれています。
次回から、さらに状況が動いていく予定です。