息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。
※捏造に次ぐ捏造でほぼオリジナルなんですがキモチはペルソナ4ベースです。
※P4だけだと思った?なんとP3成分入り込みます。
※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。
9月10日水曜日
「主様、お連れしました。」
「ご苦労様。」
高層ビルになっているホテルでは最上級の部屋である。
ロイヤルスイートルームに案内された天田と荒垣は、三人掛けのソファの真ん中に腰掛けてコーラを飲んでいる『アザトースの魔女』を見た。
魔女は、二人の姿を見て笑顔になる。
「いっやー、ごめんね?ついこの前まで日本に居なかったから今日やっと時間が空いたのよ。あ、冷蔵庫の中身なんでも飲んでいいから。」
なんだったらルームサービスでも頼んでいいよ、という彼女に荒垣はアタッシュケースを、天田は掛けていたペンダントを外して渡す。
「よろしくお願いします。」
天田が言えば、魔女はニコニコしながら頷いた。
「おばちゃんに任しとけ!」
「あの、お二人は何を飲まれますか?」
南原は、魔女が座るソファセットとはテレビを挟んで反対側にある別のソファセットに二人を案内しながら尋ねた。
「俺は烏龍茶でいい。」
「僕はサイダー系があれば、それで。」
「畏まりました。」
南原は冷蔵庫の中から烏龍茶と三ツ矢サイダー、お茶の缶を持って来ると、2人の前にそれぞれ置いていく。お茶は自分の前に置き、ソファの1つに座った。
「まずは、自己紹介を。僕は南原と申します。元々は人だったのですが、主様に命を救われた時に眷族となりました。」
南原はお茶の缶のプルトップを開けると、口をつける。
荒垣と天田は顔を見合わせた。
「魔女の、眷族?」
「はい。なので、無駄に長い時間を生きております。」
南原の年齢を聞こうと思っていた天田は、先に聞かなくてよかったと思った。
「俺達は五年前、ここでシャドウと戦っていた。」
荒垣が烏龍茶の缶のプルトップを開ける。
「俺は、自身のペルソナの暴走で乾の母親を巻き込んで殺してしまった。あの日、俺は乾に殺されてもいいと思っていたんだ。」
「正直な話、僕もあの日、荒垣さんを殺して自分も死ぬつもりでした。」
天田はサイダーの缶を開けると口をつけた。
「でも、そこに、ストレガのタカヤが現れた。僕達を殺すために銃を向けたんです。」
南原は黙って聞いている。
「その時、あの人が現れて、タカヤから銃を奪うと圧倒的な力で追い払った。」
「魔女は、俺達に『ちょっと運命ねじ曲げちゃったけど、ごめんね?』なんて軽い感じで言ってて、なんだか今まで悩んでいたことが馬鹿らしくなってな。乾と2人で大笑いさ。」
荒垣の言葉に、南原は苦笑いを浮かべた。
「すみません、主様は基本的にフリーダムなので……。」
「うん、確かに。」
天田も肩をすくめた時、テレビの向こう側で出来たー!という声が聞こえる。
魔女は、三人がいるソファセットの空いている席に座り、テーブルの上にアタッシュケースとペンダントを置いた。
「チェックしたけど、問題なし!天田君も荒垣君も、元気そうで何よりだよ!」
「こちらこそ、ありがとうございます。」
天田はペンダントを手にとり眺めた。インペリアルトパーズが嵌められた、見た目は何の変哲もないペンダントである。
「天田君、ちゃんと召喚器なしでペルソナ呼べてる?物理攻撃を避ける呪文は効いてるよね?」
「はい、もうばっちりと。」
天田は首からペンダントを下げる。
「荒垣君、体調のほうは平気?ペルソナの暴走とかなく銃もちゃんと使えてるよね?」
「ああ、もちろん。……未だにシャドウワーカーの技術部が仕組みが分からない、と嘆いていたよ。」
荒垣はアタッシュケースを開けた。ピジョンブラッドのルビーが嵌った指輪と、金色のシンプルな指輪。それと、指輪と同じくピジョンブラッドのルビーがグリップに埋め込まれたS&W M500が1丁収まっている。
荒垣が指輪を2つ右手にはめれば、ルビーが灯りできらめいた。
「そりゃそうでしょうね。科学技術みたいなギミックで作ってないもの。」
魔女はドヤ顔で言うと、座っていたソファセットのほうに飲みかけのコーラを取りに行く。
「念の為、説明するわね。」
魔女はソファに座ると、ぐい、とコーラをあおった。
「まず、暴走する魔力を変換して魔力を貯めるルビーの指輪。
ルビーの指輪の魔力を使って永続的に治癒魔法を発動する指輪。
ルビーの指輪の魔力と自身の魔力を万物属性の力に変換し魔法の銃弾として打ち出す拳銃。」
「ん、そうだな。」
荒垣は自らの手を眺め、頷く。
「荒垣くんのペルソナの暴走はもう防ぐことができないし。あの薬を飲んだ影響はもう打ち消すことはできないけれど。……元気に暮らしてくれると嬉しいわね。」
「ありがとな。」
肩をすくめて言えば、魔女は笑みを浮かべた。
「召喚器を使ってた人の中には、もうペルソナを呼べなくなってる人も居るんじゃない?やっぱり魂を傷つけトラウマを力とするのは良くないよ、色々と。」
荒垣ははあ、と一つ溜息をついた。
結局のところあの事件から五年以上経っていた。
特別課外活動部のメンバーの中で、今でもペルソナを使えるのは荒垣と天田と山岸だけ。
岳羽と伊織は不安定な状況で、他のメンバーに至ってはペルソナを出せなくなっている。
悔しいが、全ては魔女の言うとおりだ。
「どうして、全員分作らなかった?」
荒垣の問いに、魔女は首を傾げる。
「どうして全員分も作らなきゃいけないの?あの時命を助けた二人にお願いしたいことがあったから、その報酬として渡したのに?」
「……そういや、そうだったな。」
荒垣は肩をすくめる。「悪い、忘れてくれ。」
「うん、そうする。」
魔女はニコニコしながら頷いた。
急に荒垣のスマートフォンが音声着信を知らせた。
画面には、桐条ホールディングス第二総務部の文字が表示されている。
荒垣は席を立ち、窓際で着信ボタンを押した。
「もしもし、」
『荒垣君か。』
「あ、……部長。」
『優先順位が高い事案が発生した。シャドウワーカーとの調整中の所悪いが、至急東京に戻ってくれ。君には明日朝に会議後、北島君の指示に従い新宿の内偵調査及び会長警護の任に加わってもらう。』
「何があったんです?」
『シンガポールに常駐する木村常務役員が失踪した。明日の便で私と佐倉、友永はシンガポールに飛ぶ予定だ。』
「分かりました。すぐに戻ります。」
『それでは明日朝に。』
プツ、と通話が切れる。荒垣は自分の席に戻るとアタッシュケースを閉じた。
「済まないが、本社から呼び出しがきた。すぐに東京に行かないと。」
「あら、食事を一緒に、と思ったのに残念だわ。」
魔女は目を細めて呟く。
「乾、悪いがシャドウワーカーの勤務調整はまた後だ。美鶴のことだから上手くやるとは思うが、万が一のことがあったらすぐに連絡しろよ?」
「はい、荒垣さん。」
スマートフォンの時計では夜七時過ぎ。まだ東京行きの飛行機は飛んでいるはずだ。
「じゃ、また。バタバタしちまって悪いな。」
「いえ。荒垣様も道中お気をつけて。」
南原が軽く会釈をする。荒垣が部屋を出た後、魔女は天田へと視線を向けた。
「天田君は、何が食べたい?因みに私はここのホテルの鉄板焼きのステーキでも食べたいなと思ってるんだけど?積もる話もあるかもだし、奢っちゃうよ?」
「ご一緒します!」
「やった!」
魔女はにっこり笑う。
「じゃ、早速行きましょうか?」
◇◇◇
東京、丸の内にある桐条ホールディングス本社ビルの最上階に、会長の執務室がある。
桐条美鶴は、苦虫を噛み潰したような顔で自席のパソコンのモニターを見ていた。
不意に、ノックが聞こえる。
「第二総務部の、鳴上です。」
「入ってくれ。」
美鶴の声に、失礼します、と言いながら男が入室する。
紺色のピンストライプのスーツを着て、銀灰色の髪を短く刈り込み、銀縁眼鏡の奥に髪色と同じ瞳を覗かせている。
男は執務室のソファに腰掛け、美鶴もその対面に移動した。
「新宿の内偵の件は?」
「クラブ『緋色』と呼ばれる場所で、何かが行われているのは確かです。ただ、恩恵を受けている者達は皆秘密を漏らさない。秘密がバレたときに何かが起こるのを恐れているような感触でしたが。」
「そうか。……木村常務役員の方は何か分かったか?」
「一応現地にいる奥様に連絡をとってみましたが、要領を得ません。日本に残っている娘さんにも部下に連絡をとらせましたが、特に何も聞いていないようです。急ぎ、明日の便で私と部下2人を連れてシンガポールに向かいます。国際部と連携を取りつつ奥様にはクラブ『緋色』の件も含め探りを入れる予定です。」
「すまんな、いつも。」
美鶴は済まなそうに言うと、溜息をつく。
「いえ、武治様の頃から十四年この業務を行っていますので。」
鳴上はすました顔で答えた。
美鶴は、目の前の男を改めて上から下まで眺める。
名前は鳴上友樹。
1999年7月に起きた月光館学園爆発事故の時に自分の父の命を救った男。
父に付き従うように十四年前に創設された会長直属の諜報機関とも言える第二総務部の部長に収まった。
グループ内で起きた数々の不祥事や事件の解決に始まり、特別課外活動部への水面下でのサポート、シャドウワーカーの設立にも関わった、桐条の裏の面を知る人物であり、諜報機関という立場上実は社内では会長である美鶴に次ぐ権限を持っている。
「……どうされました?」
「いや、少し思うところがあってな。」
美鶴は鳴上に笑いかけた。
「先程、荒垣君を神戸から呼び戻しました。私が不在のときに不測の事態が起こった際には、彼を頼ってください。」
「分かった。」
「それでは明日の準備がありますので、これで失礼します。」
鳴上はソファから立つと美鶴に頭を下げ、退室する。
美鶴は深く息を吐くと、自席にもどった。パソコンのモニターには、国際部部長である鳴上春奈からのレポートが表示されている。
タイトルは『桐条電気化学シンガポール支部長失踪の件について』。
現地スタッフの一人である安西副支部長からの連絡により、木村隆志支部長と連絡が取れないこと。
木村自身は昨日まで夏季休暇だったため、失踪したことが判明したのは本日だったこと。
失踪した件について妻である木村加奈子は現地警察や領事館への届け出も会社への連絡もせず、ずっとシンガポール市内のホテルに宿泊していたこと等が記載されている。
「何が起こっているんだ、一体……。」
自身のペルソナが使えればまだやりようがあるのに、と呟き、美鶴はパソコンの画面を睨みつけた。
◇◇◇
「なあ、悠。」
花村の声に、鳴上悠は相棒の方を見た。「赤ってさ、目立つよな?」
「そうだな。」
鳴上は小説にまた視線を落とす。
「今日、バイト先に真っ赤なワンピースを着た女が来たんだよ。」
「うん。」
「なんか気持ち悪い奴だな、と思って無視して仕事して、上司のチェックをもらおうと思ったらまだ居て。」
花村は炭酸水を口にした。
「それで?」
「店で出す新メニュー用の器が欲しいってんで、俺が選んだら、本当に買ってくれてさ。」
「良かったじゃないか。」
「そうなんだけど、さ。なんか気味悪かったんだよな、あの人。」
花村は、自分のかばんの中から何かを出す。
ことん、とテーブルに何かが置かれた音に、鳴上はテーブルの上を見た。
「……陽介?」
鳴上の視界に、綺麗にラッピングされ、リボンが掛けられた青い箱が入る。
「あの、鳴上さん?」
花村が顔を赤くしてそっぽを向く。「よかったら、明日から使ってくれると、嬉しいなぁ、っつーか?」
「これ、……。」
鳴上はテーブルの上の箱をとった。
「開けても、いい?」
「もちろん、そのために買ったし?」
鳴上はゆっくりとリボンをはずし、包装紙を取ると、ボールペンが収められた青い箱が現れた。
「これ、俺の、」
「ほら、この前俺が悠から貰った誕生日プレゼントさ、プロの文具バイヤーやってる社員さんが褒めてたじゃん?」
「あ、ああ。」
「一生モノ、って言ってたしさ、その、色違いだけど青だったら悠なら似合うかなぁ、なんてその、」
花村の言葉がだんだんしどろもどろになっている。
「おそろいの指輪とか思ってたら先に魔女からもらっちまったしさあ、なんだかなーと思ってさ。でもほら、俺ら、付き合ってるし、お揃いっぽいアイテム欲しい、じゃん?」
鳴上は満面の笑みで箱からボールペンを出した。
「ありがとう、大事にするよ。」
鳴上は読みかけの小説を閉じると、ボールペンをいつも持ち歩くカバンに差す。そのまま花村の隣に座ると、恥ずかしそうにモジモジしている花村の頭に顔を埋めた。
「ちょ、くすぐったいって。」
「恥ずかしがってる陽介もカワイイ。」
「ば、おま、」
「もう少しだけこのままで居させてよ、陽介。」
「お、おう、」
『何このバカップル。爆発しちまえ。』
マンションの屋上で、スサノオははあ、とため息をついた。『こっちまで恥ずいっつの!』
『仲がいい、というのはいいことなんじゃないか?』
イザナギもはあ、とため息をつく。『気を使って主達が食事をしているあたりから出かけてみたが、却って帰りづらくなったな。』
『ああ、そういや、』
スサノオはイザナギの方を向く。『今日、陽介の職場にヤバイのが来たんだよ。』
『ほう。』
イザナギがスサノオの方に視線をやる。
『この前の人外よりも強いかもしれない存在だったな。』
『陽介には、言ったのか?』
イザナギの問いに、スサノオは首を横に振る。
『でも、あっちはロックオンしてるみてぇだし、そのうちなんかあんだろうよ?』
スサノオは肩をすくめた。
『それまでは精々バカップルしてりゃいいんじゃねーの?』
『一応気は使ってるんだな?』
『そりゃそうだろ?アレでも一応『俺』なんだからさ?』
『まあ、そうだな。』
『つか早くおわんねーかな陽介達。マジ帰りづれぇ……。』
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
P3側の非日常ぶりとP4の日常の温度差よ……。
次回から、さらに状況が動いていく予定です。