ペルソナアフターパラレル   作:erupon

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※ペルソナ4原作後、大学生設定の二次創作です。
 息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。

※P4だけじゃなくP3成分も入ってきてます。
 なおこの小説を書いたときはまだP5発売されておりません。こわい


※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。


014.赤いサロン4

9月12日金曜日

 

 鳴上悠は、だいたいいつも朝七時頃に目が覚める。

 朝が恐ろしく苦手な同居人のため、朝食と弁当を作るのが日課になっているからだ。

 今朝もやはり七時頃に目が覚めた。ゆっくりと体を起こし、伸びをする。

「……行かないで、」

 不意に声が隣から聞こえ、鳴上は 隣で寝ている花村陽介を見下ろした。

 彼は、確かに目を閉じていたのだが、うっすら目尻に涙が浮かんでいる。

「陽介、俺は何処にも行かないよ。」

 軽く花村の髪を撫でると、鳴上はベッドから出た。

『主、リビングに何かいる。』

 イザナギの言葉に鳴上は寝室をそっと出る。耳をすませば、リビングのほうでぱさり、と音がした。

「……何だ?」

 廊下でそれ以上音がしないことを確認し、リビングへ行けばテーブルの上に封書が一通置かれているのが見える。

 もちろん、昨夜二人で寝る前には無かったものだ。

『封書には危険な魔力は感じない。ただ、これをここに運んだモノが問題だ。』

「跡を追えるか?」

『いや。……カンゼオンならできるかもしれないが。』

「確かに、りせのアナライズならできるかもしれないな。」

 鳴上はリビングのカーテンを開け、台所へ行ってミネラルウォーターのペットボトルを持ってくる。

 テーブルの上にある封書を手に取り、ソファに座った。

 封書の表には、『Invitation』と、裏を返してみれば、『CLUB緋色』という文字が書かれていた。

 少し迷った後、鳴上は封書を開ける。

 

『花村陽介様 月例ダンスパーティーへのお誘い

 孟秋の候、貴方におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。

 このたび、弊クラブにて開催しておりますダンスパーティーにお誘いしたく、

一筆とらせていただきました。

 もし時間に余裕がありますなら、ご参加をお待ち申し上げております。

 

CLUB緋色 オーナー 貴崎緋色』

 

(陽介、今度は何に巻き込まれたんだ……。)

 鳴上がはあ、とため息を漏らしたとき、寝室のドアが開いた。

「あ、悠。はよーございます?」

 花村が、寝ぼけ眼で右手を挙げる。

 その様子を見た鳴上は、あることを思い出した。

「あっ、朝飯と弁当作るの忘れてた。」

 封書をソファの上にポイと放ると台所へとスタスタと歩いて行く。

「陽介、今日学校ある?」

「うん、昼から行く予定だけども?」

「大変申し訳無いのだが、今日は朝飯と弁当をまだ作ってないんだ。」

 鳴上が苦笑いとともに手を上げた。「すまん。」

「ん、たまには外でブランチでもいいじゃん?」

 花村はふにゃりと笑い、バスルームへと向かう。

「ちとシャワー浴びてくる。」

「ああ。」

 花村を見送ると、鳴上はまたリビングのソファに体を沈めた。

 その手には、先程まで読んでいた花村宛の『招待状』がある。

『鳴上、それ陽介宛だろ?』

 後ろからスサノオの声がして、鳴上の頭の上に手がぽすん、と載せられる。

『やっぱり貴崎緋色から?』

「知ってるのか?」

『そりゃお前、この前の赤いワンピースの女の名前だからな?』

「ああ、陽介の職場に来たっていう?」

 ニヤニヤしながら鳴上の隣にスサノオがストン、と降りてソファに座った。

『スサノオ、それ以上はっ!』

 イザナギが諫めるように鳴上から現れ、スサノオを抑えにかかる。

『なんだよ?本当のことだろ?それとも、他に何か知ってることが?』

 スサノオがイザナギの手を避けながら聞けば、イザナギはその手を止めた。

「イザナギ?」

 鳴上が聞けば、イザナギはふわっと浮き上がる。

『少し頭を冷やしてくる。スサノオ、くれぐれも余計なことは言うな。』

 イザナギはそのまま窓を抜けて外へ出た。

 スサノオはやれやれ、といった風情で肩を竦める。

『アイツも頭固ぇなあ。どうせ巻き込まれるんだから全部言っちゃえばいいのにー。』

「お前ら、何を知ってる?」

 鳴上が聞けば、スサノオはニヤ、と笑った。

『陽介に聞けば?』

 そのまま翡翠色の光とともに立ち消える。 

「何なんだ、一体?」

「ほんとにな?」

 いつの間にか、花村がシャワールームから出てリビングに入ってきていた。

「俺らに言いたくない理由でもあるのかね?」

 花村はそのまま鳴上の隣に座る。「で、その持ってる手紙は俺宛?」

「ああ。……貴崎緋色、という人物が魔法で送ってきた、らしい。」

「やっぱアイツ魔女だったかー。」

 鳴上の答えに、花村は遠い目をする。

「俺も運が悪いなあ、こういうのに目を付けられるとか。」

「運が悪いのはまあ置いといて、問題はイザナギとスサノオが何を知っているのか、ということだけど。」

「ああ、置いとくんだな……。」

 花村は苦笑いを零す。

「で、今回の情報については共有してねえの?」

「ああ。」

 鳴上も花村に苦笑いを返した。

 花村は台所の冷蔵庫から炭酸水のペットボトルを持ってくる。

「スサノオが『どうせ巻き込まれる』って言ってたけど。昨日悠が言ってた相談も、辿れば根っこはこの件に繋がるんじゃね?」

 花村は言いながら、ソファに戻ってくるとペットボトルの栓を開けた。

「その可能性は高いな。……イザナギは今居ないし、俺だけで話を聞くしかないか。」

「俺も一緒に聞いてもいいか?」

 その言葉に、鳴上は花村へ視線を向ける。

「話によっちゃ、今掛かってる火の粉を払うヒントがあるかもしれねーから。だめかな?」

「俺はいいけど、」

 鳴上は少しぬるくなったミネラルウォーターに口をつけた。

「陽介、今日学校ってさっき言ってなかったっけ?」

 

◇◇◇

 

 T大構内にある第二食堂で、花村は満面の笑みでカレーライスを食べていた。

「いやあ、他の学校の学食ってちょっと興味あったんだよなー。また新鮮な感じだよ。」

「そ、そうか?」

 鳴上はいつもの慣れた場所で、カツ丼をつついている。

「今度M大の学食にも連れて行ってくれよ?」

「おうよ、任せとけ。」

「あ、あのう……?」

 二人は、声がした方へ視線を上げる。

 そこには、木村佳美がペットボトルのお茶を持って立っていた。

「今、お邪魔ですよね、出直しましょうか?」

「あ、隣に居るのは俺の相棒だから大丈夫。」

 鳴上は昨日と同じように、自分と対面になる空き席を木村に勧める。

「花村です。宜しく。」

 ヘラっと笑みを浮かべて花村は軽く会釈した。

「やっぱり、来たね。」

 鳴上の言葉に、木村は肩を竦めた。

「相談だけでも、と思いまして。」

 木村は、持っていたペットボトルをテーブルに置き、自分のスマートフォンをカバンから取り出す。

「俺はシンガポールに行って木村さんのお父さんを見つけることは出来ないけれど、何を相談したいのかな?」

 鳴上の問いに、木村はテーブルに目を落とした。

「父が、何故失踪してしまったのか、そして何故母がそれを一切言ってこないのか。両親に何が起こったのか、本当のことが知りたくて。会社の人から連絡はあるんですが、はぐらかされているようなんです。」

 鳴上は、カバンからレポートパッドを出すと新しいページを捲る。

「分かった。とりあえず、……質問に答えてくれるかな?」

 鳴上の言葉に、木村は頷いた。

「お父さんの名前は、木村隆志さん、で合ってる?」

 鳴上の問いに、木村の手が止まった。

「は、はい。」

「そう。……行方不明になったのは、シンガポールに着任後、一ヶ月くらいってことだよね?」

「そう、です。」

「お父さんからのメール、見せてもらってもいいかな?」

「はい。」

 木村は自分のスマートフォンを操作しメール画面を呼び出す。

 

着信日:8月31日

Title:すまない

『会社には言うな。悪夢ばかりだ。俺たちはもうダメかもしれない。ひいろにはか』

 

「お父さんは、着任前から夢を見る、とかいうことは言っていた?」

「いえ、全く。」

「因みに、……お父さんは、シンガポール支社長になる前は何処の会社のどのポジションにいたのか分かる?」

「桐条電気化学の、情報システム部門の部長でした。」

 鳴上は、聞いた内容をレポートパッドに書き取っていく。

「異動が決まった時の、ご両親の様子はどうだった?」

「嬉しそうでした。……いや、」

 木村は、何かを思い出したかのように目を見開いた。

「何か、違和感を感じました。」

「違和感?」

 鳴上の、メモを取る手が止まる。

「もう三ヶ月も前のことですぐ思い出せないのですが。……何か変だな、と思ったのを思い出しました。」

「それは重要な情報かもしれない。」

 鳴上は頷きつつメモを書く作業を再開した。

「木村さん、その違和感が何か分かったら、教えてくれ。」

「はい、そうですね。頑張ってみます。」

 木村は頷く。

「それと、お父さんから来たそのメール、俺のアドレスに転送して貰ってもいいかな?」

「いいですよ。」

 鳴上は、木村がメールをを転送するのを待つ間、メモを前に考えを巡らせた。

(他に聞かないといけないことは、何かないか?今聞けそうなこと、……。)

「あの、木村さん。」

 花村が、笑みを浮かべながら口を開く。

 鳴上は花村をちらっと見た。

「さっきのお父さんからのメールにもあったけど、『ひいろ』、という言葉に覚えはない?」

「ひいろ……。」

 木村は少しの間記憶を辿っているように視線を泳がせる。

「もしかしたら、知っている、かも?」

 木村は腕組みをした。

「かも、なので……。自信がないのですが。家に帰れば何か思い出せるかもしれません。」

「後、一つだけいい?」

 花村は笑みを浮かべたまま聞いた。

「お父さんが居なくなった、と聞いた後で、お母さんから何か連絡はあったのかな?」

「えっと、メールが一通ありました。」

「見せてもらってもいい?」

「はい。……」

 

着信日:9月9日

Title:お誕生日おめでとう

『一緒に例会に行こうって言っていたのに帰れなくてごめんなさいね。

日本に帰ったら一緒に食事に行きましょう。』

 

「9月9日が誕生日だった?」

「はい、一応二十歳になりました。」

「じゃあ、同じ学年なんですね。」

「あっ、そうなんですか。」

 木村が花村を見やる。

 次の瞬間、木村のスマートフォンの画面が音声着信を知らせる。

 木村は花村に会釈すると通話ボタンを押した。

「もしもし。……」

 木村が電話で話をしているのを横目に、鳴上と花村は鳴上がメモを取った内容を眺めていた。

『おい、まずいぞ。』

 二人の後ろに、スサノオが立っている。

『どうやら、目の前の女にとっては最悪の状況になっているようだな。』

 ハッとして鳴上が木村を見れば、顔から血の気が引いていた。

 花村がそれを見て席を立ち木村のそばへと近寄る。

「木村さん?」

 木村はスマートフォンをテーブルに取り落とし、静かに涙を浮かべる。

「会社の人からでした。両親が、亡くなった、と。」

「そう、……か。」

 鳴上は、自分の父が現場で何を見たのか、何があったのかと考えた。

「ごめんなさい、家に、帰ります。」 

 木村は力なく立ち上がる。そのままふらついた彼女を、花村が支えた。

「大丈夫?」

「あ、その、すみません……。」

 木村は視線を宙に泳がせる。

「送るよ。」

 鳴上が荷物をカバンに突っ込みながら言った。

「今のままじゃ、木村さんが危ない。」

「は、はい。」

「陽介、木村さんをそのまま支えてあげてくれ。荷物は俺が持っていくから。」

「ああ、分かった。」

 木村の異常に気づいた学生がざわつく中、三人は食堂を後にした

 




ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
まえがきでも書いたけど、P3側の非日常ぶりとP4の日常の温度差よ……。

がんばってクトゥルフ成分分厚くしていくぞー
というわけで次回から、さらに状況が動いていく予定です。
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