ペルソナアフターパラレル   作:erupon

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※ペルソナ4原作後、大学生設定の二次創作です。
 息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。

※P4だけじゃなくP3成分も入ってきてます。
 なおこの小説を書いたときはまだP5発売されておりません。こわい


※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。


015.赤いサロン5

9月12日金曜日

 

「貴方、木村常務の奥様は助けられなかったの?」

 丸の内にある桐条ホールディングス国際部の部長席で、鳴上春奈は呟くように言った。

『仕方が、なかった。』

 プライベート回線を繋いだハンズフリーヘッドセットから鳴上友樹の疲労の色が透けて見える声がする。

「元々彼女の様子がおかしい、というのは分かってたわよね。……何があったの?」

『住んでいた現地マンションに着いた時、木村加奈子が急変した。佐倉が後ろから右胸を突かれ昏倒、友永が応戦したが、左腕を負傷。彼女はリビングで倒れ腐乱した木村常務を化け物と言い、錯乱した挙句マンションのベランダから飛び降りた。』

 春奈は、はあ、と息を吐いた。

「そう。佐倉君と友永君の容態は?」

『佐倉は俺が傷口は塞いだが、肺に血液が漏れだした分を排出するための緊急手術を行っている。友永は命に別状はないが、腕の傷が深く四針縫った。そんな訳で、本社の人間で動けるのは今俺だけだ。』

「貴方らしくもない。何かイレギュラーが発生したのでしょう?」

『木村加奈子の腕が伸びた。だから、友永が木村加奈子の攻撃を避けきれなかった。そして、腕力もありえないくらい強かった。だから、佐倉は右胸をナイフで突かれたときに肺を貫通したんだ。』

 春奈は眉間にしわを寄せ目を閉じる。

「信じられない。そんなこと、あるわけがない。」

『俺のスキルがなければ、全員殺されていたかもしれないな。』

「そう。……とりあえず事務手続きは全部こっちに回して。貴方は調査に専念したほうがいいかもしれないわね。」

『そうしてもらえると助かる。北島には木村常務の娘さんにご両親が亡くなったことを伝えるよう伝言したが、その後の葬儀や相続の手続きもあるだろう。しっかりサポートしてやってくれ。』

「分かったわ。……それと、」

『どうした?』

「悠から連絡があったの。ウィスキーのお礼がしたいって。」

『……ああ。アレか。』

「あの子、シンガポールに貴方が行ったことについて反応していた。もしかしたら、何か知っているかもしれない。」

 友樹は一つ息を吐いた。

『北島に依頼してマークさせる。コレでいいか?』

「ええ。悪いけど、お願いね。」

『それじゃ、また。』

 通話が切れる耳障りな音がして、春奈は再び眉を顰める。

「本当に、何が起こっているの?」

 

◇◇◇

 

『直斗に頼まれてた例の件なんだけど、』

 久慈川りせからの電話を受けながら、白鐘直斗は自分のデスクで資料の整理をしていた。

 ファイルのタイトルは『緋色と呼ばれる集まりの調査について』。

 緋色、というものがどういうものかはまだ分かっていない。

 しかし、少なくともメンバーはここ一年の間に何かしらの成功を収めた人物。あるいは、それに親しい人物であることが傾向から見て取れた。

 そのため、りせに最近再ブレイクした女優である御厨果音の周辺を探って貰っていたのである。

「はい、その後どうでしたか?」

『先輩、最近よく眠れてないって言ってて、』

 りせの声も、心配そうだ。

「それは、多忙のため仕事が遅くまで、ということはなく?」

『悪夢を見る、って。』

「悪夢、ですか。」

 直斗は視線を泳がせた。

「内容については何か言っていましたか?」

『特には聞いてない、かなあ。』 

「そうですか。しかし、少し心配ですね。」

 直斗は呟く。

『でしょ?今日、果音先輩の家にお泊りに行く約束してるから、もうちょっと聞いてみるね!』

「えっ?今日って、今晩ですか?」

『うん、そうだよ?』

「余り変に突っ込んで聞いて御厨さんにこちらの意図が分かってしまうのはあまり具合が良くないのですが……?」

『果音先輩の家のアドレスメールするね?一応都内だし、大丈夫だよ。』

(いや、その過信は多分マズイ、)

 直斗の心の叫びはしかし、口から出ることはなかった。

「そうですか。分かりました。それではメールの方お待ちしています。」

『分かった!じゃ、後でね!』

 通話が切れた後も、直斗は机へ視線を向けている。

「迷いますね。どうしたものか、」

『僕だけだとカバーしきれないかも?』

 ヤマトタケルが声を上げる。

『できたら、スサノオかイザナギの助っ人が欲しいな?』

「しかし、……。」

『ねー、直斗?お話だけでもしてみたら?』

 ヤマトタケルが直斗の後ろからじゃれてきた。

『そう思うでしょ?イザナギ?』

 ヤマトタケルの言葉に直斗が顔を上げると、机の前に設えているソファにイザナギが足を組んで座っていた。

「いつからいたのですか?」

『来たばかりだ。……それに、もうすぐ主達もここに来る。』

 ややイライラしたような風情でイザナギが呟く。

『おお、やっぱここだったかー。』

 壁を抜けてスサノオが部屋に入ってきた。

『ヤマトタケルと直斗も久しぶりだな。』

『ついこの間東京タワーからスカイツリーまで競争したばっかじゃないか。』

 ヤマトタケルがニヤッと笑いながら言えばスサノオも金色の瞳を細めて笑う。

『まーまー、細けえことは気にしないの。』

 スサノオはイザナギの横にぽすん、と着地した。『なあイザナギ、まだおこなの?少しは機嫌直してくれよ?』

『もう事態は動いてしまったじゃないか。私がどうこういうものじゃなくなっている。』

 イザナギが呆れ果てた様子でスサノオに答えた時、白鐘探偵事務所の呼び鈴が鳴らされた。

「どうぞ。開いてますよ、先輩方。」

 直斗が声をかければ、鳴上と花村が相次いで部屋に入ってくる。

「あっ、イザナギ!ここに居たのか。」

 鳴上がイザナギの隣に腰を下ろす。

 花村はスサノオとテーブルを挟んで反対側のソファに腰を下ろし、直斗は花村の隣のソファに座った。

「直斗、相談したいことがあるんだ。連絡も無く来るのはどうかとも思ったんだが、こっちに来る方が早かったから。」

 鳴上が済まなそうに言えば、直斗は笑みを浮かべる。

「丁度良かったですよ。僕も、先輩方に相談したいことがあったので。」

 三人は押し黙った。

「多分、俺達が相談したいことの根っこは同じ、」

 花村が、口を開く。

「CLUB緋色、の件だろう?」

「CLUB緋色……!」

 直斗は唖然として花村を見た。

「CLUB緋色って、何処にあるんですか?」

「新宿?だったっけ?」

「確かそうだった気がするな。」

 花村と鳴上の気の抜けたやりとりとは裏腹に、直斗は驚きの表情で叫んだ。

「新宿!?」

 直斗は急いでポケットから手帳を取り出しメモを取り出す。

「その情報は、何処から?」

「っつーか、ウチに招待状が来た。」

「な、なんだって……。」

 直斗は思わず脱力してはあ、とため息をついた。

 ここ数週間足を棒にしてりせにまで手伝ってもらって調査していた情報がこうもあっさり手に入るとは。

「あと、俺が学校の知り合い?から相談を受けてる。元は別の依頼だったんだが、事件の根本原因を今日聞いてみた限りではCLUB緋色が発端になっている可能性がある。」

 鳴上の言葉に、直斗は再びメモを取り始める。

「直斗は、どういう依頼を貰っているんだ?」

「依頼者は明かせないのですが、最近政財界の有名人が通う秘密の集まりがあるらしい、その実体を調査して欲しい。ということでした。ここ数週間調べて分かったのは、『緋色』というワードのみ。皆さん口が固くて漏らさないんですよ。」

「ふうん、そりゃ確かに根っこが同じっぽいなあ。」

 花村は頭を掻きながらここにいる人物全員を見渡した。

『でね、今晩りせちーがその緋色の顧客と思しき人物のお家にお泊りするんだって!』

 ヤマトタケルが嬉々として言えば、鳴上と花村が眉を顰めた。

「直斗、本当か?」

「……本当、です。」

 しょんぼりしながら直斗は言った。

「正直やめたほうが、とは言ったつもりなのですが……。」

「どうしようかな、木村さんの家も見張ろうと思っていたんだけど。」

 鳴上が腕組みをする。

「CLUB緋色が魔女がらみであるなら、顧客を失ったCLUB側は秘密を護るために娘を手にかけないとも限らないだろ?」

「魔女が絡んでいるのですか。」

 直斗は眉を顰めた。

「となれば、久慈川さんも危険かもしれませんね。」

『だからスサノオかイザナギのどっちか、今晩僕と一緒にりせちーを見張らない?』

 ニコニコしながらヤマトタケルがスサノオとイザナギを見ながら訊く。

『その代わり、直斗が鳴上先輩と花村先輩のお願いきいてくれるって!』

「「「は?」」」

 直斗と鳴上と花村が同時にヤマトタケルを見た。

『あれ?僕変なこと言った?』

 ヤマトタケルが首を傾げる。

『しょうがねえな。俺が行ってやるから皆落ち着け。』

 スサノオが頭をポリポリ掻く。『イザナギ、木村さんのほう宜しくな。やばかったらすぐに言えよ。』

『分かった。』

「待て待て待て、」

 花村が慌ててスサノオを制した。

「お前、俺が近くに居なくてもスキル使えんの?」

『んー、スキルは主が使うものだからな。俺単体では無理だろうな。』

 スサノオは腕組みをする。

『でも、物は運べるぜ?』

『うん、それで大丈夫!』

 ヤマトタケルはニヤッと笑った。『多分邪魔だから花村先輩はお家で待機でいいよ!』

「え、ええぇ……。」

 花村ががっくりと肩を落とす。

 スサノオは肩を震わせながら、花村の隣に行ってポン、と花村の肩を叩いた。

『まあ、アレだ、俺が代わりにがんばってくるから、まあその、気を落とすなよ、俺?』

「思い切り笑いをこらえてるだろ!分かるっつーの!」

「う、ウチのペルソナがその、すみません、」

 直斗も花村から顔を背け、笑いをこらえて顔が赤くなっている。

「くっそ、何か納得がいかねぇ!」

 花村の心の叫びは五反田の街に儚く消えていった。 

 

◇◇◇

 

「果音先輩ってやっぱりマメですよね。」

 御厨果音は世田谷駅の近くに建つマンションに一人で住んでいた。

 りせは、果音と食器を片付ける手伝いをしながら果音に話しかける。

「あれだけの料理を自炊されてるなんて、高校のときの先輩みたい!」

「高校の先輩って、休業中に通ってた山梨県の高校の?」

「そうです!超カッコイイのに料理も上手くて、私達女子みんな束になっても歯がたたなかったですよ。」

「ということは、今流行の給食系男子?いいお婿さんになれそうねぇ?」

「たまに皆の分のお弁当を作ってきて振る舞ってくれて、屋上で皆で食べるご飯は美味しかった!」

「で、その男子は結局捕まえられなかったの?りせちゃん可愛いのに見る目がないのかしら?」

「ほんとそうですよねえ。というか、」

「いうか?」

「始まる前から終わってた?みたいな?……猛アピールしまくったんですけどね?」

「あー。そういうこともあるわよ。りせちードンマイ?」

 果音とりせは顔を見合わせ、苦笑いをした。

「お皿全部拭き終わりましたー!」

「折角招待したのに手伝わせてごめんね? まあ後は寝るだけだからいいか?」

「ごちそうになったんですから、このくらい当然です。」

 りせはニコニコしながら言う。「今日は果音先輩が寝るまでお付き合いしますよ?」

「本当、泊まりに来てくれてありがとね?」

 果音はりせの頭をやさしく撫でた。 

 

『よく言うぜ、今だって諦めきれてないくせに。』

 スサノオはチラ、と果音とりせがいる部屋を見上げた。

『まあまあ、文句は後で。直斗の勘が正しければ、御厨さんが動くと思うんだよね。』

『あっ、電気消えたぞ。』

 スサノオがふわ、と浮かび部屋の様子を探るべく近づく。

『カンゼオンは情報収集能力あるから余り近づいちゃだめだよ?』

 ヤマトタケルが声をかけた。

『中の音とか拾うのはいいけど、感付かれちゃうかも。』

『そうか、ペルソナ使いだと俺達感知されちまうもんな。気をつけねーと。』

 スサノオは、街路樹の影まで戻り、耳をすます。

 そのまま一時間が経過した頃、スサノオはある音を拾った。『……うん?』

『どう?』

『中で誰かが動いてるな。着替えてる?』

 スサノオは、目を閉じさらに音を拾う感度を上げていく。

『今、ドアを開けた。靴を履いて、金属音。解錠音、ドアの開閉音と、施錠音。誰かが外に出た。』

『御厨さんが出てきた!』

 ヤマトタケルが言うのと同時に御厨果音が黒いトレンチコートに黒のパンプス姿でマンションから出てきた。そのまま、駅とは反対の方へと歩き出す。

『ヤマトタケル、もう一つ情報だ。』

 スサノオがヤマトタケルに告げた。『もう一度、解錠音と施錠音がした。りせもマンションを出たらしい。』

『げ、りせちーも出てきちゃったの?』

 ヤマトタケルは露骨に嫌そうな顔をする。『直斗ー、どうしよう?』

『どうしようもねえだろ。ヤマトタケルは直斗と現状を情報共有しとけ。後、御厨果音を見失うなよ?俺はりせをマークする。』

『オッケー!』

 




ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

がんばってクトゥルフ成分分厚くしていくぞー
というわけで次回から、さらに状況が動いていく予定です。
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