息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。
※P4だけじゃなくP3成分も入ってきてます。
なおこの小説を書いたときはまだP5発売されておりません。こわい
※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。
※ちょっと痛そうな表現ありますが、タグはこれで大丈夫なはず!だめだったら言って…
※ボーイズラブタグが有効になりました。編集するのはそろそろやめようと思うので、OKな人はぜひ引き続きどうぞ。
2014年9月14日日曜日
「お土産持った、怪しい招待状持った、後は出掛けるだけ、かな?」
鳴上悠は、出かける前にもう一度身の回りを確認した。
「おう、ばっちりだぜ。」
花村陽介がグッ、とサムズアップする。
「ところで監視を撒くって言ってたけど、どうするんだ?」
鳴上が聞けば、花村はニヤリと笑う。
「ま、付いてくりゃ分かるよ。任せとけ。」
花村はスサノオを呼び出した。
『おっ、出番か?』
「おうよ。」
花村はスサノオを纏うと、鳴上へと振り返った。「行くぜ、相棒。」
「ああ。」
鳴上もイザナギを呼び出し頷く。
2人は自宅を出て通路をエレベーターとは逆方向にある階段へ向かって歩き出す。
『主、今日も見張りがいる。』
イザナギがチラ、と目を向けると鳴上の脳裏に白いミニバンが停まっている風景が映った。
「結局昨日は新宿まで付いてきたからな。」
ややうんざりしたように鳴上が呟く。「お陰で折角2人で出かけたのに余り楽しめなかったなあ。」
「まあまあ、向こうが結構本気でマークしてるのが分かっただけでもいいじゃん。」
2人は階段を登り始めた。
「陽介、どこまで上るんだ?」
「あの白いミニバンの死角に入るまで。2階分上がれば大丈夫だと思うんだけどな。イザナギ、死角に入ったら教えてくれよ。」
『了解した。』
2人が6階から7階へ上がる踊り場に来たところで、イザナギが2人を止めた。
「ここなら見えなさそうだな。」
花村は言うと、鳴上とぴた、と体を寄せ合う。
「えっ、ちょ、」
「悠、ちと黙っててくれよ?」
慌てる鳴上をなだめつつ、花村が集中しだすと2人の周りの空気が渦を巻き、風景が少しボヤけてきた。「ん、こんなもんかな?イザナギ、どうよ?」
花村がイザナギに聞けば、イザナギは驚いたように答える。
『凄いものだな、外からは主達が見えないぞ。』
「うっし。じゃ、もう少し範囲を広げてから裏口から出よう。そのまま商店街の裏手に行ってから解除すれば奴らを撒けるはず。」
「陽介、これは、何だ?」
鳴上が困惑げに尋ねた。
「何かのアニメであった、『光学迷彩』的なやつ?空気の屈折率を変えられれば、俺らの姿を隠せるかな?と思ってさ」
花村が渦の範囲を少し広げると、鳴上の手を引く。2人はそろそろと歩き出した。
「陽介、本当は理系の科目得意なんじゃないか?」
鳴上が関心しながら呟く。
「いやいや、無理だから。」
花村は苦笑いをしながら答える。「その辺は悠か直斗に任せるよ。俺はできる事をやるだけだから。」
「そうだな。それぞれができる事をやれれば、自ずと結果は付いてくる、か。」
裏口に繋がる反対側の階段を下りながら、鳴上は呟いた。
「うん?」
白いミニバンの中で、有吉が眉を顰める。
「どうした、有吉?」
運転席に座る玉置が助手席に座る同僚へ視線を向けた。
「監視対象が玄関を出てから、すでに30分?」
有吉の呟きに、玉置の顔色が変わる。
「おいっ!何やってんだ!」
「裏口から出るにも通路を通るはずなのに。見えなかった?」
有吉が首を傾げた。「確かに、玄関を出て、上の階に行って……あれ?」
「とりあえず蒲田と荒垣に連絡を取れ。俺達も至急探すぞ。」
「あ、は、はい!」
玉置がミニバンのエンジンを掛ける。
有吉はカーナビとリンクしたスマートフォンから蒲田にコールした。
『もしもーし、こちら蒲田ー。』
気の抜けたような声が車載スピーカーから聞こえてくる。
「玉置だ。申し訳ないが監視対象をロストした。急ぎこっちも捜索するが、悪いがそっちにも網を張ってくれ。」
『そっちの現状は分かった。でも、彼らが何処に行ったか見当つかないのか?』
「んー……、もし木村常務の件を知っているなら、木村常務の自宅に行くと思う。確かそっちは木村邸の監視業務だったよな?」
『ふーん、そうか。じゃあこっちでも警戒しておく。そっちは高円寺周辺を引き続き捜索してくれ。』
「了解。」
二子玉川の駅からほど近いコインパーキングに止めた黒のスポーツタイプのミニバンの中で、蒲田は、眉を顰めてスマートフォンの通話終了ボタンを押した。
「どうしたんすか?」
荒垣は助手席に座る蒲田へ視線を向ける。
「玉置達が、監視対象をロストしたらしい。こっちに来るかも、だとよ?」
蒲田はあくび混じりに答えた。
「なんだか面倒な話になってきましたね。」
荒垣は肩を竦める。
「だなー。あんまり面倒なのは嬉しく無いんだけどねー。」
蒲田は気の抜けたような声で呟くように言った。
薬師寺が運転する車は、新宿で鳴上と花村を拾って二子玉川へ向かっていた。
「監視されていたのですか。桐条の第2総務部といえば僕らの業界でも屈指の諜報部隊なのに、よく撒いてこれましたね。」
白鐘直斗が驚いたように言えば、鳴上は遠い目をした。
「俺が昔から転校が多かったのはそのせいか?」
「悠、もしかして知らなかった?」
俺も今知ったんだけど、と花村が聞くと、鳴上は1つ頷いた。
「親父、仕事のことは全く家では話さなかったし。というか、殆ど家に居なかったし。」
「あの、鳴上先輩、」
直斗が助手席から後ろを向く。「第2総務部の部長の名前、確か、」
「ああ。俺の、親父だ。」
鳴上が言えば、直斗が驚いたように目を見開いた。
「あの、『鳴上』だったんですか!先輩が凄い理由が解った気がしますよ。」
「なあ、直斗、その、悠の親父さんて凄い人なのか?」
花村が首を傾げながら聞くと、答えたのは直斗ではなく、薬師寺だった。
「桐条の鳴上、と言えば日本屈指のトップエージェントですよ。桐条の子飼いでなければ、確実に日本の公安でその手腕を発揮されていたでしょう。もちろん、直斗様のご両親とも何度か顔を合わせておりますよ。」
「そ、そうだったのですか。」
直斗が薬師寺へと視線を向ける。「僕の、両親と……。」
「今でも謎とされているのが、『なぜ桐条の枠に収まっているのか』ということです。桐条宗家にまるで忠誠を誓う忍のように寄り添っている。その立場上、桐条財閥の実質上のNo.2の権力を持っていることは確かなのですが、それでも、違和感は否めません。鳴上様、何かご存知ではないのですか?」
薬師寺の問いに、鳴上は頭を振った。
「申し訳ないが、本当に知らないんだ。」
「なるほど。鳴上様、出過ぎた真似をしまして、大変失礼いたしました。」
薬師寺は口を閉ざし、車内はしばし静まり返る。「直斗様、あと10分程で目的地に到着します。」
「そうだね。……ヤマトタケル、出ておいで。」
『はーい!何の用?』
鳴上と花村の間の空間にヤマトタケルが現れた。
「先に木村邸に行って、全ての盗聴器及び盗撮機器を無力化してきてください。」
『分かった!先に行ってるからね!』
ヤマトタケルは車を抜けだすと、真っ直ぐに木村邸へ向かう。
「やっぱあるのか?そういうの……。」
花村の呟きに、直斗は涼しい顔で頷いた。
「今回の件は、桐条の第2総務部が動いています。恐らく木村邸も監視対象としているはずです。複数仕掛けられていると考えていいでしょう。」
「なんか俺達、とんでもない組織を相手にしちゃってる?」
花村眉を顰めると、鳴上がはあ、とため息をつく。
「陽介、その言い方は凹むからやめてくれ。」
「あ、ああ、悪い。」
「先輩方、ヤマトタケルからの伝言ですが、木村邸周囲には停まっている車は今のところありません。盗聴器は3つ、盗撮機器は桐条セキュリティサービスの監視カメラ全てに本来の回線の他に電波発信機が分岐して付けられていた、とのことで電波送信機を全て無力化した、とのことです。」
「桐条セキュリティサービスってことは、桐条グループの傘下企業か。ということは、通常回線でも見れちゃうんだな。やっぱりさっきの『光学迷彩』で隠れて行ったほうがよさそうだ。」
「えっ、こ、光学迷彩ですかっ?!」
直斗が目をキラキラさせて花村へ振り返る。「ど、どうやってやるんですかっ?」
「な、なんか直斗の食いつきが凄いんですけど?」
花村が焦って鳴上に助けを求めた。鳴上はただ肩を竦める。
『陽介、そろそろ降りねえ?迷彩は多分陽介が近くにいないと使えねーから、先に展開してから近づいたほうがいいと思うけど?』
スサノオが花村に提案した。花村は1つ頷き薬師寺に車を1ブロック離れた所で停止させるよう依頼する。
「直斗もおりるか?迷彩使うけど。」
「是非!」
3人は車を降り、誰も居ない事を確認するとスサノオが迷彩を展開した。直斗が感動したように周りを見回す。
「凄い、これが迷彩の中!でも少し周囲が見えづらいんですね。調整すればもっと視界は良くなりそうですが……?」
「直斗、今日初めてやってるからさ、少しまだスキルのかかり方が甘いんだよ。次はもっとうまくやるからさ、今日はこれで勘弁な。」
3人は木村邸へと歩いていた。
「悠、悪いけどイザナギで周囲の警戒を頼むぜ。景色が中からだとまだ少し歪むから、車や人にぶつからないように移動しねえといけねえんだ。」
鳴上は頷いてイザナギを呼び出し、周囲を確認する。
『今のところ車も人も通ってない。さっきヤマトタケルが盗聴器等を無効化したなら、異変に気づいた者達がそろそろ動き出すはずだ。早く木村邸へ向かうことを提案する。』
「ああ。」
3人はイザナギの言葉に頷き、足早に木村邸へ向かい始めた。
「あれ?」
荒垣は首を傾げた。「さっきから音声が来てない?」
荒垣は後ろのシートへ移動し、受信装置を確認する。「蒲田さん、ちょっと来て頂いても?」
蒲田は運転席から後ろを振り返った。木村邸に昨日青柳が仕掛けた盗聴器、そして桐条セキュリティサービスの監視カメラ画像を受信する機材が沈黙している。
「これは、こっちの機材の故障じゃないな。」
蒲田は眉を顰める。「おそらく、木村邸の方の情報収集機器が破られたな。」
「バレた?」
「娘さんがやったなら、昨晩のうちに全部無効化されているだろう。おそらく、誰かが木村邸に来たんだ。」
蒲田は少し考え、荒垣へ視線をやった。「荒垣、画像を桐条セキュリティサービスから転送させろ。車を木村邸の近くまで移動させるぞ。」
「はい、了解です。すぐ手配します。」
荒垣が自身のスマートフォンから電話をかけ始める。
蒲田はコインパーキングの料金を支払うと、車のエンジンを掛けた。
「木村邸の画像きました。桐条セキュリティサービスのシステムを介しているため2分程度のディレイは発生しますが、30分前からの画像も別途アーカイブで送信してもらえることになりました。」
「今はそれでいい。画像解析を急げ。」
蒲田は車の進路を木村邸へと向けた。
玄関のチャイムがなり、木村佳美はリビングのソファから顔を上げる。
時計は10時を指していた。
木村はインターフォンを取る。
「鳴上さん、ですか?」
『ああ。今門の前にいるけど。』
「すぐ行きますね。」
木村はぱたぱた、と廊下を走り、玄関のドアを開け、その場に固まった。
目の前には、少し空間が歪んだようなトンネルができていて、その向こうに鳴上と花村と、1人の女性が立っているのが見える。「こ、これは……?」
「や、とりあえず入れてもらえるかな?」
苦笑いと共に鳴上が言うと、木村はぎこちなく頷いた。
3人が玄関に入ると、トンネルは消失する。ガチャリ、と木村が鍵をかけると3人ははあ、とため息を付いた。
「初めまして。僕は白鐘直斗と申します。木村佳美さん、ですね?」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。」
「俺達も上がっていいかな?」
「どうぞ。ちょっと掃除が行き届いてなくて恥ずかしいのですが。」
3人はリビングに案内される。木村は台所へ行き、氷と麦茶が入ったグラスを4つ載せたトレイを持って戻ってきた。
「そうだ、木村さん、甘いものは平気だよね?良かったら食べてよ。食欲なくてもゼリーならイケるっしょ?」
花村がタカノフルーツパーラーのゼリー詰め合わせを木村に渡す。
「ありがとうございます。……そうですね、正直あまり食欲が沸かなくて。」
少し憔悴した顔で、無理に笑みを作り木村は言った。
「さて、先に契約の話をさせて頂いても?」
直斗が微笑みながら木村を見る。「日当1万円で諸経費別、でいかがでしょうか?」
「少々お待ちください。」
木村は奥の部屋へ消え、茶封筒を1つ手にして戻ってきた。
「10万円入っています。手付金及び経費の前払いです。報告完了後に、報酬及び諸経費の精算をお願いします。」
木村は、直斗に頭を下げた。
「依頼は、先輩方から一応伺っておりますが、ご両親の死の真相の調査で宜しかったでしょうか?」
直斗の問いに、木村は1つ頷く。
「はい。会社の人たちも凄く良くしてくださるのですが、肝心の『何故両親は死ななければならなかったのか』という質問に対する回答がありません。それを調査いただけたら、と考えております。」
「分かりました。それでは、こちらの依頼契約兼秘密保持契約書を確認いただきサインをお願いいたします。」
直斗が出した書類を木村は見て、一番下にサインをした。
「白鐘さん、何卒よろしくお願いいたします。」
直斗は契約書を確認し、1つ頷く。
「はい、こちらとしてもベストを尽くします。」
直斗は笑みを浮かべると、部屋の周囲を見回した。「さて、まずご両親の遺品から調査をさせていただきたいのですが、構いませんか?」
「はい。両親の部屋は2階になりますので、ご案内いたします。」
4人はソファから立ち、2階へと移動した。
「荒垣ー、何か見えるか?」
黒いミニバンを木村邸の庭のそばに止め、蒲田が荒垣に声を掛ける。
「2階のカーテンが開いたぐらいっすかね。」
荒垣の答えに、蒲田はため息をついた。
「くそ、情報収集機器系が根こそぎ破られて中の様子が分からないのが痛いな。山岸君なら分かるかもしれないが、今は神戸に居るんだろう?」
「ええ。……うん?」
荒垣が眉を顰める。「これは、いや、そんな馬鹿な。」
「どうした?」
蒲田が荒垣を見た。
「近くに、ペルソナ使いが居るかもしれません。」
荒垣の言葉に、蒲田が目を見開く。
「……は?S.E.E.Sの元メンバー、が?」
「いや、違うと思います。今ペルソナを使えるのは俺と天田、山岸の3人のはず。そして、今東京には俺しか居ません。」
「だとすれば、」
蒲田は口をへの字に歪ませる。「要するにさ、S.E.E.Sの他にもペルソナ使いが居る、ということなんじゃない?」
蒲田は、言外に何かしらねーの?といった雰囲気の視線を荒垣に投げた。
荒垣は肩を竦ませる。
「俺は聞いてませんって。」
「そう、か。となると、新手の勢力か、或いは、今回の事件の犯人関係か、かね。」
蒲田は頭をガリガリ掻いた。「どっちにしろ、放っては置けないな。北島さんに一度報告を上げて指示を仰ごうか。」
P3サイドの話も絡ませつつ、事件はどんどこ動いていくのです…
次回もよろしくお願いします