息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。
※P4だけじゃなくP3成分も入ってきてます。
なおこの小説を書いたときはまだP5発売されておりません。こわい
※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。
※ちょっと痛そうな表現ありますが、タグはこれで大丈夫なはず!だめだったら言って…
※ボーイズラブタグが有効になりました。編集するのはそろそろやめようと思うので、OKな人はぜひ引き続きどうぞ。
2014年9月17日水曜日
桐条ホールディングス本社ビルの会長執務室では、桐条美鶴と荒垣真次郎、山岸風花、鳴上友樹は突然現れた1人の青年を見ていた。
先ほどまでは4人しかおらず、ソファセットに腰掛け今回の事件を美鶴が労っていた時である。
もちろん、武器などの携帯もしておらず、荒垣は眉を顰めた。
「こんにちは。桐条様と鳴上様、山岸様は初めてお目にかかります。」
襟足を短く刈り込んだ黒髪に美少年と言ったほうがいいかもしれない顔立ち、そして、碧い瞳をもつその青年は恭しく頭を下げる。
「南原、何の用だ?」
荒垣がコーヒーに口をつけながら訊けば、他の3人は荒垣へ視線を向けた。
「荒垣、知人か?」
美鶴の問いに、荒垣は1つ頷く。
「俺のアイテムや乾のアイテムのメンテをしている人物の、使いだ。」
荒垣の答えに、南原は笑みを浮かべる。
「ご説明いただき、ありがとうございます。お陰でこちらの手間が省けました。」
「で、そのお前が何の用だ?」
荒垣が再度聞く。
「荒垣様、山岸様へ主様からの伝言です。」
南原は手鏡を手のひらに乗せると、手鏡の上にホログラフのように女性の顔が浮かび上がった。
『今回貴様らが会ったペルソナ使い達について、一切の情報開示を禁ずる。もし破られるようなら、アイテムの調整を今後行わない。分かったな?』
女性の画像が消える。
荒垣と風花は呆然としていた。今まさにその報告をするところだったのだ。
「ああ、主様にしては穏便な台詞で助かりました。」
南原は苦笑いをする。「桐条様、鳴上様。荒垣様と山岸様へこの件についての詮索及び情報収集はせぬよう宜しくお願いいたします。」
「ペルソナ使いが、S.E.E.Sの他にも存在するというのか?」
美鶴が南原を見上げる。
「それについてはYes、とお答えいたします。」
南原は美鶴の問いに答えると、目を細めた。「ただし主様は、『彼らは影時間とは全く無関係である。影時間の残党狩りを主な任務とするシャドウワーカーと交差することはあれど、混じりあうことはない』、と申しておりました。」
「……分かった。」
美鶴はため息をつく。「この件は、現在行方不明となっている貴崎緋色と滝川紅葉を主犯とする洗脳による国家転覆計画、ということで宜しいか?」
「はい。一切ペルソナ使いについては記録にも残すな、とのことです。」
「分かりました。今はそれに従うほかはなさそうですね。」
鳴上は苦笑いしながら頷いた。
「それから、鳴上様。これは僕の個人的な伝言なのですが。」
「個人的な、伝言?」
鳴上は首を傾げる。
「『鳴上君、僕の復学は11月になりそうだ。11月4日に、いつもの場所で待っている。』」
「……は?」
鳴上は目を瞬かせた。「それは、……息子向け、ということかな?」
「はい。何分僕には連絡手段がないもので。それに、今はまだ彼に会うことが出来ませんから。」
「何故だ?」
「それは、あなた方でいう『仕事だから』ということで、宜しいでしょうか?」
南原は、口角を上げて鳴上を見下ろす。
鳴上は、ぎり、と音がするほど歯噛みしながら南原を睨んだ。「伝言は以上です。それでは皆様、ごきげんよう。」
南原はまた恭しく頭を垂れ、かき消える。
荒垣は舌打ちすると、コーヒーを煽った。
「アイツら、本当にこっちの都合お構いなしだな。」
苦々しい顔で荒垣は吐き捨てる。
「まあまあ、あの、今はその、従うしかないんじゃないですか?」
風花は荒垣をなだめる。「あの、鳴上部長さん、」
鳴上は、風花へと顔を向けた。
「なんでしょう?」
「先程のことから、荒垣さんと私は現在できることがなくなりました。よろしければ、荒垣さん共々神戸へ帰りたいと思うのですが、ダメでしょうか?」
風花が一生懸命笑顔を作りながら尋ねる。
「荒垣君は今回の報告書を必要な部分のみ作成後、神戸のシャドウワーカー付に戻す予定だ。もし、何もなければ山岸さんは荒垣の報告書作成が完了するまでゆっくり東京観光でもしていくがいい。秋葉原も随分変わってしまったから、色々見て回れると思う。」
鳴上は言い、美鶴へと顔を向けた。「美鶴様、これで宜しいですか?」
「ああ。山岸、よかったらもう1泊東京に泊まっていけ。一緒に夕食でもどうだ?」
美鶴が笑みを浮かべて訊けば、風花は満面の笑みになる。
「あ、いいですね。今日中に荒垣さんが報告書を作れればいいのですが。」
「おい、なんだか酷くないか?」
荒垣が渋い顔をした時、鳴上はソファを立った。
「美鶴様、私はこれで失礼いたします。荒垣君、山岸さんはもう少し美鶴様とお話していくといい。」
「はい。」
鳴上は会長執務室を出ると、未だ息子と会話するのに使ったことがない自身のスマートフォンを見てため息をついた。
鳴上悠が夕食の準備をしていたとき、自身のスマートフォンが音声着信を知らせた。
彼が手を軽くタオルで拭きながらスマートフォンに手を伸ばす。
「もしもし、」
『……悠、か?』
「えっ、父さん?!」
鳴上はあまりのことに驚いてスマートフォンを落としかけた。「な、何?」
『いや、何ということもないんだが、』
父の歯切れの悪い言い方に、鳴上は眉を顰めてソファに腰を落ち着ける。
「どうしたの?」
『本当なら、会って話をした方がいいかもしれないが、たまには電話でも、と思ってな。』
鳴上は話をしながら考えていたが、やがてあることに思い当たる。
「父さん、とりあえず、無理しなくてもいいからさ、」
『そ、そうか。』
「今、顎の下をいじってたりしない?」
照れた時顎の下を触る、というのは鳴上が覚えている数少ない親の仕草のうちの1つ。
『えっ、どうして、』
父の動揺した声、というのもレアだなと鳴上は思った。
「いつも父さんは何も話してくれなかったから、どんなことを考えているか知るためには仕草を見るしかなかったんだよ。」
『……そうだな。いつも一緒に居れなくて、話してやれなくてすまなかった。』
父の声が、大分落ち着きを取り戻してくる。
「いいよ、時間は巻き戻らないけれど、これから先ちゃんと話してくれれば、さ。」
鳴上は少し、心が温まってくる感覚を感じていた。
父親と話をするのも随分久しぶりな気がする。
『ある人物から伝言を預かった。今、伝えてもいいか?』
「うん、」
『『僕の復学は11月になりそうだ。11月4日に、いつもの場所で待っている。』、だそうだ。』
「父さん、……南原を知っているの?」
鳴上は他に誰も居ないのに、少し声のトーンを落とす。
『今日、初めて会った。お前の友人の1人なのか?』
「大学の友人の1人だよ。そうか、アイツ11月に復学するんだな……。」
鳴上は呟いた。
『少し聞きづらいことだから嫌なら答えなくてもいいんだが、』
「何?」
『その、南原君、というのは、超能力者か何かか?』
鳴上は、南原がどういう登場をしたのかなんとなく想像がついた。
大方いきなり現れたりなんかしたんだろう。
まだ魔女には会ったことはないが、自分の力を誇示するためにそういうことはやりそうだ。
「うん、まあ、色々人を超えてるかも、ね。怒らせると多分怖いよ?やったことないけど。」
間違ってない、と鳴上は心のなかで言い聞かせる。モノは言いようだ。
『そう、だな。ああ、そうだ、もう1つ。』
電話の向こうで、咳払いが聞こえた。『た、たまには俺にも電話を掛けても、いいんだからな?』
鳴上は頭の天辺から足の先まで真っ赤に染まるような感覚を味わう。
「あ、うん、分かった、よ?」
やっとのことで鳴上が答えると、電話の向こうでゴソゴソという音が聞こえた。
『じゃ、また。』
プツ、という音と共に通話が切れる。
鳴上はソファに体を預け、放心状態のまま天井を見上げた。
「最後にとんでもない事言ってたなー……。何だあれ?」
「部長、何してるんですか?」
青柳が、デスクの下から出てきた鳴上に声を掛けた。
鳴上は、1つ咳払いをする。
「何でもない。少し、勇気を出しただけだ。」
「そうですか、なんでもなければいいのですが。」
青柳は眼鏡のズレを直すと、鳴上のデスクの上に書類を置いた。「木村常務の法要概要、財産保持及び相続手続きについて業者と調整した資料です。内容を確認いただき承認をお願い致します。」
「分かった。」
鳴上は仕事モードに切り替わると、資料を手に取りパラパラと捲る。「大丈夫、この資料の通り進めてくれ。」
「畏まりました。」
青柳は軽く頭を下げると、自席に戻った。
2014年9月18日木曜日
『ねーねー、入っていい?』
リビングの窓の外から聞き覚えがある声を感じ、鳴上と花村は顔を見合わせる。
花村はレースカーテンを開けた。
「ヤマトタケル、何してんの?」
『うん、イザナギに聞きたいことがあってー。』
ヤマトタケルはベランダの手すりに座ってにっこり笑っている。『来ちゃった。てへ。』
「イザナギに?まあいいや、入ってこいよ。」
『わーい、やったー!』
ふわ、と窓を抜けヤマトタケルがリビングに入ってくる。
同時にイザナギとスサノオも姿を現した。
『俺に、用事?』
イザナギがヤマトタケルを見下ろす。
『俺も混ぜろって。』
スサノオがヤマトタケルの頭を軽く撫でると、ヤマトタケルはクスクスと笑った。『で、何よ?』
『えっと、僕、邪魔じゃない?』
ヤマトタケルが鳴上と花村を交互に見ると、2人は軽く微笑んだ。
「特に問題ないよ。というか、俺たちもその話に興味があるからね。」
鳴上の言葉に、ヤマトタケルはリビングのテーブルの隅の席に陣取る。
それを挟むようにイザナギとスサノオが座った。
どうやら彼らなりに気を使っているらしい、と気付き花村は微笑ましく思う。
『あのね、さっきまで桐条のデータベースに潜ってたんだけど、』
『よく見つからなかったな。』
イザナギの言葉に、ヤマトタケルはケラケラ笑った。
『へーきへーき。適当な桐条モバイルの電波塔から侵入したし。』
『で、?』
『うんとね、桐条の社員さんが木村さんのお母さんと接敵した時の報告書があったんだよね。』
「接敵?」
花村が眉を顰める。「だって、木村さんのお母さんはシンガポールにいたんだよな?」
『接敵、で残念ながら合ってるよ。だってその人、桐条の社員さんを殺そうと襲ったらしいから。』
ヤマトタケルは眉を顰める。『で、ここからが本題なんだけど、桐条の社員さんを襲った時、腕が伸びたっていう記述があったんだよ。』
『それは、アレか?御厨果音と同じ?』
スサノオの問いに、ヤマトタケルは肯定した。
『僕さ、御厨果音のようにあのショゴスから自分の細胞を分けられた奴がああなる、と思ってたんだけど、違うのかな?』
イザナギとスサノオは考え込み黙っている。
『もしかすると、事態は深刻なのかもしれないな。』
イザナギが、重い口を開いた。
ペルソナたちの隣でテキストを読んでいた鳴上と花村もイザナギを見る。『いや、でも、……。』
『いいから言ってみて?』
ヤマトタケルがイザナギの顔を覗きこんだ。
『スサノオ、木村家の2階のゴミ箱で見た化粧品の中身は生きていたんだよな?』
『ああ。確かに生きていた。ちゃんとクリーム状の細胞が……あっ』
スサノオがイザナギを見る。『まさか、あの化粧品を使っていた人は、全員御厨果音のようになる可能性がある、ってことか?』
スサノオの問いに、イザナギは頷いた。
『今まで、俺達は御厨果音の例しか知らなかった。原ショゴスである滝川紅葉の細胞を与えられた人間だけが腕が伸びたり人を襲ったりすると思っていた。だが、木村加奈子の例があるなら、話は別だ。多分、腕が伸びたり力が急激に強くなったりするのは、あの化粧品に含まれる細胞が起こしている現象だと思われる。』
『ちょっと待ってよ、確か会場にはたくさん人が居たよね?しかも、あの日来てない会員だって居るかもしれないよね?』
ヤマトタケルがスサノオをポンポン叩いた。
『ヤマトタケル、落ち着け。』
イザナギはやんわりとスサノオからヤマトタケルを放す。
『でもよ、どうすんだコレ。会員リストなんて警察は抑えてねーだろ?』
スサノオはイザナギに体を向けた。『人の特定なんか出来ねえぞ?』
『少し、待ってくれ。何か浮かびかけてるんだが、……。』
イザナギが視線を泳がせた時、鳴上からの視線を感じてそちらへ視線を向ける。
「イザナギ、俺も使えよ。」
鳴上が、人差し指で自分の頭をポンポン、と叩いた。
イザナギが鳴上の中に戻ってくる。
(少し整理してみようか。情報の開示を頼む。)
鳴上は本をを置き、目を閉じた。
鳴上は頭の中に流れる膨大な情報を整理しヒモ付けしていく。
『主、』
「今解っていることから推測されることは、りせからの情報にもあった、『レッドカンパニー』が頒布していた化粧品が、何かのトリガーになっている。ただ、あの化粧品を1,2度使ったぐらいでそういう体質に変化するとは考えにくい。恐らく、体質の変化は1本か、2本。あの化粧品を複数本使い続けるヘビーユーザーにだけ現れるものだと思う。」
鳴上は呟きながら、頭の中で更に情報を整理していく。「そして、会場でヤマトタケルが言っていた『ウェルカムドリンクに入っている幻覚剤』が覚せい剤のようなものだとするなら、常用性が高い危険薬物である可能性が高い。そして、化粧品で体質が変化した後に、危険薬物の症状である禁断症状に入ってしまった場合、『悪夢』そして『幻覚』を見る。化粧品を切らしてしまい、化粧品の効果を得られなくなって更に恐慌状態に陥り、体質のタガが外れて暴走してしまう。」
「確か、木村さんの親父さんが亡くなったのは8月31日、だったよな?8月からシンガポールに赴任している事を考えると、最後にCLUB緋色に行っているのは月齢的に考えて7月中旬。とすれば、タイムリミットは1ヶ月。それまでに体質を元に戻す方法とか調べて片を付けないとマズイのか。」
花村もテキストをソファに置くと腕を組んだ。「御厨果音の診察結果、何か出てねーかな?ヤマトタケル、どっかで調べられないか?」
『うん、調べてくる!』
ヤマトタケルが部屋を飛び出していく。
「あと証拠が残っているかもしれないのは、CLUB緋色のパーティー会場だった場所、か。絶対顧客リストはあるはずなんだよな。もう少しちゃんと探していれば見つかったかもしれないのにな。」
『陽介、今からでも行ってみるか?』
花村の呟きに、スサノオがニヤリと笑う。『俺ならなんか見つけられるかもよ?』
スサノオの様子を見て、花村は頭をガリガリ掻いた。
「悠、今からちと出かけてくる。」
「俺も行く。」
花村はスサノオを自分の中に戻しながらジャケットを羽織る。
鳴上もカバンを持って外へ出た。
「イザナギ、ヤマトタケルからの情報を逐次拾ってくれ。」
『了解した。』
「なあ、悠。CLUB緋色の現場って、今も警察が抑えてんのかな?」
花村が玄関のドアを開けながら鳴上に訊いた。
「……父さんに、電話してみるか。」
鳴上は、はあ、とため息をつくと、自身のスマートフォンから父の電話番号を呼び出す。「陽介は直斗に連絡を取ってくれ。人数が多い方がいいだろう。」
「じゃ、俺から連絡入れとくわ。」
花村も自身のスマートフォンを取り出した。
鳴上友樹は、丸の内にあるオフィスの自分の席で、今回の事件の資料を眺めていた。
シンガポールで発生した木村隆志と木村加奈子の件。御厨果音の件。そして、息子たちをマークしていた部下たちが見つけたCLUB緋色の件。穴あきだらけの情報で、何1つとしてまとまっていないが、おそらくそれを繋ぐピースは息子たちが握っているのだろう、という確信だけはあった。そうでなければ、息子たちがCLUB緋色に『招待』されるわけがない。
静かな部屋で、スマートフォンが音声着信を知らせる。
画面表示には、息子の名前が表示されていた。
「もしもし、」
『父さん?俺だけど。』
「どうした?」
『あの、さ。CLUB緋色の現場って、今どうなっているか分かる?』
いきなり回答しづらい質問が来て、鳴上は眉を顰める。
「何故、それを知りたいと思う?」
鳴上は訊きつつ、自分のパソコンのモニターに報告書を幾つか表示した。
『信じてくれないかもしれないけれど、もしかすると事件はまだ終わっていないかもしれないんだ。もう一度、現場を見たいんだけど、』
鳴上は、ふふ、と笑う。たまにはこういうのもいいだろう、と思う。
「悠、俺が行けば現場に入れる。時間が惜しいから新宿で落ち合おう。新宿駅についたら連絡しなさい。」
『分かった。着いたら連絡する。』
「じゃ、また後で。」
鳴上は通話が切れたスマートフォンを懐に収め、鞄を持って席を立つ。
「部長、どちらへ行かれますか?」
青柳が声を掛けた。
「新宿だ。今日はもう戻らない。」
「了解しました。」
青柳が第2総務部で情報共有するスケジューラに予定を書き込む。「お気をつけて。」
後日談、よくみたらいちまんよんせんじも書いてたね…2つに分けます
それでは次回もよろしくお願いします