ペルソナアフターパラレル   作:erupon

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※ペルソナ4原作後、大学生設定の二次創作です。
 息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。

※P4だけじゃなくP3成分も入ってきてます。
 なおこの小説を書いたときはまだP5発売されておりません。こわい


※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。

※ちょっと痛そうな表現ありますが、タグはこれで大丈夫なはず!だめだったら言って…
※ボーイズラブタグが有効になりました。編集するのはそろそろやめようと思うので、OKな人はぜひ引き続きどうぞ。


023.赤いサロン13(完結)

「うっわあ……。」

 新宿駅で鳴上と花村、直斗は鳴上の父と合流し、4人でCLUB緋色への出入口へと向かっていた。

 通路の壁や地面には銃痕と何か触手のようなもので破壊されたような跡が残って居て若干歩きづらくなっている。「この前は夜だったから全然気にしなかったんだけど、派手にやってるなあ。」

 花村が周りを見ながら呟く。

「『番人』が思ったより強くてね。荒垣君達と合流するまで戦線を維持するのが精一杯だった。」

 表情を変えずに答える友樹に、花村は肩を竦めた。

「あ、すみません、」

「いいんだ。我々が対応するにも限界があるから。しかも今回は市街地で大規模な戦闘ができなかったのも痛かった。」

「そこ、真面目に答えちゃうんだ……。」

 花村は思わず突っ込みを控えめに入れる。

『いいのか、それで。もっと突っ込む所あるだろう?』

 スサノオが、頭の中で呟いた。

(だって、そんな訳ないじゃんか、悠からそんなこと、1言も聞いてない。)

 花村が反論する。

『鳴上がイザナギ出すようになってから親父さんと会ったのか?』

(いや、会っていないはず。……なら、何故悠は平気な顔をしているんだよ?)

『鳴上はポーカーフェイスが得意だからな?』

(そういう問題じゃないだろう!)

 花村がそう考えた時、前の2人の歩みが止まった。

 目の前には、例の鉄の扉があった。

 友樹が無造作にガチャり、と扉を開ける。

「さあ、行こうか。」

 

 友樹が先頭で扉の奥へ行き、その後を追って悠と花村が続いた。

 暗い通路を抜ける途中にある電源盤を操作して通電してから進むと、階段の先には赤いベルベットで飾られた部屋が明るくなっている。

「陽介、」

 悠が花村に耳打ちする。「スサノオを纏って探してくれ。」

 そのまま悠は友樹を伴ってボールルームへ行った。その隙に花村がスサノオを纏う。

 そして、鳴上親子を見た花村と直斗は、顔を見合わせ1言呟いた。

「やっぱ、そうだよなあ。」

「やっぱり、そう見えますよね……。」

 2人は周囲を見回しながら魔法反応がある場所を探し始める。

『えっと、バーカーウンターの裏になんかありそう。』

 スサノオが指摘した場所に花村が回り込めば、小さな箱が落ちていた。

「何これ?」

『待ってくれ。これ、嫌な感じがする。』

 灯りにかざすと、箱にはリキッドファンデーションBBの文字が見える。

「こんなパッケージなのか。確かに中身は生きてる細胞がクリーム状になってるな。」

 気持ちわりい、と花村は眉を顰めた。「つか、顧客リストを探さねーと、」

 化粧品をポケットに突っ込み、花村はバーカウンターを出る。

「陽介、」

 ボールルームから、悠の声がしてそちらへ視線を向ける。

「どうした?」

「あれ、なんだろう?父さんが見つけたんだけど?」

 悠が指さしたのは、天井にある緑色のボタンであった。

「ボタンじゃね?」

 花村は言い、肩を竦める。

『直斗、赤いベルベットの裏に隠し扉がある。僅かに魔力の臭いがする。』

 ヤマトタケルの言葉に直斗はある壁のベルベットを捲ると、壁が四角く切り取られていた。

「先輩、これって、」

 悠はしばし考えると、1言呟く。

「ゲート、か。だが、今は閉じているようだな。」

「あのボタンを押したら開いたり、しねえかな?」

 花村が言った時、友樹はおもむろに鞄から拳銃を取り出していた。「ちょ、それ、」

「装填されているのはゴム弾だ。それならば、あのボタンを押しても破壊しないだろう?」

 事も無げに友樹は言い、銃のセフティロックを解除する。

『なんつうか、もう色々おかしいな、あの人。』

 スサノオが、半ば呆れて呟いた時、友樹は発砲した。

 1回でゴム弾はボタンに命中し、次の瞬間、バチバチ、という耳障りな音と共にゲートに魔力が満ちる。

「悠、ちと行ってくる。すぐに戻るよ。」

「単独行動は危険です。先輩方2人で行ってきてください。」

 直斗はニコ、と笑った。悠と花村は直斗へと振り返る。

「何故?」

「単純なことです。知識とパワーが有る鳴上先輩と、スピードと探査能力が高い花村先輩で行動されたほうが、何かと好都合だと思いましたので。それに、」

 直斗は友樹を見上げる。「鳴上先輩のお父様に、僕の両親の話を聞けたら、と思いまして。」

「分かった。じゃあ、少しの間待っててくれ。必ず戻るから。」

「任しとけ、しっかりやってくるから。」

 悠と花村がゲートの奥へ踏入り姿を消した。

 直斗は2人を見送った後、友樹を改めて見上げ笑顔を作る。

「さて、俺は君達が何を聞きたがっているか解っているつもりだが。」

 友樹は笑みをたたえて直斗を見た。「立ち話もなんだから、そこのソファに座って話そうか。」

「そうですね。」

 2人はボールルームの奥にあるステージの上にあるソファに腰を下ろす。

「さて、何から話そうか。」

「そうですね、とりあえず、……僕の両親に、会ったことは有りますか?」

 直斗は口角を上げながら、呟くように言った。 

「白鐘君とは何度か現場で一緒になったことがある。事故に遭われたんだろう?探偵として才能を遺憾なく発揮していたのに残念なことだ。」

 友樹は目を細める。

「そうですか。僕は、実のところ余り両親の記憶がありません。なので、分かる範囲でいいのでどんな人だったか、教えていただけませんか?」

 直斗の言葉に、友樹は1つ頷いた。

 

 ゲートを通った先の風景は、どこかの研究施設のような場所であった。

 イザナギとスサノオが現出し、周りを警戒する。

『ここ、かなーりヤバイな?』

 イザナギがニヤ、と笑うと、イザナギはため息をついた。

『面白がるな、スサノオ。どうやらショゴスを培養しているようだ。例の化粧品の原料だろう。』

 冷静に解説するイザナギに鳴上は花村の顔を見て肩を竦める。

「とにかく、探すのは顧客リスト。ここはもう、ゲートを破壊してしまえば誰も入れない筈だから。」

 鳴上が、自分に言い聞かせるように呟いた。

「スサノオ、なんかそれっぽいのねえ?」

『つーか、ここ自体が魔力の渦みたいになってるから、そこから拾うのが大変だぞ。』

 スサノオは目を閉じ全体に翡翠色の光を飛ばす。

「うぁ、ぐ……、」

 花村が頭を抑えてよろめいた。

「陽介!」

 鳴上が花村を横から支え、ゆっくりと腰を下ろさせる。「何が、あった?」

 花村は自分の両手を呆然としながら眺めた。

「黒い、魔力の渦がどっと押し寄せてきて、一瞬気が遠くなった。」

『チッ、早く見つけねえと俺達より主のほうがヤバイ。』

 スサノオは自分の輪郭にブロックノイズが入りだし、眉を顰める。

『スサノオ、さっきサーチした時に魔力が感じられなかったのは何処だ?』

 イザナギがスサノオに確認すると、スサノオは部屋の隅を指さした。

 鳴上と花村がその場に走り寄ると、キングファイルとノートパソコンが置いてある。

 鳴上はキングファイルをパラパラと捲った。

「これは、……例の化粧品のレシピ?研究レポートのようなものも挟まってる?……こんな時化学系講義を取ってないのが悔やまれるな。」

「その辺は直斗と桐条の専門家連中に見てもらおう。」

 花村が言いながら振り返ると、直径が5メートルほどの球体が2体転がってくるのが見えた。「うへ、遅かったか。」

 悪夢に出てくる何かのような黒っぽい玉虫色の球体は、悪臭を放ちながらじわじわと近づいてくる。

『ショゴスか……培養している分の他にも居たのか。』

 イザナギが忌々しげに呟いた。

『とりあえず潰しとくか?』

 パキパキ、と指を鳴らしながらスサノオがイザナギをちら、と見る。

『じゃ、魔法スキルで攻撃だ。物理はほぼ効かないらしい。』

『おっけー、風系統はちゃんと効くんだよな?』

『火と電撃以外なら大丈夫だ。』

 イザナギの言葉に、スサノオが口角を上げる。

「陽介、一気に方を付けるぞ。」

 鳴上の言葉に、花村はハハハ、と笑った。

「了解、下手打つなよ、相棒?」

「勿論だ。」

 花村は、先制攻撃で魔法を構築しスキルを発動させた。

『マハガルダイン』

 次の瞬間、大きな竜巻がショゴスに襲いかかる。自分の身を暴風で削られ、ショゴスたちは『テケ・リ・リ』、と鳴いた。

 鳴上はその2体に対し追撃でスキルを発動する。

『マハブフダイン』

 絶対零度の凍気が周囲の水蒸気を凍らせ白い霧となり、ガルダインの暴風と合わさり2体のショゴスを一気に凍結させた。凍結したショゴスはガルダインの余波で粉々に砕け散る。

 ブフダインの凍気の余波は更に工場の一部を破壊した。

 ボタボタと破れたホースから白い液体が落ち、床でゆるゆると蠢いている。

 花村は思わず視線を逸らし、見ないふりをした。

「悠、持ってくもんだけ持ってさっさと出よう。気味悪いぜ、ここ。」

「ああ、またあんなのが出てこられても困るしな。」

 2人はキングファイルとノートパソコンを抱えると出入口になっているゲートをくぐった。

 

 

「先輩!」

 ゲートから走り出てきた悠と花村を見て、直斗が手を振った。

 友樹は1つ息を吐き、笑みを浮かべる。

「良く無事に帰ってきたな。良かったよ。」

「戻ってくるつもりだったからね。」

 悠も笑顔になった。

「そうだ、直斗。ノートパソコンとキングファイルを見つけたんだ。ちょっと中身を確認してくれねえかな?」

 花村が抱えてきたノートパソコンとACアダプタを差し出した。

「キングファイルは俺が見よう。」

 友樹の言葉に、悠はキングファイルを差し出した。

 直斗は電源を繋いでノートパソコンを起動する。

「ヤマトタケル、内容のチェックをお願いします。」

『りょーかい!』

 直斗から離れて現出したヤマトタケルがパソコンのモニターに手を突っ込んだ。

 しばらく目を閉じていたが、やがてパソコンの画面にとあるExcelファイルが表示される。『顧客リストあったよ!』

「確かに、日付と人物名と同伴者、住所がリストになっていますね。精査しないとなんとも言えませんが、ざっと見て同伴者を含めて600名ほど居るかもしれませんね。」

 直斗は呟く。

「600人、か……!しかも結構著名人が多いんだろ?」

 花村の問いに、直斗は頷いた。

「これは早急に手を打たないと、日本の政財界が混乱に陥るかもしれません。」

「悠、キングファイルの方は……?」

 花村は悠と友樹へ振り返る。

「父さんがさっきから無言なんだよね。」

 悠は苦笑いを浮かべた。

 友樹はキングファイルをずっと眺めていた。

「悠、この化粧品のサンプルはあるか?」

 友樹は悠へ視線を上げる。

 花村はポケットから化粧品の箱を出した。

「これ?」

 友樹は花村から化粧品を受け取る。

「資料を見る限り、一定期間を経過すると、化粧品の細胞の影響はなくなるらしい。ただし、ドリンクに混ぜられていた薬が問題だ。」

 友樹は花村から受け取った化粧品とキングファイルの中の資料を交互に見比べながら呟いた。

「やっぱり、覚せい剤みたいなもの?」

 悠が聞くと、友樹は1つ頷く。

「化学式を見る限りアンフェタミンに近い物質だな。覚せい剤として指定されている禁止薬物だ。」

『ほら、言ったとおり。』

 ヤマトタケルがドヤ顔で胸を張った。

「父さん、その化粧品を連続して使っている人が、後1ヶ月ぐらいで木村さんのお母さんと同じ状態になる可能性があるんだ。父さんの方から、薬物依存治療について関連省庁に働きかけられないかな?」

 悠の言葉に、友樹は少し思考を巡らせる。

「悠、木村常務の奥様について何を知っている?」

「腕が伸びたり急に常人離れした力が発揮されたりとか、したんじゃないかなー、と思ってるけど。」

 友樹が悠へ視線を向けた。

「何故そう思う?」

「御厨果音と交戦した時の状況から、そう推測してる。」

「そうか、あの報告書にあった2人、というのは君達か。」

 友樹の言葉に、花村と直斗は顔を見合わせる。「なるほど、な。じゃあ、御厨果音の診察結果として、何も異常が発見出来なかった、ということはもう知っているかい?」

「頭部のCTスキャンは撮ったの?」

 悠の問いに友樹は首を横に振った。

「左腕が伸びた、という報告から、首から下のCTスキャンおよびMRIは撮った筈だが、頭部診察報告は無かったな。……悠達は、あの変化は化粧品がトリガーになっていると考えているのか?」

「うん。化粧品自体は顔に塗るものだから、顔から脳髄に細胞が到達した時に変化が生じるんじゃないかと推測してるんだけど?」

「御厨果音については至急頭部MRIおよびCTスキャンを撮るよう要請しよう。後は、薬物反応検査だな。彼女から何かしら出れば、加療の必要性についても信ぴょう性が増すだろうからね。腰が重い奴らへの説得もしやすいだろう。」

 友樹は自分のBlackBerryを懐から取り出し電話を掛けた。「鳴上だ。至急新宿のCLUB緋色に1番近いホテルのエントランスに人を1人寄越してくれ。『緋色』の内偵の件で証拠物件及び試料を引き渡すからラボで解析させろ。後、御厨果音の精密検査に頭部CTとMRI、毛髪からの薬物検査を追加してその結果をすぐに報告するように。」

 友樹は通話を切ると、ソファから降り立つ。

「信じて、くれるんだね。」

「子供を信用しない親はいないだろ?」

 悠の言葉に、友樹は苦笑いを零した。「今まで何もしてやれなくて、本当に済まなかった。今から取り返せるかどうかは分からんが、なるたけのことはしてやりたいと思っているんだ、コレでも、な。」

「そっか。……」

 悠の肩に、花村がぽん、と手を置く。

「良かったんじゃねーの?親父さんと最初の一歩、って奴?」

「そう、だな。」

 悠は笑みを浮かべた。「そうだ、父さん。1つ、我侭をきいてもらっても、いいかな?」

「何だ?」

「今度の日曜日、陽介と直斗と一緒に母さんのビーフシチューを食べに行ってもいい?」

 花村と直斗は顔を見合わせる。友樹はクス、と笑った。

「春奈のビーフシチューか。そういや最近俺も食べてないな。言っておくから、食べに来なさい。」

「うん、分かった。時間は後でメールしてよ。」

「ああ。」

 友樹と悠は並んでCLUB緋色を出て行く。花村と直斗も後から続いた。

 

 誰も居ない赤いサロンで、パタン、と扉が閉じる音がする。

 それと同時に、音もなくゲートが崩れていった。

 

 

赤いサロン:終わり

 

 




『赤いサロン』はおしまいです。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

次回の連載からは週2ペースにしようかなと思ってます
(以外と毎日投稿たいへんだった)

それではまた次回お会いしましょう。
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