ペルソナアフターパラレル   作:erupon

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※ペルソナ4原作後、大学生設定の二次創作です。
 息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。

※P4だけじゃなくP3成分も入ってきてます。
 なおこの小説を書いたときはまだP5発売されておりません。こわい


※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。

※ちょっと痛そうな表現ありますが、タグはこれで大丈夫なはず!だめだったら言って…
※ボーイズラブタグが有効になりました。編集するのはそろそろやめようと思うので、OKな人はぜひ引き続きどうぞ。


027.南の大女と北の戦女2

 日付:9月23日火曜日

 

 新宿駅に程近いシアトル系コーヒーショップで、巽完二と白鐘直斗は奥のソファ席で向い合ってカフェラテを飲んでいた。

「急に会いたい、というから来たけどよ、どうしたんだ?」

 巽は下ろしてきた前髪を少し気にしながら直斗へと視線を向ける。

「完二君、先日荒井さんから荷物を預かったかと思うのですが?」

 直斗は、飲みかけのカフェラテをテーブルに置いた。「今それは、どちらに?」

「ああ、アレは、衣装と一緒に今シンガポールに送っている。船便だから、シンガポール着は九月末ぐらいじゃないか?」

「やはり、そうなのですね」

 直斗は、鳴上雅也が言っていた事が正しかったことを知り、眉を顰める。

「なあ、アレの中身は何なんだ?」

 巽も飲みかけのカフェラテをテーブルに置くと腕組みをした。

「完二君には知る権利が有ると思うのでお話しますが、内密にお願いしますね」

 直斗は声を低くし、囁くように念を押す。

「ああ。……で?」

「中身は『魔道書』です。尤も、僕の依頼主の情報によれば、ですが」

「ま、どうしょ?」

 巽はよくわからない、といった風情で首を捻った。「それって、よくゲームなんかに出てくる魔法が書いてある本、みたいなアレか?」

 直斗はその問いに肯定する。

「はい、まさにそれです」

「へ、いや、そんな馬鹿な」

 巽は驚きの余り目を大きく見開く。

「あんなのゲームの中だけの」

「実際、今回のものではありませんが本物は見たことが有ります」

 直斗は視線を彷徨わせた。

「は、はあ……」

「しかも、今回の魔道書は『実際に使える』ものだったらしく、元々置いてあった国から回収のために諜報員が来ているようなのです」

 巽は、腕組みをしたまま考えていた。

「もしかすると、その諜報員、ってのに会ったことがあるかもしれねえわ」

「えっ?!」

 今度は直斗が驚きで目を丸くする。

「だ、大丈夫だったんですか?」

「昨日学校に行ったら、俺が縫製作業してた部屋が荒らされていた。そして、俺はそいつらと行き違った。……一人は、金髪の女で、一人は白髪の男。両方共黒いスーツを着てたな」

「荷物はいつ発送されたんですか?」

「金曜日。木曜にほぼ縫製が終わったところで、突然荒井先輩が今から服をチェックしたい、って言ってわざわざ夕方から学校に来たんだよ」

 直斗が腕組みをし、右手を口元に寄せた。

「まるで、近々自分が襲われるのが解っていたかのような行動ですね。当事者ではない僕から見ると、自分が置かれた状況が切迫しているのは解っていたが、それ以上にやはり自分がデザインした服の仕上げまでは手を掛けたかった、というふうに見えますが」

「だから先輩が木曜に連絡をくれたとき、携帯じゃなくて公衆電話だったのか」

「少なくとも服が仕上がるまでは見つかりたくなかった、ということなんでしょう」

 巽は悲しそうに視線を揺らし、テーブルに置かれた自分のカフェラテを見つめる。

「俺、今ならあの時の花村先輩の気持ちが解る気がする」

「僕の予想が間違っていなければ、荒井さんの死の原因はその二人組にあります。彼らより先に魔道書を回収しなければなりません」

「ということは、そいつらはまた俺の前に現れるってことか」

 巽の瞳に仄暗い色が灯った気がして直斗は眉を顰めた。

「完二君」

「いや、とって食おうっていう訳じゃねえ。一発ぶん殴らねえと気がすまねえってだけだ」

 巽は苦笑いと共に自分のカフェラテを一気に煽る。

「俺達は間違えねえよ。……生田目のときと、同じだ。あの時はまだガキだったけれど、俺らはもうあの事件を乗り越えた経験がある」

「ええ。そうですね」

 巽がニヤッと笑う様を見ながら、直斗は微笑んだ。

 

 ◇◇◇

 

 その音声着信があった時、俺、こと鳴上悠は丁度地元のスーパーで夕食の材料を物色中だった。

「私だ」

 俺がそう言った次の瞬間、電話の向こうで何かを吹いたような音の後笑い声が漏れる。

『も、もしもし? 悠、よね?』

 その声の主は、確かに自分の母親、鳴上春奈だった。

 スーパーの壁に掛けられた時計を確認すると、夕方五時過ぎである。恐らくはまだ会社にいるのだろう母は、何かのツボに入ったらしく少しの間忍び笑いをしていた。『はー、面白かった!』

 俺は気にせず、小アジが入ったパックを買い物カゴに入れる。

 今晩はアジの南蛮漬けとサラダと香の物、味噌汁は揚げとワカメでいいかな、と考えた時、まだ母親から要件を聞いてないことに気がついた。

「母さん、今日は何?」

『あっ、忘れるところだったわ! ええと、この前家に来てた女の子って、白鐘、直斗さんよね?』

「そうだけど、それがどうしたの?」

『十月一日からシンガポールで『クールジャパンフェスタ』が開催されるのだけど、その学生スタッフの中に名前を見つけたの』

「学生、スタッフ?」

『正確に言えば、服飾専門学校でデザインコンペをして選ばれた服でファッションショーをするのだけど、そのデザイナーの通訳として名前が入っているわ』

「通訳?」

 直斗が通訳、というイメージが沸かず、俺は首を傾げた。

『ええ、ペアになっているのは巽完ニ君。……もしかして、知り合い?』

「うん、そうだけど。……もしかしてそのイベント、桐条グループも協賛してるの?」

『桐条スタイルとキリジョウモバイル、ブックオフィスキリジョーはスポンサーとして名を連ねているわね。だから、ウチの国際部が運営事務をフォローアップしてるのよ』

「ふうん……」

 俺は生返事を返しながら、サラダに使う葉物が高いなー、別の物で代用できないかなー、と考えていた。

『でね、ここからは提案なんだけど』

 何故か、母親の声が急にヒソヒソ声になる。『陽介君と二人で行ってみない? シンガポール』

「……えっ?!」

 思わず大きな声で聞き返してしまい、周囲から奇異の目で見られてしまった。「でも、今からチケットとかホテルとか取れ……?」

『パンケーキの店に比べりゃ楽勝なんですけど?』

 ああ、そうだった。この人、マスコミの取材予約すら取れないと話題のハワイアンパンケーキの店の予約を三日前にねじ込んだんだっけ。

「えっと、それは、完二と直斗と同じ便の近い席とか同じホテルの部屋とか用意してもらえる、ってことでいいのかな?」

 ついでに無理そうな条件をさらに付け足してみる。

『ああ、折角だし窓側の方がいいでしょ? ビジネスクラス取っちゃうからゆっくり遊んでいらっしゃいな』

 あれ? なんかもう俺と陽介は行くのが確定? 

「俺、ほんとにシンガポールに行くの?」

『この前あなた達に迷惑かけちゃったから。お詫びとして受け取って? あなた達も、巽君が縫製した服でモデルがランウェイを歩く姿を見たいでしょ?』

「まあ、そりゃ、うん……」

『じゃ、決まりね。陽介君にも言っておいてね。じゃあまた』

 プツ、と電話が切れ、そこで俺はとんでもないことを約束してしまったことに気づいた。

 頭の中で色々なことがぐるぐる回る。ああ、これはマズイ展開になった。

「こういう時って、絶対何か起こるんだよなあ……陽介になんて言おう?」

 俺は、たまたま目の前に陳列されていたカリフラワーを買い物かごに入れる。

 今日の夕食はアジの南蛮漬けとカリフラワーとオリーブのマヨサラダ、浅漬と味噌汁、ご飯でいいや、とため息を付きながら思った。

 

 ◇◇◇

 

「陽介、一つ謝らないといけないことがある」

 夕食をいつも通り二人で食べ終わった時、酷く真剣な顔で相棒が言った。

 俺、っつーか花村陽介は食後のコーヒーに口をつけながら首を傾げる。

「何かあったのか?」

 聞きながら、俺は手にしていたコーヒーカップをテーブルに置いて口に含んだコーヒーを急いで飲み込んだ。いきなり驚くような事を言われて吹き出したりカップを取り落とすことはしたくない。

「母さんが、今月末から一週間ぐらいシンガポール旅行を手配してくれることになった」

「は?」

 俺は、申し訳無さ全開のオーラを発しながら俯く相棒をしげしげと見た。「どういうこと?」

「今日の夕方、母さんから電話があってさ、……」

 相棒は、持ち前の言霊使いのスキルを発揮しながら夕方あった電話のことを説明する。それでも俺には腑に落ちないことがあった。

「どうして、そこまで俺達のためにお金をかけてくれるんだ?」

 海外には中学卒業時に一度ハワイには行ったことはあるけれど、ビジネスクラスなんてお金がかかる旅ではなかった気がする。

「多分、今のポジションになってから使えるお金が増えたんだろうね」

 悠は、苦笑いを浮かべた。アレ、俺また何か地雷を踏んだ? 

「あ、いや、その」

「で、多分今まで俺と向き合ってこなかった分を取り返そうとしているのでは、と俺は考えている、けれど」

 あくまでも推測だよ? と悠は言い、やっと笑みを浮かべた。

 俺は、悠のそばに寄って、後ろからぎゅ、と抱きしめてやる。なんとなく、そうしたほうがいい気がしたから。

「じゃ、俺達はゆっくり楽しまなきゃな、その旅行」

「ああ、そうだな」

 悠は、ホッとしたような声で答えた。

「なんだかんだ言いつつ、悠の父さんや母さん達は、俺達のこと、認めてくれてるのかな?」

 俺がぽろっと零した言葉に反応するように、悠は俺の手をぎゅ、と握りしめる。

「だと、いいけど」

 悠はそういうと、自分の体に回された腕をやんわりとほどいて振り返った。

 そこには、見惚れるような笑みを浮かべた恋人の顔があって、俺は思わず顔が暑くなる。

「ちょ、お前、それ反そ……」

 悠は、俺が言いかけた言葉を飲み込むように、やさしく俺を引き寄せ軽いキスを落とした。

「……直斗達にも、明日連絡しておこう」 

「ああ。忙しいかもしれないけれど完二にも声をかけて、一緒に食事でもできるといいな」

 俺達は、ハハハ、と笑い互いに寄り添う。

 互いが触れ合う場所が心地よい暖かさに感じられて、俺は笑みを浮かべながら目を閉じた。

 

 ◇◇◇

 

 警察庁警備局公安課のミーティングルームでは、特殊組織犯罪対策室に所属する公安警察官が揃って現況報告を行っていた。

 目を閉じて話を聞いていた鳴上雅也は、はあ、とため息をつくと席を立つ。

「鳴上! 何処へ行くんだ?」

 室長補佐である東理事官が咎めるように声を掛けた。「まだお前も含めて全員の報告が終わってないんだぞ!」

 鳴上は振り返って東の方を見、頭をポリポリ掻く。

「いや、もう解ってるでしょ、報告なんて」

 鳴上ははあ、とオーバー気味に肩を竦める。

「俺達は、監視対象の『猟犬』をロストしたんだ。その結果、泳がせていた『膨らんだ女教団』の拠点の一つが強襲され、一人だけ何故か別の場所で浮かんだけれど、拠点にいたカルトのメンバーは全滅してしまった」

 そして、ジロリと東を睨んだ。

「『大失態』以外の言葉があるなら是非お聞かせ願いたいですな。東理事官?」

「鳴上ぃ!」

 鳴上は、東の顔が真っ赤に染まっていくのを見た。額には青筋がピキピキと浮かび上がっている。

「気に入らなければ、いつでも内調に戻して頂いても構わないのですがね? 俺としては」

 鳴上はミーティングルームを出ると扉を閉じた。

 男子トイレへゆっくりした足取りで向かいながら、彼は今までの状況を思い返す。 

(『猟犬』が行方知れずになるのは解っていたが、まさか東理事官からの圧力で人員を割くことが出来なかったとは、ね。今回の件では恐らく関係ないのだろうが、逆にこちらを監視したほうがいいのかもしれないな)

 不意に鳴上の個人持ちの端末が音声着信を知らせた。

『鳴上さんですか? 北島です』

「悪いね、時間外労働させちゃって」

 鳴上が申し訳無さそうに言うと、北島はフフ、と笑う。

『少しは申し訳ない、と思って下さいよ? これでも部長の目を掠めるのは大変なんですから』

「その代わり、そっちが欲しい、って言ってくる情報は流してるだろ、ギブアンドテイクって奴じゃないか」

『そうでしたね』

 鳴上は周りを見回し、空いているミーティングルームにそっと入り込むと鍵をかけた。

 部屋の奥にある小さなボックスのスイッチを入れると、壁からジジジ、というノイズが聞こえてくる。

「今、消音装置を作動させた。状況はどうだ?」

『極めて最悪、と言わざるを得ませんね』

 北島は言葉の端でまた笑いを零した。

「最悪、とは?」

『『猟犬』は中国大使館に入館後、大使の公用車でロシア大使館に向かいました。現在ロシアは日本人にビザの発給はしていませんので、これ以上彼らに干渉するのは不可能だと思われます』

 鳴上は天井を仰ぐ。

「分かった。今までありがとう」

『いえいえ。また何か有りましたら第二総務部までご用命ください。では』

 通話が切れる。

(まさに最悪のシナリオに向かって進んでるな。できれば『猟犬』を足止めして白鐘の援護がしたかったが、それも敵わない、か)

 鳴上は嘆息すると、ミーティングルームの消音装置の電源を切った。

「そろそろトイレから戻らないと、理事官うるさいからなー」

 ミーティングルームから出ると、素知らぬ顔で特殊組織犯罪対策室のミーティングに戻る。

「鳴上、後はお前の報告だけだぞ」

 小声で同僚が鳴上に耳打ちした。鳴上は頷くと、東理事官、と声を掛ける。

「おう、後はお前だけだぞ」

 東は鳴上を睨んだ。

「えー、『猟犬』は中国大使館に入りました。その後、中国大使館の公用車でロシア大使館に向かった、との情報が入っております」

 鳴上が知らん顔で言うと、他の公安警察官が互いの顔を困惑げに見回す。

「本当か? 鳴上」

 東が聞くと、鳴上は肩を竦めた。

「まあ結論はただ一つ。……変わらず、『逃げられた』ってとこでしょうかね」

 

 ◇◇◇

 

『イザナギ! スサノオ!』

 鳴上と花村が住むマンションの屋上で、ヤマトタケルが呼ぶと、マンションからイザナギとスサノオがフワリと上がってきた。

『よう、何か分かったか?』

 スサノオが聞くと、ヤマトタケルが肯定する。

『今回ターゲットになってるのはサハリン奥地にある通称『屍人教会』にあった『nyhargo Кодекс』で間違いないよ』

『屍人教会?』

 イザナギが眉を顰める。

『まさか、『ナイハーゴ写本』のロシア語版が存在する……?」

『その、『ナイハーゴ写本』って何よ?』

 

 スサノオの問いに、イザナギは思考を巡らせた。

『いろいろなタイプの生きている死者について書いてある本で、ゾンビを作る呪文やゾンビを呼び寄せる呪文、ゾンビを塵と化する呪文が書いてある、筈だ。ただ、翻訳されたものだから』

『そっか、原本を翻訳した時に、呪文が無くなっている可能性もあるんだね』

 ヤマトタケルは肩を竦めた。「どうして、こんな本を翻訳しようなんて思ったんだろうね?』

『さあ?』

 スサノオは首を横に振る。

『それこそ本人じゃねえと分からないかもな』

『明日は一日主から離れていよう。どうも主達は巽と会うかもしれないんだ』

『無用に俺達の存在を晒しても仕方ない、か。タケミカヅチにも会ってみたいんだけどなあ』

 イザナギの提案に、スサノオはフェンスに寄りかかりながら空を見上げた。

 




さて、第二話です。
相変わらずあっちこっちで事態は動いております。


それではまた次回お会いしましょう。
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