ペルソナアフターパラレル   作:erupon

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※ペルソナ4原作後、大学生設定の二次創作です。
 息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。

※P4だけじゃなくP3成分も入ってきてます。
 なおこの小説を書いたときはまだP5発売されておりません。こわい


※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。

※ちょっと痛そうな表現ありますが、タグはこれで大丈夫なはず!だめだったら言って…
※ボーイズラブタグが有効になりました。編集するのはそろそろやめようと思うので、OKな人はぜひ引き続きどうぞ。


028.南の大女と北の戦女3

 

 日付:9月?? 日? 曜日

 

 無限に広がる、全てが青に染められた世界。

 その空間には、女性が一人だけ座っていた。

 女性は裏が白地に黒い道化の仮面が描かれたカードを一山、黒地に白い道化の仮面が描かれたカードを一山目の前に置くと、何かの『音』を発する。

 音が響き渡った時、タロットカードは勝手に混ざりあいある形を描いた。

 円形に十二枚のカードが二枚ずつ置かれ、円の中には四枚のカードが表の状態で展開されている。

 パチン、と女性が指を鳴らすと、さも当然のように円形に置かれたカードが表に開かれた。

「んー、マズイ、かな」

 女性はブルネットの髪先をいじりながらカードをじっと見ている。

 しばらく見るも、カードはやはりそのままだった。

「海外に行かれると、私の『目』も『力』も届きづらくなるわね」

 残ったカードの山から四枚のカードを引き開くと、その内容に女性はフワリと笑う。

「そうね、彼らを信頼するのもまた、『見守る者』としての務め、ってやつかしら」

 女性の手には、愚者、魔術師、運命、皇帝の大アルカナのカードがあった。

『主、そろそろお戻りにならないと……』

 男の声に、女性は顔を上げる。

「そうね」

 女性がカードに対して右手を左から右へ払うような仕草をすると、タロットカードは元の二山に戻った。

「そうだ。神羅」

『はい、何でしょうか?』

 神羅、と呼ばれた先ほどの声が聞こえる。女性がカードの山に手をかざすと、カードは何処かへ消え去った。

「ちょっと頼みたいことがあるのだけど?」

『私にできる事であれば、なんなりと』

 男の声に、女性は口角を上げる。左手の平を上に向け、そこへ息を吹きかけるとシンプルなリングが現れた。リングはすぐに光を帯び、消える。

「『皇帝』にメッセージを届けてくれる?」

『畏まりました』

 女性が目を閉じると、青い空間から消失した。

 

 ◇◇◇

 

 日付:9月24日水曜日? 

 

 立ち込める湯気、濡れた床や壁。天井からは、水滴が垂れる。

 忘れたい過去、というものは誰しもあるものだ。

 その場所は、俺の中でもかなりの上位にランクインする『忘れたい過去』。

 俺があの事件に巻き込まれた当時抱いていたモヤモヤや苛立ちが創りだした、テレビの中のダンジョン『熱気立つ大浴場』だった。

 

 俺は、暑さもあって袖で汗を拭った。

「あれ、これってウチの作務衣じゃ……?」

 そこでよく自分の体を見てみれば、実家の手伝いをしていた時によく着ていた紫がかった紺色の作務衣に黒い鼻緒の雪駄を履いた、極めてラフな格好の下に何かの鎧を着ている。

 作務衣は東京で一人暮しをはじめるのに当たって何着か持ってきたが、この色の作務衣は持ってきていなかったはずだ。

 そもそも、鎧なんて全てテレビのエントランスホールに置いてきている。

「なるほど、こりゃ夢だな」

 そこまで理解して、あることを思い出した。

 高校一年当時、例の事件に巻き込まれてペルソナという力を手に入れてからテレビによく仲間と共に行っていたが、鳴上先輩の方針か気遣いからか、自分が創りだしたダンジョンには一度も入ったことがなかった。

 ふと気になりりせや天城先輩、直斗にも訊いたが、やはり入ったことは無かったようだ。

 つまり、このダンジョンは自分にとって全くの初見であるということでもある。

 外への出口は、と振り返ればあるはずの入口はなく、思わず苦笑いが漏れた。

 俺は傍らに転がっていたメガバックラーを装備すると、意識を集中した。

 意識がアルカナカード『皇帝』のイメージになり、青い光を帯びてくるくると回りながら降りてくる。

「ペルソナ!」

 いつもの通り、右アッパーでカードを割れば、現れたのは赤いロボットのような大きな体躯をもつ自分のペルソナ、『ロクテンマオウ』だった。

「久しぶりだな、俺」

 俺の言葉に、ロクテンマオウが頷く。

「よっしゃ、行くか!」

 自分に喝を入れ、俺はダンジョンを歩き始めた。

 ダンジョンに居るシャドウをやり過ごし、やり過ごせない個体は物理で撃破しつつダンジョンの奥へと進みながら、俺は三年前のことを思い出していた。

 本当なら一人でダンジョンなんか登らないし、そもそも一人でテレビに入らない、というのが仲間で決めた唯一の決まり事だった。

「本当に何か遭った時に、助けも呼べずシャドウに襲われるのが一番マズイんだ。だから、もし行くなら二人以上、できればナビができるクマかりせを入れること。これだけは絶対だから」

 諭すように俺に言った時の、鳴上先輩の真剣な表情と、俺が一言「了解ッス」と言った時に頷きながらうっすら? と笑みを作った表情と。

 裏では『仮面野郎』と揶揄される程に表情が乏しかったあの人にも、こんな顔が出来るのかと内心驚きながらもどこか安心したのもいい思い出だ。

 自分の悩みも真剣に聞いてくれて、一緒に考えてくれて、それでいてテレビの中では複数のペルソナを自在に操るまさに『リーダー』。

 そんな鳴上先輩を影で支え、チャラいことを言いつつも有事には俺達が置かれた状況にフォローを入れながら戦闘時には一番先に刃をシャドウに向ける花村先輩。『その場の流れを読む力』に長けていて、誰かが凹んでいたら何かやらかして笑わせたり、周囲の視線や空気に合わせて俺達の雰囲気をそれとなくコントロールしていたりする彼は、影では散々悪口を言われていたのに自分からは何も言わないのも驚きだった。

 

「おっと、……さすが夢、ここで終点か」

 両手に余る程のシャドウを倒しながら進む巽の目の前に、両開きの引き戸が現れた。彼は躊躇なく、一気に扉を開け放つ。

 パチパチパチ、と部屋の奥から拍手が聞こえ、湯気で煙る部屋の奥へ巽は視線を向けた。

「思ったより早かったな。……さすが、イザナミに辿り着いた者の一人ということか」

 部屋の奥に立っていたのは、シャドウではなく、スーツを着た一人の男だった。

 背は巽と同じくらいで年齢は上に見える彼は、無造作に伸ばした髪を後ろで纏めて髪ゴムで止める。

「テメエ、誰だ?」

「私の名は、神羅。皆からは、そう呼ばれている」

 男は笑みを崩さずに巽の問いに答えた。

「さっき、イザナミって言ってたな? お前、どこまで知ってんだ?」

 巽は警戒心を隠そうともせず、眉根を寄せたまま口を開く。

「話していた内容は知らないが、見たままの内容なら知っている。君達が、『幾千の呪言』に絡めとられ、イザナミが勝手に作り上げた『人の総意』という名の幻想に飲まれていたな」

「何だと!」

 静かに話す男に掠めるように、ロクテンマオウがミリオンシュートを放った。

 しかし男は意に介さず、笑みをただ巽へ向ける。

「だが、イザナミによって勝手にイザナギの因子を植えられたあの男は、君達との絆の力によって真の覚醒を果たした。人の総意を超え、イザナミを打ち倒した。君達は八十稲羽の街を、世界を守ったんだろう?」

 男は首を傾げた。「そんなに怒ることは言っていない、と思っているのだが」

「俺は上から目線でモノを言われるのが何より嫌いでね」

 巽はジリ、と足を男へと向け臨戦態勢に入る。

「そうか。ならば」

 男は、何かの構えを取った瞬間巽の目の前に肉薄していた。巽と男の間にロクテンマオウが割って入り、男の掌打を受け止めている。

 巽は口角を上げながらも背中に冷たい汗が伝うのを感じていた。

 男のスピードは人のそれを遥かに超え、しかもパワーは今の時点でロクテンマオウとほぼ互角。男は笑みを崩していないということは、まだまだ余力があるということだ。

「君達を試すような真似をして済まなかったな」

「試す、だと?」

 男の言葉に、巽は眉を顰める。

「どういう意味だ?」

「主が見守るのに足る者かどうか、見極めるつもりだった。……そんな必要は無かったようだ」

 男は巽とロクテンマオウとの間に距離を取り、懐から一通の封書を取り出した。

「何だ、それは?」

「受け取りたまえ。これは、君の物だ」

 男が封書を投げると、それは真っ直ぐ巽へと向かってくる。

 巽はそれを右手で払うように掴んだ。

「使い方は、君の仲間に訊けば解る」

「分かんねえよ、説明を」

「時間だ。またな」

 遠くで、アラーム音が聞こえる。

 男の姿が掻き消え、その場に巽とロクテンマオウだけが残された。

 

 ◇◇◇

 

 日付:9月25日木曜日

 

「んあ……?」

 巽は枕元に置いた携帯電話を手に取り、目覚ましのアラームを止めた。

 体を起こし、大きく伸びをしながらあくびをする。

「なんか酷い夢を見た気がするな」

『何だったか、覚えていないのか?』

「夢なんてそんなに覚えている訳じゃないだろ?」

『そういうもんか?』

 ここで、巽はある違和感を感じる。

(俺、一人暮しだったよな?)

「会話が成立している気がするんだが、気のせいか?」

『気のせいじゃない』

 巽は、恐る恐る声がする方向で顔を向ける。

「お前、?」

 そこには、かつて着ていた八十神高校の学ランを肩に掛け、紫がかった紺色にドクロの絵が入った長袖Tシャツを着た自分が金色の瞳を輝かせて自分を見ていた。

『さて、問題。俺は、誰でしょう?』

 八十神高校の制服を着た自分が、急に問題を出して来る。

 寝起きの頭で色々置いついていけていない巽は、ただ目を丸くして口をパクパクしているだけだった。

「あー、ヒントを要求する」

『さっきの夢で会いました』

「え?」

 巽は首を傾げる。

「もしかして、……ロクテンマオウ?」

『正解! 見事正解した俺にはこれをプレゼント!』

 ロクテンマオウ、と名乗ったややハイテンションな彼は、巽に封書を手渡した。

 その封書を見た瞬間、巽は先程まで見ていた夢を思い出す。

「あの男が、寄越した封書か!」

『使い方はとりあえず、直斗あたりに相談すりゃいいと思うが』

 ロクテンマオウは腕組みをしながら部屋を見回した。部屋の隅にあるブティックハンガーに掛けられた服を見て、手に取る。

「その服は、学校の課題として縫ったもんだ」

 巽の言葉に、ロクテンマオウは口角を上げた。

『中々いい仕事してんじゃねーか。さすが俺』

 嬉々としてロクテンマオウは服を見て回っている。

 その様子を眺めつつ、巽は両手の中にある封書の中にあるリングのことを考えていた。




もとの話を2分割。長い話なので仕方ないね。

どんどこアップはしていく所存。

それではまた次回お会いしましょう。
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