息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。
※P4だけじゃなくP3成分も入ってきてます。
なおこの小説を書いたときはまだP5発売されておりません。こわい
※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。
※ちょっと痛そうな表現ありますが、タグはこれで大丈夫なはず!だめだったら言って…
※ボーイズラブタグが有効になりました。編集するのはそろそろやめようと思うので、OKな人はぜひ引き続きどうぞ。
日付:9月29日月曜日
「鳴上部長、北島さんから電話です」
丸の内にある桐条ホールディングスの第二総務部オフィスで、青柳が鳴上に告げた。
鳴上は保留になっている回線をオープンにする。
『北島です。部長ですか?』
「鳴上だ。そちらの首尾はどうかな?」
『イベントの準備は着々と進んでいます。船便が今のところ遅延がないのが良かったかと』
「この一週間で熱低が発生していないのが大きいね。予報では後二日は平気らしいから、全ての荷物は運びきれるだろう」
『後、本日午後五時頃無事に部長の息子さん達をピックアップしました』
北島はここで、声のトーンを少し下げる。
『その件で部長、確認したいことがあるのですが』
「何かね?」
『チャンギ国際空港の到着ロビーで、現地マフィアの構成員を複数見かけました。念のため該当機の乗客リストを照会したのですが、それと言って彼らが狙いそうな人物は居ませんでした』
北島の歯切れの悪い言い様に、鳴上は眉を顰めた。
「何があった?」
『私と安西さんが部長の息子さん達と合流した後、彼らは撤退したようです。まるで、息子さん達を待ち受けていたような印象を受けましたが、あの、何か彼らについて情報は来ていませんか?』
鳴上は、北島の問いに少し考えを巡らせる。
「マフィアの名前は解るか?」
『安西さんに確認したところ、恐らく『シルバードラゴン』ではないか、と』
「シルバードラゴン、か。……こちらで情報を確認後連絡する。もし何かあるようなら、申し訳ないが悠達を助けてやってくれ」
『畏まりました。それでは、失礼致します』
北島との通話を終えて受話器を置いた鳴上は、椅子を窓へと向け目を閉じた。
(シルバードラゴン、というと、カルト系マフィアだったな。もしかすると雅也が白鐘さんに何か依頼している可能性もあるか……)
「部長」
青柳が鳴上を呼んだ。
「特殊組織犯罪対策室の、鳴上さんから電話です」
「回してくれ」
鳴上は受話器を取った。
『兄さん、俺だけど?』
「丁度良かった。お前と話したいことがあったんだ」
鳴上は、はあとため息をつく。
「今そっちの事案は何だ?」
『膨らんだ女教団とFSBの猟犬の監視、だね』
「FSB? ロシア連邦保安庁から調査員が来ているのか?」
『正確に言うと、『来ていた』んだ』
電話の向こうで、フム、と声が聞こえる。
「悠達の周りに現地のカルト系マフィアの影がチラついているんだ。膨らんだ女教団、と聞いてやっと話が繋がった」
『そんな訳で、シンガポールに北島が行ってるだろ? 明日、ファッションショーで使う衣装その他が届く筈だから、それを確実に関係者に届けて欲しいんだ。出来たら、北島に直接運んでもらいたいぐらいなんだけど』
「その中に、そっちが確保したい『荷物』がある、ということなんだな?」
『そういうこと。日本で封印保管することについてはユーロとFBIに言質取ってる。なんとか回収したい』
「そういうことなら、北島に連絡しておく」
『ありがとう。じゃ、宜しく』
通話が切れ、鳴上はまた受話器を置いた。
「青柳、北島に明日シンガポールに届くイベント用貨物の内容チェックと護送を指示しておいてくれ」
「了解しました。メール案が出来次第部長へ転送しますので、ご承認のほうお願いいたします」
「分かった」
鳴上は、自身が使うデスクトップパソコンをスリープモードから復帰させる。
映しだされたモニターには、一九九九年七月に発生した『月光館学園爆発事故』と、二〇〇九年に発生した『影時間とタルタロス、ニュクス封印の件』、二〇一一年に発生した『八十稲羽連続変死事件』の報告書が表示されていた。
◇◇◇
「あー……、同じ部屋とはな」
巽と直斗は互いに顔を見合わせ苦笑いをする。
彼らに充てられたホテルの部屋は、夜景が綺麗な上層階のツインルームだった。
「やはり『直斗』という名前がまずかったんでしょう。予想はしておくべきでしたね」
「ま、いいじゃねーか」
巽は部屋の奥にかかるカーテンを開け、シンガポールの夜景を眺める。「来いよ、すっげー綺麗だぜ?」
「は、はい」
直斗が巽の隣に立ち、眼下に広がる夜景を見て歓声を上げた。「これは、綺麗……」
「だな。来ることになった理由はアレだけどよ、直斗と来れて良かった」
「そうですね」
巽は直斗を引き寄せると、額に軽くキスを落とす。
直斗はポカンとし、次の瞬間顔を赤くして俯いた。「ち、ちょ、完二、くん……」
「つーか、さ」
巽は直斗に笑いかける。
「そろそろ、二人きりのときは君付け、やめねえ?」
「あ、は、はあ……そう、ですよね」
直斗は視線を泳がせながら、眼鏡をはずす。巽の顔を見上げ、微笑んだ。
「完二」
「直斗、……好きだよ」
二人の身長差は約三十センチあるものの、巽はそっと直斗を覆い隠すように引き寄せ唇を重ねた。
「ぼ、僕も、です……」
直斗は、ぽそり、と呟く。巽はぎゅ、と直斗を抱きしめた。
「うん、良かった」
巽が言った時、巽の鞄から音声着信を知らせるコール音がなり始める。
直斗が部屋の時計を見ると、北島が言っていた夕食の集合時間の五分前であった。
「もしもし、あ、はい、すぐ行きます。ロビーで待ってて下さい」
二人は慌てて自分の鞄を手に取る。
「直斗、ロビーに先輩達と北島さん達がもう来てるらしい」
「はい、僕はすぐ出られます」
巽は思い出したように自分の鞄から一対の黒い革手袋をテーブルに置くと、直斗の方へ振り返った。
「じゃ、行こうか」
巽と直斗が慌ただしく部屋を去った後、ふわ、とロクテンマオウとヤマトタケルが姿を現す。
『ようやっと、だな』
ロクテンマオウがベッドの上に座る。その隣に、ヤマトタケルも腰掛けた。
『どっちも不器用さんでシャイだからねー。しょうがないよ?』
ヤマトタケルはピタ、とロクテンマオウにくっつく。
『ほんと、こんなに好きなのに』
『あまりにシャイなのも考えもんだな』
ロクテンマオウはヤマトタケルに軽くキスをすると、天井を見上げた。
『しっかし、イザナギとスサノオの部屋、凄かったな』
『うん。でっかいベッドがどーんと一台置いてあったね。あと、ソファも大きめの奴が置いてあったね』
『こっちはイベントスタッフ用、向こうは完全にプライベートって奴だろうなー』
ロクテンマオウはハハハ、と笑う。
『プライベートでも、一応男二人って解ってるのによくああいう部屋を予約するよな、イザナギの主の親』
『認めてるってことなんでしょ。応援してるんだよ、きっと』
ニコニコしながらヤマトタケルは言い、ロクテンマオウの左腕に自分の腕を絡ませた。
『そうだな。……俺達の主達のことも、白鐘の爺さんは認めてくれるといいな』
『それは多分大丈夫だと思うよ。だから、ちゃんと完二が頑張って直斗を養えるぐらい稼げるようにならないと』
『勉強しねーと、な』
『頑張れ頑張れー!』
二人はハハハ、と笑いあい、真顔になる。
『……でさ、部屋の外が騒がしくない?』
『三人ほど中の様子を伺っているな』
ロクテンマオウは巽がおいて行った革手袋を手に取り、両手にはめた。
『だったら物理でいいか』
『なにその手袋!』
『中にメリケンサックが仕込んであるんだってさ。主が一日潰して手袋に細工してたのを俺も調整して、手にはめられるようにしたんだ』
『凄い、物理ってそういうこと?!』
ヤマトタケルがポカンとしてロクテンマオウを見る。
『変に電撃撃ってホテルのモノ壊したくねえし』
ロクテンマオウは、部屋の鍵をガチャリと開けた。
ドアの外の人間が数人、驚いたようにドアから飛び退くのを感じる。
ドアを開け放つと三人の男が呆然として立ち尽くし、何か言いながらエレベーターホールの方に走っていった。
ロクテンマオウはそれを眺めながら息を吐く。
『ふん、ビビリめ』
『そりゃあさ』
ヤマトタケルはクスクス笑っていた。
『いきなりドアの鍵が中から開けられて、いきなりドアがあいて、見えるのは手袋だけって結構状況的に怖いと思うけど?』
『ああ、そういうもんか。そこまで気が回らなかった』
ロクテンマオウはもう一度扉を閉める。
『試しに一発殴ってみたかったんだけどなぁ』
『直斗には一応連絡しておいたよ。……彼奴等、何者なんだろう?』
『少なくとも、例の荷物が欲しい奴ら、ってことは解る』
『うん』
『こんなんじゃ、前途多難だな……。さっさと例の荷物を回収したら速攻日本に送り返さないと面倒なことになりそうだ』
ホテルの四階にあるステーキハウスで北島、安西と共に食事をとった後、鳴上達はそれぞれの部屋に戻っていた。
「念のためロクテンマオウとヤマトタケルを部屋に残したが、ビンゴだったみたいだな」
「三人って言ってたけど、まさか完二がロクテンマオウにあんなアイテムを準備してるとは思わなかったな」
「ああ。その辺はさすがといったところだな。俺達も全然そういう発想はなかったし」
部屋にある大きなソファに持たれ、鳴上はシンガポールのガイドブックを開く。
「陽介、明日はどこに行きたい?」
「んー、取り敢えずイベントが行われるサンテックモールはひと通り歩いておきたいかな。カルフールあるらしいし、地元のスーパーの品揃えも見てみたい」
シャワーを浴びてラフな格好になった花村は、ミニバーからスプライトとコーラを取り出した。
「さすがジュネス王子。やっぱりスーパーは気になりますか」
ニヤニヤしながら鳴上が言えば、花村は鳴上にコーラをぽん、と渡し鳴上の隣に座る。
「そりゃ、土地が違えば品揃えも違うからな。やっぱ気にはなるよな」
花村は鳴上の横からガイドブックを覗きこんだ。
「俺達が泊まってるのが、マリーナ・マンダリン・シンガポール。で、サンテックシティはすぐ近くなのか」
「まず先に、マリーナスクエアを粗方散策して、それからサンテック・シティ・モールで買い物とか食事とか。……完二達はイベントの準備で忙しいだろうから、完全別行動でいいだろう。何かあったら借りたスマホで連絡を取り合えばいいことだし」
鳴上と花村は、それぞれコーラとスプライトを開けて口をつける。
「マリーナスクエアにはマリーナ・フードコート、サンテックにはフード・リパブリックと大きなフードコートが完備されているんだな。食事には困らなさそうだ」
花村は店のラインナップを見ながら、どっちで食べるか考えているようだ。
「ま、後は昨日の空港の時のような怪しい奴がいないこと。それを調査するのが最優先。結果としてウィンドウショッピングも楽しめそうだし、明日は一日退屈しないだろう」
「うん、そうだな」
花村は鳴上の方をふと見て、視線がかち合う。
「うん? どうした?」
「いや、そろそろ」
鳴上は花村を引き寄せた。
「今日の陽介分を補給したいなあ、と思うんだけど」
花村は鳴上がなすがままに引き寄せられ、まだ少し濡れた頭が鳴上の方に当たった。
「まだ濡れてんだけど」
花村が呟くと、鳴上は花村の顔を自分に向けキスを落とす。
「陽介のキス、美味しかった」
「コーラとスプライトの味だな」
鳴上と花村は言い、口角を上げる。
「陽介、続きは?」
「ベッドの上で」
二人はクスクスと笑いながらキングサイズのダブルベッドに移動し倒れこむ。
「俺達、こんなに幸せでいいのかな?」
「いいんだよ、それで」
観光気分のはずなのにとっても百戦錬磨ぁ
そんな大学生がいるか
それではまた次回お会いしましょう。