ペルソナアフターパラレル   作:erupon

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※ペルソナ4原作後、大学生設定の二次創作です。
 息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。

※P4だけじゃなくP3成分も入ってきてます。
 なおこの小説を書いたときはまだP5発売されておりません。こわい


※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。

※ちょっと痛そうな表現ありますが、タグはこれで大丈夫なはず!だめだったら言って…
※ボーイズラブタグが有効になりました。編集するのはそろそろやめようと思うので、OKな人はぜひ引き続きどうぞ。


032.南の大女と北の戦女7

 日付:9月30日火曜日

 

「イリーナ、昨夜はよく眠れたかい?」

 ワレリー・クルーツィスは傍らでミネラルウォーターを豪快に飲み干すイリーナ・ドミトリエフへと視線を向けた。

「ん、おかげさまで無事に朝まで寝られたわ。……最近作戦行動が多くてあまり眠れていなかったけれど、取り戻した気分よ」

 イリーナは空になったペットボトルを少し振ると、ペットボトル用ゴミ箱に投げ捨てる。「追跡を、再開しましょう?」

「ああ。そうだな」

 ワレリーは、外交官として持ち込んだアタッシュケースを開けると、一枚の手に平に収まる程度の手鏡を取り出した。

「Зеркало моей」

 ワレリーの呟きに、鏡がジワリ、と白く光る。「Проект nyhargo Кодекс」

 次の瞬間、鏡にショッパーに包まれた荷物が映る。

「どう? 場所分かった?」

 ワレリーが鏡を覗くさまを眺めていたイリーナは、待ちきれないように口を開いた。

「どうやら港だな。コンテナの中にはいっているようだ」

 ワレリーは冷静に答える。

「いや、待て、これは……」

 ワレリーの言葉に、イリーナもワレリーにくっついてワレリーが見る鏡を覗きこんだ。

「あらあら。こういうことなら、どこかのカフェで様子を見て、横から掠め取ったほうがお利口さんね」

 イリーナがワレリーが荷物を持っている方の腕に自分の腕を絡ませる。

「とりあえず朝食を軽く取るとしよう」

 ワレリーは手鏡を懐にしまい、イリーナの頬にフレンチ・キスをした。

「三人。彼らは隠れているつもりなのかしら」

 イリーナが、低く囁くような声で呟く。

「シンガポールには美味しい料理がいくつかあるらしいから、探して歩くのも楽しいと思うが?」

 ワレリーがイリーナに笑いかけた。

「そうね。取り敢えずお化粧直ししたら、チキンライスでも食べたいわ」

 二人はチャンギ国際空港の到着ロビーからレストルームへ向かって歩き始める。

 その動きに呼応するかの如く、三人の男女がゆっくりと移動を開始した。

 

 ◇◇◇

 

 シンガポール港は、コンテナ貨物取扱量では香港と並んで世界トップの座を争うアジア最大級のハブ港である。世界有数のリゾート地であるセントーサ島の対岸に広がる大きな港には毎日のように貨物船が寄港している。

 その中の一隻、桐条第二みかさ丸の前で、黒いスーツ姿の北島が大型トラック三台と共に船長を待っていた。

 船長と思しき人物が、タラップを下り北島の元へと歩み寄る。

「桐条ホールディングス第二総務部の北島です」

 北島は懐から名刺を取り出した。それを見て、歩み寄った男もポケットから名刺を差し出す。

「桐条ロジスティクス国際海運部の平野です」

 陸揚げ作業開始を待たせ、北島と平野は名刺交換した。

「本社からわざわざ荷物の引き取りとは、お疲れ様です」

「今回のシンガポールで開かれる『クールジャパンフェスタ』がウチの仕切りですからね。トラブルがあったら末代までの恥になりますよ」

 二人は握手をかわす。

「二日前にお話がありました、船内での不穏分子の調査ですが、疑いがある人物が二人いました」

 平野は笑みを浮かべつつ報告を続ける。

「いずれも中国系シンガポール人です。現在は荷役作業とは別区画の閉鎖空間にて別の作業に当たらせています」

 平野は目を細めた。北島も笑みを浮かべる。

「ご配慮いただき有難うございます。こちらの作業者も急遽シンガポール支社より信頼に足る人物を揃えました」

 北島は周囲を見回すと、キビキビと荷物を受ける準備をする男たちがもくもくと働いている。

「どうやら現地不穏分子の監視は続いているようですが、そちらの排除は当方にて作業を行いますので、貴社にはご迷惑をお掛け致しません。それと平行して、クールジャパンフェスタ向けの貨物コンテナ六台分をトラックで直接引き取ります。その他通常輸出貨物は通常通りの手続きで荷降ろしをお願い致します」

「分かりました。ではこちらも作業を開始します。そちらのイベントが成功することを祈っていますよ」

 平野はタラップを上がっていく。

「作業開始! イベント用貨物は別でトラックに直載、その他は通常通りシステム指示の通りだ!」

 船のあちこちで、大きな返事が返ってきた。

 北島はそれを聞きながら、コンテナが積まれたターミナルを見回した。

「ざっと十人ぐらい、か。トラックのナンバーはすでに向こうに知られているから、なんとかサンテック国際会議場まで無事に配送しないと、な」

 その時、北島の目の前にタクシーが止まり、中から鳴上と花村が降りてくる。

「おはようございます、北島さん」

 鳴上は頭を下げた。

「遅くなってすみません、作業は始まってますか?」

「いや、これからだ。花村君も朝早くから悪かったね」

「いえ、後輩の晴れ舞台が無事に終わるまではそっちにもお付き合いしますよ」

 花村は軽薄そうな笑みを浮かべる。

「……取り敢えず十人ですか。思ったより多いですね」

「陽介、正確な位置は分かりそう?」

 鳴上の問いに、花村は周囲を見回した。

「もうほかの船の作業が始まってて結構な人数いるから、特定に少し手間が掛かりそうだ。情報にはタイムラグがあるけれど、問題ないか?」

「ああ、構わないだろ。たかだか人間の移動距離なんて大した事ないんだから」

 鳴上と花村がやりとりをするのを眺め、北島は苦笑いを零す。

「君達、どこの諜報員なんだ?」

 北島の問いに、鳴上と花村は互いの顔を見合わせた。

「いや、フツーの大学生ですけど?」

 花村は首を傾げながら答え、鳴上は北島の意図が分かったのか、苦笑いを返す。

「いや、君達が部長の関係者、って事を失念していた僕が悪い。今のは忘れてくれ」

 北島はため息と共に鳴上と花村の肩をポン、と叩いた。

「じゃ、申し訳ないが宜しく頼むよ」

「じゃ、行ってきます」

 鳴上が声を掛け、花村は軽く会釈するとコンテナが積まれたエリアへと走り出した。

 その様子を後ろから眺めながら、北島は頭をポリポリと掻く。

「ほんと末恐ろしいよ、君達が。敵に回したくないな」

 昨夜鳴上部長から北島へ来た指示メールには、『三十日に船便で到着するイベント用貨物を直接受け取り、護送せよ。荷物を狙う者がいるなら、現地にいる悠達を使ってでも排除しろ』と記載されていた。

 メールを見てから、夜十一時過ぎに鳴上へ電話をかけ、荷揚げに立ち会ってくれ、と依頼した所、二つ返事で了承を貰い、そして今に至る。

 十人、という大人数を二人で相手するというのに動じず、どう見ても第二総務部の構成員ばりに戦闘経験値が高い彼らを見て、どこかの諜報員かと疑わないほうがおかしい。

(おかしいといえば、……)

「おおーい! もうトラックを動かしてもいいの?!」

 作業員が北島に叫んでいる。

「はい! お願いします!」

「貨物移動開始しまーす!」

 北島は思考を一時中断し、作業指示のため周囲を見回した。

 

 ◇◇◇

 

 カトンにあるチキンライスレストランの片隅に、その二人組がいた。

「ねえ、ワレリー」

 イリーナは運ばれてきたチキンライスを口に運びながら、気だるそうにワレリーの方を見る。

「何かな?」

 ワレリーは粥を食べつつイリーナへ視線を上げた。

「人間って、壊れるの早いわよね」

 イリーナは鶏肉に二度、三度と箸を突き刺す。

「人間にかぎらず、地球上の生き物は壊れるのが早いだろう。脆弱に作ったのも、神様だ」

「そりゃ、そうね」

 イリーナは、自分の指を見る。所々赤黒く汚れたそれを、ぺろりと舐めた。「脆弱だからこそ、美味しくなるのかしら?」

「そうかも、しれないな」

 ワレリーはイリーナから自分の粥へと視線を戻す。

 彼は、イリーナが綺麗に舐めとっている汚れが、数十分前まで生きていた人間の体液の一部であることを知っていた。

 彼には、未だに人を殺した後に肉料理を欲する彼女の気持ちが理解できないでいる。

「ねえ、ワレリー?」

 イリーナが気だるそうにワレリーを呼んだ。

「何かな?」

 ワレリーが疑問形で答える。

 彼が目線を上げると、イリーナがうっとりとした目で彼を見ている視線とかち合った。

「貴方のもなめてあげよっか?」

 舌なめずりをしながら、イリーナが問う。

「残念ながら、先程手は洗ったばかりだ。それでもよければ」

「じゃあ、粥味でいいわ」

 イリーナが言い、ワレリーは自分の左人差し指に粥を掬いイリーナへと差し出した。

 イリーナは差し出された指をぺろりと舐めると、そのまま口に含んで舐めまわす。

「……美味しいかね?」

 ワレリーは懐から手鏡を取り出し笑みを浮かべながら聞くと、イリーナは恍惚とした表情で頷いた。

 

 ◇◇◇

 

『……まただ』

 スサノオが、呻るように呟いた。

「どうしたよ、スサノオ?」

 花村が、自身のペルソナに声をかける。

『誰かに、俺達の戦闘を覗かれている』

 スサノオは、明らかに不機嫌そうな言い方で答えると、敵の一人にソニックパンチをヒットさせた。

 敵はメキメキ、という骨が軋む音と共に五メートル程吹っ飛びコンテナに体を酷くぶつけてそのまま倒れた。

「後何人?」

『鳴上側にはこっちに居た奴が一人移動してる。こっち側は近づく奴が一人』

 花村はスサノオを纏い、感覚を研ぎ澄ます。

「で、さっき言った『覗かれている』という感覚はどこからか分かるか?」

 花村の問いに、スサノオはうーん、と唸った。

『普通に覗いてる訳じゃないんだ。逆に監視カメラなら、俺が分からないし。……俺が認識できて、且つこの現場に居ない、という条件で有れば』

 その時、花村の後ろから男が現れ、鎌を振りかざす。

 花村はその斬撃を難なく躱すと、その勢いのまま鎌を蹴りで叩き落とした。

「ぐっ……!」

 男が蹴られた手の痛みに呻く間もなく、花村が続けざまに五発男に掌打を見舞うと、男はその場に崩折れる。

『八月から習い始めた空手が役に立ったな』

 からかうようにスサノオが言うと、花村は肩を竦める。

「通信教育だけどな。スピードを活かした体の捌き方を知りたかっただけだし」

『一ヶ月ちょっとでここまで出来るなら、素質あるんじゃね?』

 スサノオは軽口を叩きつつ花村から離れ、その金色の瞳を大きく見開いた。

「どうだ?」

『向こうも済んだようだ。思ったより早かったな』

 スサノオは花村の中に戻る。

(で、さっきなにか言いかけたろ?)

 花村は、鳴上と合流すべく歩き出す。

『どっかで覗いてる、ってアレか』

 スサノオは、一度息を吐いた。

『多分、魔法のアイテムのようなものだと思う』

「厄介だな、そうなると。こっちからアクセスが出来ないってことか」

 迷路のように入り組んだコンテナの隙間から船の方に抜け出すと、ちょうど鳴上も出てきたところだった。

「陽介、結構早かったな」

 鳴上が腕時計をチラと見れば、戦闘に入ってから正味十分程度しか掛かっていない。

 花村は口角をあげ、鳴上とハイタッチする。

「悠だって、同じようなもんじゃねえか」

「まあ、五人だったしな」

 鳴上は大仰に肩を竦めた。

「手加減できないのはかなり気を遣うよ」

(スサノオ、この荷物を国際会議場に運ぶまでは周囲の警戒を頼むな)

『了解だ』

 スサノオの声が聞こえたとき、前方から北島が走ってくる。

「もしかして」

 北島の言葉に、花村は軽く手を上げた。 

「あらかた片付いたので、戻ってきました」

 鳴上が、微笑みながら答える。

 北島は、ポカンと口が開いたままになった。

「あの、今回の十人はどうするんでしょうか?」

 花村の問いに、北島は少しの間考えを巡らせる。

「現地支社を通じて警察に通報後引き渡し、だろうな」

 北島がそう答えたとき、北島の端末から音声通話を知らせるコール音が鳴り響いた。

「もしもし」

『安西です。今日はそちらに立ち会えず、申し訳ありません』

 北島が通話を隠すかのように鳴上と花村に、背を向ける。

 花村は、スサノオを現出させると電話の内容を拾い始めた。

「で、何でしょう?」

『悪い知らせです。FSBの猟犬がシンガポールに入国しました』

「いつ?」

『今朝到着する便でモスクワから来たようです。先ほど、チャンギ国際空港のバックヤードで男女三人の変死体が発見されました。警察による検視と初期調査の結果『膨らんだ女教団』の構成員であることが分かっています』

「猟犬は今何処に?」

『申し訳ありませんが、現在ロスト中です。MRTに乗ったらしいことは分かっているので、東部地域を捜索中、ですが……』

 安西が言い淀む。

『シンガポールに彼らは外交官として入国しておりまして、地元警察では確固たる物証が出ない限り、事実上手が出せない、と』

「手が出せない、なら仕方ない。こっちでどうにかするしかない、か」

『以上、申し訳ありませんが宜しくお願いいたします』

 北島は、通話が切れた端末をため息混じりに眺め、懐のポケットにしまい込んだ。

「北島さん、俺達もトラックに乗って行って良いんですよね?」

 鳴上の問いに、北島は頷く。

「因みに今日の予定は?」

 北島の問いに、鳴上が花村を見た。

「マリーナスクエアと、サンテックモールを散策してみようかと。カルフールも入っているようなので、海外のデパート事情も見たいですし」

「なる程。あそこはホーカーズ、と呼ばれる屋台村がそれぞれ有るはずだから、気に入ったところで食事をするといい」

 北島は、笑顔になる。

「サンテックモールまではトラックで送るよ」

「はい、ありがとうございます」

 鳴上は、笑顔で答えた。

 




観光気分のはずなのにとっても百戦錬磨ぁ
そんな大学生がいるか 第二弾

それではまた次回お会いしましょう。
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