息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。
※P4だけじゃなくP3成分も入ってきてます。
なおこの小説を書いたときはまだP5発売されておりません。こわい
※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。
※ちょっと痛そうな表現ありますが、タグはこれで大丈夫なはず!だめだったら言って…
※ボーイズラブタグが有効になりました。編集するのはそろそろやめようと思うので、OKな人はぜひ引き続きどうぞ。
日付:10月2日木曜日
巽完ニは、大きくため息をついた。
明日本番のファッションショーに出演するモデルが、昨晩逮捕された。
あの戦闘で主犯格であった男は生きてはいるが、所謂植物人間状態となっていて、ロシアから来た諜報員のうち女性は死亡した。
巽にとって昨夜のことはかなり衝撃的な出来事ではあったが、それよりも発生したトラブルに巽は浮かない顔をしていたのだ。
「大丈夫ですか?」
朝食のサラダをつつきながら、心配そうに白鐘直斗は、巽の顔を覗き込む。
「あ、ああ、大丈夫」
「昨夜の戦闘で能力を使ったので、体調を崩していたのかと心配しました。大丈夫なら、良かったです」
直斗は済ました顔で、また目の前のサラダをつつきはじめる。
「よう、直斗、完二。俺も飯に混ぜてくれよ」
その声に巽と直斗が顔を上げると、花村陽介がニヤニヤしながらビュッフェのトレイを持っていた。
「先輩、おはようございます」
「おはようございます!」
四人がけの丸テーブルの空いた一席に落ち着くと、花村は巽と直斗を見やった。
「昨夜は寝られたか? 二人共」
花村がサンドイッチをぱくつきながら訊くと、巽と直斗は顔をみあわせる。
「ま、まあ……」
直斗が曖昧な笑みを浮かべると、花村はニヤ、と笑った。
「隠さなくたっていいんだぜ? 昨夜はお楽しみでしたって言ってもさ」
「ち、ちょ、先輩、何言ってんスか!」
巽が顔を赤くして叫ぶように言うと、花村はクスクス笑う。
「俺は何も言ってねえけど? もしかしたら楽しくジェンガでドキドキしてたかもしれねえじゃん」
「ったく、そういうの面倒なんでやめて下さいよ……」
巽はそっぽを向いて呟いた。
「そんなことより、鳴上先輩はどうなんです?」
直斗の問いに、花村は苦笑いを浮かべる。
「もう、ぐっすり寝てる。起きそうになかったから、『Do not disturb』の札掛けて置いてきた。後で適当にルームサービスでも取るよ」
「そうですか。寝てるだけならいいのですけれど」
直斗は微笑んだ。「何せ、昨夜はいきなり気を失うように寝てしまわれましたからね」
「ま、三年前も何回かこういうことはあったし、別に問題にはしてないな」
「そういや先輩もなってましたね」
直斗が花村へ視線を向けると、花村はごまかすようにあらぬ方向に視線をやってはは、と笑う。
「因みに完二」
花村は笑みを浮かべながら、巽へと視線を向けた。
「な、何スか?」
「さっき、なんか考えてたろ。難しいことでも、三人寄れば文殊の知恵、とか言うし、ここで言ってみ?」
巽は苦笑いを浮かべる。
「そういう所は目ざといんスね。……んー、なんというか、昨夜逮捕された女性がいましたよね?」
「ああ、いたね」
「あの人、ウチの衣装を着ることになってたんです」
「つまり、モデルが足りない、と?」
花村の指摘に、巽は頷く。
「まあ、そういうことッス。北島さんや実行委員会の方も当たってるようなんですが、中々いい人が捕まらないらしくて」
巽は天井を見上げた。
「今回持ってきた衣装は、先輩が残した最後のメッセージ、みたいなもんですから、できれば全てお披露目させてやりたいけれど、ちょっと難しいかなあ、と」
花村はアイスコーヒーをストローから飲むと、フム、と呟く。
「なあ、要するに、『綺麗で、スタイル抜群で、どんなことにも臨機応変に対応できる女性』が一人いればいいんじゃねーの?」
花村の問いに、巽ははあ、と答えた。
「まー……、そういうことに、なりますかね?」
「いるじゃん、そういう人」
花村はサンドイッチの最後の一口を口に放り込む。
「えっ?」
「ほら、目の前に」
花村は、直斗を指さした。
「え、えっ?」
直斗が動揺して体が引き気味になる。
「完二、今回の衣装は三年前のミスコンと違って水着みたいな姿になるわけじゃねーんだろ?」
「え、ええ、まあ」
「直斗、完二のためにそれこそ一肌脱いでやれよ」
花村の言葉に、直斗はポカンと口が開いたままになった。
「確かに直斗だと、身長が少し足りないけど、靴で嵩上げできるレベルか。ドレスの裁縫の調整は必要とは思うけど……」
「今からその辺の調整は可能? ……ロクテンマオウ、その辺どうよ?」
花村が言うと、巽の影からロクテンマオウが現れる。
「なあ、完二のこと、手伝ってやれねえか?」
『できると思う。俺の能力であればモノを作る他に『形を変える』ことできるのは、この前『荷物』をコピーした時に解っているだろ』
「なるほど、それならうまいこといきそうだ」
「だろ?」
「ま、ま、待ってくださいよっ」
直斗が花村と巽の会話に割り込む。
「僕はまだやるとは一言も」
「え? やるだろ? 完二超困ってるじゃん?」
直斗は、花村の今更何言ってんの? という顔に石を投げてやりたくなった。
「俺からも頼むよ、直斗」
巽が済まなそうに手を合わせる。逃げられないこの雰囲気に、直斗は盛大にため息をついた。
「ったく、どうなっても知りませんからね?」
◇◇◇
日付:10月2日木曜日正午
鳴上悠が目覚めたのは、自分が滞在するベッドの上だった。
「よう、起きたか。おまえにしちゃあ、寝坊だったな」
ソファで雑誌を眺めていた花村が、笑いながら声をかける。
「ああ。……済まないな、ここまでキツいとは思っていなかったんだ」
鳴上は、苦笑いを浮かべた。
「なにか食べたいが、……」
「サンドイッチとコーヒー、なんだったらコーンスープもつけるけど?」
花村がルームサービスのメニューを見ながら読み上げると、鳴上はフフ、と笑う。
「サンドイッチとコーヒーでいいよ。注文しといてよ」
鳴上の言葉に、花村は受話器を上げ、しばらく迷った末に戻した。
鳴上が首を傾げる。
「ん?」
「……すまん、俺、シンガポール英語無理」
花村は苦笑いと共に、受話器を鳴上に差し出した。鳴上が、俯き方を震わせる。
「ぷ、くくくくくっふふふふふふくくくくく……!」
「わ、わ、笑ったなっ」
花村が赤くなるのと、鳴上が声を上げて大笑いするのと同時だった。
「やばい、死ぬ、まじでこれはヤバイ」
「そんなこと言ってると頼まねえぞー!」
「だって、陽介頼めないんだろ? 俺が頼むよ」
「だ、大丈夫だって! 俺がやっとくから!」
「いやだから受話器貸してよ」
「いやいや、任せとけって、病み上がりなんだから寝とけよ!」
「だから、俺そもそも病気じゃないし」
不意に、部屋のドアがノックされた。
「すみません、バトラーサービスです」
鳴上と花村は顔を見合わせる。
「あのう、そちらの受話器が上がっているようなんですけれど」
バトラーサービスは日本語が堪能であった。
「ご確認を」
鳴上と花村は受話器を置くと、二人で笑いあった。
「あのー、なにかご用事があれば今お伺いしますが……?」
◇◇◇
「結局直斗がモデルの代役でステージに上るのか」
花村が大仰に肩を竦めると、ベッドから起き上がった鳴上はクス、と笑った。
「今頃リハーサルとドレスの調整をしてるんじゃねえかな。ロクテンマオウとヤマトタケルも手伝ってると思うぜ」
鳴上はまだ顔色はやや悪いものの、普通にルームサービスで注文したサンドイッチを食べている。
「じゃあ、明日は直斗と完二を見に行かないとな」
「ああ」
花村は目を細める。
「で、相棒?」
「……何だ? 陽介」
鳴上は笑みを浮かべたまま花村へと視線を向けた。
「結局どこまでお前の想定通りだったんだ?」
鳴上は、口角を上げる。
「まあ、九割ぐらい?」
「だよなあ。今更ながら驚いてるよ。シンガポールに来る前に聞いた『予想』のとおりに展開していくんだからな」
花村は肩を竦め、ベッドサイドに腰掛けた。
「想定外だったのは、向こうの魔法使いが他の魔道書を持っていたこと、そこからシャドウが現れたこと、ロシアの諜報員があのタイミングで発狂したこと。他の魔道書とシャドウについては俺の検討不足だったけれど、ロシアの諜報員には驚いたよ」
鳴上は、深く息を吐いた。
「正気を保つための対策は当然とっていると思ったんだけど、あのタイミングとはね」
「悠が、戦闘中にあれだけフリーズするなんてないもんな」
花村は鳴上の頭を撫でた。
「いや、本当にあんなことをするんだ、という衝撃が大きくて。……折角『膨らんだ女』に殺される前に引き剥がしたのに目の前で射殺されるとか」
「悠」
「だが、あのまま諜報員は撤退してくれたしな。俺達のことは報告しない、と言っていたな。……信用してもいいのだろうか?」
「いいんじゃねーの?」
花村は、心配そうな顔をする鳴上を優しく抱き寄せる。
「だってアイツ、俺達に言ったじゃねーか。『最強の魔術師』だって。魔術師を裏切ったらどうなるか、アイツだって解っているさ。……勿論俺達はそんなことしねぇけどさ」
ほら、アンジェリアみたいな奴もいるし? と続け、花村は小首を傾げた。
「ああ、そうだな、うん」
鳴上は、クス、と笑うとコーヒーを飲み干しサイドテーブルに置く。「ねえ、陽介」
「何だ?」
「俺、まだお腹空いててさ。陽介食べたいんだけどいいかな?」
「あー、すっかり元気そうだな」
花村はクスクス笑い、鳴上に抱きつくと、鳴上は花村をベッドに押し倒した。
◇◇◇
日付:10月4日土曜日
「先輩、シュノーケリングセットを借りて来ましたよ!」
シンガポール滞在最終日であるこの日は晴れていた。
セントーサ島南西のシロゾビーチに繰り出した鳴上達四人は、それぞれ水着に着替えている。
「おー、さんきゅ」
花村は直斗を見て、おお、と小さく声を上げた。
直斗は、両腕に四つ分のシュノーケリングセットを抱えている。
水着は白いビキニのトップスとパンツの前面をレースで繋いだワンピース型で、彼女の完璧ボディが映えるベストチョイスであった。
「直斗、その水着は誰が選んだ?」
シュノーケリングセットを受け取りながら鳴上に問われ、直斗は赤面しながら隠すように腕を組んむ。
「あの、久慈川さんが、『このくらいでちょうどいいし、ビキニじゃないから恥ずかしくない』、って」
(りせ、いい仕事してんじゃねーか!)
花村は、頭に浮かんだ久慈川りせに向かってサムズアップした。
「完二、直斗をみてどうよ?」
花村が巽を肘で小突くと、巽はあー、と変な声を漏らす。
「あー、えーっと、いいんじゃ、ねぇっスか?」
「ほ、ほんとですか?」
真っ赤になりながら直斗が巽を見上げる。
「お、おう、すっげー似合ってるって。大丈夫だから」
巽が視線を逸らしながらも答えると、直斗はやっと笑みを浮かべた。
「よかった、久慈川さんに選んでもらって。僕はそういうの分からないので……」
「今度はさ」
巽が微笑む。
「お前が選んだ奴、見てぇな、なんて……」
「そうですか、その、僕そういうのほんと分からないのですが」
◇◇◇
鳴上と花村は、笑顔で巽と直斗を眺めていた。
「あいつら、ビーチでリア充満喫してんなー」
花村が苦笑いと共に鳴上へと振り返る。
「昨日の黄色と黒のドレスも良かったけれど、今日の水着もいいものだ」
鳴上がにこ、と花村に笑みを返した。
「ほんとファッションショーが無事に終わってよかったよ。魔道書もうっかり二冊目が手に入るし、今回は結構大勝利なんじゃねーの?」
「ま、そうだな」
鳴上は、曖昧な笑みを浮かべる。
「今日は一日遊んで、明日は菜々子達に土産を買って帰ろう」
「たまには八十稲羽に帰らねえと、な」
花村は巽と直斗へ手を振る。
「おおい、早いとこシュノーケリングやろうぜ!」
「あっ、はい!」
「待たせてすんません、すぐ行きます!」
向こうから巽と直斗が走って来る。
「俺はほんとに、幸せ者だな」
鳴上は、ぽそ、と呟いた。
南の大女と北の戦女:終わり
直斗は絶対水着映えするナイスバディ。
そして早くけっこんしちまえよおまえら。
いいけど。
次回はインターミッションをはさんで、私の中では(書いてたシリーズのなかで)色々回収する話「星の輝きと地上の天使」です。
それではまた次回お会いしましょう。